本能寺さんはクソ野郎

和久津とど

第3話 本能寺さんの本気(脚本)

本能寺さんはクソ野郎

和久津とど

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〇田舎の学校
  タタタッ!
女子生徒「わっ、本能寺さんまた1位!」
女子生徒「本当に、運動神経抜群なんだね!」
本能寺令「フフ、走るの大好きだから♪」

〇田舎の学校
  体育の時間。
  50M走でぶっちぎりのタイムを出した本能寺を、女子たちがキャーキャーと囲んでいる。
  その光景を離れて見ていた男子の話題も、同じく本能寺だ。
男子生徒「本能寺さんスゲー」
男子生徒「アレで勉強も出来るんだろ?  可愛いし完璧だよなぁ」
男子生徒「ああ、きっと性格もいいんだろうな」
  誰よりも目立つ本能寺の姿に、うっとりと見とれる男子たち。
玉宮守(だが俺は知っている。あいつの正体を)
玉宮守「騙されてる。騙されてるぞ、お前ら!」
男子生徒「た、玉宮どうした? 怖い顔して?」
玉宮守「本能寺の本性を知らねーから、そんなこと言えんだよ!」
玉宮守「本当はメチャクチャ性格悪いんだぞアイツ!」
男子生徒「そっか、最近お前、本能寺さんと仲良さげだもんな・・・」
  なぜか男連中はハーと深くため息をつく。
男子生徒「でも、そんな言い方はよくないぞ。 ケンカでもしてんのか?」
玉宮守「ハア!? そんなんじゃないって!  マジで性悪なんだよ、アイツは!」
男子生徒「そうか? でもちょっとぐらいツンツンしてても、なあ?」
男子生徒「むしろ良いかも」
玉宮守「は、はああ!? お前ら絶対カン違いしてんだろ!」
玉宮守「そんな生易しいレベルじゃないぞ!」
男子生徒「どうやっても自慢にしか聞こえねーんだよ」
男子生徒「いいよな、本能寺さんとお近づきになれて」
玉宮守「だからちがう!  くっ、間違ってるよこの世界!」
  まったく話の通じない歯がゆさにイラ立ってくる。
玉宮守(たしかに本能寺は見た目だけは抜群で、男女問わず人を惹きつける)
玉宮守(だから性格も良いもんだと、完全に誤解されてる)

〇田舎の学校
本能寺令「・・・・・・」
  ふと気づけば遠巻きに、本能寺がニヤニヤと余裕の笑顔でこちらを見ている。
  玉宮くんの短距離走、楽しみにしてるよ~♪
  とでも言いたげだな!

〇田舎の学校
玉宮守「まあいい、切り替えよう」
玉宮守「勉強の合間にやってきたジョギングの成果を見せてやるよ!」
  ちょうど50m走の順番が回って来た。
  全力で走り出した俺だが。

〇田舎の学校
玉宮守「ゼーハー・・・ヒューヒュー・・・」
本能寺令「玉宮くんお疲れ~!」
  走り終わって息も絶え絶えな俺の所に、本能寺がニヤニヤしながらやってくる。
本能寺令「5人中4位! すごーい、今日はビリじゃなかったんだね!」
玉宮守「こ、この野郎!」
  すると俺たちを遠巻きに見つめる男子たちが、ガヤガヤ騒ぎ立てる。

〇田舎の学校
男子生徒「いいな~、玉宮。 なんかねぎらって貰ってんのかな?」
男子生徒「がんばったね、お疲れ♪ とか」

〇田舎の学校
本能寺令「玉宮くんってパタパタ走ってて、可愛いよね~小学生みた~い♪」
玉宮守(ねぎらいどころか、メチャクチャバカにされてんだよ!)
  やはり何をやっても絵になる顔の良さのせいか、かなり好意的に解釈されてるご様子だ。

〇田舎の学校
女子生徒「やっぱり付き合ってるのかな?」
女子生徒「成績トップのふたりだし、通じ合うものがあるんだろうね~」

〇田舎の学校
本能寺令「ごめ~ん! 私速いから、足遅い人の気持ち分っかんないんだ~♪」
玉宮守(全ッ然通じ合ってねえ!)
  こうして男子も女子も俺と本能寺の関係に注目しつつも、丸っきり勘違いしてるのだった。
玉宮守「しかし本能寺。 お前、体育だけは妨害してこないよな? 」
玉宮守「なんでだよ?」
本能寺令「え~、だって、なにもしないでも普通に勝てるし?」
玉宮守「ム、ムカつくが、全然言い返せねえ」
  運動音痴の俺と、運動神経抜群の本能寺。
  勝敗は火を見るよりも明らかだった。
玉宮守(だが、俺にも男の意地があるんだよ!)
玉宮守「本能寺、勝負だ」
本能寺令「勝負?」
玉宮守「そう、長距離走で」
玉宮守「このままバカにされっぱなしは癪(しゃく)だしな!」
本能寺令「うん、いいよ」
本能寺令「でもその代わり、私が勝ったら玉宮くんのポケットの中身貰うね?」
玉宮守「は? 別に、いいけど」
本能寺令「やったー! それじゃあ約束だよ!」
玉宮守「なんかカン違いしてないか、アイツ?  まあ、いい。それよりも勝負だ」
玉宮守(もう体育でバカにされるのもウンザリだ)
玉宮守(ここらで一度、本能寺を見返さなければなるまい)
玉宮守「長距離はただ足が速ければ良いってもんじゃない」
玉宮守「負けねえぞ、本能寺!」

〇田舎の学校
体育教師「おおっ! いいペースだったぞ玉宮!」
玉宮守「ゼー、ハー・・・ヒューヒュー・・・」
玉宮守「・・・ど、どうだ!」
  なかなかの記録だ。
玉宮守(トップ集団には及ばなかったが、体力の劣る女子にこのタイムを出すのは辛いはず!)
  ややセコい気がするが、これも勝負の宿命だ。
  そして本能寺の方を見ると、今まさに長距離を走り出そうという所だった。
玉宮守(あ、そういやこっちは1,500mだけど女子は1,000mだっけ)
玉宮守(まあ後で計算すれば・・・)
本能寺令「先生、1,500m走りたいんですが、両方計ってもらっていいですか?」
体育教師「おっ、いいぞ。本能寺だしな」
本能寺令「わーい♪」
玉宮守「!?」
玉宮守(教師まで特別扱い!?  アイツ成績もいいから・・・ぐおぉ)
  世界の理不尽に頭を抱えてると、スタートの笛が鳴らされた。
  その瞬間、走り出す本能寺。
玉宮守(速っ!? つーか全力!?)
  長距離なのに短距離並みの速さを出す本能寺。
  当然のごとく独走状態だ。
玉宮守(だ、だがあんなペースが最後まで持つワケない!)

〇田舎の学校
本能寺令「はっ・・・はぁっ・・・!」
  だが本能寺はグングン走り続け、あっという間に1,000mを駆け抜ける。

〇田舎の学校
男子生徒「うおおお! すげえ! 陸上部より速いんじゃねーの!?」
  もはや俺どころか、陸上部並みの走りに沸き立つクラスメイトたち。
玉宮守(転べ転べ転べ転べ!)
男子生徒「うわぁ! なんか玉宮が怖い!」
  プライドがぶっ壊され、俺はもはや人間性をかなぐり捨てて呪いの声を吐き続ける。
  それが効いたのか、はたまた偶然か。

〇田舎の学校
本能寺令「!?」
  結びが緩かったのか、本能寺の靴がズルリと脱げてバランスを崩す。
本能寺令「ッ!」
  だが本能寺は靴を放り捨てて、素足のまま地面を踏みしめ。
  そのままペースを落とさず、見事1500Mを走り切ったのだった。

〇田舎の学校
玉宮守「ほ、本能寺、そこまでして・・・」
  結果は本能寺の勝利。
  悔しさよりもあそこまで本気で走る姿に、呆然としてしまう。
本能寺令「ハァハァ・・・私の勝ち、だよ」
玉宮守「あ、ああ。 そこまでして、これ欲しかったのか?」
  俺は、約束したポケットの中身を本能寺に差し出した。
玉宮守「このティッシュを?」
本能寺令「・・・・・・」
  一瞬、ポカンとする本能寺だったが。
本能寺令「やったあ!  ありがとう、大切に使うよ!」
玉宮守「マジで、ティッシュなんかが欲しかったのか?」
本能寺令「もちろん!  だって玉宮くんのものだからね!」
玉宮守(や、やっぱりコイツがよく分からん)
  あれだけ一生懸命走ったのはこんなもののためか、はたまた俺に勝つためか。
  理由は分からないが、本能寺は勝利のポケットティッシュを、嬉しそうに抱きしめていたのだった。

〇川に架かる橋
本能寺令「ねえねえ、玉宮くん。 もうちょっとゆっくり歩こうよ~」
玉宮守「うっさい。 帰り道まで付いて来るんじゃねえよ」
  俺の帰り道にまで、本能寺がぴったりと付いて来ていた。
玉宮守(くっそ、どうにかしてコイツ引き剥がせないか!)
  このストーカーを、どうしたものかと考えていると。
小柴育美「そこのふたり、待ちなさい!」
玉宮守「ん?」
  小さな女の子が、険しい顔で俺たちをニラみつけていたのだった。

次のエピソード:第4話 本能寺さんの友達?

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