第1話 『会話はクイズ? 変なアイツとの出会い』(脚本)
〇大きい交差点
問題。クイズでしか会話できない
同級生との恋愛は実るのか?
【1,実る】
【2,実らない】
【3,実るはずがない】
三沢愛(みさわあい)は
スマホを見ながら交差点を歩いていた。
メールには「よかったらマネージャーやってみない?」とある。
三沢愛「・・・マネージャーか」
横断歩道を渡ろうとした瞬間──
目の前に、
大型トラックが突っ込んできた。
三沢愛「!!」
〇黒背景
三沢愛「私は間一髪助けられたが、 頭を打って意識を失ってしまった」
三沢愛「最後に見たのは私を助けてくれた人の顔」
三沢愛「背が高くてイケメンで、 まっすぐな瞳をした人だった」
〇歴史
Qアンドラブ
~恋はクイズより難しい!?~
〇大きな木のある校舎
私立南門高校
〇学校の廊下
菓子折りを持ち、
モジモジとしながら教室を覗く。
三沢愛「・・・彼はどこにいるんだろ?」
木塚渚「愛、大丈夫!? 事故に遭ったんじゃなかったの?」
三沢愛「うん。気絶しちゃったけど、 軽く頭を打っただけだから」
三沢愛「ねぇ、それより究太郎(きゅうたろう)って人いる?」
三沢愛「彼が私を助けてくれたって聞いて お礼に──」
木塚渚「きゅ、きゅ、究太郎!?」
三沢愛「え? 何?」
木塚渚「あんな変人に お礼する必要なんてないって!」
三沢愛「へ、変人?」
木塚渚「ああ・・・愛は知らないのか。 アイツ・・・人と話すとき──」
本田究太郎「問題。仏教用語で行ないの悪い悪魔を 意味し、阻害される・妨害される という意味で使われる言葉は?」
三沢愛「え?」
愛が振り返ると、本田究太郎(ほんだきゅうたろう)が立っていた。
本田究太郎「答えは・・・邪魔だ!」
究太郎は2人の間を
通り抜けていく。・・・
木塚渚「出た、変人!」
三沢愛「え・・・彼が?」
愛はとっさに究太郎に駆け寄った。
三沢愛「あの・・・究太郎さんですよね?」
本田究太郎「・・・・・・」
三沢愛「昨日、私を助けてくれたって聞きました」
本田究太郎「・・・・・・」
三沢愛「お礼が言いたくて──」
本田究太郎「問題。漢字だと一人暮らしを意味する 二文字の植物は?」
三沢愛「は?」
本田究太郎「問題。漢字だと一人暮らしを意味する 二文字の植物は?」
三沢愛「はぁぁぁ~!!?」
本田究太郎「ちなみに問題をインターネットなどで 検索して、答えを得るのは禁止とする」
三沢愛「あのね・・・私はお礼を伝えに――あ!」
三沢愛「な、何なの・・・?」
木塚渚「アイツはクイズ研究会に入っている クイズマニアで、クイズの問題と 解答でしか人と会話しないの」
木塚渚「・・・って愛、聞いてる?」
三沢愛「マジで変なヤツ~~!」
〇大きい交差点
菓子折りを持って歩いていると、
後ろから声を掛けられた。
部員A「愛、メール読んでくれた?」
部員B「マネージャーの件、 真剣に考えてくれない?」
三沢愛「・・・・・・」
部員A「愛のこと、必要なの!」
三沢愛「・・・これ届けなくちゃいけないから、 ごめんね」
その様子を、
究太郎は遠くから見ていた。
本田究太郎「・・・・・・」
〇明るいリビング
愛の母「それで菓子折りを渡さずに帰ってきたの? 命の恩人でしょ?」
三沢愛「命の恩人? クイズの変人よ」
愛の母「は?」
三沢愛「何ていうか・・・会話が成り立たないの」
愛の母「年頃の男子でしょ? 照れてるだけじゃないの?」
三沢愛「いや、堂々としてた」
愛の母「まったく・・・アンタっていつもそう。 ソフトボール部を辞めたときだって──」
三沢愛「はい? なんで今その話が出るの?」
愛の母「都合が悪くなったら、 すぐ逃げちゃうってことよ」
三沢愛「部活は私の意志で辞めたの。 ・・・ママに私の何が分かるワケ?」
愛の母「逃げる人間の気持ちなんて 何にも分かんないわ」
愛の母「・・・これを機に人と向き合える オトナになりなさい」
菓子折りを愛に押し付ける。
愛の母「ほら。明日必ずお礼言ってきなさい」
三沢愛「・・・わかったわよ」
〇図書館
究太郎は図書室で本を読んでいた。
三沢愛「こないだはどうも」
本田究太郎「・・・・・・」
三沢愛「これ、受け取ってくれない?」
本田究太郎「答えは? 答えがないとそれは受け取れないな」
三沢愛「ママに言われてるの。とにかくもらって」
本田究太郎「問題。漢字だと一人暮らしを意味する 二文字の植物は?」
三沢愛「あ~、もうイヤ!」
〇教室の外
弁当を食べ終え、
周りを気にしつつスマホを取り出す。
三沢愛「えっと・・・漢字で一人暮らしの──」
本田究太郎「何をしてる?」
振り返ると、
真後ろに究太郎が立っている。
本田究太郎「検索する行為は禁止だ」
三沢愛「ひぃ~~! 何でいるの!?」
〇教室の外
三沢愛「なんなの、あいつ・・・。 たかが菓子折りを受け取るだけじゃない」
三沢愛「ていうか、クイズなんて無理・・・。勉強しないでずっと部活漬けだったんだから」
〇野球のグラウンド
三沢愛「ソフトボールが私の青春だった」
三沢愛「高2の夏の大会初日。 エースとして登板した私は、最終回まで ノーヒットピッチ。・・・でも──」
三沢愛「投げたボールが打ち返され、 打球が足に当たった」
三沢愛「私は大ケガをしてしまった」
〇教室の外
三沢愛「あの試合で、私の青春はおしまい・・・」
木にプレートがあり、そこには
『ウド(独活)』と書かれている。
三沢愛「へぇ・・・独活でウドって読むんだ」
三沢愛「・・・え、これって!?」
〇図書館
クイズ本を読んでいる究太郎の元へ、
愛が駆け寄る。
三沢愛「独活って一人暮らしのことだよね? 答えはウドでしょ?」
本田究太郎「正解」
究太郎は愛から
菓子折りを受け取った。
本田究太郎「カステラ・・・。元々はポルトガルから 伝わってきたお菓子」
本田究太郎「正式名はビスコチョである」
三沢愛「私がボーっと歩いてたからウドの大木みたいだって、からかいたかったんでしょ?」
本田究太郎「・・・・・・」
三沢愛「わざわざ面倒くさいイヤミを──」
本田究太郎「問題。ウドの花言葉は?」
三沢愛「は?」
本田究太郎「レベル2の問題だ」
三沢愛「このクイズバカ!! もう付き合ってられない!!」
〇教室の外
三沢愛「えっと・・・お弁当箱を確か この辺に忘れて・・・あった!」
ウドの木を見つめる。
三沢愛「せっかくクイズの正解がわかったと 思ったら・・・ほんとイヤミなヤツ!」
プレートに続きの文言が書いてある。
三沢愛「ん、なになに、ウドの花言葉は・・・。 忘れてしまった思い出・・・」
その時、部員たちが通りかかり、
愛は慌てて木の陰に隠れた。
部員A「ノックの最中の監督見た? 顔真っ赤で吹き出しそうになった」
部員B「前に愛が言ってた。 監督は前世と前前世がゴリラだって!」
二人は笑いながら去っていく。
三沢愛「あの頃はいつもくだらないことで みんなと笑ってたなぁ・・・」
三沢愛「忘れてしまった思い出か・・・。待って!」
愛は二人に向かって駆け出した。
〇大きな木のある校舎
三沢愛「二人ともごめん。先行ってて・・・!」
部員A「オッケー」
部員B「またね、愛」
三沢愛「ねえ、答えがわかったの」
本田究太郎「・・・・・・」
三沢愛「ウドの花言葉は・・・ 忘れてしまった思い出、そうでしょ?」
本田究太郎「・・・正解」
三沢愛「もしかして、私が部活のマネージャーに 誘われてたこと知ってたんでしょ?」
三沢愛「あの件ならちゃんと話し合って断ったから。私、マネージャーとか向いてないし」
本田究太郎「・・・・・・」
三沢愛「でもさ、私のことを思ってくれたのは うれしいけど、あんな遠回しに──」
本田究太郎「問題」
三沢愛「はい?」
本田究太郎「江戸時代、カステラは 何をかけて食べていた?」
三沢愛「はぁぁ~~!?」
立ち去っていく究太郎。
三沢愛「間違ってた! 私のこと思ってくれたなんて絶対にない! ただのクイズマニアだぁぁ~~!」
クイズでしか会話が成り立たないのに、さりげなくサポートしてくれる究太郎君にキュンとしました^ ^甘酸っぱい青春という感じでこれから2人がどうなるのか楽しみです!
すごく斬新な作品で、面白いです。
魅力的でイケメンな主人公も素敵。
でも、この人と付き合うのは、トモダチでも疲れそう(笑)
愛ちゃん、結局クイズ部に入るんでしょ〜?と思いながら、続きは絶対に見ちゃう作品。