本能寺さんはクソ野郎

和久津とど

第8話 本能寺さんと育美ちゃん(脚本)

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〇教室
小柴育美「ふぅ。食後のほうじ茶はいいですね」
小柴育美「さて、残り時間は友達とお喋りを楽しみましょうか」
  私、小柴育美は昼休みのまったりとした時間を楽しんでいました。
  ダダダダダッ!
玉宮守「小柴!」
小柴育美「あ~、また来ましたね」
  必死の形相で走ってきたのは、玉宮くん。
小柴育美(もうこれで何回目の相談でしょう)
小柴育美(本当に、本能寺さんと関わると苦労が絶えませんね)
小柴育美「まあ半分自分から首を突っ込んだようなものですが」
  愚痴相手兼相談役になりつつある現状にため息を吐きながら、今日は何があったのか聞いてみます。
小柴育美「どうしたんですか、玉宮くん?」
玉宮守「目薬さそうかなって思ったら、ケースにコレ入ってたんだよ!」
玉宮守「瞬間接着剤!」
小柴育美「それはそれは。使っちゃいましたか?」
玉宮守「だったらとっくに目が潰れてるよ! 」
玉宮守「ギリギリで気づいたんだ! マジで何考えてんの本能寺のヤツ!?」
小柴育美「さすがに本能寺さんも取り返しのつかないことはしないと思います」
小柴育美「貸してください」
  よくまあ目薬ケースにピッタリサイズの接着剤を探してきたなと、感心してしまいます。
  私はそれを受け取り、手のひらに中身を一滴垂らしてみました。
玉宮守「あれ、水か?」
小柴育美「そうみたいですね」
小柴育美「人間にあるべき優しい感情が欠落していて、悪魔と言っていい本能寺さんですが、人にケガをさせるようなことはしません」
玉宮守「前半けっこうキツイこと言ってるけど、なるほど」
小柴育美「彼女の奇行は説明が難しいんですよね」
小柴育美「私も色々酷い目に遭ってきましたが、かろうじて、ギリギリ首の皮一枚でイタズラの範疇というか」
  どちらにせよ悪魔ですが、と大きく息をつくと、玉宮くんはやれやれと言うように首を振りました。
玉宮守「だから小柴は、悪魔と言いつつアイツに付き合ってやってるんだな」
小柴育美「一応、恩もありますしね」
玉宮守「恩!? あいつに!?」
小柴育美「ええ、あの時は本能寺さんに救われました。 たった1回だけですがね」
  私は、私と本能寺さんの、小学生時代のエピソードを語り始めました。

〇教室
男子小学生「とりゃー!」
男子小学生「痛え!?」
  放課後──
  掃除の時間だというのに、男子は箒を手に構えて、チャンバラごっこで遊んでいました。
小柴育美「コラー!  サボらないで、ちゃんと掃除しなさい!」
男子小学生「うるさいなあ。ちょっとぐらいいいだろ」
小柴育美「ダメ! 掃除が終わらないと帰れないんだから、みんなが迷惑するんです!」
小柴育美「それにホコリが飛び散るから、箒を振り回さないで下さい!」
男子小学生「ハイハイ、分かったよ」
小柴育美「ハイは1回!」
男子小学生「チッ! うっせえなあブス!」
小柴育美「!?」
  始まりはそんな些細なことでした。
  その時から男子は私をブス呼ばわりするようになってしまい
  注意した私への当てつけのように、だんだん掃除をサボるようになっていきました。

〇教室
小柴育美(間違ったことを言っていないのに、どうして)
  私はあまりの理不尽にショックを受け、本当につらく感じていました。
  毎日毎日、男子は当然のように私に掃除を押し付け、そそくさと帰ろうとします。
  私はもう反論する気力も失い、何も考えないようにして掃除をするようになっていました。
  周りの女子たちも、男子が掃除をしない原因となった私に、白い目を向けてきました。
  でも、ひとりだけ違うことをした女の子がいたんです。
本能寺令「よいしょっと」
小柴育美「え?」
  彼女はおもむろに、いじめのリーダー格だった男子の机を持ち上げました。
  それを窓に運んで行き・・・
  バッコオオオオン!!!
  外に投げました。
  ピィィアアアアアア!! !?
  下には、下校中だったその男子がいました。
  彼に向って机を投げつけたんですね、4階から・・・。

〇教室
玉宮守「殺す気か!?」
小柴育美「当たりはしませんでしたけどね・・・。 机はグシャグシャ」
小柴育美「その男の子はガクガク震えていまして、そこからの解決は早かったです」

〇教室
本能寺令「掃除しろ」
  ひぃっ!?
  も、戻る! 戻って掃除するから!
  本能寺さんは机を投げたあと、教室の窓から男子に向かって告げました。
  今度は当てる。
  そんな恐ろしさがにじみ出ているような、凄みのある声でした。
  男子は青ざめて、必死で走って教室に戻って来ました。
  本能寺さんが助けてくれた。
  そう気づいた私は、過激な行動に若干引きつつも、彼女に感謝しました。
小柴育美「あ、ありがとう、本能寺さん。 でも、どうして助けてくれたの?」
本能寺令「だって、なんで女子だけで掃除しなきゃなんないのかムカついてたし」

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