みっちゃん①(脚本)
〇川に架かる橋
蒸し暑い夏の夕暮れ。夕立の中、子供を一人にしてはいけない。
サキ「かえるのおそくなっちゃった・・・・・・。ママにおこられちゃう・・・・・・!」
何故って?
?「ねえねぇ、きみまいご?」
サキ「ううん、さきちゃんまいごじゃないよ」
?「じゃあさ、わたしとあそぼ?かえりましょ!」
サキ「ママがまってるからダメだよ」
?「やだやだあそぼ?ねえねえあそぼ?」
サキ「・・・・・・わかった、ちょっとだけ」
?「わーい!」
さもなくば、その子は・・・・・・
?「みっちゃん、みーつけた」
真っ赤になってあなたの元に帰ることになる
〇休憩スペース
2040年、日本政府は非科学的現象を認め、新たな機関を作った。
それが「UPCC」非科学的現象対策委員会である。
UPCC本部、休憩室
佐藤「課長、お疲れ様です。さっき大変そうでしたね」
この男は鬼風。UPCC総務部総務課の課長である。悪霊を体に取り込み、力とする。生粋の『器』であった。
鬼風義重「本当だよ。さっき来た人、ただの肩こりを幽霊がついてるはずだから祓ってくれ、なんて・・・。お前はケイタか!」
佐藤「そうですよね、なんでも妖やら霊のせいにされたらたまったもんじゃないですしね」
鬼風義重「そうなんだよねぇ・・・」
「課長!すみません、人員補充お願いします!」
鬼風義重「・・・・・・やれ、少し休んだらまたこれだ。仕方ない、行ってくるよ。君もさっさと戻りなねー」
佐藤「はい。わかりましたよ」
〇職業安定所の面談カウンター
総務課窓口
櫻井「・・・すみません、課長。休憩中のところ」
鬼風義重「いや、別に構わないが・・・・・・どうしたんだい?」
櫻井「あの実は・・・・・・」
小森「あの、あなたが鬼風さんですか?」
女性が何やら焦った様子でこちらに近づく。
鬼風義重「はい、お待たせしてしまいすみません。総務課長鬼風です」
小森「あの、ほんとに助けてください!」
受付に響くほどの大きな声であった。皆の目が一斉にこちらを向いた。
鬼風義重「一旦落ち着いてください。まずあなたは?」
小森「私、小森ほなみって言います。あの、霊を・・・人形に取り憑いた霊を祓ってください!」
鬼風義重「小森さん・・・ですか。ひとまず落ち着いてください。部屋に案内します」
鬼風義重(呪具であったら危険だ。応接間に案内しよう)
鬼風義重「櫻井、応接間の準備を。小森さん、では行きましょうか」
小森「はい、ありがとうございます」
UPCC総務課。ここでは怪異の相談と調査を受け持つ。
基本的には勘違いが多いが、中にはホンモノの相談もある。
鬼風義重(特に人形系は・・・・・・ね)
〇応接室
櫻井「どうぞ、こちらへ」
長い廊下をしばらく進むと、櫻井が応接間の扉を開け、待機していた。
応接間
鬼風義重「ありがとう、櫻井くん。小森さん、お掛けください」
小森「はい・・・・・・」
小森は少し戸惑った様子で椅子に腰掛けた。
櫻井「どうぞ、お茶です」
鬼風は彼女が出された茶を飲んだことを確認すると本題に入った。
鬼風義重「で、本題なのですが、祓って欲しいものとは?」
小森「えっとこれなのですが・・・・・・」
小森は肩にかけていたカバンからある一体の人形を出した。
瞬間、二人の間に緊張が走った。これは間違いなく
「ホンモノだ・・・・・・!」
微かに人形から血の匂いがする。そして、呪詛の量も多い。
小森「これ・・・・・・妹の形見なんです」
小森はおずおずと話し始めた。
小森「私がまだ子供の頃、妹が交通事故で亡くしていまして。その時持っていたものなんです」
鬼風義重「そうなんですか」
小森「はい、それで最近物音がすると思ったら・・・・・・」
小森「押し入れにあった人形が私のそばにいたんです」
鬼風義重「そばに居ただけなんですか?」
櫻井「居ただけって・・・・・・」
小森「いや、何か言っていたんですけど・・・・・・すごく私怖くて・・・」
小森は微かに震えた。
鬼風義重「はい、事情はわかりました。ではあとはこちらの方で調査をし、除霊担当者を向かわせます」
小森「ありがとうございます!本当によかった・・・」
櫻井「課長、人形の方はどうしますか?」
小森「あの・・・人形、持って帰ってはダメですか?母に無断で持ち出してしまったので」
鬼風義重「そうなんですね。わかりました。ではこれを持っていてください」
小森「これは・・・白いヒトガタ?」
鬼風義重「はい、これは見張のようなものです。お守りだと思ってください」
小森「あ、ありがとうございます」
小森は人形とヒトガタをカバンに入れ、お辞儀をした
鬼風義重「では本日は以上になります。また後日、担当と伺いますので」
小森「はい、お願いします」
櫻井「小森さん、受付までお送りします」
こうして、小森は帰って行った
〇オフィスのフロア
櫻井「ふう、終わった〜」
櫻井(あの件、誰担当なんだろう?)
鬼風義重「櫻井くん♪」
櫻井「課長?!」
鬼風義重「お疲れ〜、はいこれ」
櫻井「コーヒー?ありがとうございます・・・・・・」
鬼風義重「いいんだよ、上司にはとことん甘え給え」
櫻井(ほんといい人だよな、この人)
鬼風義重「で、本題。さっきの人形の件、君と僕で担当するから」
櫻井「えっ!僕じゃ力不足ですよ?」
鬼風義重「いいんだよ、君は優秀なんだから。見てみなよあの窓際職員」
窓際職員「Zzzzz」
鬼風義重「あれに比べりゃ君の方が優秀さ」
櫻井「比べる対象がおかしいかと・・・・・・」
鬼風義重「まぁ、僕も担当するんだ。何かあったら、頼ればいい。この・・・」
鬼風義重「チョーゼツ優秀な僕をね!」
櫻井「・・・・・・」
鬼風義重「何か言ってくれないかい?櫻井くん」
櫻井「あっすみません」
櫻井「わー、課長カッコいー」
鬼風義重「めっちゃ棒読みじゃないか」
こうして、『動く人形』の調査は、始まった