第9話 本能寺さんと筆箱(脚本)
〇教室
玉宮守「ぐおおぉ・・・」
授業中、俺は頭を抱えていた。
苦しんでいる俺の様子を見て、本能寺はニヤニヤしながら話しかける。
本能寺令「あっれー? 玉宮くん、どうしたのー?」
本能寺令「授業中なのにノートも取らないで」
玉宮守「書きたくても書けないんだよ! 理由はお前が一番よく知ってるだろ?」
玉宮守「何だよコレ!」
休み時間中に筆箱の中身がそっくり入れ替えられ、筆記用具の代わりに得体のしれないものが詰まっていた。
玉宮守「例えばコレ!」
ペン型になっている謎の機械を取り出す。
玉宮守「よく分からないボタンがいっぱい付いてるが、何だよコレ?」
本能寺令「や、やだっ! こっち向けないでっ!?」
玉宮守「は? なんで避けようとしてるんだ?」
本能寺令「だってそれ、レーザー出るし・・・」
玉宮守「はい・・・?」
本能寺令「ホラ、医療用のレーザーあるでしょ?」
本能寺令「それがネットで安かったから買ってみたの!」
玉宮守「買ってみたの、じゃねえ!」
本能寺令「ノートはレーザーで焼いて書いてみたらどうかな!?」
玉宮守「お前が焼けろ」
本能寺令「ひょわあああああぁッ!?」
ビ――――ッ!!
ためらいなくレーザーを照射すると、本能寺は本気で逃げた。
本能寺令「いや、それ本当に危ないから! 」
本能寺令「どうしちゃったの今日の玉宮くん!? なんか怖いよ!?」
玉宮守「お前が危険なものを入れるのが悪いんだろうが!」
玉宮守「俺の筆箱は平和な筆記用具入れだったはずだ!」
玉宮守「この消しゴムっぽいものは何だ?」
本能寺令「あっ、それね。石鹸」
玉宮守「手の汚れを落としてどうすんだよ!」
スパーン!
本能寺令「いたーっ!?」
たまらず石鹸を投げると、本能寺の頭に直撃した。
本能寺は当たった場所をさすって、涙目になる。
本能寺令「キレ方おかしいよ、も~!」
本能寺令「いつもは優しいのに、今日の玉宮くん、やっぱりなんか変~!」
玉宮守「知るか!」
玉宮守「ああ、スティックのりだけは手を出さなかったのか」
本能寺令「むふ~ん」
玉宮守「おい、待て。何でニヤついてる」
玉宮守「まさかとは思うが・・・キャンディでしたとか?」
本能寺令「惜しい! 花火でした~!」
玉宮守「爆発物入れてんじゃねーッ!」
本能寺令「ふにゃあああ!?」
これも本能寺に投げつける。
暴力はポリシーに反するが、俺ももう限界だ。
玉宮守「ハァ・・・。もう、疲れた」
本能寺令「なにが?」
玉宮守「こうやって、お前と話しているのも。 遊びに付き合わされるのも」
玉宮守「なにもかもだよ」
本能寺令「お、面白くなかった?」
玉宮守「何言ってんだ? 面白い訳ないだろこんなの」
玉宮守「俺はマトモに勉強できてないし、今の授業だって何やってるか全然分からない」
玉宮守「このままじゃ、卒業するまでお前のオモチャだよ」
玉宮守「ふざけんな」
本能寺令「でも家では、しっかり勉強してるんでしょ?」
玉宮守「当たり前だろ。でもダメなんだよ。 ノートはマトモに取れてないし」
玉宮守「授業も聞けてないから、学校にいる時間がまるっきり無駄になってんだよ」
玉宮守「期末テストまで、あと1週間しかないってのに」
心底うんざりだという気持ちを込めて、俺はまた大きくため息をついた。
玉宮守「お前と遊んでるくらいなら、こうして瞑想にふけってた方がマシだって、ようやく分かった」
玉宮守「もうノート捨てるなり、筆記用具奪うなり好きにしろ」
玉宮守「マジで、疲れた」
そう言って俺は、机に突っ伏した。
ノートは取れないが、授業を聞くことは出来るだろう。
本能寺令「えっ、あ・・・」
本能寺はうろたえているようだが、無視だ。
テストが近づくにつれて焦りが強くなり、本能寺の妨害が耐え難くなってきた。
ツンツン
しかし、悪魔は懲りずに俺の脇をつっついてくる。
本能寺令「たーまみやくーん、あーそーぼー?」
玉宮守「うるせぇ」
本能寺令「ひっ」
俺はギロリとにらみつけ、いい加減にしろと目で訴える。
玉宮守(マジで何がしたいんだ、コイツ? まあ、どうでもいいが)
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