〈いらないモノを自動で吸う〉ロボット掃除機(脚本)
〇黒
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた呪いの品が存在します」
鑑定士「私は、そんな〈いわく〉付きの品専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、一体おいくらになるのでしょうか・・・」
〇時計台の中
光(ひかる)「鑑定して頂きたいのは、このロボット掃除機です」
光(ひかる)「別れた彼女が使っていたものでして」
鑑定士「それではお聞かせください──この品にまつわる〈いわく〉を」
光(ひかる)「彼女と付き合い始めて、しばらく経った頃でした──」
〇中規模マンション
〇マンションの共用廊下
未奈(みな)「光(ひかる)、いつも送ってくれてありがと」
光(ひかる)「彼氏なら当然だよ」
未奈(みな)「それじゃあ、おやすみ──」
光(ひかる)「──今日は、もう少し一緒に過ごさないか?」
未奈(みな)「えっ! でも、付き合って一カ月しか経ってないし・・・」
光(ひかる)「一カ月『も』経ってるじゃないか」
未奈(みな)「・・・もう、仕方ないな」
未奈(みな)「少し散らかってるけど、平気?」
光(ひかる)「そんなの気にしな──」
〇散らかった部屋
未奈(みな)「わ、私が先にシャワーを浴びたらいいかな?」
光(ひかる)「──ごめん、帰るわ」
未奈(みな)「急にどうしたの!?」
光(ひかる)「これは・・・散らかってるなんてレベルを超えてるだろ」
光(ひかる)「寝る場所もないじゃないか」
未奈(みな)「大丈夫! ベッドの上は綺麗だよ?」
光(ひかる)「いやいや! ホコリが舞ってるって!」
〇中規模マンション
〇マンションの共用廊下
未奈(みな)「今日も送ってくれてありがと」
光(ひかる)「大したことじゃない。それじゃあ──」
未奈(みな)「光! ちょっと上がっていかない?」
光(ひかる)「き、気持ちは嬉しいけど、また今度で」
未奈(みな)「お部屋、綺麗になったんだよ」
光(ひかる)「・・・本当か?」
未奈(みな)「秘密兵器を使ったからね」
〇散らかった部屋
未奈(みな)「じゃーん、ロボット掃除機!」
未奈(みな)「この子、とっても賢いんだよ」
未奈(みな)「自動でゴミを吸い込んで、床をピカピカに──」
光(ひかる)「未奈(みな)・・・床だけ綺麗にしてもダメだろ」
光(ひかる)「そこのゴミ袋、前もあったよな?」
光(ひかる)「服も脱ぎっぱなしだし・・・せめて洗濯カゴに入れようぜ」
未奈(みな)「ごめんなさい・・・頑張ったつもりなんだけど」
光(ひかる)「しっかりした女の子だと思ったから、付き合い始めたんだけどな」
光(ひかる)「ここまでだらしないと、付き合っていくのは難しい──」
未奈(みな)「ま、待って!」
未奈(みな)「次こそ、綺麗にしておくから!」
光(ひかる)「その言葉、ちゃんと現実にしてくれよ」
未奈(みな)「もっと・・・綺麗にしなきゃ・・・」
未奈(みな)「私、光に捨てられちゃう・・・!」
光(ひかる)「今、掃除機が光ったような・・・?」
〇中規模マンション
〇普通の部屋
未奈(みな)「どう? これなら光もくつろげるよね」
光(ひかる)「・・・ハウスクリーニングを頼んだのか?」
未奈(みな)「違うよ。この子が、とっても頑張ってくれたの」
未奈(みな)「私が捨てられなかったモノを、自動で吸い込んでくれたんだ」
光(ひかる)「あのでかいゴミ袋も、そいつが吸い込んだっていうのか?」
光(ひかる)「未奈は嘘つきだな」
未奈(みな)「あー信じてない! 本当なの──」
未奈「ちょっ・・・光、待っ・・・!」
〇オフィスのフロア
後輩「先輩、今日は上がりですか?」
後輩「それなら、この後──」
光(ひかる)「悪い、先約があるんだ」
後輩「先輩、待っ──」
〇普通の部屋
未奈(みな)「今日も来てくれるなんて・・・私、幸せ」
光(ひかる)「俺は、綺麗なモノが好きだからな」
未奈(みな)「それって、お部屋のこと?」
未奈(みな)「それとも──」
光(ひかる)「決まってるだろ」
光(ひかる)「──両方だ」
〇中規模マンション
〇中規模マンション
〇中規模マンション
〇普通の部屋
光(ひかる)「高そうなお菓子だな」
未奈(みな)「引出物でもらったの」
未奈(みな)「この前、友達の結婚式に呼ばれてね」
未奈(みな)「周りがどんどん結婚しちゃって、何だか焦っちゃう」
光(ひかる)「タイミングは人それぞれ。他人と比べるものじゃないさ」
光(ひかる)「そんなことより、一緒に食べようぜ」
未奈(みな)「でも、私たちも付き合って1年以上経つし、そろそろ──」
光(ひかる)「俺は、今のままでも幸せだよ」
光(ひかる)「未奈は違うのか?」
未奈(みな)「私も幸せだけど、それと結婚は別──」
光(ひかる)「それなら何の問題もないじゃないか」
光(ひかる)「この話は、終わりにしようぜ」
未奈(みな)「・・・まだ足りなかったんだ」
未奈(みな)「もっと・・・もっと綺麗にしなきゃ!」
〇普通の部屋
光(ひかる)「今日は、こいつで1杯やろうぜ」
未奈(みな)「わぁ、白ワイン! 今晩はお魚にしよっか」
光(ひかる)「じゃあ、料理ができるまで冷やして──」
光(ひかる)「あれ? ここにあった冷蔵庫は?」
未奈(みな)「吸い込んじゃったよ」
光(ひかる)「吸い込む・・・?」
未奈(みな)「うん、この子がね」
光(ひかる)「本当に未奈は嘘つきだな」
光(ひかる)「掃除機が、あんな大きなモノを吸い込めるわけない──」
未奈(みな)「この子って、とっても賢いの」
未奈(みな)「古い食材があったのに気づいて、冷蔵庫ごと消してくれたんだ」
光(ひかる)「何を・・・言ってるんだ?」
未奈(みな)「うふふ。私、買い出しに行ってくるね」
〇普通の部屋
未奈(みな)「光、シャツにお醤油が・・・!」
光(ひかる)「げ・・・お気に入りのヤツなのに」
光(ひかる)「すぐに洗濯してくれないか?」
未奈(みな)「ごめんね、洗濯機はないの」
光(ひかる)「おいおい、また嘘をつく気か?」
〇白いバスルーム
光(ひかる)「──ここにあったはずなのに」
未奈(みな)「この前、吸い込んでもらったの」
光(ひかる)「・・・洗濯はどうしてるんだ?」
未奈(みな)「洗濯なんてしないもん」
未奈(みな)「一度着た服を家に置いておくなんて、汚いでしょ?」
未奈(みな)「毎回新しいのを買ってるんだ」
〇黒
未奈(みな)「ほら見て、光」
未奈(みな)「あれも、これも──この子に吸い込んでもらったの」
未奈(みな)「これでもうすぐ──」
私と結婚できるね
〇オフィスのフロア
未奈:
今日も家に来れないの?
光:
無理だな。最近仕事が忙しくて
後輩「先輩、早く早く」
光(ひかる)「ああ、今行く」
〇オフィスビル前の道
後輩「今日は、どこに連れていってくれるんですか?」
光(ひかる)「ワインの美味しいお店を見つけてね」
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マシンさんこんばんは!やっと読みに来れました🙌今まで爽やかな恋愛や作り込んだかっこいいバトル物のイメージの有ったマシンさんですが、ホラーに振り切っていて最高でした!
立ち絵、ボイス、一つ一つのこだわりが伝わってきます。特に好きなのは光の最後の言葉。いや〜な余韻が後に残って好きでした😂あとみなにとって眩しい存在で光なのかな?て考察してみました✨🤔考えるの楽しいです!
こちらはホラーど真ん中のお話で、凄いです!!
読後感もあぁーっ!!!!!となりながら、いわく鑑定士の中のどストレートだと感じています、、、!!!!!
最後のフラれて狂ってしまったような笑いはぞくっとしますよね、、、
あと、最後の「なんで俺を…」のセリフもとても考えさせられて良い意味で尾を引きます!!
公開おめでとうございます
背景により説得力が増し、何もない部屋にゾッとしますね
YouTube版の視聴時間が10分台で、シーン数が多いイメージなのに思ったよりも短い😲と「おそらくテンポが、いいからだろうなぁ」と思いました。
プロジェクトお疲れ様でした