いわく鑑定士

編集長

〈汚れを水に流す〉トイレ(脚本)

いわく鑑定士

編集長

今すぐ読む

いわく鑑定士
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒背景

〇モヤモヤ

〇時計台の中
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた呪いの品が存在します」
鑑定士「私はそんな〈いわく〉付きの品専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、一体おいくらになるのでしょうか・・・」

〇黒

〇時計台の中
永瀬 音羽(ながせ とわ)「あの、これ・・・」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「この写真のトイレ 実物は後で持ってくるから話聞いてよ」

〇黒

〇体育館の裏
クラスメイト「音羽、お前なら大丈夫! 勇気を出して行ってこい」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「冷やかすなよ こっちは緊張して──」
クラスメイト「お、麗香ちゃん来たぞ」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「あわわ・・・」
麗香(れいか)「音羽君、話って何?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「か、かわいい・・・」
麗香(れいか)「え?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「あ、いや、そのこれ・・・」
麗香(れいか)「これを私に?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「あの・・・ 俺、口下手だから、その・・・」
  好きです
  付き合ってください
麗香(れいか)「ごめん、無理かな」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「えぇ!?」
麗香(れいか)「ねぇ、音羽くん こんな汚い字で書くなんてふざけてるの?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「ふ、ふざけてないよ! 本気だよ」
麗香(れいか)「そう思えないんだけど だって、あなた──」
麗香(れいか)「制服はヨレヨレで汚いし少し不潔だし 本気だと言うのなら もう少し身なりを整えた方がいいと思う」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「え、えっと・・・」
麗香(れいか)「じゃあね」
クラスメイト「まぁ、気を落とすな」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「なぁ、俺ってそんな字が汚い?」
クラスメイト「ははっ、お前もうちょっと綺麗に書けよ なんだこのミミズみたいな文字」

〇黒

〇学校脇の道
永瀬 音羽(ながせ とわ)「こんなモン、こうしてやる!」
通りすがりの学生「ん、なんだこれ?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「うわぁ、すいませーん! それ俺のです か、返してー!!」

〇黒

〇一戸建ての庭先

〇学生の一人部屋
永瀬 音羽(ながせ とわ)「母さん、俺の部屋で何やってんの」
永瀬 香織(ながせ かおり)「おかえり 今あんたの部屋片付けてたのよ ゴミ箱だって溜まりっぱなしじゃない」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「ちょっと! 勝手に片付けないでよ」
永瀬 香織(ながせ かおり)「文句があるなら自分で片付けなさい! 汚くしてたら虫も湧くでしょ」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「あれ、ゴミ箱がない」
永瀬 香織(ながせ かおり)「ゴミ箱は今洗って乾かしてるわ 捨てる物があるならこの袋に入れて 一緒に捨ててくるから」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「あ、いや、いいや・・・」
永瀬 香織(ながせ かおり)「ゴミ箱もすっごく汚れていたんだからね 溜まっていたらすぐ捨てる 汚れたら綺麗にってなんで出来ないの」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「うるさいなぁ そんな事はわかってるよ!」
永瀬 香織(ながせ かおり)「わかってるなら こんなに汚さないでよね まったく──」

〇黒

〇一階の廊下
永瀬 便(ながせ べん)「はぁ〜スッキリスッキリ〜♪」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「何がスッキリなの? 父さん」
永瀬 便(ながせ べん)「おわ!! 音羽帰ってたのか いや、さっきまで腹の調子が悪くてな」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「ふーん」
永瀬 便(ながせ べん)「そうそう、今日大掃除してるから いらない物とか捨てとけよ」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「はーい」
永瀬 便(ながせ べん)「父さんは夢破れた思い出を まとめて捨てたよ」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「それって、はずれくじの事? 当たらないんだから無駄遣いするなって 母さんがいつも怒ってるけど」
永瀬 便(ながせ べん)「ははは ま、まぁいらない物を捨てたら スッキリするって事だ」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「スッキリねぇ・・・」

〇黒

〇個室のトイレ
永瀬 音羽(ながせ とわ)「はぁ〜スッキリスッキリ〜♪」

〇黒

〇一階の廊下
永瀬 香織(ながせ かおり)「ほんと、音羽がだらしなくて困るわ 毎回注意してるのに直さないんだから ねぇ、お母さん」
川谷 流理子(かわや るりこ)「困った子だねぇ」
永瀬 香織(ながせ かおり)「あっ、音羽! 靴も脱ぎっぱなしだったわよ ほんっとだらしないし汚いんだから」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「なんだよ母さんまで汚いって 綺麗にしたらいいんだろ!」

〇黒

〇飾りの多い玄関

〇黒

〇個室のトイレ
永瀬 音羽(ながせ とわ)「はぁ〜スッキリスッキリ〜♪」

〇黒

〇白いバスルーム
永瀬 音羽(ながせ とわ)「何してるの?」
永瀬 便(ながせ べん)「ああ、ゴミをまとめてたんだ」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「俺も手伝うよ」
永瀬 便(ながせ べん)「え? どうした音羽? お前がそんな事言い出すなんて」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「俺が手伝ったら悪いかよ」
永瀬 便(ながせ べん)「さては母さんにみっちり叱られたな? それじゃこれの片付け手伝ってくれるか」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「うわ、テスト用紙・・・」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「これ、俺の本じゃん もう読まないからいいけど」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「このぬいぐるみ懐かしいな ・・・くっさ!?」
永瀬 便(ながせ べん)「お前が小さい頃 このぬいぐるみ抱いて寝てたっけ かなり汚れてるなぁ」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「覚えてないけど これはもういらないな」
永瀬 便(ながせ べん)「随分いらない物が溜まっていたな いつも綺麗にしておかないと また怒られるぞ」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「そういう父さんだって はずれくじとか散らかしてたよな」
永瀬 便(ながせ べん)「あれは、母さんにバレる前に 片付けたからな!」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「大人って汚い」
永瀬 便(ながせ べん)「き、汚くはないよ!?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「まぁいいや・・・ 俺がこれ片付けておくよ」
永瀬 便(ながせ べん)「今日はずいぶんとやる気だな それじゃ父さんは 向こうの部屋でも片付けるか」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「綺麗にしなきゃ、綺麗に・・・」
永瀬 便(ながせ べん)「ははっ、綺麗にしたらスッキリするぞ がんばれよー」

〇黒

〇個室のトイレ

〇黒

〇明るいリビング
永瀬 音羽(ながせ とわ)「片付け終わったよ 他にも綺麗にする物ない?」
永瀬 便(ながせ べん)「んー、もうないかな」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「もっと綺麗にしてスッキリしたいのに」
永瀬 便(ながせ べん)「ありがとな、音羽 また今度手伝い頼むよ さて、父さんはパチンコに──」
永瀬 香織(ながせ かおり)「ちょっと! またパチンコ行くつもり? 少しは節約してよね」
永瀬 便(ながせ べん)「い、いや・・・ えーと、タバコが切れちゃって 買いに行こうかなーと」
永瀬 香織(ながせ かおり)「タバコもほどほどにしなさいよ お金はかかるし健康にも悪いし ギャンブルもいい加減やめてほしいし」
永瀬 便(ながせ べん)「す、すぐ帰ってくるから! 行ってきまーす」
永瀬 香織(ながせ かおり)「まったくもう!」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「母さん、なんか綺麗にするものない?」
永瀬 香織(ながせ かおり)「今はないわね 靴も片付けたみたいだし 普段から綺麗にしなさいよ」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「もっと、綺麗に・・・」

〇黒

〇L字キッチン
永瀬 香織(ながせ かおり)「このまな板も汚れてきたわねぇ」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「汚れてる?」
永瀬 香織(ながせ かおり)「そうね、このまな板もう古いし」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「それじゃ、綺麗に──」
永瀬 香織(ながせ かおり)「お父さん帰ってくるの遅いわね ちょっと電話してみようかしら」

〇黒

〇個室のトイレ

〇黒

〇一階の廊下
永瀬 香織(ながせ かおり)「音羽、まな板が見当たらないけど あんた持って行った?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「うん、綺麗に流したよ」
永瀬 香織(ながせ かおり)「は? 流したってどこに?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「トイレだよ はぁ〜スッキリスッキリ〜♪」
永瀬 香織(ながせ かおり)「ちょっと!! 本当にまな板を流したの!?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「うん、綺麗に流れたよ」
永瀬 香織(ながせ かおり)「なに考えてるのよ! トイレに流すなんてばっかじゃないの!?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「汚いから流した方がいいじゃん」
永瀬 香織(ながせ かおり)「綺麗にってそういう事じゃないでしょ! それにまな板なくなったら困るわよ 料理もまだ途中なのに」
永瀬 香織(ながせ かおり)「本当にあんたがここまでバカとは 思わなかったわよ!! はぁ、情けない」
永瀬 香織(ながせ かおり)「大体ねぇ あんたは普段からだらしないし 部屋は散らかってるし服も汚いままだし」
永瀬 香織(ながせ かおり)「服も汚れたらすぐ洗濯に入れなさいって いっつも言ってるのにいれないし まったくもうあんたって子は──」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「怒った母さんの顔って汚い」
永瀬 香織(ながせ かおり)「は? 何言って──」
永瀬 香織(ながせ かおり)「きゃっ」

〇個室のトイレ
永瀬 香織(ながせ かおり)「ちょっと!? 何するの?」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「汚い物は流さなきゃ」
永瀬 香織(ながせ かおり)「きゃあああああああああー!!」

〇黒

〇一階の廊下
川谷 流理子(かわや るりこ)「どうしたんだい? 悲鳴が聞こえたけど」
永瀬 音羽(ながせ とわ)「ばあちゃんか ・・・なんか汚れてる?」
川谷 流理子(かわや るりこ)「いやあ、びっくりして お茶こぼしちゃったんだよ それより何が──」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:〈大事な思い出をしまう〉タンス

コメント

  • 面白かったです~😊
    ぐらっぱさんといえばトイレとゴリラ😂両方きっちりと物語にされてましたね🤣
    何でも流しちゃうトイレ、魅力的ですがやはり恐ろしい😵💦
    音羽くんがいわくから解放されますように❗
    そして家族は無事だったと信じます😭
    プロジェクトお疲れ様でした~😆

  • 流水音からトイレワールドに引き込まれ、気がついたら深みにハマっていて、読み終わってもなかなか出られなくなってしまいました🚽😂世界観が確立されていて、本当にすごいなと思います…‼️エフェクトの使い方もすごくお上手で、トイレシーンを見るのがだんだん快感に…笑

  • トイレもそうですが、発想の時点で脱帽でした。そんなもの流れるわけ無いだろうというものも、だんだんと受け入れられるようになりますし、もっと行けと応援してしまう作りが楽しかったです。

コメントをもっと見る(7件)

成分キーワード

ページTOPへ