第2話 乱闘と酔いどれ(脚本)
〇ホテルのエントランス
半グレ1「おらっ、おらぁっ!」
半グレ2「ぶっ潰してやらぁ!」
堂前俊一「ななな、なんだこれは!」
林慎吾「『阿修羅漢(あしゅらかん)』の奴らっす」
林慎吾「今朝、俺のダチにボコられた 報復に来たっす」
堂前俊一(アホどもが!)
堂前俊一(初日から何してくれてんだ!)
半グレ1「一人残らず血祭じゃ! おらっ!」
健ちゃん「ぐああああっ!」
林慎吾「け、健ちゃん、大丈夫か!?」
健ちゃん「ちくしょう、あいつら汚ねぇよ・・・ エモノ隠し持ってやがった・・・」
半グレ1「バーカ、喧嘩に汚ねぇもクソもあるかよ! ぶはははっ!」
林慎吾「・・・・・・」
堂前俊一「とにかく、林君は早く逃げて──」
林慎吾「うおおおおおおっ!」
堂前俊一「は!?」
林慎吾「もう我慢なんねぇ。 ダチをやられて黙っておけねぇよ!」
林慎吾「おらあああっ、ブチ殴るぅぅっ!」
堂前俊一(何してんだ、バカヤロー!)
稲盛「え、なんですか、これ? ガチ乱闘ですか? スクープですか?」
稲盛「『アンラッキー・ホテル』 終了のお知らせですか?」
堂前俊一(ざけんな。こんなアホなことで、 俺様の映画が終わってたまるか・・・!)
堂前俊一「監督!」
千葉武史「おお、堂前P。 なんだか大変なことになってますねー」
堂前俊一「この乱闘撮影してください?」
千葉武史「ええ、なんで?」
堂前俊一「いいから、早く!」
千葉武史「んー、しかし何を撮影するかは 事前に決まってますしねぇ」
千葉武史「僕、余計な仕事はしない主義で」
堂前俊一「追加で好きな女優キャスティング していいですから!」
千葉武史「・・・マジ? 堂前さん、その言葉忘れないでよ!」
千葉武史「おおい、カス共、さっさとカメラとマイク用意しろ! 乱闘撮るぞ!」
「は、はい!」
稲盛「堂前さん、これヤバいやつですよね? ねぇ?」
堂前俊一「え、何がですか?」
稲盛「何がって、 こんだけ大荒れになっちゃって──」
堂前俊一「大迫力ですよね。主演の林慎吾、 渾身のアクションシーンですから」
稲盛「はぁ!? いやいやいや、 マジの乱闘ですよね、これ」
堂前俊一「何を馬鹿なことを。ちゃんと撮影も してますし。予定通りです」
半グレ1「ごはっ、し、死ぬ・・・」
稲盛「流血してるじゃん!」
堂前俊一「血糊です!」
〇ビジネスホテル
堂前俊一「あ、もしもし、佐々木さん? 脚本に主演の乱闘シーン加えといて!」
佐々木「ええっ!? そんなの差し込む余地ないっすよ!」
堂前俊一「一瞬でいいから、ねじ込んで!」
堂前俊一「『アンラッキー・ホテル』なんだから、 主役が乱闘に巻き込まれることぐらい あるでしょ!」
佐々木「で、でも──」
堂前俊一「頼んだよ!」
堂前俊一「の、乗り切った・・・」
堂前俊一「さすが俺、機転が効く! 自分の賢さが恐ろしい! ふははは!」
堂前俊一「え?」
救急隊「救急です。 通報いただいたのは、こちらですか?」
堂前俊一(おい、誰だよ救急隊なんて呼んだのは!)
堂前俊一(ケガしたアホなんて、 その辺に転がしとけばいいだろ!)
堂前俊一「あー、えーっと・・・」
救急隊「急性アルコール中毒で 倒れたとのことでしたが」
堂前俊一「急性アルコール中毒!?」
柴川「きゅ、救急の方、こっちです!」
堂前俊一(あれは・・・マイラのマネージャー?)
〇黒背景
〇病室
加藤マイラ「ううう、お酒、お酒飲みたい・・・」
看護師「はーい、点滴しますねー」
加藤マイラ「て、点滴、お酒に替えて・・・」
看護師「絶対ダメでーす」
〇大きい病院の廊下
堂前俊一「どういうことですか!? なんでマイラが急アルで倒れるんですか!?」
柴川「ご、ごめんなさい! 私がちゃんと 見張っていれば・・・うううっ」
堂前俊一(泣くな、無能が!)
柴川「マイラは清純派として売っていますが、 実は裏では酒浸りで・・・」
柴川「我々が無理をさせていたんです」
柴川「本人は清楚ぶるのなんて嫌だと言っていたのに、事務所の方針に従わせて」
柴川「それでさらに飲酒量が増えて・・・ うわあああん!」
堂前俊一「落ち着いてください!」
堂前俊一「現場の方には私から連絡しておくので、 柴川さんはマイラのケアを──」
加藤マイラ「ああああああっ!」
「!?」
加藤マイラ「お酒、お酒ぇー! アルコーールッ!」
看護師「か、加藤さん、病室に戻ってください!」
加藤マイラ「きええぇぇぇいっ!」
柴川「マ、マイラ~!」
堂前俊一「悪夢すぎる・・・」
〇総合病院
堂前俊一「いいですか、撮影期間中は絶対にマイラにお酒を飲ませないようにしてください」
柴川「で、出来るかなぁ。マイラ、 隠れて飲んじゃうんだよなぁ・・・」
堂前俊一「出来るかなぁ、じゃないんですよ! やるんですよ!」
堂前俊一「『アンラッキー・ホテル』にとって、 マイラは集客の要なんです」
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えぇ……