〈鮮やかな色を配色する〉パレット(脚本)
〇黒
「私は芸術を信じない芸術家を信じる」
マルセル・デュシャン
(1887〜1968)
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた呪いの 品が存在します」
鑑定士「私はそんな〈いわく〉付きの品専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、一体おいくらになるのでしょうか・・・」
〇時計台の中
鑑定士「お待たせ致しました」
持田 夏希「同じ芸術大学に通っていた妹のパレットです鑑定士さん、これ、いくらになります?」
鑑定士「大切な物ではないのですか?」
持田 夏希「・・・不要な物です。鑑定して下さい」
鑑定士「それではお聞かせ下さい。 このパレットにまつわる〈いわく〉を──」
〇美術室
金賞 該当なし
銀賞 旗本大輔 小川純香
銅賞 原口純也 林康宏
佳作 持田夏希 藤原雅士
持田 夏希「やり〜!佳作受賞してる〜!」
持田 彩絵「私は・・・選外だ」
持田 夏希「どんまい彩絵」
持田 彩絵「いや、見落としたはず・・・」
持田 彩絵「くぅぅ〜」
持田 夏希「彩絵の風景画、黒色が多いじゃない?もっと色を使わないと、私みたいに!」
持田 彩絵「今回は自信作だったのにな・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
持田 陽子「夏希、佳作おめでとう 今日はお祝いに、すき焼きよ!」
持田 夏希「やった!私の大好物!」
持田 陽子「親として鼻が高いわ!」
持田 彩絵「はぁ・・・」
持田 影正「どうしたんだ?箸が進んでないようだが?」
持田 彩絵「うん・・・」
持田 夏希「次は頑張らなくちゃね、彩絵!」
持田 影正「お父さん、彩絵の黒い風景画好きだぞ!」
持田 陽子「そうよ、個性的で良いと思うわ!」
持田 彩絵「きっと、道具が悪のよ!新しいの買って!」
持田 彩絵「あと、審査員の作品を見る目がなさ過ぎる!」
持田 夏希「それは違うでしょ。悪いのは道具でも審査員でもないし!」
持田 彩絵「じゃあ何が原因なの!」
持田 影正「2人とも、やめないか」
持田 夏希「お題に対してどう向き合うかが大切なのよ」
持田 陽子「お母さん、風景画に真剣に向き合っている彩絵の姿が好きよ!」
持田 陽子「だから、賞を受賞して欲しいと思ってるわ!」
持田 影正「別に賞にこだわる必要ないんじゃないか?」
持田 陽子「お父さんは口を挟まないで!」
持田 影正「す、すまん」
持田 陽子「賞を受賞する為なら、どんな形でも応援するからね!」
持田 彩絵「私、絶対に金賞を受賞するから!」
持田 夏希「私を越せる日が来るかしら?」
持田 彩絵「む〜っ」
持田 陽子「夏希、明日、彩絵に色使いについて教えてあげたら?」
持田 夏希「えっ!何で私が!」
持田 彩絵「お願い!お姉ちゃん!」
〇美術室
持田 夏希「えっ?明かるい色を使うの?」
持田 彩絵「そう。賞を受賞した作品は色が鮮やかだったから、そんな配色が出来るようになりたくて」
持田 彩絵「お題に適した風景画を描かないとね!」
持田 夏希「なら、色々と教えてあげましょう!」
持田 夏希「まず色の配色は桃色と黄色を混ぜて──」
持田 彩絵「こんな、感じ?」
持田 夏希「そうそう。いい色合よ!」
持田 夏希「着色してみたら?」
持田 彩絵「実はね、画風変えるのに抵抗あるんだ・・・」
持田 夏希「でも、鮮やかな色が配色できたじゃない」
持田 夏希「金賞を目指すんでしょ?」
持田 彩絵「うん!鮮やかな色を配色して、必ず金賞を取るんだから!」
持田 夏希「今、パレット光った?」
持田 彩絵「このパレット、木製だよ?」
持田 夏希「ごめん、見間違えたかも!?」
〇美術室
持田 彩絵「こんな具合でいいかな?」
持田 夏希「青色も少し混ぜればより色が強調できるよ!」
持田 彩絵「わっ!混ぜる量多すぎたかも!?」
〇美術室
持田 彩絵「よしっ!完成っと!」
持田 夏希「凄っ!」
持田 彩絵「私にこんな絵が描けるなんて!」
持田 彩絵「この調子なら、金賞狙えるかも〜」
〇おしゃれなリビングダイニング
持田 彩絵「へへっ!今回の風景画、上手く描けた!」
持田 影正「良かったな!彩絵!」
持田 陽子「真剣に取り組んだからよ!」
持田 陽子「お姉ちゃん、越しちゃうんじゃない?」
持田 夏希「彩絵が上手く描けたのは、たまたまよ!」
持田 夏希「それに、色の配色だって私が──」
持田 陽子「彩絵には才能があるのね!」
持田 彩絵「そう言われると、照れるなぁ」
持田 夏希(私が助言したんだから・・・)
〇美術室
金賞 該当なし
銀賞 旗本大輔
銅賞 持田彩絵 片山恵
佳作 平沼俊樹 長瀬明宏
持田 彩絵「銅賞!徐々に金賞に近づいてる!」
持田 夏希「まさか、彩絵に抜かされるなんて、複雑な気持ちよ」
持田 彩絵「やっぱり私って才能あったんだ!」
持田 彩絵「方向性は間違ってないとみた!」
持田 彩絵「もっと鮮やかな色を配色して、次は金賞ね!」
持田 彩絵「よしっ!この調子で今日も風景画を描くから お姉ちゃん、先に帰ってていいよ!」
持田 夏希「帰宅、遅くならないようにね」
〇女性の部屋
「お姉ちゃん?」
持田 夏希「鍵あいてるよ」
持田 彩絵「ねぇ!風景画の事なんだけど、より鮮やかな色を使いたいと思って──」
持田 夏希「知らないわよ!そんな事!」
持田 彩絵「お姉ちゃん?」
持田 夏希「寝るから、出てって!」
〇黒
持田 夏希「ねぇ!私、佳作を受賞して──」
持田 影正「彩絵は素晴らしい」
持田 陽子「彩絵の方が才能あるわ!」
持田 影正「彩絵の絵は魅力的だ!」
持田 陽子「彩絵は個性的!」
「夏希なんて足元にも及ばない!」
持田 彩絵「誰も、お姉ちゃんなんか見てないよ!」
消えてしまえ
〇女性の部屋
〇川のある裏庭
持田 彩絵「頑張って鮮やかな色を配色しないと!」
持田 彩絵「う〜ん違うな」
持田 彩絵「もう少し鮮やかな色を!」
持田 夏希「彩絵、風邪引くから中に入ろ・・・」
持田 彩絵「持って、もうちょっとだけ!」
〇美術室
持田 夏希「ちょっと、彩絵まだやってんの?」
持田 彩絵「思ってる色の配色と違う」
持田 彩絵「こんな色じゃない」
持田 彩絵「全然、違う」
持田 夏希「はやく帰るよ!」
〇おしゃれなリビングダイニング
持田 陽子「はやく食べちゃいなさい」
持田 夏希「あれ?彩絵は?」
持田 陽子「大学が休みだからって朝から風景画を描いてるわ」
持田 夏希「また?最近、絵に執着し過ぎてない?」
〇川のある裏庭
持田 陽子「夏希、手伝って!」
持田 夏希「誰!」
持田 陽子「んっ?」
持田 陽子「彩絵!」
持田 彩絵「・・・もっと鮮やかな色を──」
持田 陽子「ずぶ濡れじゃない!」
持田 彩絵「平気だよ!これも、金賞を取る為だから!」
持田 陽子「はやく中に入りなさい」
持田 彩絵「雨で色が薄まって、いい色合が出せたの!」
〇おしゃれなキッチン
持田 彩絵「求めてる鮮やかさが出せない・・・」
持田 彩絵「野菜と果物の搾り汁を使おう」
持田 夏希「何か探し物?」
持田 夏希「ちょっと、何してんの!彩絵!」
持田 夏希「彩絵ったら!」
持田 彩絵「・・・鮮やかな色・・・ ・・・鮮やかな色・・・ ・・・鮮やかな色・・・」
持田 彩絵「お母さんの化粧品を鍋に入れて溶かそう」
持田 夏希「やめなって!彩絵!」
持田 彩絵「フフフッ」
持田 彩絵「これで、鮮やかな色を配色出来そうね」
〇川のある裏庭
持田 彩絵「・・・もっと鮮やかな色・・・」
持田 彩絵「そうだ!身近にあるじゃない!」
持田 彩絵「これだけ集まれば足りるわね」
持田 陽子「彩絵、何しにて・・虫!?」
持田 彩絵「鮮やかな色を作ろうと思って!」
持田 陽子「石と虫でどうするの?」
持田 彩絵「えいっ!」
持田 彩絵「この色を配色したら望んだ色になるはず」
持田 彩絵「何で!望んだ色にならないのよ!」
持田 彩絵「このっ!このっ!このっ!」
持田 彩絵「全然違う!鮮やかじゃない!」
持田 陽子「彩絵!やめなさい!」
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こちらのお話は、ストーリーもそうですし、スチルやエフェクトやBGMなど全てに拘りを感じられて素晴らしいと思います!✨☺️
最後の一言も、どういう意味なんだろう?っていい意味でずっと考えさせられるんですよね!!凄いです!!
(なんとなくはわかるけど、これ!!って感じよりは、真相は本人の中に…みたいな感じの上手い具合のちょうど良い感じなんです!!凄い!!)
段階的に狂気に至るさまが描かれていて、とても説得力のある作品ですね。
姉の隠された黒い感情も伏線があり、最初の名言にテーマも含まれていて丁寧だと感じました。
音楽の使い方もうまくて恐怖が盛り上がりました‼
サイレンも姉の髪も、とことん色で纏めてるのが良いですね。