いわく鑑定士

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〈安らかに眠れる〉抱き枕(脚本)

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〇黒背景
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた 呪いの品が存在します」
鑑定士「私はそんな〈いわく〉付きの品 専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、 一体おいくらになるのでしょうか」

〇時計台の中
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「ここなら、俺の話を聞いてもらえると 伺いました」
鑑定士「‥‥こちらが依頼品ですね」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「はい。これは──」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「俺の彼女が、愛用していた抱き枕です」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「春瑠は常に、この抱き枕と共にいました」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「安らげるから、と」
鑑定士「それではお聞かせください」
  この抱き枕にまつわる〈いわく〉を

〇美容院
「奥田さん、ちょっといらっしゃい」
店長「あなた今日で、何回目の遅刻ですか」
奥田 春瑠(おくた はる)「今月に入ってからは、これで5回目です‥‥」
店長「入社早々、こんなに遅刻されては迷惑です」
奥田 春瑠(おくた はる)「すみませんっ!以後気をつけます!!」
店長「これ以上、遅刻するなら」
店長「こちらも、然るべき処置を取りますから」
奥田 春瑠(おくた はる)「然るべき処置‥‥」
先輩「そりゃ、クビでしょ」
先輩「奥田さん、短い間だったけどお疲れ様」

〇白いアパート
「絶 対 い やーーー!!!」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
奥田 春瑠(おくた はる)「ユウくん、私はもうダメだぁ!!!」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「アラームは、ちゃんとセットしてるのか?」
奥田 春瑠(おくた はる)「してるけど、鳴らない!」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「んなわけあるかっ!」
奥田 春瑠(おくた はる)「いつの間にか止まってる!」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「自分で止めてんだろっ!」
奥田 春瑠(おくた はる)「今日はね、時間通りに起きれたの」
奥田 春瑠(おくた はる)「余裕を持って家を出て! 電車も乗り遅れなかった!」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「でも、遅刻したんだよな?」
奥田 春瑠(おくた はる)「全部、夢だった‥‥」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「手の施しようがない‥‥」
奥田 春瑠(おくた はる)「そう」
奥田 春瑠(おくた はる)「もう、こうなったらっ!」
奥田 春瑠(おくた はる)「ここに住ませてー!! 毎日、起こしてー!!」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「自立の、ための、」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「一人暮らしだろっ!」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「そもそも、夜寝れてるのか?」
奥田 春瑠(おくた はる)「全っ然」
奥田 春瑠(おくた はる)「ちゃんと寝なきゃ、朝起きなきゃ って思うと、不安で不安で‥‥」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「まずは、メンタルの問題か」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「‥‥他力本願全開の同棲は、許容できないが」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「安眠できる方法を調べたり、 朝のモーニングコールぐらいは協力する」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「だから、もう少し頑張ってみろ」
奥田 春瑠(おくた はる)「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥はぁーい‥」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
奥田 春瑠(おくた はる)「ユウくん」
奥田 春瑠(おくた はる)「あのね‥」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「断る」
奥田 春瑠(おくた はる)「まだ何も言ってない」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「腕枕だろ」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「腕が痺れるわ、寝返りは打てないわ 不便だって、いつも言ってるだろ」
奥田 春瑠(おくた はる)「ウソつき」
奥田 春瑠(おくた はる)「‥‥安眠、協力してくれる言った」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「ほら」
奥田 春瑠(おくた はる)「人のぬくもりって、いいね」
奥田 春瑠(おくた はる)「安心する」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「‥平日は俺がいないこと、忘れんなよ」

〇駅のホーム

〇雑貨売り場
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「相変わらず、ここは魔窟だな」
奥田 春瑠(おくた はる)「私のMP回復スポットだよ!」
奥田 春瑠(おくた はる)「ユウくんが、欲しい物あるって言う から来たんでしょ!」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「ああ、コレなんだが」
奥田 春瑠(おくた はる)「え?コレって──」
  『悪役令嬢は、執事の腕の中にいたい。』
  
  〜 執事ネロの抱き枕 〜
奥田 春瑠(おくた はる)「ユウくんもついに、オタクの道に‥‥」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「目覚めてない」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「お前が!このキャラ、好きなんだろ!」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「お気に召したようで」
奥田 春瑠(おくた はる)「えっと、これは‥?」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「腕枕の代わりに、と思ってな」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「俺と違って嫌がらないし、推しだから 朝起きるモチベにもなるだろ?」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「だから頑張って、時間通りに起きれるか?」
奥田 春瑠(おくた はる)「うん、これなら絶対眠れるし起きれるよ!」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
雄弥のスマホ「ユウくん、見て !! 私の部屋にネロ様が!!」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「見えるか。TV電話に切り替えるぞ」

〇可愛らしい部屋
奥田 春瑠(おくた はる)「ふふっ」
奥田 春瑠(おくた はる)「ネロ様❤」
奥田 春瑠(おくた はる)「『明日7時』に起こしてね!」
  照れるなら、何故やった
奥田 春瑠(おくた はる)「こ、これは言語化することで より起きる意識を高めようとっ!」
  別にいいが、その調子だと寝付けんぞ
  さっさと寝ろ
奥田 春瑠(おくた はる)「わかってるよ!」
  それでも寝付けんなら 今日 買った
  アロマや睡眠用BGMも試してみるといい
  本来はこの通話も、寝る前には
  あまり良くないんだけどな
  ──聞いてるか?
奥田 春瑠(おくた はる)「‥うん、聞いてる」
  声が聞けると安心できるし
  気が紛れるって、言うからしてるんだぞ
奥田 春瑠(おくた はる)「‥‥ん、聞いて──」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
旭 雄弥(あさひ ゆうや)(あの状態から、よく寝れるな‥‥)

〇白いアパート

〇白いアパート

〇シンプルな一人暮らしの部屋
奥田 春瑠(おくた はる)「今日、先輩に褒められたんだぁ」
奥田 春瑠(おくた はる)「すっかり遅刻しなくなったし、 仕事中も集中できてるって」
奥田 春瑠(おくた はる)「毎日、安眠できてるからだね あなたのおかげだよ」
奥田 春瑠(おくた はる)「いつもありがとう」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「どうしたんだよ」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「ずっと抱き枕に話しかけて」
奥田 春瑠(おくた はる)「『ネロ様』だよ」
奥田 春瑠(おくた はる)「抱き枕って呼ばないで」
奥田 春瑠(おくた はる)「どうして、皆そんな無機質な呼び方するの」
旭 雄弥(あさひ ゆうや)「皆?」
奥田 春瑠(おくた はる)「だって、皆──」

〇高級マンションの一室
奥田 春瑠(おくた はる)「ネロ様、ここが私の実家だよ」
母「春瑠〜、誰と話してるの?」
母「? 誰もいないじゃない」
奥田 春瑠(おくた はる)「ネロ様、この人が私のお母さんだよ」
母「何言ってるの? その抱き枕も何 !?」
母「まさか、その調子のまま 帰って来たんじゃないでしょうね !?」
奥田 春瑠(おくた はる)「私、ネロ様がいないと夜 不安だから‥‥」
母「やめなさい、恥ずかしい! 笑い者にされるじゃない!?」
奥田 春瑠(おくた はる)「娘の不安より、恥を気にするの?」

〇ホテルの受付
先輩「奥田さん、それ‥‥」

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コメント

  • 公開おめでとうございます‼️
    雄弥が春瑠のことを大好きで大切に思っていることが台詞や行動の端々から伝わってきて、キャラクターを描くってこういうことか!と勉強になりました🙏自分はネロ様より雄弥萌えしながら読んでしまいました笑 ネロ様立ち絵の使い方もインパクト強くて最高でした…‼️

  • キャラクターの台詞回しが素晴らしくいいですね。彼女さんみたいな人、現実にいなさそうなキャラなのにいるような説得力をもたせてるのがなんともすごいです。
    抱き枕の発想も面白かったです。

  • おぉー!✨☺️立ち絵イメージぴったりですね✨

    会話のやり取りも自然で良かったです✨そして、段々といわくに取り憑かれていく姿も見ていてヒヤヒヤしながらも面白かったです!!👍✨

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