インソムニア

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第15話 夫婦(脚本)

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〇大会議室
倉谷 葛(くらたに かずら)「お前ら! 朝礼続き始めっぞ!」
「はいっ、葛さん!」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「ちょっと待てや!」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「なに勝手に仕切っとるんや!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「やる気がハジけて仕方ないんすよ!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「任せて下さい。副社長となったからには」
倉谷 葛(くらたに かずら)「これから親方の仕事は俺がバンバン──」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「誰が副社長や!」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「俺はまだそんな事、一言も言ってねぇぞ!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「だって親方、差額が六千万って」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「お前の結果だけ先に発表したまでや」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「ZouTubeでもやっとるやろ」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「"暫定一位!"ってやつや」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「いっぺんやってみたくてな」
倉谷 葛(くらたに かずら)「えっ!? じゃあ覚の結果は?」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「それはこれから発表するちゅうことや」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「どや? ドキドキするやろ?」
倉谷 葛(くらたに かずら)「はっ、ひっくり返せるわけがねぇ!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「部下には覚の行動を報告させてた」
倉谷 葛(くらたに かずら)「覚はこの一ヶ月、ろくに動けてねぇ」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「なら、結果聞くのも怖くはないやろ」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「発表するで。覚の今月の稼ぎは──」

〇駅のホーム
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「え? 必要ない?」

〇シックなバー
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「大将~。またまたご冗談を~」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「社内で業績レースやってるんだって?」
白宵 覚(しらよい さとる)「良く知ってるな」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「あらゆる業界情報は把握してる」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「なんてったって羽柴社長だからな、俺は」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「まっ、代理だけど」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「んはっはっは!」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「俺、奴の変化についていけないんだが」
アルテミス「明闇はもともとあんな人だよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「ギャップが酷いぞ」
アルテミス「覚は社長の姿を先に見ちゃったからね」
三井 陽和(みつい ひより)「けど、白宵くん。本当にいいの?」
三井 陽和(みつい ひより)「HASHIBAとロンダリングの業務契約」
三井 陽和(みつい ひより)「あなたの実績はあっという間に数億になる」
九条 醒夜(くじょう せいや)「業績トップなんか楽勝やろ」
白宵 覚(しらよい さとる)「そうかもな。だがこれは俺の問題だ」
白宵 覚(しらよい さとる)「それに、もう必要な仕事は済ませた」
アルテミス「えっ。四千万を覆せたの?」
白宵 覚(しらよい さとる)「それは──」

〇大会議室
倉谷 葛(くらたに かずら)「親方。いま、いくらって言いました?」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「37億5千万。それが覚の稼ぎや」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「ようやったな、覚」
倉谷 葛(くらたに かずら)「ふっざけんじゃねぇ! なんだその数字」
倉谷 葛(くらたに かずら)「何かの間違いだ!」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「そんなに気になるんなら見てみるか」
倉谷 葛(くらたに かずら)「ユウヒビール、小成建設、四菱商事・・・」
倉谷 葛(くらたに かずら)「セキツイ不動産、サルビー、多々羅製鉄!?」
ロンダリング金融 社員「一流企業ばっかじゃねぇか!」
ロンダリング金融 社員「そんな契約、どうやって!?」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「先方も大喜びやったぞ」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「"あの大日本銀行より好条件とは"ってな」

〇高層ビルのエントランス
大日本銀行 頭取「みいぴょさん! 視察のお時間です」
プロデューサー(撮れ高チャンス!?)
大日本銀行 頭取「あ、カメラの方はご遠慮下さい」
大日本銀行 頭取「個人情報が沢山ある場所を通りますので」
大日本銀行 頭取「みいぴょさんとお付きの方のみどうぞ」
三井 陽和(みつい ひより)「はーい! いま行きまーす」

〇オフィスのフロア
大日本銀行 頭取「ここは大手企業の融資を取り扱う部署です」
三井 陽和(みつい ひより)「気になる~~!」
マネージャー 黒宵(確かに気になる情報だな)
マネージャー 黒宵(他行の利率が知れれば交渉手段になる)
マネージャー 黒宵(こいつを使えば──)

〇大会議室
倉谷 葛(くらたに かずら)「どうせ汚ねぇ手でも使ったんだろ!」
白宵 覚(しらよい さとる)「それお前がいうか?」
倉谷 葛(くらたに かずら)「んだとこらァ!」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「止めねぇか!」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「勝敗は数字が全てや」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「その差は明確。これをもって──」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「ぐっ・・・」
倉谷 葛(くらたに かずら)「適当に撃っても当たるもんだな」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「か、葛! 何を・・・っ!」
白宵 覚(しらよい さとる)「親方!」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「大事ない。腕、かすっただけや」
白宵 覚(しらよい さとる)「いま、救急車を呼びます!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「余計なことすんじゃねぇクソが!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「お前らぁ!」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「葛、これはどういうことや?」
倉谷 葛(くらたに かずら)「元々の計画を早めただけさ」
倉谷 葛(くらたに かずら)「お前らを消して、俺は社長に──」
署長「全員動くな! 警察だ!」
署長「大人しく銃を下ろしなさい!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「警察!? 一体誰が・・・」
倉谷 葛(くらたに かずら)「覚、てめぇだな!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「毎度毎度、俺の邪魔しやがって!」
白宵 覚(しらよい さとる)「いいのか? 警察が見てるぞ」
倉谷 葛(くらたに かずら)「どうせムショに行きは確定なんだ」
倉谷 葛(くらたに かずら)「だったら撃つに決まってるだろ!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「お前ら! ちゃんと押さえてろよ?」
白宵 覚(しらよい さとる)「いま荷担したらお前らも逮捕されるぞ?」
ロンダリング金融 社員「しまった!」
白宵 覚(しらよい さとる)「葛ぁ!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「的が自ら寄ってくるとはな! 死ね!」
倉谷 葛(くらたに かずら)「なっ・・・銃を避けた!?」
倉谷 葛(くらたに かずら)「覚・・・貴様は一体」
白宵 覚(しらよい さとる)「さあ、なんだろうな。だが」
白宵 覚(しらよい さとる)「考える時間は沢山ありそうだな」
倉谷 葛(くらたに かずら)「ち・・・くしょう」

〇商業ビル

〇大会議室
磯村 新太(いそむら しんた)「葛は逮捕、覚さんは副社長!」
磯村 新太(いそむら しんた)「いやー、やりましたね!」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・そうだな」
磯村 新太(いそむら しんた)「俺たち勝ったんですよ!」
磯村 新太(いそむら しんた)「もっと喜んだらどうすか」
白宵 覚(しらよい さとる)(いや、ここからが始まりなんだ)
白宵 覚(しらよい さとる)(これでやっと手に入る)

〇モヤモヤ
  奴らの情報が・・・!
磯村 新太(いそむら しんた)「覚さん、覚さんって!」

〇大会議室
磯村 新太(いそむら しんた)「あの、大丈夫ですか?」
磯村 新太(いそむら しんた)「なんか怖い顔、してますけど」
白宵 覚(しらよい さとる)「ああ、すまん」
白宵 覚(しらよい さとる)「副社長として気合い入れようと思ってな」
磯村 新太(いそむら しんた)「そんなんいいんすよ」
磯村 新太(いそむら しんた)「普段から気合い入ってるんですから」
磯村 新太(いそむら しんた)「あっ、やっときた」
磯村 新太(いそむら しんた)「親方、救急車です」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「ちっ、これくらいの傷」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「唾でもつけたら治らぁ」
磯村 新太(いそむら しんた)「なに馬鹿なこと言ってんすか」
白宵 覚(しらよい さとる)「肩担ぎますよ」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「痛てて・・・ったく、情けねぇな」

〇商業ビル
磯村 新太(いそむら しんた)「じゃ、病院には俺がついていくんで」
白宵 覚(しらよい さとる)「頼んだ」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「覚、ちょっとこい」

〇救急車の中
辻堂 与壱(つじどう よいち)「留守を頼むわ。これを」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「金庫の鍵や。裏帳簿も入っとるからな」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「無くしたらぶっ殺・・・痛てて」
白宵 覚(しらよい さとる)「大丈夫ですって。無くしたりしませんよ」
辻堂 与壱(つじどう よいち)「よろしく頼むで」

〇商業ビル
白宵 覚(しらよい さとる)「まさかすぐに手に入るとはな・・・」

〇校長室
白宵 覚(しらよい さとる)(この部屋には何度も入ったことがあるが)
白宵 覚(しらよい さとる)(こんなに落ち着かないのは初めてだ)
白宵 覚(しらよい さとる)「佐藤・・・白石・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・あった」
  白宵 昴(しらよい すばる)
  差し押さえにより利率0
  元本は子より返済中
  住所は東京都××市──
ロンダリング金融 社員「あー、副社長! ご機嫌麗しく・・・」
ロンダリング金融 社員「・・・あれ?」

〇中規模マンション

〇綺麗なダイニング
アルテミス「雨だ! 嫌だなぁ。水は嫌いだよ」
アルテミス「うわっ雷!?」
三井 陽和(みつい ひより)「なに騒いでるの」
アルテミス「雷だよ、ひより! 感電しちゃうよ!」
三井 陽和(みつい ひより)「ここは雷落ちないわよ」
アルテミス「えっ! そうなの!?」
三井 陽和(みつい ひより)「ある程度高い建物は避雷針があるの」
三井 陽和(みつい ひより)「少なくとも私たちに当たりはしないわ」
アルテミス「そうなんだ」
アルテミス「うわっ、まただ・・・」
アルテミス「大丈夫とわかっても怖いなぁ」
アルテミス「それになんだかとても──」

〇空
アルテミス「嫌な予感がするよ・・・」

〇古いアパート
  白宵
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・留守か」
白宵 覚(しらよい さとる)(郵便受けは整理されている)
白宵 覚(しらよい さとる)(このまま待つか、それとも──)
???「あのう・・・」
???「うちに何かご用ですか」
白宵 覚(しらよい さとる)「か・・・」
???「か?」
白宵 覚(しらよい さとる)「あ、いえ。白宵さまでしょうか」
白宵 覚(しらよい さとる)「私、この近くの不動産屋で──」

〇空
???「まあ、そうでしたの」

〇アパートのダイニング
???「ここは再開発されちゃうのね」
白宵 覚(しらよい さとる)「なので、住み替え先のご用意をですね」
???「だだいま。帰ったよ」
???「あらあなた、お帰りなさい」
???「お客さん? 珍しいね」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・っ」
???「初めまして、白宵 昴と申します」
???「ああ、そう言えば私ったら自己紹介が」
???「妻の朝深です」
白宵 覚(しらよい さとる)「黒宵と申します」
白宵 覚(しらよい さとる)(知ってるさ。お前たちのことは)
白宵 覚(しらよい さとる)(そして──)

〇モヤモヤ
  ついに思い出したぞ!
  母親! そして俺を捨てた父親!

〇炎
  殺してやる! いま、ここで!
  奴らが最も苦しむ方法は・・・
  娘を目の前で──
  待てよ・・・娘?

〇アパートのダイニング
白宵 朝深(しらよい あさみ)「あなた今来たから説明するわね」
白宵 昴(しらよい すばる)「ああ、少し聞こえていたよ」
白宵 昴(しらよい すばる)「住み替えの話だろう?」
白宵 覚(しらよい さとる)「ええ、そうなんです。ですが──」
白宵 覚(しらよい さとる)「お話、このまま進めて大丈夫ですか」
白宵 覚(しらよい さとる)「確かお子さんもいらっしゃいますよね」

〇モヤモヤ
  二人だけでは気が済まない!
  どうせなら一気に三人・・・
白宵 昴(しらよい すばる)「子供?」

〇アパートのダイニング
白宵 覚(しらよい さとる)「ええ、確か成人した娘さんが」
白宵 昴(しらよい すばる)「娘・・・ふむ」
白宵 昴(しらよい すばる)「黒宵さん、それは何かの間違いでは?」
白宵 朝深(しらよい あさみ)「私たち夫婦には子供はおりません」
白宵 覚(しらよい さとる)「えっ?」
白宵 昴(しらよい すばる)「タイミングがなかなか合わなくて、ね」
白宵 朝深(しらよい あさみ)「私が病弱なせいで無理だったんです」
白宵 昴(しらよい すばる)「一人くらいいても、と思う時もありますが」
白宵 昴(しらよい すばる)「今は特に後悔もしてません」
白宵 朝深(しらよい あさみ)「転居するときも気軽にできますのよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・えっと」
白宵 覚(しらよい さとる)(なんだ?)
白宵 覚(しらよい さとる)(嘘をついている様子はない)
白宵 覚(しらよい さとる)(子供がいないことを隠してるのではなく)
白宵 覚(しらよい さとる)(最初からいないことになっている!?)
白宵 朝深(しらよい あさみ)「黒宵さん?」
白宵 覚(しらよい さとる)「ああ、他の家の資料と間違えたようで」
白宵 覚(しらよい さとる)「お二人の住み替えプランですが──」

〇古いアパート
白宵 覚(しらよい さとる)「ありがとうございました」
白宵 覚(しらよい さとる)「はは・・・ははは・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「夫婦揃って認知症とはな」
アルテミス「覚・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「見てたか、アルテミス。笑っちまうよな」
白宵 覚(しらよい さとる)「俺さ、あの二人を殺すつもりだったんだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「なのにあいつら、すっかり忘れてんだぜ」
白宵 覚(しらよい さとる)「俺のことも、妹のことも・・・」
アルテミス「妹さんはどこに行ったの?」
白宵 覚(しらよい さとる)「知ったことか。もうどうでもいい」
アルテミス「ねえ、覚。ご両親は本当に認知症だった?」
アルテミス「話が噛み合わなかったりした?」
白宵 覚(しらよい さとる)「いや、話している感じはごく普通だった」
アルテミス「なるほど、ね」
アルテミス「覚、ご両親は認知症なんかじゃないよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「どういうことだ?」
アルテミス「やっとわかったんだ」

〇黒
  犯罪を犯した不眠症の人間
  彼らに共通するのが"記憶の欠損"だったんだ

〇古いアパート
白宵 覚(しらよい さとる)「なん・・・だと。だったら──」
白宵 覚(しらよい さとる)「俺の両親は何らかの犯罪に荷担したのか?」
アルテミス「必ずしもそうとは限らないよ」
アルテミス「欠損は犯人とその周りの人にも見られた」
アルテミス「記憶の欠損は、真犯人の足跡なんだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「待ってくれ、混乱してきた」
アルテミス「つまりね、覚。不眠症の真犯人は」
アルテミス「覚を独りにした犯人かもしれない」
アルテミス「恐らく覚の妹さんも、巻き込まれてる」
アルテミス「気をつけて、覚」
アルテミス「真犯人は覚のすぐ近くに居るかもしれない」

次のエピソード:第16話 疑わしき隣人

コメント

  • 名だたる大手企業達!
    ロンダリング金融と契約するな笑

    面白い、あれだけ追い求めていたのに、また違った展開が。
    身近な人間…まさか

  • 覚がロンダリングの副社長にもなり両親の情報を得て会いに行った両親。認知症か記憶を操る能力の犯行かハッキリとは決まってないですが、10年経てば我が子でも子供と違い親は外見的変化はあまり変わらないから覚だけが気づく事になってたでしょうね。
    どちらにしても覚を1人残したのかが不眠症を解く鍵になりそうだと一人考察しています…🤔

  • 今回も面白かったです!!✨☺️
    さとるんが復讐に燃える時のブラックな感じは怖いですが、過去に借金の代わりにされたってされたらトラウマand殺意レベルの復讐心も燃やしてしまいますよね、、、

    身近に真犯人が…気になりますね!!
    葛は本当に最初から最後まで葛で、いっそ清々しいくらいに葛でした…会社乗っ取りを目論んでいたのですね…
    両親ともどうなっていくのか、、、続きも楽しみにしています!!✨

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