いわく鑑定士

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〈美味しく漬かる〉ぬか床(脚本)

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〇時計台の中
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた呪いの品が存在します」
鑑定士「私はそんな〈いわく〉付きの品専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、一体おいくらになるのでしょうか・・・」

〇時計台の中
竹下 正「ある人との思い出の品といいますか・・・」
竹下 正「なんだか照れるな」
鑑定士「どうぞ、ご遠慮なく」
竹下 正「これなんですが・・・よいしょっと」
鑑定士「甕(かめ)、ですか」
竹下 正「甕に入ったぬか床です。ほら」
  ムワーン・・・
竹下 正「私、こう見えて料理が趣味でしてね」
竹下 正「ぬか漬けは一年ほど前に始めたんですが、 これがなかなか奥深くて────」
鑑定士「それでは〈いわく〉についてお聞かせいただけますか」
竹下 正「そうでした」
竹下 正「事の始まりは────」
  ムワーン・・・
鑑定士「・・・コホン」
竹下 正「いけない、ぬか床が乾いてしまう!」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
  ヌチャ、ヌチャ・・・
「おはよう。今日も綺麗だ────」
  ヌチャ、ヌチャ・・・
  ペロッ
「味もいい────」
  ヌチャ、ヌチャ・・・
「今日は君をいただこう────」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
竹下 正「みんな、今日もよく漬かってるな!」
竹下 正「いいぞー、断面が輝いてる!」
竹下 正「お前は晩飯用な〜」
竹下 正「じゃ、行ってきます」
竹下 正「よーく発酵しとけよ!」

〇オフィスビル

〇警察署の食堂
  ポリポリポリポリ
竹下 正「ダイコン姫、今日もしっかりぬか床の旨味を吸収できているぞ」
ダイコン「ありがたきお言葉!」
竹下 正「ニンジンボーイ!君は素材の甘みがしっかり引き出されているよ!」
ニンジン「だろー!?」
竹下 正「キュウリ番長。君はいつも以上に────」
松本 勇斗「竹下課長!! 先ほどは申し訳ございませんでした!!」
竹下 正「休憩中にどうしたの」
松本 勇斗「自分のミスのせいで、課長にご迷惑を────」
竹下 正「先方との話はついてる、問題ない」
松本 勇斗「でも申し訳なくて────あの、これ」
松本 勇斗「お詫びの品を────」
竹下 正「私に?私はクライアントではないけど」
松本 勇斗「えっと、あの・・・すいません・・・」
部長「竹下くん、 新人相手にちょっと冷たすぎるんじゃない?」
部長「教育係なんだから、面倒みてあげてね」
竹下 正「はぁ」
部長「人が話してんのにポリポリしない!」
部長「松本くんもね。彼、無愛想だけど仕事は優秀だから。頼ってあげて!」
松本 勇斗「以後気をつけます! そうだ、部長もお席────」
部長「私はいいわ。2人でランチ楽しんで!」
松本 勇斗「じゃあ・・・隣、失礼します」
松本 勇斗「課長、手作りですか?」
竹下 正「君は・・・コンビニ弁当?」
松本 勇斗「そうなんですよ、最近は3食全部」
竹下 正「身体に悪いね」
松本 勇斗「課長のは野菜たっぷりで羨ましー!」
竹下 正「そう?食べる?」
松本 勇斗「へっ」
竹下 正「嫌?」
松本 勇斗「いえ、喜んで!!じゃあキュウリを」
  ポリポリ
松本 勇斗「ウグッ!」
松本 勇斗「なんだこれ・・・ 普通の野菜の味じゃない・・・!」
竹下 正「ぬか漬けだからね」
松本 勇斗「ぬか漬け・・・ってこんな味でしたっけ? めっちゃマズ・・・」
竹下 正「え?不味い?」
松本 勇斗「違うんですッ!えっと、しょっぱいというか、苦いというか、なんか、奥深い・・・」
竹下 正「奥深い!?そうなんだよ!!」
竹下 正「この味に辿り着くまでに、どれだけ苦労したかことか・・・!!」
松本 勇斗「ご自身で漬けたんですね、ゴホッ・・・ウッ」
松本 勇斗「ちょっとお先に、失礼します・・・」
竹下 正「キュウリ番長・・・褒めてもらえたね」
キュウリ「押忍!」
竹下 正「そうだ、いいことを思いついたよ────」

〇施設のトイレ
松本 勇斗「死ぬかと思った・・・って、課長!?」
竹下 正「松本くん、明日の夜は空いてる?」
松本 勇斗「はい・・・空いてますが」
竹下 正「家においでよ」
松本 勇斗「えぇ!?」
竹下 正「嫌、なのかな?」
松本 勇斗「いえ!行けます、行きます!!」
竹下 正「よかった。じゃあ仕事終わりに」

〇黒背景
  ヌチャ、ヌチャ・・・
「おいしくなーれ、おいしくなーれ・・・」
  ヌチャ、ヌチャ・・・

〇中規模マンション

〇シンプルな一人暮らしの部屋
竹下 正「毎食コンビニ弁当って言ってたからさ」
松本 勇斗「部長に言われたからって、そこまで面倒みていただかなくても・・・」
竹下 正「どうぞ、召し上がれ」
松本 勇斗「いただき・・・ます・・・」
松本 勇斗「ウッ!この肉・・・なんか甘・・・」
竹下 正「ぬか漬けだよ。 豚ロースを1日漬け込んだんだ」
竹下 正「豆腐も食べてみて」
松本 勇斗「グフッ・・・!食べたことない味・・・」
竹下 正「水切りした木綿豆腐を数時間漬けてある」
松本 勇斗「さすがに味噌汁は大丈・・・ブハッ・・・!!」
竹下 正「隠し味にぬか味噌を入れてるんだ」
松本 勇斗「ウゥッ・・・!飲み込め・・・ない・・・」
松本 勇斗「ブハァッ!!もう、帰りたい・・・」
竹下 正「もっと食べたい?お代わりもあるよ」
松本 勇斗「いえ!もうお腹いっぱいです!」
竹下 正「そうか、じゃあ食後にお菓子でも」
松本 勇斗「お菓子までぬか漬けなんですか・・・」
竹下 正「ちゃんと漬かってるかなー」
  ヌチャ、ヌチャ・・・
松本 勇斗「あれ?これって・・・」
竹下 正「松本くんが昨日渡してきたクッキーだよ」
松本 勇斗「もしかして自分・・・ 今、パワハラ受けてます?」
竹下 正「え?どうして?」
松本 勇斗「だって!必死の思いで渡したクッキーをぬか漬けにされるし!」
松本 勇斗「めちゃくちゃ不味いぬか漬け御膳食わされるし!!」
竹下 正「私のぬか漬けが不味いだと!? そんなはずがない!!」
松本 勇斗「不味いですよ!! このぬか床、腐ってるんじゃないすか!!」
竹下 正「ちょ、勝手に触るなっ」
松本 勇斗「このぬか床め────」
  ヌチャアッ
松本 勇斗「ぬか床が光った!?」
  ヌチャ、ヌチャ・・・
竹下 正「とにかく食べてみろっ────」
  サクッ
松本 勇斗「あれ、美味い」
  サクサクッ
竹下 正「本当だ、美味しい」
松本 勇斗「味見してなかったんすかぁ」
竹下 正「これは奇跡だ・・・! クッキーくん、やったぞ!!」
クッキー「うっす!」
松本 勇斗「クッキーくん・・・?まぁいいや、 もう1枚いいっすか?」
竹下 正「松本くん、動かないで!」
松本 勇斗「ひっ」
竹下 正「口元にクッキーの粉が」
  スッ────
松本 勇斗「課長の手・・・ めっちゃぬかの匂いがします・・・」
竹下 正「松本くん・・・顔が赤いけど、大丈夫?」
松本 勇斗「え?なんでだろ?あれ────」

〇中規模マンション

〇シンプルな一人暮らしの部屋
松本 勇斗「ハッ!!ここは!?」
  ヌチャ、ヌチャ・・・
松本 勇斗「食パンと、肉まん・・・!?」
竹下 正「松本くん、起きた?」
松本 勇斗「竹下課長!昨日、あのまま寝ちゃって・・・ すいませんでしたッ!!」
竹下 正「そんなことはいいんだよ! 私は松本くんに感謝してるんだ!」
松本 勇斗「感謝?」
竹下 正「昨日からずっと考えていたんだ。どうしてクッキーが美味しく漬かったのか・・・」
竹下 正「知ってるか?ぬか床は手の常在菌からも影響を受けるんだ。ということは・・・」
松本 勇斗「ということは?」
竹下 正「君の手の常在菌が作用して、この完璧なぬか床が完成したんだよ!!」
竹下 正「つまり松本くん、全ては君のおかげなんだ!!」
松本 勇斗「はぁ・・・なんか、すごい情熱っすね」
竹下 正「まぁね・・・毎日かき混ぜていると、 愛着が湧いてきちゃって」
松本 勇斗「その気持ちは、分かる気がします! 自分もペット飼ってるんで」
竹下 正「分かってくれて嬉しいよ松本くん!」
竹下 正「そうだ、よかったら朝ごはんも食べ────」
松本 勇斗「そろそろ失礼します!! 服は洗って返しますので!」
竹下 正「またいつでもぬか床かき混ぜに来てくれていいから!」
  ヌチャ、ヌチャ・・・
松本 勇斗「財布!?」
竹下 正「あぁ、天然皮革は食べられるって 言うじゃないか」
松本 勇斗「それはさすがに・・・ しかもお金が入ったままですよ!?」
竹下 正「本当だ」
松本 勇斗「マッドサイエンティスト・・・」
竹下 正「ん?」
松本 勇斗「お邪魔しましたぁ!!」

〇オフィスビル

〇オフィスのフロア
松本 勇斗「竹下さん、車回してきますねー!」
竹下 正「おう、よろしく」
部長「竹下くんがこんなに人と打ち解けてるの、 初めて見たわ」
竹下 正「彼は10年に1人の、 いや100年に1人の逸材ですよ」
部長「松本くん、頑張ってんのね」
部長「たまにはご褒美に、 美味しいものでもご馳走してあげたら?」
竹下 正「ご馳走・・・」
竹下 正「週3で晩御飯作ってあげてますけど」
部長「え、あんたたち本当に仲良いのね・・・」

〇車内
松本 勇斗「雨強くなってきたなー・・・ 早く会社に戻りましょう」
竹下 正「松本、何か食べたいものはあるか?」
松本 勇斗「どうしたんすか急に?特にないですけど」

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コメント

  • これはっ!!すごい衝撃の話ですが、凄いです!!!!!ぬかに漬けた野菜たちの擬人化が凄く印象的と言いますか、良い演出ですねー✨👏☺️

    新人くんはとても可哀想ですが、ストーリーはすごかったです!!!✨☺️

    あと余談ですが、私も糠床にハマっていたことがあります✨☺️糠床ダメにしちゃって今はやってないのですが、、、

    不思議な魅力がありますよね✨糠床✨😆

  • 公開おめでとうございます
    いや、なかなか衝撃的でしたよ、いろいろと😅
    ハムのぬか漬けに、エピソード段階でのストーリーにキャラの大幅変更。クライマックスの「おいしくな〜れ」にマジかぁ😨…と唖然としました。

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