6 何処へ行っても(脚本)
〇旅館の和室
その日の仕事終わり。
常磐春香「優紀!これであたし達帰れるんだね!!」
斎藤優紀「うん!間違い無い!旅館の仕事も楽しかったけど、やっと帰れるね!」
常磐春香「只、こんなに時間経ったからパパ達心配とかしてるよね・・・」
斎藤優紀「あ、皆絶対怒ってるよね・・・」
常磐春香「本当、どうしようか・・・」
エル・クラッド「優紀君、春香ちゃん、今大丈夫?」
常磐春香「あ、エルさん!」
エル・クラッド「改めて、通行書の獲得おめでとう!二人共良く頑張ったわね!」
斎藤優紀「はい!旅館の仕事、本当楽しかったです!」
エル・クラッド「うん、有難う。私達も助かったわ。館長が二人を呼んでるから、来てくれる?」
常磐春香「あ、分かりました!」
〇旅館の受付
エル・クラッド「館長!優紀君と春香ちゃんを連れて来ました!」
西園寺零士「おぉ、来てくれたか」
斎藤優紀「館長さん、お疲れ様です!」
西園寺零士「あぁ、二人共今日まで良くやってくれた!」
常磐春香「今回はどうしたんですか?」
西園寺零士「あぁ、改めて聞きたい事が有る。君達、通行書を手に入れた今、何時此処を出るつもりだ?」
斎藤優紀「そうですね・・・今日は疲れたから、明日の朝に行こうと思います」
西園寺零士「そうか・・・なら、館を代表して明日は私が君達を見送ろう」
常磐春香「え?良いんですか!?」
西園寺零士「大丈夫だ。今日はもう休みなさい」
斎藤優紀「・・・!有難う御座います!」
常磐春香「じゃあ、今日は休みますね」
西園寺零士「あぁ・・・」
エル・クラッド「・・・・・・」
西園寺零士「エル、どうした?」
エル・クラッド「あ、すみません、いざあの子達が居なく成ると成れば・・・」
西園寺零士「そうだな・・・だが、それを妨げる事は我々がやるべきでは無い・・・」
エル・クラッド「あの、館長、もしあの子達が、ずっとこの街に残りたいと言ったら・・・」
西園寺零士「それもこれもあの子達次第だ」
エル・クラッド「・・・分かりました・・・」
〇ヨーロッパの街並み
翌日、朝食を済ませた俺達は館長と共に旅館を出て居た。別れ際にゴンゾウさんとエルさんからは号泣されたが、
何時までも親と離れている訳には行かなかった。
西園寺零士「さて、この辺りだな」
斎藤優紀「館長さん、通行書ってどう使えば?」
西園寺零士「あぁ、通行書を目の前に翳して見なさい」
常磐春香「・・・?こうですか?」
通行書を目の前に翳したら、俺達が通って来た洞窟が目の前に現れた。
斎藤優紀「あぁ!俺達が通って来た道だ!」
常磐春香「これでやっと帰れるんだね!」
西園寺零士「あぁ、君達、良く頑張ってくれた。いよいよ今日でお別れだな」
斎藤優紀「はい!お世話に成りました!」
黒崎颯「あれ?館長達じゃ無いですか!」
西園寺零士「おぉ、颯か!子供達を、見送りに来た」
黒崎颯「そうだったんですね!」
常磐春香「あ!颯さん久し振りです!」
黒崎颯「久し振りだね、そうか・・・今日で君達とお別れか・・・」
斎藤優紀「あの、俺達、お金稼げる様に成ったらまた此処に行きたいと思ってますから」
黒崎颯「あれ?言って無かったかな?」
斎藤優紀「え?何の事です?」
黒崎颯「聞いて無かったかな?一度通行書を使って街を出たら、もう二度とこの街には行けなく成るよ?」
常磐春香「え・・・」
黒崎颯「あの、館長、もしかして・・・」
西園寺零士「す、すまない・・・後で影響が出てしまっては困るからな・・・」
黒崎颯「そ、そうでしたか・・・気持ちは分からなくも無いですが・・・」
斎藤優紀「あの!もう二度と行けないって本当なんですか!?」
西園寺零士「あぁ、本当だ。別れ際のエルとゴンゾウが号泣してたのはそれが理由なんだ・・・」
常磐春香「そ、そんな・・・」
西園寺零士「隠していた事に関してはすまなかった。だが、我々は慈善事業で仕事をして居ない。何処もそうだが・・・」
斎藤優紀「館長さん・・・」
西園寺零士「このまま君達が外へ出れば、もう君達が妖怪の街へ戻る事は出来ない。その事実を知った君達に問いたい。これから君達は、」
西園寺零士「どう在りたい?良く考えて、聞かせてくれないか?」
常磐春香「優紀・・・」
斎藤優紀「・・・・・・」
斎藤優紀「・・・・・・」
斎藤優紀「館長さん、俺、やっぱり父さん達の所に戻りたいです!」
西園寺零士「・・・それで良いのかい?」
斎藤優紀「俺、旅館の仕事色々やらせて貰って、本当凄く楽しかったです!でも、俺まだ小学生だし、まだ父さん達とやりたい事が沢山」
斎藤優紀「有ります。だから、俺この街を出たいです!」
常磐春香「そっか・・・そうだよね!」
西園寺零士「・・・そうか・・・それが君達の望む事か?」
斎藤優紀「はい!」
西園寺零士「それを聞いて安心した。優紀君、春香ちゃん、これから君達は自分達の世界で頑張って行く事だろう。何処の世界も辛い事で」
西園寺零士「溢れ返って居る。そんな中で、自分達の納得出来る道を探しなさい。それは決して楽な事では無いがな」
常磐春香「館長さん・・・」
斎藤優紀「館長さん・・・本当にお世話に成りました!春香、行こう!」
常磐春香「うん!」
黒崎颯「館長、良かったのですか?もうあの子達には二度と会えないんですよ?」
西園寺零士「愚問だな。私は旅館を経営している。毎日が出会いと別れの繰り返しを幾度と無く経験している。何より、あの子達と別れる事は」
西園寺零士「最初から分かっていた」
黒崎颯「ははは!確かにそうでしたね!どんな種族も、サヨナラだけが人生ですかね?」
西園寺零士「そうかも知れんな。さて、私は戻るよ。次の出会いが、我々を待っている」
黒崎颯「そうですよね。では、僕も行きます。また何か有ったら聞かせて下さい」
西園寺零士「あぁ・・・」
〇岩の洞窟
常磐春香「優紀、大丈夫!?」
斎藤優紀「俺は大丈夫!春香こそ、疲れたら言ってよ!」
常磐春香「有難う!あたしは大丈夫だよ!」
〇岩穴の出口
斎藤優紀「春香!あれは!!」
常磐春香「うん、出口だ!早く行こう!」
〇洞窟の入口(看板無し)
斎藤優紀「あぁ!やっと出られた!此処は・・・」
常磐春香「うん、間違い無い。あたし達が鬼ごっこして最初に来た洞窟の入口・・・!!」
斎藤優紀「や、やっと戻れたんだ・・・・・・春香、通行書は?」
常磐春香「あ、待って!今見て見るから・・・って、あれ?」
通行書を確認して見たら、そこに書いて有った文章が全て消えていた。表も裏にも何も書いて無かった。
常磐春香「優紀!これ、只の紙に成ってる!」
斎藤優紀「え?じゃあ、洞窟は!?」
俺はすかさず洞窟の中を確認したら、奥へと続く道は無く、只何も無い穴に成っていた。
斎藤優紀「・・・颯さん達の言った通り、本当に来れなく成っちゃったんだね・・・」
常磐春香「不思議・・・何だか夢を見てた見たい・・・」
常磐父「春香!優紀君!」
常磐春香「ぱ、パパ!!?」
斎藤優紀「父さん!!」
常磐春香「あの、その、長い間心配掛けて御免なさい!!」
常磐父「長い間?春香、何を言っているんだ?まだキャンプに来て初日目じゃ無いか・・・」
斎藤優紀「え?だって俺達、一週間も・・・」
斎藤父「ははは!新鮮な風景に夢中に成って時間も忘れてしまったのかお前達?」
常磐春香「え?えぇ??どう成ってるの???」
斎藤父「バーベキューの用意が出来たから呼び戻しに来た。随分奥まった所まで行ってたな」
斎藤優紀「う、うん・・・」
斎藤父「さて、そろそろ行こう。母さん達も待ってる」
常磐春香「・・・・・・聞いたよね優紀・・・」
斎藤優紀「うん・・・まだキャンプ初日だって・・・」
常磐春香「どう成ってるの・・・???」
その後、俺達は家族と再会したが、戻って来た時間帯はキャンプ初日目との事。丸で浦島太郎にでも成った気分だったが、
俺達はキャンプ地へと戻った。俺達は昨日まで有った事を全て各々の親に話したが、妖怪の街や妖怪旅館の事を誰も信じようと
しなかった。何がともあれ、俺達はその後のキャンプを楽しんだ。