指先に魔法はいらない

星月 光

chapter11 感情の萌芽(脚本)

指先に魔法はいらない

星月 光

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〇立派な洋館

〇貴族の応接間
ペンリス城の使用人「ダイン公の体内、及び茶器から 毒物は検出されませんでした」
ペンリス城の使用人「よって、ジュリアン様に 毒害の意志は認められません」
執事長フランク・カッター「バカな・・・ そんなはずは・・・」
ジュリアン・ダイン「フランク」
ジュリアン・ダイン「主君の息子を疑って気は済んだ?」
ジュリアン・ダイン「無論、こちらの気は済んでない」
ペンリス城の使用人「城までご同行願います」
執事長フランク・カッター「わたしを疑うのですか!?」
ジュリアン・ダイン「父上が倒れたとき 最後に会った人物」
ジュリアン・ダイン「怪しまれるのは当然だろ?」
執事長フランク・カッター「長年お側で仕えたわたしが 旦那様を害するはずがございません!」
執事長フランク・カッター「それに、毒物は検出されなかったのでは?」
ジュリアン・ダイン「弁明は王宮の方々の御前で」
ジュリアン・ダイン「さあ、連れて行ってください」
執事長フランク・カッター「ジュリアン様!」
執事長フランク・カッター「どうかご容赦を! お助けください!」
ジュリアン・ダイン「兄上とわたしが無実を訴えたとき」
ジュリアン・ダイン「フランクは聞き入れようとしたっけ?」
ジュリアン・ダイン「潔白なら、自らの手で証明するがいい」
執事長フランク・カッター「・・・承知いたしました」
執事長フランク・カッター「旦那様のためにも、必ずや」
ジュリアン・ダイン(潔白を証明できようが、できまいが)
ジュリアン・ダイン(ダイン家にもう、おまえの居場所はない)

〇島の家
サフィ「珍しいですよね アストリッドが買い忘れなんて」
ピオノノ・ダイン「う・・・うん」
サフィ「どうしたんですか?」
ピオノノ・ダイン「サフィは、さっきの・・・」
ピオノノ・ダイン「ボクが・・・その・・・」
ピオノノ・ダイン「いや・・・ なんでもない」

〇西洋の市場
サフィ「えっと・・・」
サフィ「これでお釣り、ピッタリですよね?」
ピオノノ・ダイン「銅貨、あと1枚出さないと」
サフィ「あっ、そっか」
サフィ「計算って難しいですね」
ピオノノ・ダイン「うん・・・」
ジョージ・ミラー(島民)「・・・ピオくん 修行がつらいんですか?」
ジョージ・ミラー(島民)「元気がなさそうに見えるので」
サフィ「そうなのですか?」
ピオノノ・ダイン「いや、そういうわけじゃ・・・」
ジョージ・ミラー(島民)「魔王様は容赦のない方ですから」
ジョージ・ミラー(島民)「4年前、初めてこの島に来たとき──」

〇海辺
マーサ・ミラー(島民)「や、やめてください!」
アストリッド「邪魔なんだけど」
ごろつき「なんだおめえ 見かけねえ顔だな?」
アストリッド「邪魔だと言ったのが聞こえなかった?」
アストリッド「それとも、言語を理解する知能がないの?」
ごろつき「クソガキが!」
アストリッド「たいした威力じゃないな」
アストリッド「闇魔術はやっぱり攻撃向きじゃないか」
マーサ・ミラー(島民)「魔法・・・!?」
ごろつき「やッ、やめろ──」
アストリッド「魔法剣はそこそこ有用かな」
アストリッド「とはいえ、さらなる改良は必須か」
アストリッド「そこのおまえ」
マーサ・ミラー(島民)「こ、殺さないで・・・っ」
アストリッド「悪魔が封印されてる場所」
アストリッド「どこ?」
マーサ・ミラー(島民)「北の丘の頂上・・・です」
アストリッド「どうも」

〇西洋の市場
サフィ「すごーい」
ピオノノ・ダイン「・・・そうだな」
ピオノノ・ダイン(いろんな意味で)
ジョージ・ミラー(島民)「でも、魔王様も丸くなりましたよ」
ジョージ・ミラー(島民)「以前の魔王様なら、弟子なんか 絶対にとらなかったでしょうし」
ジョージ・ミラー(島民)「あの日だって、サフィさんを探して 町中を走り回ったりなんて──」
ピオノノ・ダイン「師匠がそんなことを?」

〇西洋の市場
ジョージ・ミラー(島民)「みんなに居場所を聞いて回ってね」
ジョージ・ミラー(島民)「あんなに必死な魔王様は初めて見ましたよ」

〇西洋の市場
サフィ「そうだったんですか?」
ジョージ・ミラー(島民)「おっと!」
ジョージ・ミラー(島民)「これは他言無用でした」
ジョージ・ミラー(島民)「これ、サービスするので」
ジョージ・ミラー(島民)「魔王様には内緒にしてくださいね」
ピオノノ・ダイン(師匠・・・)
ピオノノ・ダイン(なんだかんだ、ボクたちを 心配してくれてるんだな)
「ーーオ」
ピオノノ・ダイン(弟子としてちゃんと期待に応えないと)
「ピオ!」
サフィ「荷物、貸してください」
ピオノノ・ダイン「あっ、うん」
ピオノノ・ダイン「あっ!」
サフィ「あーっ!」
サフィ「もう、ピオ! ちゃんと渡してください!」
ピオノノ・ダイン「ごっ、ごめん」
ピオノノ・ダイン「ビックリして、つい」
ピオノノ・ダイン「えっと・・・」
ピオノノ・ダイン(指先が触れあって動揺してしまった)
ピオノノ・ダイン(なんて言えないし)
ピオノノ・ダイン「そ、それより!」
ピオノノ・ダイン「落としたやつ、傷ついてないかな?」
サフィ「そこだけ切っちゃえばだいじょうぶ!」
ジョージ・ミラー(島民)「ピオくん、もしかして」
ジョージ・ミラー(島民)「いえ・・・」
ジョージ・ミラー(島民)「修行、頑張ってくださいね」
ピオノノ・ダイン「ありがとうございます」
サフィ「さ、帰りましょ!」
ジョージ・ミラー(島民)「ひょっとして ・・・恋?」
ジョージ・ミラー(島民)「いや、ありえないか」

〇空
島民の男性「魔術師が恋なんて、するわけないしな」

〇おしゃれな居間
サフィ「ただいまー」
サフィ「あれ?」
ピオノノ・ダイン「出かけてるのかな」
サフィ「アストリッドー! お留守ですかー?」
アストリッド「人の名前、大声で呼ばないでくれる?」
サフィ「あっ、地下にいたんですね」
ピオノノ・ダイン「師匠、聞きたいことが──」
ピオノノ・ダイン「あ、あのときの魔物!?」
エレメンタル「誤認識を訂正しマス」
エレメンタル「ワタシはエレメンタル 魔物ではありまセン」
サフィ「しゃべった!」
アストリッド「わたしが造った魔法生物だからね」

〇薬屋
アストリッド「わが血を以て、今、目覚めよ」
エレメンタル「命令を承認 実行しマス」
アストリッド「次は自律思考のテストをするよ」
アストリッド「状況設定は──」
「アストリッドー! お留守ですかー?」

〇おしゃれな居間
アストリッド「調整作業に戻るから、夕飯は不要だよ」
サフィ「えーっ」
サフィ「お腹空いてると元気出ませんよ?」
アストリッド「一食抜いたくらいで──」
アストリッド「ーー前言撤回」
アストリッド「ただ、こいつも同席させるよ」
サフィ「えーっと」
サフィ「アストリッドと魔法生物さんも ご飯、食べるってことですよね」
サフィ「いっぱい作らなきゃ!」
アストリッド「こいつに食事は不要だよ」
サフィ「ピオ、手伝ってください!」
アストリッド「あの調子じゃ聞いてなさそうだね」
アストリッド「ま、消化器官は一応作ったし」
アストリッド「食事を取ったらどうなるか試してみようか」
エレメンタル「命令を承認しマシタ」
ピオノノ・ダイン「・・・・・・」
アストリッド「さっさと手伝いに行ったら?」
アストリッド「調理の補助をする程度なら おまえにもできるんじゃない?」
ピオノノ・ダイン「とっ、当然です!」
アストリッド「あいつ、妙に挙動不審じゃない?」
エレメンタル「心拍数の上昇および 瞳孔の散大を確認できマス」
アストリッド「・・・・・・」

〇L字キッチン
サフィ「ピオ! そこの調味料、取ってください」
サフィ「ピオ?」
ピオノノ・ダイン「あっ、ごめん」
ピオノノ・ダイン(平常心を保つための方法 師匠が教えてくれたのに)
ピオノノ・ダイン(なんだか、うまくいかない)
ピオノノ・ダイン(こんなことで、本当にだいじょうぶかな)

〇森の中の小屋

〇おしゃれな居間
アストリッド「甘みが強いトマトだね」
アストリッド「なに、ニヤニヤして」
サフィ「なんでもないでーす」
ピオノノ・ダイン「ところで、テストって?」
アストリッド「たとえばの話だけど──」

〇海辺
マーサ・ミラー(島民)「や、やめてください!」

〇おしゃれな居間
アストリッド「おまえらなら、どう行動する?」
サフィ「はーい!」
サフィ「もちろん助けます!」
アストリッド「二次被害って知ってる?」
アストリッド「溺れた子どもを助けるため 水中に飛び込んで自分まで溺れる」
アストリッド「つまり、寝言は寝てから言えってこと」
サフィ「えっと、じゃあ」
サフィ「ピオかアストリッドを呼びます!」
アストリッド「見て見ぬ振りをするって手もあるけど?」
サフィ「ダメです、そんなの!」
アストリッド「正義感が強いのはけっこうだけど」
アストリッド「他人を助けようとする前に 自分を守れるようになるべきじゃない?」
サフィ「じゃあ、剣を買います!」
アストリッド「それで人を斬れるなら、そうすれば?」
ピオノノ・ダイン「師匠、そういう言い方はやめてください」
ピオノノ・ダイン「師匠のおっしゃること、正しいと思います」
ピオノノ・ダイン「でもボクは・・・」
ピオノノ・ダイン「強い者だけが正義を主張できるなんて そういうのは、間違ってると思います」
ピオノノ・ダイン「うまくは言えませんが」
アストリッド「・・・おまえ、やっぱり 貴族社会には向いてないね」
ピオノノ・ダイン「そうですね」
ピオノノ・ダイン「だからボクは、ダイン家には戻らず」
ピオノノ・ダイン「サフィの記憶を取り戻す手伝いをします」
アストリッド「おまえら、一緒に行くつもりなの?」
サフィ「そうなんです!」
アストリッド「・・・ふーん?」
サフィ「次、ピオの番ですよ」
サフィ「ほら、手を挙げて!」
ピオノノ・ダイン「挙手制なのか?」
アストリッド「答えなくていいよ 聞くまでもないから」
アストリッド「ベルクラインに行くんなら その剣は返してもらおうか」
サフィ「アストリッドがピオにあげた剣ですね!」
アストリッド「貸しただけだよ」
アストリッド「それ、ベルクライン兵が使う剣だから」
アストリッド「持ってるとあらぬ疑いをかけられるかもね」
ピオノノ・ダイン「ああ、どおりで」
ピオノノ・ダイン「ベルクラインでしか採取できない鉱物が 使われているとは思ってたんです」
サフィ「なんでそれ、持ってるんですか?」
アストリッド「殺して奪い取ったから」
アストリッド「――って言ったらどうする?」
ピオノノ・ダイン「わ、悪い冗談はやめてください」
アストリッド「騙されて利用されないよう せいぜい気をつけることだね」
サフィ「はーい」
アストリッド「で、おまえは?」
エレメンタル「設定された条件で検証中」
エレメンタル「すべて排除しマス」
アストリッド「・・・なぜ?」
エレメンタル「争いの火種は不要だからデス」
エレメンタル「危険の芽を摘むことが 恒久的な平和への近道かと」
アストリッド「思考停止だね」
エレメンタル「なぜデスか」
アストリッド「なぜだと思う?」
エレメンタル「重大なエラー発生 強制終了しマス」
アストリッド「自律思考の調節、まだ必要か」
アストリッド「ま、おまえの修行が終わるまで どっちにしろ、この島を離れられないし」
サフィ「アストリッドも旅に出るんですか?」
アストリッド「この島での研究はあらかた終わったからね」
ピオノノ・ダイン「でも、師匠がいなくなると また治安が悪化するのでは」
アストリッド「知ったことじゃないけど?」
アストリッド「とはいえ、夢見が悪いのは否定しない」
アストリッド「だからこいつを造ったわけ」
アストリッド「保守管理が永久に不要 魔力を自身で生成できる」
アストリッド「知性を持ち、他者との意思疎通が可能」
アストリッド「前に造ったのはうまくいかなかったけど」
アストリッド「血を入れたら、知力が飛躍的に上昇したよ」
サフィ「アストリッドの血で 頭がよくなるんですか?」
サフィ「いいなー」
サフィ「ねっ、ピオ」
ピオノノ・ダイン「えっ・・・あ」
アストリッド「――ピオ」
アストリッド「わたしに訊きたいことがあるんだっけ?」
ピオノノ・ダイン「・・・その」
ピオノノ・ダイン「・・・別の場所で・・・」
アストリッド「かまわないけど、手短にね」
サフィ「あっ・・・」
サフィ「・・・あれ?」
サフィ(なんだろ、この気持ち・・・)

〇怪しげな酒場
船乗り「お待たせ!」
船乗り「あれ?」
船乗り「まだ誰も来てないのか?」

〇怪しげな酒場
船乗り「みっ、みんな!?」
「う・・・」
船乗り「しっかりしろ!」
「ダイン公・・・」
「ダイン公の配下が・・・ 口封じのために・・・」

次のエピソード:chapter12 崩壊の序曲

コメント

  • アストリッドさんの島・初来訪シーン……いやぁ、クール鬼畜カッコよすぎだろうな件……✨
    そんな御方が街中を走り回ってサフィちゃん探すっ……うっ……😇😇😇モエッ…
    新しいペット(違)も増えて賑やかになりつつ、一方その頃……殺伐が凄まじい限りでギャップがっ……!

  • 不安定な様子のピオくん、ハラハラしながらも見守りたくなります😊 ピオくんもひとつ大人になるのかなーと思う反面、魔法は大丈夫かな……と心配に😥
    そんなピオくんのダイン家が、不穏どころかかなり危険な様子で…😰 島の内外ともに大きく話が動き始めて、ドキドキの展開ですね✨

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