竜の卵

尾長イルカ

第8話 魔女の溜息(脚本)

竜の卵

尾長イルカ

今すぐ読む

竜の卵
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む


〇炎
  家は灰になった
  ───────
  そして父は
  ─────

〇戦場
  吊るされた
  兵隊でもない
  ただの市民だったのに・・・
  戦争が憎い

〇霧の立ち込める森
ベアクロウ「うううう・・・」
  それが毒とは 後で知った
  森に彼女が住んでいなければ
  孤児になった私は 死んでいただろう
  それが 魔女との出会い

〇鍛冶屋
  森の魔女として
  薬草を煎じて売っていた
  怖い人だったけど
  本当は優しかった
森の魔女「ベアクロウ 人間を信じちゃいけないよ」
ベアクロウ「どうして?」
森の魔女「どうしてもだよ 特に王様はね」
ベアクロウ「どうして?」
森の魔女「王様ほど ケダモノなのさ」
ベアクロウ「どうして?」
森の魔女「バカな子だね! どうしてもだよ」
ベアクロウ「どうして?」
森の魔女「うるさいね ヤモリとカエルと一緒に 鍋で煮込むよ」
ベアクロウ「どうして?」
森の魔女「おいで 抱っこしてやろう」
ベアクロウ「やだ!」
森の魔女「どうして?」
  ある日 捕まって処刑された
  薬代をケチった村人が
  悪い魔女として訴えたのだ

〇西洋の街並み
  こいつらは ケダモノだ
  こいつら 全員焼いてやる

〇炎
  彼女の首を
  持ち帰った
  ──────
  鍋で煮た
  ────
  魔女を喰えば 
  その力を身につけられる
  それからは
  たくさんの魔女を食べた
  大魔女になるために
  ケダモノたちを 焼き殺すために

〇けもの道
  やがて森に住む魔女として
  人々から恐れられた
  魔女退治として
  王は猛獣を森に放った
狼「ウウウ」
狼「ガアアア」
熊「グアアアア」
  みんな おともだち
  動物には 本性が分かるのさ

〇けもの道
  そんなある日
男「うううう」
ベアクロウ「それを お飲みなさい」
男「むうう」
  人間なんて信用ならない
  捨てて行こうと思った──
  ひどく吐いて震えていた
  その苦しみは 私も知っていたのだ
ベアクロウ「・・・・・・」

〇鍛冶屋
男「ううーん」
男「ここは?」
ベアクロウ「煮て食いやしないよ」
ベアクロウ「王に言われて来たのかい? 私を捕まえようと」
男「助けてくれ 私を王に渡さないで!」
ベアクロウ「え?」
男「捕まれば殺される 父が殺されたように・・・」
男「父は兵どものリンチにあい 吊るされた・・・」
ベアクロウ「そんなに震えて よほど恐ろしい目に・・・」
ベアクロウ「お前の父親も 私の父と同じ目に・・・」
ベアクロウ「分かったよ! 体力が戻るまで 好きなだけ泊まっておいき」
男「ありがとう!」
ベアクロウ「泣いてるの?」
男「・・・」
  男の手は温かかった
  人肌に触れたのは久しぶりだ
  ぬくもりを感じた
ベアクロウ「男がいつまでも メソメソと泣くものじゃないよ」
男「あなたを見てると 自然と涙が・・・」
ベアクロウ「哀れみはたくさん! 私は不憫でも 不幸でもないよ」
男「そうじゃない・・・ あなたに・・・恋してしまった」
ベアクロウ「!!」
  独りで住む私は 知らなかったのだ
  ウキウキする この気持ちが
  恋だということを
  もう一つ 知らなかった
  「嘘泣き」をするのは
  女だけではない ということを
  男は 王の放った刺客だった
  刺し貫いたのは
  私の心

〇拷問部屋
拷問人「科学ですよ科学 断じて拷問ではない!!」
王「妙ちくりんな身なりだな」
拷問人「スーツですぞ 輸入品です!  いずれ この国にも流行るでしょう」
王「科学とやらは 拷問と何が違うのだ?」
拷問人「話になりませんな! 例えば 股関節は90度まで開きます」
拷問人「つまり90度まで開いても大丈夫!! 人体の科学を無視すれば 野蛮な拷問だが──」
拷問人「科学に基づいていれば 何も問題はない!!」
拷問人「アレ 分度器はどこかな?」
王「そこにあるじゃないか」
拷問人「こんなところに!?」
ベアクロウ(え? 眼が?)
拷問人「分度器で正確に測れば 全く拷問ではない ちゃんと目盛りを見て・・・」
拷問人「アレ 分度器は?」
ベアクロウ(全然 見えてないじゃないか!!)
王「それで目盛りが見れるのか?」
拷問人「ハハハハハ」
王「笑って誤魔化してないか?」
拷問人「仕事が忙しいので お引き取りを」
王「その女が魔女だと白状すれば 火炙りにできる 頼んだぞ!」
拷問人「お任せください!」
拷問人「アレ 分度器は? この部屋は暗くてイカン」
拷問人「まずは この椅子に 穴が開いて座りにくいが」
ベアクロウ「・・・・・・」
  科学とか権威とかいう奴が
  最もペテンだと知った

〇牢屋の扉(鍵無し)
  私は子供の産めない体になった

〇水色(ダーク)
読者「イヤな奴!!」
読者「ソイツはどうなったの?」
占い師「生かしておいたよ しばらくはね」
読者「早くやっつければ いいのに」
占い師「脱走する時に利用したのさ それまでは殺せないね」

〇謁見の間
王「白状したか?」
拷問人「泣き叫んで 魔女だと認めました」
拷問人「仕事とはいえ 可哀想なことをした」
王「魔女に同情などいらん 奴らはケダモノよ」
拷問人(ケダモノ・・・)
王「報酬だ」
拷問人「ありがたき幸せ ではこれで」
王「最後ぐらい顔を見せろ 仮面を取れ」
拷問人「科学的拷問開発のため  自分の体で 散々実験しました」
拷問人「顔も体もボロボロです」
拷問人「お見せしても良いが 夢でうなされるやも・・・」
王「気持ち悪い さっさと下がれ!」
拷問人「では ごきげんよう」
王「薄気味の悪い奴」
家来「魔女が消えました!!」
王「バカな 拷問椅子から逃げたと?」
家来「椅子には 足しか残っておりません」
王「魔女の足か?」
家来「いえ 男の──」

〇ファンタジー世界
  数日間の拷問で
  すっかり年老いた

〇霧の立ち込める森
  森は焼かれていた
  動物たちも死んだ

〇城壁
  月日が流れ
  王に娘が生まれた
  ────────
  新しい教会のシスターとして赴任した
パンナコッタ姫「うわあああい」
大臣「コレ! 姫! お転婆がすぎますぞ」
パンナコッタ姫「姫とはなんじゃ? わらわは 妖精なり!!」
パンナコッタ姫「ゴブリンめ 退治してやる」
大臣「イタタッ 髭は止め 髭は止めて!」
パンナコッタ姫「人に化けおって ゴブリン 正体を現っしゃい」
大臣「イタタタタッ」
魔女「姫さま」
パンナコッタ姫「姫じゃない 妖精でおじゃる!」
魔女「じゃあ 妖精さん 大臣を許してあげて」
パンナコッタ姫「どうして?」

〇鍛冶屋
ベアクロウ「どうして?」
森の魔女「おいで 抱っこしてやろう」
ベアクロウ「やだ!」
森の魔女「どうして?」

〇城壁
パンナコッタ姫「どうして泣いてるの? ねぇ どうして?」
魔女「うう それはね・・・ 妖精さん 抱っこしてあげましょう」
パンナコッタ姫「・・・」
魔女「やっぱり イヤ?」
パンナコッタ姫「うれしい! シスター大好き!!」
大臣「姫 私が抱っこして差し上げます」
パンナコッタ姫「やだ!」
大臣「どうして?」
パンナコッタ姫「顔がイヤじゃ」
「アハハハハ」
大臣「何がおかしい?」
魔女「だって ねえ!」
パンナコッタ姫「ねえ!」
  姫のイタズラ
  でも落書きで笑ったわけじゃない
  あの顔──
  歳を取り お互い変わったけれど
  そっちが忘れても 私は決して忘れない
  その顔!!
大臣「大臣は悲しいです 姫が お転婆な悪い子で」
大臣「オロロ オロロ~」
パンナコッタ姫「大臣 泣かないで💦」
  大臣に姫は抱きついた

〇黒
  私は もう知っていた
  コイツが いつも「嘘泣き」することを
  私の心を刺し貫いて
  完全な「魔女」にした男
  いつも通り すぐには殺さないよ
  姫を生贄にする役に立った
  それまで 生かしておいたのさ
  お前から教わったことは 
  たったひとつ
  恋はするものじゃなく──
  利用するもの
  魔女に同情などいらん
  奴らはケダモノよ
  ──────────
  どちらがケダモノか・・・
  ケダモノたちを燃やしてやる

次のエピソード:第9話 獣道

コメント

  • うわ〜!やっぱりシスターが…。
    でも、愛を利用された背景を知ると悲しくなりますね。
    この後、パンナコッタ姫はどうなってしまうのかが、全く予想出来ない!
    かなり不利だけど、シスターに少し人の心が残っているようにも見えるかな?

  • 今回の話はとにかく恐ろしかったです……魔女の過去がとにかく重く、辛かったです……。
    目の悪い拷問人にはゾッとしました……。
    それぞれのキャラクターに、生い立ちや目的、考え方があり、想像が膨らんでめちゃくちゃ面白いです!!!
    これから物語がどう進んでいくのか、とても楽しみです!!

成分キーワード

ページTOPへ