いわく鑑定士

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〈自分のものにする〉サインペン(脚本)

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〇黒背景
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた 呪いの品が存在します」
鑑定士「私はそんな〈いわく〉付きの品 専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、 一体おいくらになるのでしょうか」

〇時計台の中
鑑定士「こちらが依頼品でしょうか?」
波多 志乃(はた しの)「違うんです」
波多 志乃(はた しの)「鑑定していただきたいのは、こっちの──」
鑑定士「サインペンですか」
波多 志乃(はた しの)「私が小学生の時から 使っていた物です」
波多 志乃(はた しの)「こんな物でも、お金になりますか?」
鑑定士「これからお伺いする内容次第ですね」
鑑定士「それではお聞かせください」
  このサインペンにまつわる〈いわく〉を

〇女の子の部屋
由乃「志乃、どうしたの!? 何で泣いてるの?」
波多 志乃(はた しの)「‥‥‥‥‥」
由乃「黙ってちゃ、お姉ちゃんわからないよぉ」
波多 志乃(はた しの)「‥‥‥れた」
由乃「え?」
波多 志乃(はた しの)「‥‥消しゴム、とられた」
由乃「誰に盗られたの !? ちゃんと、その子に返してって──」
波多 志乃(はた しの)「言ったよ !!」
波多 志乃(はた しの)「だけど、カスミちゃんが──」
  名前、書いてないじゃん。
  言いがかりヤメてよ、ウソつき
由乃「取り返せないのは、ムカつくけど 今日はあきらめよう」
由乃「だけど、これからは全部 名前 書くの」
由乃「名前さえ書いとけば、 もう誰にも盗られないから」
波多 志乃(はた しの)「‥‥絶対?」
由乃「うん、絶対 !!」
  はた  しの
  はた しの
  はたしの

〇おしゃれなリビングダイニング
由乃「おかぁさん! あたしのスケッチブックがないー !!」
お母さん「捨てたわよ、もう使い切ってたでしょ?」
由乃「捨てちゃダメー!!!! おがぁさんのバカー!!!!!!!!」
お母さん「ごめんね、お母さんが悪かったわ」
お母さん「けど、志乃のノートみたいに 名前書いてたら捨てなかったよ」
  はた  しの
波多 志乃(はた しの)「良かった‥‥」

〇大きな木のある校舎
  十年後

〇教室
「無くなってんだって!! 財布に入れてた7000円が!」
「ねえ、あたしも 財布 見つからないんだけど‥‥」
「待って、皆、お金盗られてない?」
  波 多 志 乃
波多 志乃(はた しの)「もちろん、中身だって大丈夫──」

〇おしゃれなリビングダイニング
波多 志乃(はた しの)「‥‥ただいまー」
由乃「おかえり、災難だったね」
由乃「学校で、財布からお金 盗られたって?」
波多 志乃(はた しの)「うん。財布ごと被害にあった子もいて 皆、大変だった」
波多 志乃(はた しの)「私もお昼代もバス代も 盗られたから──」
波多 志乃(はた しの)「どうすればいいかな」
由乃「犯人、とっ捕まえるの?」
波多 志乃(はた しの)「ううん。今度こそ、 何も盗られないようにしたいの」
波多 志乃(はた しの)「ちゃんと名前 書いてた、 財布とジャージは無事だったのに‥‥」
由乃「そんなん言ってたら、 現金自体に名前 書くしかないじゃん」
波多 志乃(はた しの)「それだよ」

〇教室
「ざけんなよっ!またかよ !!」
「何で学校は犯人探ししないの!?」
「それな。盗む奴が、完全に悪いのに」
波多 志乃(はた しの)「ふふっ」
  皆も書けば済むことなのになぁ

〇おしゃれなリビングダイニング
由乃「何やってんの !?」
波多 志乃(はた しの)「もう、歯磨いちゃったから 冷蔵庫に入れようと思って」
由乃「何でケーキに直接名前 書いてんの!? 食べれなくなるじゃん、もったいない!」
由乃「そんなことしなくても、誰も盗らないよ!」
波多 志乃(はた しの)「そんなの、わからないよ」
波多 志乃(はた しの)「お姉ちゃんには 私の気持ち、わからないよ!」
波多 志乃(はた しの)「いつだって、身勝手に理不尽に奪われて 何で自分がこんな目に‥‥って」
波多 志乃(はた しの)「泣き寝入りしかできなかった あの悔しさを、私は一生 忘れない」

〇おしゃれな大学
「初心者 歓迎 !! 集まれ、サッカー好き !!」
「英会話サークル !! 興味のある方、気軽に見学OK!」
「楽しく仲良くがモットー! アカペラサークルで青春しませんか !!」

〇広い和室
七篠 権人(ななしの けんと)「うまいうまい!初心者とは思えないよ」
波多 志乃(はた しの)「先輩のお手本が良いですから」
七篠 権人(ななしの けんと)「俺だって全然だよ。 年齢・経験問わず もっとうまい人はいる」
七篠 権人(ななしの けんと)「けど、ありがとな」
???「ケント〜、どうせヒマでしょー?」
小掠(おぐら)「コレ、水墨画漫画が原作の映画なの! 一緒に行か──」
小掠(おぐら)「‥‥誰?」
七篠 権人(ななしの けんと)「小掠、喜べ! 新入部員第一号だ !!」
小掠(おぐら)「はぁ !? 入部動機は!?」
小掠(おぐら)「どうせ、 ケント目当ての下心ある娘なんでしょ!」
波多 志乃(はた しの)「そんな‥‥下心なんてありません!」
七篠 権人(ななしの けんと)「何、言ってんだ。俺から勧誘したんだぞ?」
七篠 権人(ななしの けんと)「見てみろ、コレ」
波多 志乃(はた しの)「七篠先輩、やめてください!」
小掠(おぐら)「? ただのスマホでしょ‥‥ん?」
小掠(おぐら)「スマホに自分の名前 書いてるの !?」
小掠(おぐら)「危機感ないわね! この情報社会で名前晒すなんて」
波多 志乃(はた しの)「‥‥‥‥‥‥」
小掠(おぐら)「小学生じゃないんだから──って、失礼ね」
小掠(おぐら)「今どき、小学生でもわかることでしょ!」
七篠 権人(ななしの けんと)「小掠、そこじゃない」
七篠 権人(ななしの けんと)「この娘、めっちゃ字、綺麗だろ !!」
小掠「馬鹿なの !?この書道馬鹿 !!」
七篠 権人(ななしの けんと)「確かに、名前は隠した方がいい。 だが、俺はそのおかげで逸材を発見した!」

〇古風な和室(小物無し)
七篠 権人(ななしの けんと)「えらいえらい。ちゃんと洗ってるな」
七篠 権人(ななしの けんと)「俺があげた筆、大事に使ってるみたいだな」
波多 志乃(はた しの)「もちろんですよ! 権人先輩からなら尚更です」
波多 志乃(はた しの)「先輩、今度の週末どうします?」
波多 志乃(はた しの)「展覧会に行きますか? それとも1日中、書道の練習ですか?」
七篠 権人(ななしの けんと)「そのことなんだけど‥‥」
七篠 権人(ななしの けんと)「友達にもらってさ、そいついわく──」
七篠 権人(ななしの けんと)「「彼女のプレゼントに、筆はありえない」 「もっとデートらしい事 しろ」ってさ‥‥」
波多 志乃(はた しの)「先輩と一緒なら、 私はどこにでも行きますよ」

〇古風な和室(小物無し)
波多 志乃(はた しの)「ない‥‥」

〇広い和室
波多 志乃(はた しの)「小掠先輩、私の筆 知りませんか」
小掠(おぐら)「知らないわよ、 私が盗ったとでも言いたいの!?」
波多 志乃(はた しの)「他の先輩方にも聞いてます! けど皆さん、知らなくて‥‥」
小掠(おぐら)「あっ」
小掠(おぐら)「ああ もう! 話しかけるから、失敗したじゃない !!」
波多 志乃(はた しの)「‥‥‥すみませ──」
小掠(おぐら)「危ないわね! 何するの !!」
波多 志乃(はた しの)「‥‥そっちこそ、何してんのよ」
小掠(おぐら)「ちょっと借りてただけでしょ」
波多 志乃(はた しの)「無断で持ち出しておいて、更に そのまま返さなかったら泥棒でしょう」
波多 志乃(はた しの)「私の物に手を出さないで!」

〇黒背景
  ごめんね、すぐ気付けなくて
  ‥‥どこからでも
  名前がわかるようにしなきゃ
  波多志乃 波多志乃 波多志乃
  波多志乃 波多志乃 波多志乃
  波多志乃 波多志乃 波多志乃

〇空

〇おしゃれなリビングダイニング
「‥‥‥‥許せない」
「‥‥あんな女の、どこがいいの」
「‥‥っ!子供が出来たから別れようって あの人も、あの人よ !!」
由乃「あの時はごめん、今ならわかるよ」
由乃「これは一生 許せない」
波多 志乃(はた しの)「‥‥‥‥‥」
由乃「志乃の彼氏は、大丈夫? 近くに略奪女いない?」
由乃「気をつけなよ、 今はうまく行っていても──」
由乃「それがずっと続くとは 限らないから」

〇広い和室
小掠(おぐら)「あ〜!!また割れたー!」
小掠(おぐら)「ねぇ、ケント どうしても 払いとハネで割れるの」
小掠(おぐら)「一緒に書いてよ」
七篠 権人(ななしの けんと)「一緒にって、手 添えるのか」
小掠(おぐら)「そうだけど、もっとこう──」
小掠(おぐら)「私の手をしっかり握って、 体もピッタリ寄り添ってほしいの」

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コメント

  • 独占欲が強くなりとうとう……。
    最後のオチにぞくっときました。
    しのさんはどうなったか想像するのも怖く。
    サインをする時はいわくに取り憑かれないように気をつけたいですね。

  • 公開おめでとうございます!プロジェクトお疲れ様でした☺️
    志乃の狂い方がやわらかくおそろしく、大変雰囲気のある手触りで、こう言うと語弊がありそうですが、好みです。
    先輩がいい人で全然因果応報じゃないのが、余計にいわくの狂気を際立たせていてゾクゾクしました。
    先輩だけのものに……どうやってなったんだろう。

  • ゾクゾクするお話ですよね!!そして、セリフや演出に磨きがかかっていて素敵だと感じました✨😆

    私だけのものにしたい…一度独占欲を抱いてしまうと、深みにハマってしまうことありますよね💦しのさんは究極に深みにハマってしまったパターンですね…

    凄かったです!!✨👏

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