いわく鑑定士

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〈交渉が成功する〉ネクタイ(脚本)

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〇時計台の中
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた呪いの品が存在します」
鑑定士「私はそんな〈いわく〉付きの品専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、一体おいくらになるのでしょうか・・・」

〇時計台の中
安原雄斗「鑑定をお願いします」
鑑定士「『ネクタイ』ですか」
安原雄斗「僕を変えたネクタイです」
安原雄斗「何があったか聞いてくれますか?」

〇大企業のオフィスビル
  三ヶ月前
「安原ぁっっ!!」

〇オフィスのフロア
課長「どういうことだよ、さっきのはぁ!」

〇小さい会議室
安原雄斗「えーと、当社の強みは、その・・・」
安原雄斗「た、耐震性能と、あと、えーと・・・」
商談相手「もうちょっと、話す内容をまとめてから来てもらえませんかね?」
商談相手「こちらも暇ではないので」
安原雄斗「す、すみません・・・」
商談相手「では、今日のところはこれで」
課長「お待ちくださ──」
課長「ちっ!」

〇オフィスのフロア
課長「お前、入社して何年目だ!?」
安原雄斗「も、もうすぐ三年です・・・」
課長「もう新人じゃねぇんだぞ!」
課長「いっつも、おどおどしやがって!」
課長「そんなんだから、交渉がうまくいかねぇんだよ!」
安原雄斗「あ、明日の商談はきっと成功させます・・・」

〇劇場の舞台
スタイリッシュ&マッチョ 細井「あ〜、一度でいいから、女の子に可愛く告白とかされてみたいわあ」
スタイリッシュ&マッチョ 太田「わかった、任せろ!」
スタイリッシュ&マッチョ 細井「え、何? どこ行ったん!?」
スタイリッシュ&マッチョ 太田「好きよ、細井くん!」
スタイリッシュ&マッチョ 細井「いや、どこが可愛いねん!」
スタイリッシュ&マッチョ 太田「ちゃんと可愛い効果音をつけたでしょ!」
スタイリッシュ&マッチョ 細井「”可愛く”って、効果音の話ちゃうねん!」

〇映画館の座席
篠原知波「あっはは!」
スタイリッシュ&マッチョ 太田「じゃあ、これは!?」
篠原知波「あ〜おもしろっ! ね、雄斗!」
安原雄斗「そうだね・・・」
篠原知波「浮かない顔だけど、どうしたの?」
篠原知波「つまんない?」
安原雄斗「い、いや、すごく面白いよ・・・」
篠原知波「だったら、そんな顔をするなんてありえないでしょ」
安原雄斗「ごめん・・・」

〇劇場の舞台
「どうも、ありがとうございましたー」

〇中規模マンション
篠原知波「ちょっと、うちに寄っていって」
安原雄斗「ごめん、明日も大事な商談があるから・・・」
篠原知波「私のいうことが聞けないっていうの!?」
安原雄斗「い、行かせていただきます!」

〇女の子の部屋
篠原知波「本当は、記念日に渡そうと思っていたんだけどね〜」
篠原知波「じゃん!」
安原雄斗「ネクタイ・・・?」
篠原知波「そ! 仕事がうまくいくように!」
篠原知波「赤は勝負の色だし、験担ぎにいいかなって」
篠原知波「最近、よく仕事のことで悩んでいるみたいだから・・・」
安原雄斗「知波ちゃん・・・!」
篠原知波「頑張るのはいいけど、無理するんじゃないわよ」
安原雄斗「ここのところ仕事の交渉が全然うまくいかなくて、」
安原雄斗「向いてないのかなって、悩んでいたんだ」
安原雄斗「でも、このネクタイのおかげで元気出てきた」
篠原知波「貸して、つけてあげる」

〇女の子の部屋
安原雄斗「ど、どう? 僕には少し派手じゃない?」
篠原知波「いいじゃん! 似合っているよ!」
篠原知波「顔色も明るく見えるし!」
安原雄斗「そ、そうかな? ちょっと自信ついたかも」
安原雄斗(これがあれば、きっと──)
安原雄斗(苦手な交渉も、成功するはず・・・!)

〇綺麗な会議室
  翌日
安原雄斗「本日ご提案したいのは──」
商談相手「あれ? ちょっと、それ──」
安原雄斗「えっ、な、何か?」
商談相手「いいネクタイですね!」

〇オフィスのフロア
課長「聞いたぞ! 一人で契約をとれたらしいな!」
安原雄斗「このネクタイのおかげで、相手方と話が弾みまして・・・」
課長「この調子で、頼むぞ!」
後輩「先輩、ちょっと相談にのってもらってもいいですか?」

〇工事現場
クレーム客「前にもらった見積と金額が違うんだけど、どういうこと!?」
後輩「ですから、それは建材を変更したからで──」
クレーム客「うるさい! もとの金額で施工しろ!」
後輩「もともと、あっちが変更しろといってきたんですよ!?」
安原雄斗「見たところ、お客様は断熱効果を上げたかったのですよね?」
安原雄斗「でしたら、こちらの建材はいかがでしょう?」
安原雄斗「もっとお安くなりますよ」

〇オフィスのフロア
後輩「先輩のおかげで、助かりました!」
後輩「今度、一杯奢らせてください!」

〇海水浴場
スタイリッシュ&マッチョ 細井「我々は今、ハワイに来ております!」
スタイリッシュ&マッチョ 太田「青い砂、白い海のキレイな景色です!」
スタイリッシュ&マッチョ 細井「いや、”青い砂”って何やねん!」
スタイリッシュ&マッチョ 細井「怖いだけやないか!」

〇女の子の部屋
篠原知波「あはは! いいなぁ、ハワイ!」
篠原知波「一度でいいから、行ってみたいわ」
安原雄斗「そうだ、聞いてよ!」
安原雄斗「この間、やっと契約がとれたんだ!」
篠原知波「やったじゃん! おめでとう!」
安原雄斗「このネクタイのおかげかな」
安原雄斗「これをつけていると、自信が漲るんだ」
篠原知波「思いこみの力ってヤツかな」
篠原知波「とにかく、あげた甲斐があったよ」
篠原知波「・・・ん?」
篠原知波「そのネクタイ、少し汚れてる」
安原雄斗「えっ」
篠原知波「コーヒーをこぼしたんじゃない?」
安原雄斗「どうしよう、これがないと、僕・・・」
篠原知波「これくらいなら、大丈夫よ」
篠原知波「今夜のうちにシミ抜きしておくから、次のデートのときにでも持っていくわよ」
安原雄斗「ありがとう!」
篠原知波「お礼はハワイ旅行ね!」
篠原知波「・・・といいたいところだけど、スタイリッシュ&マッチョのお笑いライブでいいわ」
安原雄斗「あはは、了解」

〇バスの中
安原雄斗「降ります!」

〇玄関の外
篠原知波「はーい」
篠原知波「あれ、雄斗!? 戻ってきたの?」
安原雄斗「知波ちゃん、ネクタイの汚れは落ちた!?」
篠原知波「え? うん」
篠原知波「でも、まだ濡れているわよ。ほら」
安原雄斗「大丈夫、このくらいすぐ乾くよ」
篠原知波「えー、風邪引くわよ!?」
篠原知波「っていうか、こんなことしていて、会社遅刻しない?」
安原雄斗「遅刻だけど、どうしてもこのネクタイがないとダメだから」
篠原知波「え? そのためにわざわざ?」
安原雄斗「うん、もう行くね」
安原雄斗「ネクタイ、ありがとう!」
篠原知波「雄斗のヤツ、どうしたんだろ・・・」

〇オフィスのフロア
課長「安原、また契約をとったらしいな!」
課長「絶好調じゃないか!」
安原雄斗「このネクタイのおかげですね」
安原雄斗「これをしていると、自信が湧いてくるんです」
安原雄斗「もうこのネクタイを外せませんよ」

〇本棚のある部屋
安原雄斗「お待たせ!」
友だち「よく来たな、雄斗!」
友だち「あれ? 今日、仕事だったの?」
安原雄斗「いや、休みだよ」
友だち「じゃあ、何でスーツ?」
安原雄斗「ネクタイを外したくなくて」
「・・・は?」
友だち「それで宅飲みなのに、わざわざスーツで来たの?」
安原雄斗「もちろん!」

〇オフィスのフロア
課長「先月の営業成績を発表するぞー」
課長「まず、安原ぁ! お前なぁっ!」
安原雄斗「ひっ」
課長「よくやった! 一位だ!」
課長「特に、後半の巻きかえしがすごかったな」
課長「そんで今期の売上目標を大きく超えたから、うちの部署に臨時ボーナスが決まったぞ!」
後輩「先輩のおかげですね!」
安原雄斗「いや、このネクタイのおかげだよ」
課長「何だ、お前またそれをしているのか」
課長「いい加減、別のやつに変えたらどうだ?」
安原雄斗「は? 冗談じゃありませんよ、 別のネクタイなんて・・・」
課長「いや、いつも同じというわけにもいかんだろ」
安原雄斗「課長だって、けっこうな頻度で同じネクタイですよね」
安原雄斗「奥さんと離婚の危機らしいじゃないですか!」
課長「なっ」
安原雄斗「部下の服装に口を出すような、」
安原雄斗「そのパワハラ気質を改めないからですよ!」
課長「ぐっ・・・」
後輩「お、落ちつきましょう、先輩!」
課長「ちっ・・・」
課長「ネクタイごときで、何を熱くなっているんだ?」
課長「俺は、そんなものなんか興味ねぇよ!」
課長「勝手にしやがれ!」
安原雄斗「はあ・・・はあ・・・」
後輩「先輩、ちょっと怖いっすよ」
後輩「いつもの先輩じゃないみたいっていうか・・・」
後輩「大丈夫っすか?」
安原雄斗「大丈夫・・・」
安原雄斗「このネクタイがあれば、何もかもうまくいくはずなんだ」

〇女の子の部屋

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コメント

  • プロジェクトお疲れ様でした!
    プロポーズシーンは、普通ならアレですが彼女ならそう答えるかという納得感。お笑い好き伏線がばっちり効いてました^^
    明酉さんの立ち絵も、このお話専用にするにはもったいない素敵なデザインでした。ただ、アロハシャツにネクタイを頭に巻くお話…思いつきません。笑

  • オチがほっこりしていて面白い☺️
    ネクタイ巻いてる立ち絵も良いですね!
    赤いネクタイを見ていると何故かタコ🐙を思い出してしまいます。

  • 読後感良くてやっぱりいいですね。
    頭にネクタイ立ち絵はタップノベル中でもこの話くらいでしか見れないと思いました。タコも懐かしいですね

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