1 身近にいるロボット 前編(脚本)
〇教室
ロボット「皆サン、オ早ウゴザイマス・・・」
桐ヶ谷誠「お早うございます・・・」
ロボット「ソレデハ、一時間目ノ授業ヲ始メマス・・・教科書、28ページヲ・・・」
信じられない話だが、今俺達が授業を教わっている相手は人間では無く、ロボットだ。この学校の先生は、校長先生以外に
人間の先生はいない。
ロボット「コチラノ文章ニ付イテハ・・・」
久保直樹「なぁ桐ヶ谷、なんでこの学校ロボットが先生やってるんだ?」
桐ヶ谷誠「なんか良く分からないが、人件費削減とか、こっちの方が効率良いらしいぜ?小さい子供とかに割と人気があるとか・・・」
久保直樹「冗談じゃないぜ!前にいた美人先生気に入ってたのによぉ!」
ロボット「久保直樹!何ヲゴチャゴチャト言ッテイル!?」
久保直樹「あ、あぁ!すんません!!」
ロボット「次ニ騒イダラ減点ダ・・・」
久保直樹「な、なんでロボットが人間様に指図してるんだよ・・・」
桐ヶ谷誠「久保!大丈夫かよ?」
久保直樹「あぁ、大丈夫だ・・・しかしまぁ、なんでこんな風になっちまったんだ・・・?」
校長先生以外の先生は全てロボット。仕事が楽になったと言えば聞こえはいいが、辞めさせられた人達に取っては死活問題だ。
学校だけでなく、どこの職場もロボットが働いており、仕事が出来ない人が急増しているのが現代における社会問題だった。
俺、桐ヶ谷誠17歳は今日も今日とて授業に打ち込むのだった。
〇通学路
その日の帰り。
桐ヶ谷誠「・・・・・・」
おばさん「いつもありがとうね、あなたがいてくれて助かるわ・・・」
ロボット「イツデモオ任セ下サイ・・・次ハ何ヲシタラ宜シイデスカ?」
おばさん「そうね・・・とりあえず家に戻って・・・」
桐ヶ谷誠「どこを向いても、夏目工房が開発、量産して販売してる皆のお手伝いロボット。そもそも俺達は便利を求めて今を作り出してた」
桐ヶ谷誠「本当にこのままでいいのだろうか・・・」
中島蒼「あら、誠じゃない?こんな所でなにをしてるの?」
桐ヶ谷誠「あ、蒼か、いや、大した事じゃないよ・・・」
中島蒼「そう?なんだか浮かない顔してたけど・・・」
桐ヶ谷誠「・・・まぁ隠しても仕方ないよな・・・蒼も見てるだろ?いろんな所で仕事してるロボットの事考えてて・・・」
中島蒼「ロボットね・・・昔だったら自分達が頑張るのが当たり前だったのに、漫画の世界から出て来たみたいに、今では一家に一台」
中島蒼「お手伝いロボットがいてくれてるからね・・・」
桐ヶ谷誠「そうなんだ・・・お年寄りを助けるとか、自分の代わりとかって言われると聞こえはいいけど、本当にこれでいいのかなって・・・」
中島蒼「ねぇ、ここで話すのも難だから、どこか座れる所探さない?続きはそこで話したいわ・・・」
桐ヶ谷誠「あ、そうだね、そうしようか・・・」
幼馴染みで金持ち家系の中島蒼と共に、俺達は休憩スポットを探す事となった。
〇住宅街の公園
中島蒼「うん!ここなんか良くない?」
桐ヶ谷誠「だな!ここにしよう!」
俺達は近場の公園を見つけて、そこに有ったベンチに腰掛ける。
中島蒼「それで誠、さっきの話の続きだけど・・・」
桐ヶ谷誠「そうだな・・・新聞にも載ってたけど、最近働きたくても働けない人が多くなってるし、ロボットがこれ以上人間の代わりに」
桐ヶ谷誠「なったらって考えると・・・」
中島蒼「まぁ、そうよね、皆今の生活に満足し切ってる。あたしの所の執事やメイドも、お父様が全員ロボットに置き換えたわ」
中島蒼「毎日毎日、金属音がうるさいったらありゃしないわ・・・」
桐ヶ谷誠「そっか・・・前に話してくれてたね・・・俺の所はまだロボット買ってないけどね・・・」
中島蒼「お父様もお母様も、ロボットにやって欲しい事をインプットしててね、あたしも不便な事はないけど、今の生活は充実してるわ」
中島蒼「ただ、何か違う感じはするけどね・・・」
桐ヶ谷誠「そっか・・・」
中島蒼「ねぇ誠、最近あたし思う事が有ってさ。聞いてくれる?」
桐ヶ谷誠「思う事?なんだい?」
中島蒼「これは例えばの話なんだけどさ。AIに対してこれやって欲しいってインプットしたら、AIはずっとそれをやってくれるでしょ?」
桐ヶ谷誠「そうだな・・・」
中島蒼「例えばそうね・・・AIに切手を作ってって頼めば、AIはそれをやってくれる・・・もし素材が無くなったり、誰かの介入が」
中島蒼「あったら、どうなるかしら?」
桐ヶ谷誠「確かにAIに切手を作ってくれって頼めばそれを第一にやってくれる・・・AIに学習能力があれば自力で素材調達もできる・・・」
桐ヶ谷誠「・・・!?学習能力!?」
中島蒼「そうよ、切手を作る事を第一にするAIが自力で素材を調達できる様になれば、AIはどんな事をしても切手を作りに行く」
中島蒼「でしょうね・・・これがハッカーとかの悪い奴らなんかにやられたら、誰でも想像できる結果になるわね・・・」
桐ヶ谷誠「確かに・・・そんな風に考える奴がいてもおかしく無いよな・・・でも、一度便利を覚えたら、もう引き返せない・・・」
中島蒼「そうよね、強い力は心を支配し、場合に寄っては人を裏切る・・・周囲の大人が確りしてくれればいいんだけど・・・」
桐ヶ谷誠「だな・・・」
中島蒼「まぁ、あたし達がこんな話してもできる事なんてタカが知れてるし、この話はここまでにしましょう。所で誠、あの話、」
中島蒼「考えてくれた?」
桐ヶ谷誠「あの話?あぁ、考えては見たよ?でも、やっぱり俺には母さんを放っておけない・・・」
中島蒼「えぇ?まだあんなどうしようも無い人の安否が気になる訳?あたし正直放っておいて良いと思うけど・・・」
桐ヶ谷誠「そう言うなよ・・・前にも言ったろ?俺にとっての母さんは、あの人しかいないって・・・」
中島蒼「・・・まぁ、そこまで言うなら無理強いはできないわね・・・」
中島蒼「でもこれだけは言うわ、危なくなったら逃げなさい!それであたしの所に来て!」
桐ヶ谷誠「・・・ありがとう・・・そろそろ行こうか・・・」
中島蒼「えぇ、また明日ね!」
ロボット「オ二人共、ソロソロ時間デス、家ヘトオ戻リシマショウ・・・」
少年「えぇ!?まだ遊びたいよ!!」
少女「そうだよ!まだ外明るいじゃん!」
ロボット「イケマセン、ゴ両親ガ心配シマス・・・言ウ事ヲ聞カナイ場合ハ、力付クデ・・・」
少年「わ、分かった!直ぐに帰るから!!」
ロボット「ヨロシイ・・・デハ、オ戻リシマショウ・・・」