第7話 本能寺さんとノート(脚本)
〇教室
玉宮守「ヤバい。全然勉強出来てない」
授業中、俺は青い顔でボソッとつぶやいた。
玉宮守(結局、昨日は勉強なんてやらずにゲームばっか)
玉宮守(何が勉強会だ、ものの見事に本能寺の策略にハメられたって訳だ)
玉宮守(このままじゃ、マジで期末テストの勝負で負ける!)
心の中でつぶやき、小さく舌打ちする。
本能寺に負ければ最後。
俺は卒業までずーっと本能寺のオモチャとして弄ばれ続けるんだろう。
それだけはゴメンだ!
玉宮守(今日こそは、何がなんでも勉強しないと。 邪魔なんてさせねえぞ本能寺!)
本能寺令「・・・・・・」
隣の席をギロリとにらむと、本能寺はぐで~んと机に突っ伏してうなだれていた。
本能寺令「ハァ」
玉宮守(なに落ち込んでるんだコイツ? いやいや! 気にしちゃダメだ)
玉宮守(きっとアレも何かの策略で、ポーズに決まってる!)
本能寺をこのまま寝かせておいた方が勉強に専念できると判断し、俺はひたすらノートを書き進めていく。
すると、本能寺の後ろの席に座る山村(やまむら)が声をかけた。
山村「何かあったのか、本能寺?」
本能寺令「山村くん?」
玉宮守(余計なことすんな山村ァ!)
山村は温厚な人柄で親しまれている、優しき男子。
趣味は食べ歩き。
玉宮守(落ち込む本能寺を見かねて心配したのか! お前のそういう所は好きだぜ、山村!)
玉宮守(相手がこのクソ野郎じゃなかったらな!)
本能寺はめそめそしながら語りだした。
本能寺令「実はね、昨日、玉宮くんが家に遊びに来たんだよ」
山村「そうなのか、やっぱりお前ら・・・それで?」
本能寺令「歓迎したつもりだったんだけど、玉宮くんを怒らせちゃったみたいで」
本能寺令「もう二度と来ないって」
山村「!? アイツがそんなことを!?」
本能寺令「うん。嫌われちゃったのかな、私?」
玉宮守(えっ、もしかしてアレって、マジで歓迎のつもりだったのか?)
玉宮守(いや、まさかな。 俺には嫌がらせにしか思えなかったが・・・)
哀しそうに話す本能寺の声を聞いて、俺の心は少し揺れた。
しかしそれ以上に敏感に反応したのは、山村だった。
斜め後ろの席から、怒りのこもった声で俺を呼ぶ。
山村「玉宮、玉宮!」
玉宮守(な、なんか山村、怒ってない?)
山村「こっち見ろ玉宮ァ!」
玉宮守(キレてるぅ!)
本能寺の話に思いっきり同情してしまったらしい山村は、授業中にも関わらず執拗に声をかけてきた。
玉宮守(山村は大事な友人だ。 このまま無視するわけにもいかない)
玉宮守(しかし今はマジで勉強したい!)
こうなったら、ノートを取りながら山村と会話するしかない。
玉宮守(手元を見ずにノートを取る!)
玉宮守(一見不可能な行為だが、俺レベルのガリ勉ならそれが出来る!)
俺はシャコシャコと超スピードで手を動かしながら、山村の方に振り向いた。
玉宮守「どうした、山村」
シャコシャコシャコシャコ!
山村「お前がどうした玉宮、なんでこっち見ながらノート取ってんだ!?」
玉宮守「すまん。 これには止むにやまれぬ事情があるんだよ」
シャコ! シャコシャコ!!
山村「気持ち悪っ! 」
山村「やめろよ、こっちは真面目な話がしたいんだ!」
山村「本能寺さん泣いてんだぞ!?」
本能寺令「しくしく」
山村「なんで昨日は、せっかく歓迎してくれてるのに怒ったりしたんだよ?」
玉宮守「そうか。俺は嫌がらせだと思ったんだよ」
シャコ! パチッ、ピィー!
山村「要点に赤線引いてる!」
山村「いや、お前さ、オレは悲しいよ」
山村「本能寺さんが嫌がらせするわけないじゃないか」
山村「ほら、手を止めて。 きちんと話して仲直りしろよ・・・」
おいおいと男泣きを始める山村。
玉宮守(どんだけいいヤツなんだよ山村!)
授業は残す所あと5分。
俺は少し迷ったあと、ピタリとノートを書く手を止めた。
玉宮守「ごめんな、山村。 さすがに態度が悪かったな。もうしないよ」
山村「お、おお!」
玉宮守「本能寺の話も聞いた」
玉宮守「アレはもしかして、本当にお前なりの歓迎だったのか?」
本能寺令「うん。ごめんね玉宮くん。 嫌な思いさせちゃって」
玉宮守「いや、俺の方こそ悪かったな。 ちょっと言い過ぎたよ」
玉宮守「昨日の言葉は撤回する」
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