いわく鑑定士

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〈必ずこなせる〉ToDoリスト(脚本)

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〇黒

〇時計台の中
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた呪いの品が存在します」
鑑定士「私は、そんな〈いわく〉付きの品専門の鑑 定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、一体おいくらになるのでしょうか・•・」

〇時計台の中
鑑定士「変わったノートですね」
蒼真「ToDoリストです ・・・万能ではないのですが」
蒼真「妻をタスクで溺れさせた代物です」
鑑定士「続けてください」

〇黒

〇高級マンションのエントランス
隣人「あの、東堂さんの旦那さんですよね?」
蒼真「はい、えっと、お隣の・・・」
隣人「戸成です」
蒼真「すみません。お名前失念して」
隣人「いえ、東堂さん、いつもお忙しそうですし それより・・・」
隣人「驚かないでくださいね?」
隣人「あなたの家に浮浪者が入るのを見ました」
蒼真「は!?」

〇マンションの共用廊下
  出る時にちょうど隣のドアの開く音がして
隣人「『こんにち』」
隣人「『は』」
?「・・・・・・」

〇高級マンションのエントランス
隣人「帽子から陰気な目が光ってて・・・ 洗濯バサミがいっぱい服についてて」
蒼真「洗濯バサミ・・・」
隣人「奥さん、大丈夫でしょうか 警察呼びますか?」
蒼真「・・・いえ」
蒼真「俺が、自分で話をつけます」

〇マンションの共用廊下

〇オタクの部屋
ほわか「あ、蒼君、おっかーりー」
ほわか「え、私、そんなに可愛い?」
蒼真「その洗濯バサミだらけの服でか?」
ほわか「これ?服の穴をとめたんだよ」
蒼真「そんな理由でつけてたの!?」
ほわか「時代はSDGsですからね」
蒼真「・・・穴は縫うものだと思うんだが?」
ほわか「糸は使ったら終わりなんだよ?」
ほわか「洗濯バサミなら持続可能 つまりサステナブルなんです」
蒼真「へえ、サステナブルって『縫うのが面倒』って意味だったんだな」
ほわか「あれ」
ほわか「蒼君、なにそれ。お土産?」
ほわか「わあ、粛々ベリーの箱だあ! しかも白雪姫小人カヌレ7種セット!」
ほわか「嬉しい、大好き蒼君!」
ほわか「お茶淹れるね!」
「あれ、ティーパックないなあ」
「ソファの隙間から一個みっけ!」
「賞味期限いつのだろ〜 ま、いっか!」
蒼真「り」

〇タワーマンション
「離婚だあ!」
  自分の妻が浮浪者に
  間違えられたのがショックで
  俺はつい言い過ぎてしまったんです

〇オタクの部屋
蒼真「ほわか?何やってんの。こんな夜中に」
ほわか「蒼君。まだ見ちゃダメだから!」
蒼真「なんか、ますます散らかってない?」
ほわか「う・・・」
ほわか「片付けてたの・・・」
ほわか「あちこち手をつけてたら、 もうどうしようもなくなっちゃって・・・」
ほわか「あはは」
ほわか「やっぱりダメだね、私、何をやっても・・・」
蒼真「ちょっと待ってて」
蒼真「これ、あげる」
蒼真「ToDoリストっていうんだけど、 やるべきタスクを書きだして、整理するんだ」
ほわか「タスク・・・」
蒼真「なんでもいい どんな小さいことでも」
  ・コップを台所に運ぶ
蒼真「できたら済みマーク書いて」
ほわか「なんか」
ほわか「やり遂げたあって、感じ」
ほわか「これ、凄いかも」
ほわか「これで私、スーパー主婦になっちゃうかも!」
蒼真「ははは、スーパー主婦って」
蒼真(今、ToDoリストが光ったような?)

〇黒

〇清潔な浴室
ほわか「『午前8時、浴室乾燥室の整頓をする』」
ほわか「これはクローゼットに!」
ほわか「これはクローゼットに!」
蒼真「ほわか、俺もう会社行くけど──」
蒼真「うお、風呂場がきれいになってる!」
ほわか「ちょっとちょっとどいてー」
「ごめんね このウォークインクローゼット便利だったんだけど」
蒼真「ウォークインクローゼットって・・・」
蒼真「干しっぱなし、をそう言うのか?」

〇システムキッチン
ほわか「よし、食品整理終わり!」
蒼真「お疲れさま。このゴミだしてくるよ」
ほわか「ありがと!ねえ、冷蔵庫のなか見て見て」
蒼真「うお、きれいになったな!」
蒼真「何にもない・・・」
蒼真「賞味期限切れしか入ってなかったってことか」
ほわか「はい・・・」

〇タワーマンション

〇タワーマンション

〇高級マンションの一室
ほわか「お帰りなさい!蒼真さん!」
蒼真「・・・・・・」
蒼真「誰?」
蒼真「ていうか、ここ」
蒼真「まさかうちぃ!?」
ほわか「当たり前でしょ」
蒼真「そうだ、引越し直後に見たことがある 確かにうちだ」
ほわか「もう」
蒼真「ごめんごめん。見違えたからさ」
蒼真「ハウスキーパー頼んだの?」

〇タワーマンション
蒼真「だ、だって、洗濯バサミ女が全部一人でやったなんて信じられねえよ!」
蒼真「ごめんって。ははは、凄いな、ほわかは」
  それからほわかは、
  ToDoリストを離さなくなりました

〇高級マンションの一室
蒼真「ほわか、mamaazarashiのライブBDきた!」
ほわか「ごめーん 今日は夜までタスクいっぱい。見る暇ない」
蒼真「ああそう・・・」

〇ホテルの部屋
蒼真「ん、ほわか?」
蒼真「何やってんの?」
ほわか「明日のタスク、書いてから寝るの」
蒼真「・・・頑張るなあ」
蒼真「でも最近、目の下にクマできてるぞ?」
蒼真「なんか痩せた気がするし」

〇高級マンションの一室
ほわか「あ、お姉ちゃん?忙しいから手短にね」
ほわか「え」
ほわか「分かった。うん、明日の二時には絶対行くね」
蒼真「どした。実家行くの?」
ほわか「うん、お父さん、倒れちゃったんだって」
ほわか「脳出血したって・・・どうしよう、どうしよう」
蒼真「大丈夫だよ」
蒼真「俺飲んでないから車だす!すぐ行こう」
ほわか「え、今から?無理だよ?」
ほわか「きゅうり、糠床に漬けたばっかりだもん」
ほわか「『明日の二時に美味しく浸かったかどうか確認する』って、タスクいれちゃったし」
蒼真「な・・・」

〇高級マンションの一室
蒼真「なんって馬鹿なこと言ってんだ!正気か?」
ほわか「だって未達成タスクできちゃうんだよ!?」
蒼真「家族に『きゅうり漬けてたから遅れました』って言うのか!?」
ほわか「・・・・・・」
蒼真「・・・帰ってから済みマークいれれば?」
ほわか「漬かりすぎちゃう 『美味しく漬ける』って言ったでしょ!?」
蒼真「話にならない。行くぞ」
ほわか「いやあぁっ」

〇車内
  結局
  糠床を抱えた妻を
  乗せるしかなく
蒼真(ぐおお)
蒼真(窓開けてもきつい!!!!)

〇黒

〇高級マンションの一室
蒼真「ほわか!」
蒼真「ごめん!この通りだ。許してくれ」
蒼真「離婚なんて、全然本気じゃなかった」
蒼真「ToDoリストはもう許してくれ」
ほわか「許す?」
蒼真「離婚って言ったから、 こんなおかしなこと続けてんだろ?」
蒼真「俺、もう一人でベッドに入るの嫌だ」
蒼真「休みの日だって一緒にいたいのに」
蒼真「でもToDoリストでスケジュールギチギチに決まってたら、何にもできないじゃんか!」
蒼真「今日だって分刻みで──」
ほわか「蒼君!」
ほわか「蒼君は何にも分かってないね」
ほわか「努力する方法が分かんない人が、 この世にはいるんだよ?」
ほわか「今ToDoリストがなくなったら・・・私・・・」
ほわか「そうだ!」

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コメント

  • ほわかの生きづらさが積み重ねられていくエピソードから痛々しいほど伝わってきて、心をぎゅっと掴まれる思いで最後まで読ませていただきました。徹底的に自分を追い込んでいくほわかから目が離せませんでした…!魅力的なお話を読ませていただき、ありがとうございます‼️

  • タスクに取り憑かれ徐々に狂っていく様子がホラーで面白いです。
    穴の空いた服を洗濯バサミで止めるという斬新なアイデアも面白い……って実話ですか🤣

  • ほわかって名前が全然ほんわかしてこない狂気顔で怖かったです。ToDoリストは余裕持たせて作れって言いますからね。過密なタスクは危ないです。
    洗濯バサミ女がないから作っちゃえ、ってのはすごいです。立ち絵かけて羨ましい。

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