オズワルドの裁定

シュウ

第14話 ザッカリーの奇蹟(脚本)

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〇雪洞
霧生華清(きりゅうかせい)「──アイク」
霧生華清(きりゅうかせい)「アイザック・カーター、なんですね」
キース・フォスター「今はもう、キース・フォスターだよ」
キース・フォスター「たった一人でカーター家を名乗るなんて」
キース・フォスター「笑い話にもならないじゃないか」
霧生華清(きりゅうかせい)「それでアドルフさんと同じファミリーネームを?」
  今日から坊主はフォスターだ
  俺とお揃い
  嬉しいねェ?
キース・フォスター「何でも良かっただけだよ」

〇西洋の街並み
霧生華清(きりゅうかせい)「名前も・・・何でも良かったんですか?」
キース・フォスター「Mr.キースは──憧れだったんだ」
キース・フォスター「目的のためならどんな苦しい選択もいとわない」
キース・フォスター「先生がMr.キースを超えようとした気持ち 今ならわかるよ」
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さん・・・」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさんには、何が視えているんですか?」
霧生華清(きりゅうかせい)「指輪を呑み込んだことと関係が?」
キース・フォスター「ああ、実は──」

〇湖畔
  ゲイル
  過去を取り戻せるとしたら、どうする?
  私は──

〇西洋の街並み
キース・フォスター「はあ・・・はあ・・・!」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん!?」
キース・フォスター「・・・問題ない」
キース・フォスター「指輪を呑み込んでから」
キース・フォスター「時々、誰かの記憶が視えるんだ」
霧生華清(きりゅうかせい)「記憶?」
キース・フォスター「ああ」
キース・フォスター「きっと、こいつは指輪の持ち主の記憶──」
霧生華清(きりゅうかせい)「──お祖父さん」

〇田舎の病院の病室
キース・フォスター「遺物はノア湖にある」
キース・フォスター「アーチェの近くだ」
霧生華清(きりゅうかせい)「アーチェの近く?」
霧生華清(きりゅうかせい)「ですが、【ルーカス】で見たマップには──」
キース・フォスター「ああ、映っていなかった」
キース・フォスター「ケイレブたちを欺くための罠、だろうな」
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さんの仕業、ですか」
キース・フォスター「『過去を取り戻してほしい』」
キース・フォスター「それがタイムマシンなんてものじゃなく」
キース・フォスター「指輪が見せる遺物の記憶だとすれば」
キース・フォスター「依頼人は──ノア湖にいる」
霧生華清(きりゅうかせい)「依頼人・・・お祖父さん」
霧生華清(きりゅうかせい)「早速、ノア湖に向かいましょう」
キース・フォスター「ノア湖に行くには列車を乗り継ぐしかないが」
キース・フォスター「時間が惜しい」
キース・フォスター「車で行こう」
霧生華清(きりゅうかせい)「車は【メイナード】に襲撃されて谷底に──」
キース・フォスター「足ならあるよ」
キース・フォスター「おい、聞いているんだろう?」
キース・フォスター「俺と『取引』しないか──子猫ちゃん?」

〇草原の道
アメリア・コールマン「貴方、私を甘く見ているでしょ?」
キース・フォスター「まさか、悪くない話だと思うがね」
キース・フォスター「超古代文明の遺物だ」
キース・フォスター「一生遊んで暮らせるよ」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん」
キース・フォスター「どうせ停止するんだ」
キース・フォスター「パーツの一つや二つ拝借したって罰は当たらない」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさんがそう言うなら」
アメリア・コールマン「足りないわ」
キース・フォスター「何?」
アメリア・コールマン「一人で遊んだってつまらないじゃない」
キース・フォスター「わがままだね」
キース・フォスター「それなら熱い夜をプレゼントするよ」
アメリア・コールマン「うふふ、いいわよ」
アメリア・コールマン「でもね、私気分屋なの」
アメリア・コールマン「一人の男に貢がせるのは性に合わないわ」
アメリア・コールマン「そっちの子を指名しようかしら?」
霧生華清(きりゅうかせい)「自分、ですか?」
キース・フォスター「つれないことを言うじゃないか」
アメリア・コールマン「あら、慌てた顔も男前ね」
キース・フォスター「悪いが、別の──」
霧生華清(きりゅうかせい)「わかりました」
キース・フォスター「先生!?」
霧生華清(きりゅうかせい)「協力していただいているんです」
霧生華清(きりゅうかせい)「自分にできることなら何でもやりましょう」
アメリア・コールマン「うふふ、決まりね」
キース・フォスター「待て! 待った! 待ってくれ!」
霧生華清(きりゅうかせい)「構いませんよ」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさんにばかり負担を強いられませんから」
キース・フォスター「そういう問題じゃない!」
キース・フォスター「あんたは──!」
キース・フォスター「・・・あんたは自分が何をさせられるか わかっているのか?」
霧生華清(きりゅうかせい)「いえ」
キース・フォスター「危険なことだぞ?」
霧生華清(きりゅうかせい)「では、尚のことキースさんには任せられません」
キース・フォスター「じゃあ楽しいことだ!」
霧生華清(きりゅうかせい)「それは楽しみです」
キース・フォスター「クソッ!」
アメリア・コールマン「貴方、結構意地悪なのね」
霧生華清(きりゅうかせい)「そうでしょうか?」
アメリア・コールマン「あら、無自覚?」
アメリア・コールマン「罪な男ね」

〇湖畔
  ノア湖
アメリア・コールマン「日が昇る頃、迎えに来るわ」
アメリア・コールマン「報酬の件、忘れないね」
霧生華清(きりゅうかせい)「さっぱりした方ですね」
キース・フォスター「先生、やはり俺が──」
霧生華清(きりゅうかせい)「何を要求されているかわかっています」
キース・フォスター「何!?」
霧生華清(きりゅうかせい)「ご心配ありがとうございます」
霧生華清(きりゅうかせい)「決して無茶はしません」
キース・フォスター「・・・何もわかっちゃいない」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん! あそこ!」
霧生華清(きりゅうかせい)「湖が割れた・・・!?」
キース・フォスター「何故アイツが先生の腕を持っている!?」
キース・フォスター「アステル山で回収したはずだ!」
キース・フォスター「まさか遺物の力?」
霧生華清(きりゅうかせい)「追いかけましょう!」
キース・フォスター「ああ──」

〇レンガ造りの家
ゲイル・カーター「Mr.キース、これを」
  これは?
ゲイル・カーター「生体管理端末【ヒューゴ】」
ゲイル・カーター「特殊な物質で構成されていてね」
ゲイル・カーター「持ち主の生体情報や記憶を保持できる」
ゲイル・カーター「歩いてきた道も示してくれる」
ゲイル・カーター「誰でもヘンゼルとグレーテル気分だよ」
  ふむ、著名人か?
ゲイル・カーター「はは、機転の利く子供たちさ」
ゲイル・カーター「『誘惑に負けてはならない』と戒めてくれる」
  聡い子どもたちなのだね
ゲイル・カーター「ああ」
ゲイル・カーター「これを貴方に贈ろう」
  君が持っていたほうが良いのでは?
ゲイル・カーター「貴方に持っていてほしい」
ゲイル・カーター「僕たちの軌跡を──未来に繋げてほしいんだ」

〇湖畔
キース・フォスター(生体管理端末【ヒューゴ】)
キース・フォスター(こいつもまた遺物だったのか)
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん、肩を」
キース・フォスター「恩に着る」
キース・フォスター「出遅れちまった──行こう」

〇コンピュータールーム
霧生華清(きりゅうかせい)「突破されています」
キース・フォスター「急ごう」

〇研究所の中枢
霧生華清(きりゅうかせい)「ここが──」
キース・フォスター「な──!」
ケイレブ・スペンサー中将?「わ、た──パ、パラ、ラディ、ススス──」
霧生華清(きりゅうかせい)「身体が崩れてゆく・・・!?」
キース・フォスター「幻覚か?」
霧生華清(きりゅうかせい)「いえ、手応えがありました」
キース・フォスター「じゃあ一体──」
【???】「出力対象ヲ 選ンデクダサイ」
ケイレブ・スペンサー中将「くくく、素晴らしい」
ケイレブ・スペンサー中将「三次元記憶印刷機【ザッカリー】」
ケイレブ・スペンサー中将「これさえあれば失ったものを復元できる」
キース・フォスター「あの口調、本物だ」
霧生華清(きりゅうかせい)「では、先ほどの相手は──」
キース・フォスター「遺物が創り出した紛い物」
  過去を取り戻してほしい
キース・フォスター「なるほど、ヒトの記憶を具現化する技術か」
キース・フォスター「この場所を隠したがっていた理由もわかるね」
キース・フォスター「人道から外れている」
ケイレブ・スペンサー中将「来たか」
ケイレブ・スペンサー中将「だが、もう遅い」
ハロルド・ムーア少尉「これさえあれば、無限の軍隊を作れます」
ハロルド・ムーア少尉「これでようやく犠牲のない世界が──」
ケイレブ・スペンサー中将「【ザッカリー】──ジェニーに会わせろ」
【ザッカリー】「脳内ノ 記憶ヲ スキャン シマス」
霧生華清(きりゅうかせい)「させません!」
ケイレブ・スペンサー中将「止めろ」
ハロルド・ムーア少尉「は、はっ!」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん!」
キース・フォスター「サンキュー、先生」
キース・フォスター「馬鹿な真似はよせ、ケイレブ!」
キース・フォスター「あんたも見ただろう!」
キース・フォスター「あんなものは紛い物だ!」
ケイレブ・スペンサー中将「真贋など、どうだっていい」
ケイレブ・スペンサー中将「もう一度家族に会えるのであれば──」
キース・フォスター「死んだ者は生き返らない!」
ケイレブ・スペンサー中将「貴様も会いたいのであろう?」
ケイレブ・スペンサー中将「家族に──ゲイル・カーターに」
キース・フォスター「お、俺は──!」
【ザッカリー】「対象ガ 追加サレマシタ」
【ザッカリー】「ゲイル・カーター」
キース・フォスター「何ッ!?」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん! 離れてください!」
キース・フォスター「ああ──」
キース・フォスター「ぐっ!」
ケイレブ・スペンサー中将「強がるな」
ケイレブ・スペンサー中将「貴様は私と同じだ」
ケイレブ・スペンサー中将「上辺では高尚な目的で遺物を探しているが」
ケイレブ・スペンサー中将「誰よりも過去に執着しておる」
キース・フォスター「一緒に、するな・・・!」
【ザッカリー】「スキャン 完了シマシタ」

〇数字
【ザッカリー】「出力 開始シマス」

〇研究所の中枢
ケイレブ・スペンサー中将「おおッ!」
キース・フォスター「ぐう・・・!」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん!」
キース・フォスター「かはっ・・・はあ・・・!」
ケイレブ・スペンサー中将「東洋のサルめ」
霧生華清(きりゅうかせい)「【ザッカリー】を止めてください」
ケイレブ・スペンサー中将「貴様に止められるのか?」
ケイレブ・スペンサー中将「この奇蹟を」
霧生華清(きりゅうかせい)「これは奇蹟でも何でもありません」
霧生華清(きりゅうかせい)「命の冒涜です」
ケイレブ・スペンサー中将「ふん、くだらぬ」
ケイレブ・スペンサー中将「友の願いを叶えてやりたいと思わぬのか?」
霧生華清(きりゅうかせい)「これはキースさんの願いではありません」
霧生華清(きりゅうかせい)「貴方の押しつけです」
霧生華清(きりゅうかせい)「命に優劣をつけるような真似」
霧生華清(きりゅうかせい)「見過ごせるはずがありません!」
ケイレブ・スペンサー中将「何の不自由もなく過ごして来たのであろうな」
ケイレブ・スペンサー中将「全てを失った者の気持ちが貴様にわかるか?」
霧生華清(きりゅうかせい)「わかりません」
霧生華清(きりゅうかせい)「奪われたから奪う、という考え方など」
霧生華清(きりゅうかせい)「理解したくもない」
ケイレブ・スペンサー中将「甘い」
ケイレブ・スペンサー中将「甘い甘い甘い・・・甘いわッ!!」
霧生華清(きりゅうかせい)「くっ・・・!」
キース・フォスター「先生!」
キース・フォスター「ナゥサで撃たれた傷がまだ・・・!」
【ザッカリー】「出力 完了シマシタ」
ジェニー・スペンサー「あな・・・た・・・」
ケイレブ・スペンサー中将「おおっ!」
キース・フォスター「なんてこった!」
ケイレブ・スペンサー中将「ようやく・・・ようやく!」
キース・フォスター「そんなもの、所詮あんたの記憶だ!」
キース・フォスター「綺麗な思い出でしかない!」
ケイレブ・スペンサー中将「構うものか」
ケイレブ・スペンサー中将「美しいものは愛でるからこそ価値が生まれる」
ケイレブ・スペンサー中将「私が彼女に価値を与えよう」

〇実験ルーム
  【ヴィヴィアン】で真なる肉体を手に入れ

〇研究装置
  【アイゼイヤ】で真なる記憶を植え付ける

〇研究所の中枢
ケイレブ・スペンサー中将「そうして我らは『パラディスの悲劇』を 乗り越える」
キース・フォスター(【ヴィヴィアン】で肉体を・・・!?)
キース・フォスター(そうか、食糧をつくる要領で先生の腕を 複製したのか!)
キース・フォスター(こんなこと考えられるヤツは──)
【ザッカリー】「出力 完了シマシタ」
ゲイル・カーター「アイ・・・ク・・・」
キース・フォスター「ダ、ダッド・・・!」
ケイレブ・スペンサー中将「見よ、これが【ザッカリー】の奇蹟!」
ケイレブ・スペンサー中将「誰もこの奇蹟を止められまい!」
???「家族を取り戻す最も単純な方法」
ケイレブ・スペンサー中将「何者だッ!?」
キース・フォスター(先生の声!?)
キース・フォスター(いや、これは──)
???「それは──自らも過去になることだ」
ケイレブ・スペンサー中将「ぐおっ!」
ジェニー・スペンサー「あ・・・あ、な──!」
ケイレブ・スペンサー中将「ジェニー・・・?」
ケイレブ・スペンサー中将「ぁ・・・あああ・・・!」
ケイレブ・スペンサー中将「貴様ァァァ!!」
ケイレブ・スペンサー中将「死ねェェェエエエエエエッ!!」
キース・フォスター(しまっ──!)
ゲイル・カーター「アイ・・・ク・・・」
キース・フォスター「ダッド・・・?」
キース・フォスター「ダッド!」
ケイレブ・スペンサー中将「ムーア少尉! そいつを殺せェ!」
ハロルド・ムーア少尉「・・・できません」
ケイレブ・スペンサー中将「何!?」
ハロルド・ムーア少尉「私は軍人です」
ハロルド・ムーア少尉「私欲のため、いたずらに争いを生む行為は認められません」
ケイレブ・スペンサー中将「使えん奴だ!」
ケイレブ・スペンサー中将「誰のおかげで今の地位があると思っている!」
ハロルド・ムーア少尉「東洋の言葉を理解できるからです」
ハロルド・ムーア少尉「貴方は関係ありません」
ケイレブ・スペンサー中将「貴様ァ・・・!」
???「・・・敵は討ったぞ、『オリジナル』」
???「【ザッカリー】、停止だ」
???「もう二度と、永遠に使われぬように」
ケイレブ・スペンサー中将「やめろ・・・」
【ザッカリー】「アクセスコード ヲ 認識シマシタ」
【ザッカリー】「【ザッカリー】ノ 全機能ヲ 停止シマス」
【ザッカリー】「管理者権限ヲ 剥奪シマス」
「やめろォォォ!!」

〇研究所の中枢
ケイレブ・スペンサー中将「ああ・・・ジェニー・・・」
キース・フォスター「ダッド・・・」
ゲイル・カーター「アイ・・・ク・・・」
ゲイル・カーター「は、ずかし・・・がら、ず・・・」
ゲイル・カーター「こち・・・ら、へ・・・お、いで・・・」
キース・フォスター「ダッド?」
キース・フォスター「ダッド・・・!」
霧生華清(きりゅうかせい)「キース、さん」
???「華清」
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さん・・・ですよね?」
霧生華清(きりゅうかせい)「【ヴィヴィアン】で創られた──紛い物」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「ああ」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「【ザッカリー】で姿を型取り」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「【ヴィヴィアン】で受肉し」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「【アイゼイヤ】で記憶を継承した」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「気づいていたのか」
霧生華清(きりゅうかせい)「はい」
霧生華清(きりゅうかせい)「【ヴィヴィアン】の使用履歴を見た時から」
  登録名『クンセイニシン』
霧生華清(きりゅうかせい)「燻製ニシンの虚偽」
霧生華清(きりゅうかせい)「ミスディレクションなどによる注意の 撹乱ですよね?」
霧生華清(きりゅうかせい)「コピーをつくり注意を引いているという メッセージ」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「いざという時のためのヒントだったのだが」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「【ヴィヴィアン】で肉体を生成できると 知りながら」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「腕を治さなかったのか」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「【ケイラ】で接合できるにもかかわらず」
霧生華清(きりゅうかせい)「これは・・・『戒め』でもあるんです」
霧生華清(きりゅうかせい)「『遺物』という過ぎた技術を追い求めた ことへの──」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「『戒め』か」
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さんは為すべきことを──」
霧生華清(きりゅうかせい)「遺物を全て止めるためにこの島まで 来たんですか?」
霧生華清(きりゅうかせい)「自らの身体を捨ててまで」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「ああ」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「そのためにオリジナルを『囮(おとり)』にした」
霧生華清(きりゅうかせい)「そして、キースさんも利用した」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「利用、か」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「そうかもしれない」

〇豪華な部屋
  アイクに【ヒューゴ】を託したのは
  華清、お前が私の遺志を継いだからだよ
  アイクさえ共にいれば、お前は無茶をしないだろう
  お前は私に似て浅慮なところがあるからな

〇研究所の中枢
霧生華清(きりゅうかせい)「自分がこの島に来たからキースさんを 巻き込んだ、と?」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「お前が来たことは想定外だった」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「この姿では森にさえ隠れられない」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「お前を守ることさえ叶わないのだよ」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「あれが最善だった」
霧生華清(きりゅうかせい)「最善?」
霧生華清(きりゅうかせい)「そのせいで、キースさんは──」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさんは不要な痛みを味わうことになった!」
霧生華清(きりゅうかせい)「最善であるはずがないッ!」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「・・・ああ、そうだな」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「お前を守るためなら他にもやりようはあった」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「わざわざアイクを巻き込んだのは」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「友の遺志を託したかっただけなのかも しれない」
  貴方は──最高のパートナーだ
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「あれは私たちが辿った『軌跡』そのものだから」
霧生華清(きりゅうかせい)「軌跡・・・」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「今は脱出しよう」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん、行きましょう」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん!」
霧生華清(きりゅうかせい)「命を粗末にするつもりですか!?」
キース・フォスター「そんなこと、しない」
キース・フォスター「したくない」
キース・フォスター「だが──!」
霧生華清(きりゅうかせい)「泣き言ならベッドでも言えます」
霧生華清(きりゅうかせい)「今は退避しましょう」
キース・フォスター「・・・ああ」
キース・フォスター「世話をかけたな、先生」

〇洞窟の深部
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「こちらだ」
霧生華清(きりゅうかせい)「隠し通路?」

〇湖畔
霧生華清(きりゅうかせい)「これは・・・!?」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「遅かったか」
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さん、これは一体・・・!?」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「最も恐れていた事態が起こってしまった」
紀伊州接吉(きいすつぐよし)「【オズワルド】の裁定が──始まる」

次のエピソード:番外編② パラディスの悲劇

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