第6話 本能寺さんと交流会(脚本)
〇玄関の外
小柴育美「玉宮くん、どうしたんですか?」
玉宮守「ここは本能寺の家だからな。 罠がないか警戒してんだよ」
私、小柴育美は小さくため息をつく。
小柴育美(はぁ、やっぱり心証が悪い。 交流会を設けて正解でした)
小柴育美(まずお互いを知らないと何も始まりませんからね)
今日は休日。
本能寺さんの家で、勉強会を兼ねた交流会をすることになっていました。
インターホンを押すと、パタパタと足音が聞こえてきて扉が開く。
本能寺令「い、いらっしゃい! ふたりとも!」
小柴育美(あっ、ちょっと緊張してますね)
私服姿の本能寺さんは、同性の私から見ても可愛らしかった。
玉宮守「よぉ・・・」
玉宮くんは目を合わせもせず、ひたすら嫌そうな表情を浮かべるばかり。
小柴育美(外見だけが本能寺さんの取り柄なのに、全然興味がなさそうですね)
本能寺令「どうぞー」
本能寺さんに部屋へ通され、私たちの静かな戦いは幕を開けたのでした。
〇ファンシーな部屋
玉宮守「へぇ、綺麗な部屋だな」
本能寺令「でしょ~?」
本能寺さんの部屋はこざっぱりしていて、3人でゆったり過ごせる広さがありました。
小柴育美(事前に忠告しておいた通り、アレは片づけてあるようですね)
不自然に布がかかった山がありますが、玉宮くんは気にしていないようなので、良しとしましょう。
玉宮守「じゃあ、勉強するか」
そう言うと、さっさと勉強道具を出し始める玉宮くん。
余計なコミュニケーションをする気はないという意思を感じます。
しかし、ここで怯んではいけません。
ツンツン
本能寺さんをヒジでつつき、作戦を促します。
本能寺令「ソ、ソウダー!」
本能寺令「クッキー・ヤイタンダッター! トッテクルー」
玉宮守「お、おう?」
小柴育美(なんて不自然な!)
まあいいでしょう、ちゃんとクッキーを作っていてホッとしました。
なんせ作戦の要ですから。
──本能寺さんは、玉宮くんに恋してる。
そう直感した私は、事前に本能寺さんと連絡を取り合って、今日のために打ち合わせをしておきました。
小柴育美(玉宮くんとの仲をとりもつ協力をすると言ったら、本能寺さんはすぐに飛びついて来ました)
小柴育美(クズにも可愛いところがあるのですね)
少しだけ良心が痛みましたが、これも厄介払いの一環です、本能寺さんに彼氏が出来れば、少しは大人しくなるでしょう。
小柴育美(私服攻撃が全然効かなかったのは予想外でしたが、勝負はまだこれから!)
小柴育美(玉宮くん、帰るころには本能寺さんのことが気になって仕方ないはずですよ!)
本能寺令「オ、オマタセー」
本能寺さんは、いい香りの立ち上る、焼きたてのクッキーが盛られた皿を手に戻って来ました。
玉宮守「これ、本能寺が焼いたのか?」
本能寺令「う、うん。どうぞ?」
玉宮守「ああ」
小柴育美「まあ、私も頂きま・・・むっ!? こ、これは!」
私は本能寺さんを部屋の隅に連行し、玉宮くんに聞こえないよう小声で話しかけました。
小柴育美「本能寺さん、まさかコレ、市販のものでは!?」
本能寺令「そうだけど? ちゃんと焼いたよ?」
小柴育美「いやいや! 焼いたのではなくて電子レンジでチンしたって言うんですよソレ!」
小柴育美「しかもこのクッキー、どう見ても特売品じゃないですか!」
本能寺令「だってクッキーなんて作ったことないし、市販の方がおいしいもん」
小柴育美「手作りが大事なんです! こんなので男心掴めたら苦労しませんて!」
本能寺令「ちゃんと言う通りにしたでしょ! こっちの所為にしないでよ!?」
ビシバシビシバシ!!
キーキー言いながら、私たちは密かに平手で叩き合いました。
おーい、勉強しないなら帰るぞ、俺
小柴育美「それは困ります! 勉強、始めましょう!」
建前をすっかり忘れていました。
いそいそと部屋に戻って教科書を開き、勉強会を始めます。
サクサク──
小柴育美「あれ? 玉宮くん、意外にクッキー食べてる?」
本能寺令「どう? おいしい?」
玉宮守「ああ、美味いな」
本能寺令「!? 」
本能寺令「玉宮くんが私の焼いたクッキー、ホメてくれた!」
本能寺令「なんか、すごい嬉しい!」
小柴育美(チンしただけですけどね)
私はちょっとだけ胸を張りつつ、本能寺さんにこっそり話しかけました。
小柴育美「まあこんな物でも、真心込めた誠意は伝わるものです」
小柴育美「彼と仲良くなりたいなら、こうしてゆっくり関係を育むべきでしょう」
本能寺令「一生付いてきます! 師匠っ!」
本能寺さんはキラキラと尊敬の眼差しを私に向ける。
本能寺令「それじゃあ、次はどうすれば!?」
小柴育美「うっ。そうですね」
小柴育美「ちょっとした親切を重ねたり、毎日コツコツ話しかけたり、とか?」
本能寺令「え、なんか微妙・・・」
小柴育美「仕方ないでしょう!? 私も恋愛経験ないんですから!」
小柴育美「普通に仲良くなる方法しか・・・」
本能寺令「あ~、つかえな・・・もう弟子やめまーす」
小柴育美「んなぁっ!? なんですその態度は!?」
本能寺令「でも確かに、ちっちゃくて小学生みたいな育美ちゃんがモテるワケないよねー?」
本能寺令「ゴメーン、気が付かなくって!」
小柴育美「このアマーッ!」
バシバシバシ!!
感情を煽られ、思わず本能寺さんを叩いてしまった私。
本能寺令「なっ、なにすんのよ!?」
暴力反対、と言いつつ、本能寺さんも反撃してきます。
玉宮くんもさすがに異変に気付き、カオスな状況になってきたその時・・・。
ズドドドドドッッ!!
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)