第48話 Xヒーローの対(脚本)
〇ホストクラブのVIPルーム
2021年 イリノイ州 デュページ郡 ネイパービル 氷壁に覆われた街 ナイトクラブ内 ボス専用ルーム
鬼月冷羅「『名残り雪は斎王一派に協力をしない』」
斎王は冷羅の思わぬ一言に、立ち上がりながら驚く様子を見せる
斎王幽羅「ど、どういう事!?協力しないって··· ··· ···!?」
鬼月冷羅「正確に言えば『条件を満たした時に協力する』ということになる」
斎王幽羅「その条件ってのは···何?」
鬼月冷羅「『フィンガーズが統率する組織の問題を解決し、信用を得ろ』」
斎王幽羅「それってコンキスタドール建設とか、ロックフォード商業組合とかって事···?でも俺達3組織しか知らないんだけど···」
鬼月冷羅「既に3組織知っているなら充分だ。恐らく知らないのはシャルルとライオネルの組織だろ?」
鬼月冷羅「シャルルとライオネルの組織は名残り雪の『暗部』でな、信用を得れば名前くらい教えて貰えるだろ」
斎王幽羅「わかった···でもひとついい?冷羅さん」
斎王幽羅「『なんで俺たちが組織の問題を解決しなきゃいけないの?』冷羅さんが指示すれば改善できそうなものだけど···」
鬼月冷羅「確かにそうかもな···だが表面上は良くなっても奥底、それこそ『深部』までは変わらない」
鬼月冷羅「組織ってのは大きさに比例して『秘密』も大きくなるもんだ、お前もいずれ理解できるようになる」
斎王幽羅「各組織の『秘密』を見つけ、問題があるなら解決するって事?本当にあると思う···?」
鬼月冷羅「なら1つ聞いた話を教える。コンキスタドール建設についてだ」
鬼月冷羅「あいつら聞いた話じゃ人員を『攫ってる』そうだ。エル・シッドに確認はとったが否定された」
鬼月冷羅「しかしだ···コンキスタドール建設はインフラ管理を任せているが、作業がキツいのかトぶ(連絡なしで退職)やつが多い」
鬼月冷羅「だがその減った人員を毎回どこからか『増やしてる』んだよ。お前はどう思う?」
斎王幽羅「確かに変だね···街の人たちではないの?」
鬼月冷羅「それはない。俺がよく来る場所だから、俺にいい待遇にして欲しいって奴が大勢いる」
鬼月冷羅「おかげで各組織に率先して入って、認めてもらおうって気で働く奴が多い。日本語を話せるのもそれが理由だ」
斎王幽羅「え···日本語話すのって···『指示』してないの?」
鬼月冷羅「俺が指示したのは『母国語と英語』のみだ。日本語で話せなんて命令は出しちゃいない」
鬼月冷羅「まぁフィンガーズは流石に覚えさせたが、それ以外の下っ端共は俺に気に入られる為に勝手に『覚えた』までだ」
斎王幽羅「そうなんだ···じゃあ今言った感じで他の組織にもそういう噂って聞いてるってこと?」
鬼月冷羅「あぁ。組織内にいる俺じゃ確かめようがない、だからお前達に探ってもらって、それを解決して欲しい」
斎王幽羅「わかった···じゃあ俺からもお願いしたいんだけど」
斎王幽羅「『WoOS』の事で何か分かったら俺に教えて。アメリカにきた目的の1つでもあるし」
鬼月冷羅「わかった。じゃあ今日はもういい、明日からどれかの組織に入れ。俺からは事前に言っておく」
斎王幽羅「わかった、ひとまず皆を連れてホテルに戻るね」
斎王はそう言って立ち上がり、歩を進めようとした時振り返り、冷羅に問いかける
斎王幽羅「そういえば···父さんの『ロケットペンダント』って···どこにあるの?」
鬼月冷羅「『鬼月家の本家』だ。管理は任せているが、必要なら取り寄せる」
斎王幽羅「お願い出来る?父さんが俺に残してくれた形見のひとつだからさ···」
冷羅はそれに了承し、斎王は部屋を後にする。VIPルームにいた仲間達に帰るよう伝えようとしたがそこにあった光景は···
〇ナイトクラブ
ナイトクラブ内 VIPルーム
鸞「全くだらしないな2人共···おい、起きろ。まだ飲むぞー!」
キング「だから言ったろじいさん、鸞に『飲ませるな』って。こいつ酒弱えェくせに『絡んでくる』んだよ···」
エンチャント魔導法士「まさか水割りでダウンするとは思わんかった···鸞、一旦水を飲まんか?な?」
鸞「水だ~?そう言って本当は酒なんだろ~?オラっ、飲め!」
エンチャント魔導法士「お、おい!何勝手にワインに変えてる!?あ、コラッ!無理やり飲ませようとするな!」
斎王幽羅「嘘でしょ···鸞に酒飲ませたの?あんなに弱いのに···」
キング「じいさんと凪園が水割り飲ませたんだよ···言っとくが俺は止めたからな?」
鸞「ん、斎王ー!あれ飲んでくれ、あれ!」
鸞はふらつきながら斎王に抱きつき、席にあるカクテルを指さす。斎王は「はいはい」と鸞の頭を撫でながら
カクテルをグイッと一口で飲み干し、テーブルに置き「早く帰るよ」と皆に伝える
エンチャント魔導法士「マティーニを一気飲み···?どんな肝臓してんだ斎王は···」
キング「あいつの酒耐性異常だからなー···あいつと飲み比べで勝ったことねぇし」
キング「嘘だと思うなら聞いてみるか?斎王、今どうだ?酔ってるか?」
斎王幽羅「いや、全然平気。フェードと凪園はどこいるの···?」
キング「フェードは今トイレだ。見た感じ酔ってるようには見えなかったから大丈夫だろ、凪園は···あれだ」
キングが指を指すとそこにはライオネルに抱きつかれ、ずっと『カワイイ』と言われながら撫でられてる凪園が居た
斎王幽羅「うわぁ··· ··· ···凪園の顔虚無ってるよ···」
凪園無頼「斎王~···助けてよー、こいつずっと離してくんねーんだけどー!」
ライオネル・トンプソン「んふふ···カワイイね、カワイイね~···よしよし···」
ライオネル・トンプソン「『ワールドインパクト』来る?凪園くんなら歓迎するよー?」
斎王幽羅「ワールドインパクト···?それがライオネルさんの組織なんですか?」
ライオネル・トンプソン「そう、暗殺組織ワールドインパクト。それが私が統率してる組織の名前よ~」
凪園に抱きつき、頭を撫でながらライオネルはそう説明した。だが、ここでエンチャントは血相を変えて立ち上がり
ふらつきながらライオネルに近づき、魔法陣を向け話始める
エンチャント魔導法士「思い出したぞ···お前『魔弾のライオネル』だな?三代目の時代Xヒーローには200人規模の人間がいたが」
エンチャント魔導法士「若い頃3つの『闇ギルド』が幅をきかせていて、ワシら下っ端はダークタワーとフェンリルという闇ギルドを殲滅を任された」
エンチャント魔導法士「強盗や武器の横流し、クスリの密造、売買などチンケなことしかやってない闇ギルドだったから大して苦労はしなかった」
エンチャント魔導法士「だが『ワールドインパクト』だけは別格だった。当時一人一人が一騎当千の力を持っていたXヒーローのメンバーを」
エンチャント魔導法士「たった『12人』で制圧している。ワシも若いながら手も足もでなかったわ」
エンチャント魔導法士「結局、ワールドインパクトは喧嘩王、死神、剣神、キックマスター、氷の踊り子、切断の西條の主要メンバー6人に」
エンチャント魔導法士「壊滅に追い込まれたと聞いている。その際、喧嘩王の慈悲で全員見逃されたが···」
エンチャント魔導法士「喧嘩王の病死をしったギルドマスターが何を思ったか『自殺』。サブマスターも後を追うように自殺」
エンチャント魔導法士「残った10人のメンバーは散り散りになって4代目Xヒーローの時代に行った『第二次闇祓い作戦』で」
エンチャント魔導法士「全員捕まったはず。そんな本来なら牢にいるはずのお前が···なぜここに?」
ライオネル・トンプソン「あーあ、思い出しちゃったか···それでどうするの?私を捕まえる?『下っ端のジョン・ドゥ』」
エンチャント魔導法士「昔と同じと思うな?貴様の『魔弾』なぞ、いくらでも防げる」
エンチャント魔導法士「それに他の仲間もいるんだろ?『巨兵グレゴリー』や『大図書館リスト』、そしてお前と一緒に行動していた」
エンチャント魔導法士「『腐食姫 刑部』だったか?いいぞ呼んできても。いくらでも待ってやるわ」
ライオネルとエンチャントが一触即発の雰囲気となる中、当たりが急に寒くなる
下をみるとドライアイスのような『氷の霧』が充満し始め、顔を上げると冷羅がそこにおり、事情を説明し始める
鬼月冷羅「銃をしまえライオネル、あんたも魔法陣を消せ。今から事情は説明する」
ライオネルとエンチャントは冷羅の言われた通りにし、斎王はエンチャントと共にライオネルの対面に座る
凪園は解放され、斎王の指示で鸞の様子を見ることに。そうこうしている内に冷羅から話が始まる
鬼月冷羅「なぜライオネルがここにいるか。だったな···まぁきっかけは『頼と勇次郎』だ」
鬼月冷羅「あんたも知ってるだろ?頼と勇次郎はカナダとエジプトを拠点にして互いを潰せるように現地で仲間を集めていた」
鬼月冷羅「マリアもその1人だ、メキシコから逃げてきたのを頼がアメリカで助けてやったらしい」
鬼月冷羅「俺はグレーデイのようなことが起こると予見して、二人を止められるように私兵団を編成しようとした」
エンチャント魔導法士「だが戦力になり得る能力者達は勇次郎と頼が連れていった。もしくは非協力的だった、だから闇ギルドの人間を仲間に?」
鬼月冷羅「闇ギルドだけじゃねえ、社会的弱者や元犯罪者にも声をかけた。勿論誰でも誘ったわけじゃない」
鬼月冷羅「対話と戦闘を通じてライオネルのような『信念』を持った者のみを引き入れた。それがワールドインパクト残党では」
鬼月冷羅「ライオネルのみって事になる。グレゴリーやリストが居ないのはそれが理由だ」
エンチャント魔導法士「理由はわかった。確かにグレゴリーやリスト達と違ってライオネルは『異常思想による殺人』を行わなかった」
エンチャント魔導法士「だが忘れていないか?こいつはワールドインパクトの『全てを破壊し零に戻す』」
エンチャント魔導法士「その思想に賛同して集まったんだぞ?お前はそれをわかってるのか···?」
鬼月冷羅「知っている。だがそれがどうした?昔はそうだったかもしれんが、あんたは『今』のライオネルを知っているのか?」
鬼月冷羅「それに殺しの過去があるのはあんたもだろ?エンチャント」
エンチャント魔導法士「お前、どこでそれを···!」
鬼月冷羅「幽羅がそんなアンタを信用し仲間に引き入れたように、俺はライオネルの引き入れた。それだけの話だ」
鬼月冷羅「今日はもう帰れ。幽羅に伝えた事もあるからそれをホテルで仲間と共に聞いておくんだな」
エンチャント魔導法士「おい、冷羅!まだ話は終わってないぞ!」
鬼月冷羅「俺からはこれ以上話すことは出来ない。知りたい事があれば『信用を得ろ』」
鬼月冷羅「ゲライント、いつまでも飲んでるんじゃない。エル・シッド、シャルルさっさと起きろ。マリア、壁に喋ってないで次の準備をしろ」
冷羅はフィンガーズを連れ、ナイトクラブを後にする。エンチャントはそんな様子を見ながら
言葉にできない『不安感』を胸の内に抱えるのであった
To Be Continued··· ··· ···