第44話 探索(脚本)
〇ダブルベッドの部屋
2021年 イリノイ州 デュページ郡 ネイパービル 氷壁に覆われた街 ホテルの一室
斎王幽羅「ねぇ・・・ここのホテルすごい高そうだけど・・・どれくらいするんだろう?」
フェード「アメリカの最高級だと10万くらいするが、フロント見た時の値段では・・・ん?どれくらいになるんだ?」
エンチャント魔導法士「あれだと2万ぐらいだな、というか今後の目標について話すんだろ?まずは現在の情報をまとめるぞ」
エンチャント魔導法士「現在ワシらはアメリカにいる『氷帝』鬼月冷羅に会い、日本からアメリカに輸送された『赤ん坊』の行方と」
エンチャント魔導法士「あの胸糞悪い警官の岡崎が言ってた『WoOS』という組織の正体を暴き、そして先程ゲライントが言っていた」
エンチャント魔導法士「クローン喧嘩王『アナザー』を破壊、可能なら・・・アナザーオリジンも破壊したい。と言った所か?」
斎王幽羅「やる事多いね・・・ひとまず冷羅さんが来るまでは暇だし、街で情報集める?ゲライントさん達の事まだあんまりわからないし」
フェード「賛成だ、各々が街を歩きながら情報を一通り集めた方がいいかもな」
斎王幽羅「街での情報収集は2人1組の方がいいかも、何かあった時対処しやすいし」
斎王幽羅「戦闘の時以外で組まない人と一緒に行動すれば、新しい発見があるかもだし」
エンチャント魔導法士「となればまだ組んでないのは··· ··· ···実戦で組んでないのはキングとフェードか?」
斎王幽羅「後は俺と凪園かな?鸞とエンチャントさんはこの組み合わせで大丈夫?」
鸞「斎王、俺は別に問題ないが···エンチャントが『ハニトラ』に絶対引っかかるだろ。いいのか?」
エンチャント魔導法士「何だと!?ハニートラップなんて引っかかるわけないだろ!」
鸞「ゲライントをいやらしい目で見てたくせに。分からないとでも思ったのか?」
フェード「色彩模糊老人(色ボケジジイが)···お前は一瞬だけ見たつもりだろうが、目線でわかるからな?」
エンチャント魔導法士「え···それってお前達が忍者と殺し屋だから、周りの目線に敏感なだけじゃ···」
鸞「こればかりは関係ないぞ?少なくとも日本人は確実にそういう視線に敏感なものだ」
フェード「中国でもその認識は変わらないから、アジア人はそうなんじゃないか?」
フェード「まぁエンチャントだけではないよな?キングと斎王もたまに目線が落ちる事があるぞ」
鸞「だな、まぁ凪園だけが目線が定まってない感じがある。下に向くこともあるけど上下左右フラフラ目線が移ってる印象がある」
エンチャント魔導法士「なぁーんだ、普段なんでもないですって顔してるのにお前らも男だな~?」
斎王幽羅「いや、だって!フェードも鸞も可愛いから油断するとつい見ちゃって···!」
キング「いやらしい目で見て何が悪いんだ?相手を『魅力的』って思うからこそ、そう見るんだから悪い事じゃなくないか?」
斎王幽羅「あぁ~···変化武器ってこういう所ズレてるからこうなるんだっけ···」
凪園無頼「どーゆーことー?」
斎王幽羅「変化武器って生殖器官が無くて、変化武器と行為をしても子供を作れないんだけど」
斎王幽羅「性欲も人並み以下、もしくはないに等しいんだ。だから変化武器は自分をいやらしい目で見たりする相手には」
斎王幽羅「『自分を魅力的に思ってくれてる』って思考になって、嬉しいって気持ちになるんだって」
キング「だからエンチャントのじいさんがゲライントの事エロい目で見てたってのは、別に悪いことじゃねえなって思ってたぜ?」
エンチャント魔導法士「それなら問題ないな!うへへ···あの3人の変化武器は皆違った良さがあるからな~···」
エンチャント魔導法士「じっくり目に焼き付けておかねばならんぁ~···フヘヘ···」
凪園無頼「うわ~、エンチャントきもーい!鸞とフェードがすごい顔してるよー?」
斎王幽羅「ホントだ···2人とも『仁王像』みたいな顔してる···鸞のあんな表情初めて見た···」
キング「昔鸞が依頼の報酬でたい焼き貰って、俺らが知らずに食った時くらいやべェ顔してんな···」
斎王幽羅「ひ、ひとまず!今から行動開始で明日のこの時間に俺の部屋集合で!」
斎王幽羅「あとエンチャントさんとフェードは交換。鸞とフェード、キングとエンチャントさんで行動して」
キング「わかった、エンチャントのじいさんは俺が見とくから任せろ」
エンチャントは鸞とフェードに冷ややかな目で見られながら皆自室に戻り、各々の時間を過ごした。
〇西洋の市街地
翌日 氷壁に覆われた街 街中 斎王&凪園サイド
斎王幽羅「すごいねこの街···国籍、人種、種族全部バラバラだ。世界的に見てもこんなの『レアケース』だ」
凪園無頼「ねー、ずっと思ってたんだけど、斎王はなんで氷帝の事『じいちゃん』って言わねーの?血縁上はじいちゃんでしょ?」
斎王幽羅「あぁ···うん。まぁ単純な話で俺が生まれてすぐ婆ちゃんと冷羅さん『離婚』したんだよね」
斎王幽羅「それから母さんが死んだ時しか会ってないから、あんまじいちゃんっていう実感がなくて···」
斎王幽羅「下の名前で言ってたらそれが自分の中で定着したって感じ」
凪園無頼「ふーん···じゃあもし氷帝に会っても斎王は『冷羅さん』って呼ぶの?それって変じゃね?」
斎王幽羅「う、うん···やっぱそうだよね。でも今更崩せる気がしないんだ、どうしたらいいかな···?」
2人は歩きながらそんな話をしていた。凪園は少し考え、斎王に言葉を返す
凪園無頼「『呼びたいように呼べばいいんじゃね?』」
斎王幽羅「え···でもそれっていいの···?なんか他人行儀みたいで変じゃない···?」
凪園無頼「でも斎王がガチガチに緊張して顔引きつらせながら『爺ちゃん』って呼ぶのも変だと思うよー?」
凪園無頼「いくら血縁関係あるっつってもほぼ会ったことないんでしょ?ならまず『呼びやすい呼び方』で呼んでから」
凪園無頼「関係が深まって、お互いを知り得た時『爺ちゃん』って呼べばいいと思うー」
凪園の意見に斎王は少し疑問を持ちながらも、『一理ある』と理解を示し
『そうしてみるよ』と凪園に返す。凪園は『じゃあ今度俺の番ね?』と言い、斎王は『いいよ』と返した
凪園無頼「俺さ、来る時にやった技あんじゃん?あれ何か『物足りない』んだよね。斎王は何か感じた?」
斎王幽羅「ケイローン・ボレアースだっけ?うーん···確かに凪園にしては『シンプル』な技だなって思ったけど」
斎王幽羅「でもどうだろ···なんというか···アストライア・ゼピュロスと違って『対人技』って感じだから別にいいと思うよ?」
斎王幽羅「でも強いて言うなら··· ··· ···」
斎王幽羅「『風の刃』を増やして、蹴り+風の刃で周囲に攻撃もしくは対人に追加のダメージを負わせる···とかどう?」
凪園は斎王の案に『そういう考えもあるのか』と思いながら、斎王に対して
『あんがと』と礼の言葉を述べる。斎王は凪園の力になれたなら良かったよと微笑みながら返すと
凪園は『こっちで情報集めね?』と言い、斎王の返事も聞かず1人でズケズケ入り込む
〇ビルの裏
氷の壁に覆われた街 路地裏
斎王幽羅「ちょっ···凪園、ヤバイよここ。下に『人の歯』とか落ちてるよ···」
凪園無頼「素手で喧嘩したって事でしょー?あ、ギャングっぽいの発見ー!」
ギャングらしき男達を見つけるや否や、凪園は無鉄砲に近づき適当な英語を話す
慌てて斎王が止めに入り、流暢な英語で必死に謝罪しながらその場を立ち去ろうとするが
だが当然見逃されるわけもなく、男達に斎王と凪園は銃を突きつけられる。
凪園は斎王を振り払い、ウッキウキでギャング達と戦闘を始める
斎王幽羅「あぁ~・・・もう・・・大丈夫かなこれ?」
〇西洋の市街地
同時刻 フェード、鸞サイド
フェード「エンチャントめ・・・アメリカに来てタガでも外れたのか?昨日のあの発言思い出すだけでイライラする!」
鸞「まぁ落ち着け・・・それよりフェード。どこで情報を集める?ここに来た時に見たあの『ナイトクラブ』に行くか?」
フェード「いや、『ショッピングモール』のほうがいい。ここは少なくとも私達が入ってきた所には氷の壁があった」
フェード「ここの住人にだけ渡る情報というのもあるはずだ、だが今は昼。ナイトクラブは閉店中」
フェード「となれば他に情報が集まる場所は遊び場か、生活に関する買い物をする場所」
フェード「そして年齢人口を考えた時、ショッピングモールの方が年齢人口は高い。しかも私達が集めるのは『日常的情報』」
フェード「であればショッピングモールのほうがいいと思うが・・・どうだ?」
鸞「いや、問題はない。幸い生活用品用の資金は既に受け取っている」
フェード「受け取っている・・・?一体誰からだ?」
鸞「あのシャルルという変化武器だ。4時半頃、私達の部屋に入ってきて置き手紙と資金を置いていったのを見た」
フェード「気がつかなかった・・・物音ひとつも立たなかったのか?」
鸞「多少は物音はしたが、気にならないレベルだ。俺もシロアリに起こされなかったら『気付かなかった』」
フェード「裏社会で名のある殺し屋を束ねるだけはあるという事か・・・そういえば、ひとつ思い出したことがあるが」
フェード「雷王跋会の会長に言われたこと覚えてるか?氷帝は表舞台に姿を現さず『フィンガーズ』と呼ばれる五人の幹部に」
フェード「組織運営を任せていると。あの三人の変化武器とマリア・イアハートが幹部として・・・あと『一人』は誰だ?」
鸞「さぁな・・・だがそれも探るのも目的だろ?ひとまず私達はショッピングモールに行くぞ」
〇教会の中
同時刻 キング、エンチャントサイド
エンチャント魔導法士「ワシ、昨日の発言マズかったか・・・?朝フェードと鸞から凄い目で見られたんだが・・・」
キング「俺もそんなにか?とも思ったが、流石にひどいなとも思ったぜ?」
エンチャント魔導法士「うぬぬ・・・今後は気をつけねばな・・・」
キング「ところで何で教会に来たんだ?なんか情報あるのか?」
エンチャント魔導法士「まぁな。異国の地で右も左もわからない状態であればまず『教会』を頼るんだよ、まぁ見とけ」
そう言うとエンチャントは立ち上がり、教会のシスターに何かを話し始める。
数分間の会話の後、エンチャントは席に戻り祈りを捧げる。するとシスターは『紙』を一枚エンチャントに渡し、立ち去る
キング「それなんだ?地図・・・?っぽいが」
エンチャント魔導法士「この街の地図を『簡易的』に書いてもらった。教会だとこういう事を無償でしてくれる所もあるから知っておいて損はないぞ?」
キング「ほえ~、タメになるな~・・・この端っこに書いてあるのは何だ?」
エンチャント魔導法士「ふむ・・・どうやらイリノイ州全体を統率する組織があり、そこから5つの組織に力を分散させているようだな」
エンチャント魔導法士「この街は『コンキスタドール建設』という組織が管理、統率してるらしい。嫌な名前だな・・・」
キング「どういう意味だ?そのコンなんちゃらって」
エンチャント魔導法士「スペイン語で『征服者』って意味だ。現代では批判的な面が多い一方、有名なコンキスタドールには」
エンチャント魔導法士「かの有名なコロンブスがいた事もあり、未知の文明の発見などの功績を評価する一面もある」
エンチャント魔導法士「その為コンキスタドールという言葉には『開拓者』という意味も含まれることもある」
エンチャント魔導法士「だがまぁ・・・あんまり大きな声で連呼するような言葉ではないな」
キング「へぇ、んでそのコンキスタドール建設のトップは誰なんだ?」
エンチャント魔導法士「そこまではわからん。ただ・・・空港の事覚えてるか?」
エンチャント魔導法士「エル・シッドという変化武器をあの兵士達は『親方』と呼んでいた。普通に考えれば・・・エル・シッドじゃないかと思うが」
エンチャント魔導法士「お前はどう思う?エル・シッドには管理、統率する能力はあるか?」
キング「ねェな。そういうのはゲライントが得意だから任せてるかもな」
エンチャント魔導法士「そうか・・・じゃあひとまず、もう少し教会で街の人達の会話を聞いてみるぞ」
エンチャント魔導法士「世間話で色々聞けるかもしれんしな。来た時に見たナイトクラブに行ければいいんだがな・・・」
キング「だな。俺はガラじゃねえから『盾の姿』に戻って寝てるから、なんかあったら起こしてくれ」
To Be Continued··· ··· ···