〈すべてから瘉やされる〉ヒーリングミュージック(脚本)
〇時計台の中
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた 呪いの品が存在します」
鑑定士「私はそんな 〈いわく〉付きの品専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、 一体おいくらになるのでしょうか・・・」
鑑定士「・・・」
ハルキ「あっ!す、すいません!」
ハルキ「これ、恋人が聴いていたものなんですが」
鑑定士「ヒーリングミュージックのCD・・・」
鑑定士「それでは〈いわく〉をお話しください」
〇オフィスのフロア
サヤカ(お局様)「川崎さん!」
サヤカ(お局様)「また発注ミス・・・どういうことなの!?」
ヒトミ「す、すいません・・・」
サヤカ(お局様)「入社してもう半年よ、 こんなことでどうするの!」
ヒトミ「すいません・・・すいません・・・」
〇アーケード商店街
ヒトミ「・・・はぁ」
店主「さぁ、今だけ! お得なCDのワゴンセールやってるよ!」
ヒトミ「ヒーリング・・・ミュージック・・・」
〇レトロ喫茶
ハルキ「・・・で、買っちゃったってわけ?」
ヒトミ「うん」
ヒトミ「今の私には、癒やしが必要なの!」
ハルキ「・・・オレじゃダメか?」
ヒトミ「あ! いや、そうじゃないけど! もっとこう・・・直接的な・・・」
ハルキ「ふふ、冗談、冗談」
ヒトミ「もう・・・」
〇本棚のある部屋
翌朝、ヒトミから電話がありました
「もうすっごいの! あのCD!」
「聴いた瞬間、カラダがふわふわ 宙に浮いたみたいになって・・・」
「気づいたら朝まで爆睡!」
ハルキ「・・・それで電話してきたの?」
「うん! 気分よすぎちゃって!」
「これなら仕事も頑張れそう!」
ハルキ「そう、ならよかったけど ・・・ごめん、もう家出なきゃ」
〇レトロ喫茶
ところが・・・
ヒトミ「ごめん! お待たせ!」
ハルキ「仕事、忙しいみたいだね・・・大丈夫?」
ヒトミ「うん・・・またお局様に 押しつけられちゃって・・・」
ヒトミ「今週中に決算の資料まとめろって」
ヒトミ「おかげで残業続き・・・」
ハルキ「そりゃ大変だ・・・疲れてるでしょ? 今日はデート中止にしようか?」
ヒトミ「ううん、大丈夫!」
ヒトミ「私にはこれがあるもん!」
ハルキ「・・・それか」
ヒトミ「実はCDからスマホに 曲をダウンロードして、 仕事帰りに聴いてるんだ〜」
ヒトミ「そしたら、すっごく癒やされて ストレスなんて吹き飛んじゃうの!」
ハルキ「そ、そう・・・」
ヒトミ「こうやって、イヤホン繋いでね・・・」
ヒトミ「・・・」
ハルキ「・・・」
〇黒
1 分 後
〇レトロ喫茶
ヒトミ「・・・」
ハルキ「ちょ、ちょっと! ヒトミ!」
ヒトミ「あ!」
ヒトミ「ごめん、つい癒やされちゃって・・・」
ハルキ「デート中に彼氏を置いて 遠い世界に行かないでくれよな」
ヒトミ「ごめんごめん」
ハルキ「ん?」
ハルキ「よく考えたら、スマホに曲入れてるのに なんでCD持ってきてるの?」
ヒトミ「ふふふ・・・ ハルくんにも貸してあげようかと思って」
ハルキ「・・・オレはいいよ」
ハルキ「だってさ、ヒトミといる時間が・・・」
ハルキ「オレの一番の癒やしだから!」
ハルキ「今のどうだった? ヒト──」
ヒトミ「・・・」
ハルキ「おい! なんでまた ヒーリングミュージック聴いてんだよ!」
ヒトミ「ごめん・・・この曲クセになるのよ」
ハルキ「・・・今、このCD光った?」
ヒトミ「そう? お店の照明にでも 反射したんじゃない?」
ハルキ「そうかなぁ・・・」
〇オフィスのフロア
そして、金曜日・・・
ハルキ(電話・・・ヒトミ・・・?)
ハルキ「もしもし?」
「ハルくん・・・私、もうダメかも・・・」
ハルキ「ど、どうしたの!?」
「しご・・・のに・・・」
ハルキ「音楽がうるさくて聴こえないよ・・・ もう少し大きな声で喋って」
「仕事、残業して頑張ったのに・・・ 全部お局様の手柄にされちゃった」
ハルキ「えっ!?」
「私、すっごいショックで・・・」
「さっき帰りの電車で ヒーリングミュージック聴いて 癒やされてたら──」
〇電車の中
ヒトミ「・・・」
乗客「・・・おい、ネェちゃん」
ヒトミ「・・・」
乗客「音楽止めろよ! イヤホンからダダ漏れだぞ!」
ヒトミ「え!? あ!?」
乗客「でっけー音でよぉ・・・ みんな迷惑してんぞ!」
ヒトミ「す、すす、すいませーん!」
〇オフィスのフロア
「ますますストレス溜まっちゃって・・・」
「さっき家に帰って、スピーカーで ヒーリングミュージック聴いて」
「ちょっと落ち着いてきたとこなの・・・」
ハルキ「いや、ヒトミ、 ショックなのはわかるけどさ」
ハルキ「音量、ちょっと大きすぎじゃな──」
「・・・誰だろ?」
「あのー、隣の者ですけど、 その音楽止めてくださいよ!」
「マンション中に響き渡ってるんですよ!」
「す、すす、すいませーん!」
ハルキ「・・・すいません、上がります!」
〇駅前ロータリー(駅名無し)
ハルキ「・・・ダメだ、出ない」
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聴くだけで癒される音楽ってありますよね。
音量も爆音でないと満足できなくなり他の事にも気付けなくなるとは恐ろしい😱
いわくついているCDは一つだけと思いきや今聴いているCDも、もしかしてと思わせる展開が不穏でいいですねー
ヒーリングミュージック…何事もはまり過ぎたり依存し過ぎてしまうと…と言うお話で怖いながらも面白かったです!!✨☺️
最後のハルもいわくに囚われている感じがますます不穏であとを引いて良かったです✨👍