最終話『新たなる旅立ち!さらば、オタクたち!また会う日まで!』(脚本)
〇森の中の小屋
私は辺境の地で生まれた
周りに自分の家以外はなく
自然の中で暮らし、両親に育てられた
面白くて頼り甲斐のある父親
優しく料理が上手かった母親
決して裕福ではなかったが
両親のお陰で幸せだった
〇西洋風の部屋
しかし、不幸は突然やってきた
両親が謎の病にかかってしまったのだ
私は薬を買いに町へ急いだ
〇ヨーロッパの街並み
魔女「すみません! 熱に効く薬を売ってください!」
商人「嬢ちゃん、金はあるのか?」
魔女「え、えっと」
魔女「これしかありません」
商人「それじゃ、売れないな」
商人「さっさと失せな」
魔女「どうか、売ってください 足りない分は後で必ず持ってきます」
商人「しつけーぞ!」
そのときの私に痛みを
感じている余裕はなかった
一刻でも早く
両親のために薬を持って帰りたかった
〇西洋の市場
魔女「薬を売ってください!」
魔女「誰か私のお母さんとお父さんを 診察してください!」
どれだけの医者や薬屋を回っただろうか
誰も私の相手をしてくれなかった
町人「小汚い小娘!」
魔女「なんで?」
町人「小汚い貧乏な田舎者は去れ!」
魔女「ただ、私は薬を売って欲しいだけなのに」
町人B「そうだ、さっさと失せろ」
魔女「私、何か悪いことしたかな?」
魔女「どうして、こんなことが出来るの?」
それから、私はしばらくの間
町の連中から暴行を受けた
〇森の中の小屋
そして、ボロボロの体を引きずって
帰る頃には翌日の夜になっていた
〇西洋風の部屋
帰った家は静まり返っていた
魔女「お父さん、お母さん、ごめんなさい」
魔女「薬買えなかった」
魔女「お父さん?」
魔女「お母さん?」
「・・・・・・」
両親は事切れていた
子供の頃の私はそれを
なかなか理解出来なかった
両親の死を理解した時
私にある感情が芽生えていた
それは憎しみだった
優しい両親に育てられた私にとって
無縁の感情だった
〇森の中の小屋
それから私は身を粉にして魔術を学んだ
魔術を学ぶうちに
私は人間らしさと引き換えに
魔力を増幅する仮面を手に入れ
過去の自分を捨てた
そして、私は本当の名前を捨て
魔女と名乗るようになった
魔女「復讐だ」
〇ヨーロッパの街並み
町人B「命だけは助けてくれ!」
商人「頼む! 金ならいくらでもやる!」
魔女「金で命は買えないんだ」
魔女「クズ共が」
「ぎゃあーーー」
魔女「ハハハハ」
〇西洋の市場
魔女「この町の生き残りもお前で最後だ」
町人「なぜ、こんなことをする!」
魔女「はああ」
魔女「自分の罪すら忘れたか?」
町人「罪? 俺は生まれてから一度も 悪事を働いたことはないぞ?」
魔女「なら、あの世で思い返すんだな」
町人「ぎゃあああ」
魔女「これで終わった」
魔女「だが、これからだ」
魔女「この世界の人間全て同罪だ」
魔女「混乱に陥れてやろう」
〇魔界
エスティーナ「そんな過去があったの」
ユーリ「苦しい人生を歩んできたんだな」
魔女「さあ、殺せ」
魔女「こんな世界に生きてても仕方ない」
魔女「結局私もあの時の町の人間と一緒だ」
ユーリ「いや、お前は拘束する」
ユーリ「そして、これまでやってきた悪事を 吐いてもらう」
魔女「どこまで愚かなのだ 私のような悪を生かすなんてな」
魔女「ならば、自ら命を絶ってやろうか」
エスティーナ「ちょっと待ちなさい!」
ユーリ「やめろ!」
魔女「ハハハハ」
山田「待ってください」
魔女「なんだ、お前は」
山田「これを読んでください」
魔女「これは?」
山田「マンガです」
魔女「こんなときに読めだと?」
佐々木「そうです、あなたは負けたんです」
佐々木「敗者は勝者の命令を聞くものです」
魔女「確かにな」
魔女「分かった、読んでやろう 死ぬのはそれでも遅くない」
魔女「・・・・・・」
魔女「良い」
魔女「これはいい!」
魔女「友情か、男女、男同士、女同士 そんなものは関係ない」
魔女「そこにあるのは純粋な人間同士の友情」
佐々木「そうです」
村田「僕たちはあなたのお陰で この作品を作ることができました」
村田「理由はどうあれ ここにいる人間達はあなたのおかげで 友情を育んだんです」
いのうえ「あっちの世界で鼻つまみ者だった 俺たちも一歩道を間違えてたら あなたと同じことをしてたかもしれない」
北川「そういうこと」
北川「あんたのやったことは 許されないかもしれない」
北川「でも、これでこれ以上最悪の方向には 進まないはずでしょ」
伊藤 「そうです」
伊藤 「だから、これ以上、死ぬとか 言わないでください」
魔女「あの頃、私の前に お前達のような人間が1人でもいてくれたら」
魔女「両親が亡くなったとしても 私は人を恨んだりしなかっただろう」
〇ヨーロッパの街並み
魔女「薬を売ってください!」
石井「もちろん」
魔女「でも、お金これだけしか持ってないんです」
石井「そんなもの出世払いかお金があるときに 持ってきてくれればいいよ」
伊藤 「足りない分は私が出してあげます」
魔女「ありがとうございます!」
〇西洋風の部屋
魔女の父「お前のおかげで お父さんもお母さんも すっかり元気になったぞ」
魔女の母「ありがとうね」
魔女「あのね、みんな優しかったの」
魔女の母「良かったわね」
魔女の父「お前もそんな優しい人間になるんだぞ」
〇魔界
「私のお父さんとお母さんは 復讐を望むような人じゃなかった」
「きっと私には優しい人間で いてほしかったはず」
「本当なら私のような不幸な人間を 増やさないために魔術を 人のために使うべきだったんだ」
ユーリ「仮面が取れた?」
魔女「ありがとう」
魔女「これが私の本当の姿」
魔女「あなた達のお陰で やっと過去の呪縛から抜け出すことが出来た」
シャルティア「良かった」
魔女「仮面を外すと空気が美味しいわ」
魔女「さあ、これから私は自分の罪と向き合うわ」
魔女「だから、拘束でも何でもして」
ユーリ「分かった」
魔女「ありがとう」
〇闇の要塞
ユーリ「さあ、お前達、帰るぞ」
「はい!」
ユーリ「帰ったら即売会だ」
伊藤 「間に合いそうで、本当に良かった」
上杉「みんなのおかげよ」
ユーリ「では、出発!」
〇コミケの展示スペース
上杉「新刊はこちらになりまーす!」
お客A「一部ください!」
上杉「どうぞ」
お客A「ありがとう」
お客B「2部ください!」
上杉「はーい!」
お客B「これが噂の男の娘本か! 読むのが楽しみ!」
上杉「これが本当に異世界なのか・・・・・・」
上杉「日本と何にも変わらないじゃない」
伊藤 「上杉さん、大好評じゃないですか」
上杉「そんなことないわよ」
伊藤 「でも、良かった」
上杉「何が?」
伊藤 「こうして村に戻ってきてくれたからです」
上杉「当たり前じゃない」
上杉「私、この村大好きよ」
〇地下室
岩本「みんな、覚悟は決めたかい?」
北川「はい、もちろん」
石井「決断しました」
いのうえ「ちょっと寂しくなりますけどね」
佐々木「僕らも上杉さんや伊藤さんみたいに 前に進まないとダメなんだ」
村田「みんな、きっと驚きますね」
山田「じゃあ、ユーリさん達の元に行きましょう」
〇市場
ユーリ「ようやく落ち着いたのに どうして俺は女装したままなんだ?」
シャルティア「そりゃあ、イトーちゃんのため」
シャルティア「あとはみんなのモチベーション維持のため」
ユーリ「しばらく、このままってことか」
「ユーリさん」
ユーリ「ん?」
ユーリ「どうした? 岩本」
岩本「実はユーリさんと上杉さんに お願いがあってきました」
シャルティア「お願いって何だろ?」
〇華やかな広場
「・・・・・・」
上杉「本当にいいのね?」
岩本「はい」
岩本「上杉さんなら 僕たちを元の世界に戻せるんですよね?」
上杉「そうだけど」
ユーリ「本気なんだな」
岩本「はい」
岩本「この世界に来てから 僕たちは多くのことを学びました」
北川「だから、そろそろ元の世界に戻って 人生にもう一度挑戦してみようと思うんです」
いのうえ「ある意味、それが俺たちの求めた 異世界チートだと思うんです」
ユーリ「そこまで決断したなら 止めることはしない」
上杉「ええ」
シャルティア「寂しくなるね」
上杉「やり残したことはない?」
佐々木「マンガの手引書は書きました」
佐々木「この世界でマンガは残ります」
上杉「そう」
上杉「私はこの世界に残るから その辺は任せて」
佐々木「はい」
上杉「じゃあ、もっと広い場所に移動しましょう」
〇美しい草原
上杉「まずは誰から行く?」
いのうえ「俺が行きます」
いのうえ「色々とお世話になりました」
ユーリ「ああ」
上杉「あっちの世界でも頑張りなさいよ」
シャルティア「頑張ってね」
いのうえ「はい!」
ユーリ「次」
北川「みなさん、本当にありがとうございました」
ユーリ「ああ」
上杉「あんまり、調子乗るんじゃないわよ」
シャルティア「元気でね」
北川「はい!」
ユーリ「次」
佐々木「短い間でしたが、本当に楽しかったです」
佐々木「ガールズバーじゃなくて コンカフェに通うことにして ちゃんと就職します」
ユーリ「ああ」
上杉「あんまり親を泣かすんじゃないわよ」
シャルティア「学校はちゃんと卒業してね」
佐々木「はい、頑張ります」
ユーリ「次」
村田「ここにいた時間本当に楽しかったです」
ユーリ「ああ」
村田「この世界にいたことを糧にして 小説を書こうと思います」
上杉「中二病も程々にしなさいよ」
シャルティア「立派な小説家になってね」
村田「はい」
ユーリ「次」
山田「ここにいる時が人生で1番楽しい時間でした」
山田「僕みたいな人間にも たくさん友達が出来ました」
山田「シャルユリ本を日本で広げたいと思います」
ユーリ「ああ」
上杉「期待してるわ」
シャルティア「キャッチボールの相手見つかるといいね」
山田「はい」
ユーリ「次」
石井「処◯厨は卒業して もっと大きな男になろうと思います」
ユーリ「ああ」
石井「あ、あの」
ユーリ「ん?」
石井「さっきから気になってたんですが 一ついいですか?」
ユーリ「なんだ?」
石井「ユーリさん、さっきから 返答が『ああ』しか言ってなくて 淡白すぎません?」
ユーリ「一人一人御託はいいから さっさと行かねえかなって思ってさ」
ユーリ「途中から飽きちったよ」
石井「こういうときって もっと感動的な言葉かけません?」
ユーリ「ん?」
石井「僕たちの思い出・・・・・・」
ユーリ「そんなことしてたら日が暮れちまうよ」
ユーリ「めんどくさいから みんな、まとめていけよ」
上杉「それもそうね うっかりしてたわ」
石井「えっ?」
石井「まだ、しゃるさ」
ユーリ「めんどくせえな」
岩本「ほんとに・・・」
ユーリ「よし終わったな」
シャルティア「最後雑すぎない?」
シャルティア「半分強制送還みたいになってたけど」
上杉「まあ、あいつららしいでしょ」
ユーリ「だな」
シャルティア「確かにね」
〇地球
さあ、帰ろう
僕らのいた世界へ
素晴らしい最終話ですね👍 物語の軸が強固で魅力的だからこそ、とにかくとことん遊び倒せる…😂 石井くん、最後の最後まで不憫……😭
このストーリーは、全国の不遇なオタクさんたちに目にしてもらいたいと心から思いました✨ 共感して感涙するか、同病相憐れむか、同族嫌悪か、どんな反応になるのか想像できませんが😱