スキャンダラス・ムービー

穂橋吾郎

第1話 いつでもどこでもスキャンダル(脚本)

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〇ビジネスホテル
  このホテル・・・

〇ホテルのエントランス
  隅から隅まで・・・

〇ホテルの部屋
  アンラッキー

〇黒背景
「アンラッキー・ホテル」
  東東映画創立70周年記念映画
  『アンラッキー・ホテル』
  製作スタート

〇会見場
司会「本日は『アンラッキー・ホテル』 製作発表会見にお越しいただき、 誠にありがとうございます!」
司会「早速、キャストとスタッフの皆様を お呼びしましょう!」
林慎吾「主演、古川健太郎役の林慎吾です!」
林慎吾「こんな大作で主演をやれるなんて・・・」
林慎吾「マジで胸アツです!」
林慎吾「全力投球で役にぶつかっていきます!」
加藤マイラ「ヒロイン、椿ちひろ役の 加藤マイラと申します」
加藤マイラ「いただいた脚本が本当に素晴らしくて、 読みながら思わず泣いてしまい──」
加藤マイラ「ヒック」
司会「だ、大丈夫ですか?」
加藤マイラ「すみません、しゃっくりが・・・ヒック」
千葉武史「おいマイラ、俺の前に笑い取るなよ、 やりにくいだろー」
千葉武史「あ、どうも。 本作の監督を務めます、千葉武史です」
千葉武史「この映画では、どれだけ可愛い女の子を 出して脱がせるか」
千葉武史「それだけ考えたいと思います」
司会「か、監督、ちょっとそれは・・・」
千葉武史「おいおい、冗談だよー。ポリコレに則った 健全な映画を作りますよ~」

〇大ホールの廊下
堂前俊一(いいぞ、素晴らしい。 メディア連中の食いつきも上々)
堂前俊一(配信の視聴数も悪くない。 やっぱり、林とマイラは数字持ってるな)
堂前俊一(みんなガンガンSNSで宣伝して、 推し活に励んでくれよー)
矢野「堂前ちゃん、会見良かったよ」
堂前俊一「矢野さん、お疲れ様です」
矢野「和気あいあいとしてて。 若い人に受けそうな雰囲気出てたよー」
堂前俊一「矢野さんを始め、制作部の皆さんの バックアップがあってこそです」
矢野「そんな固くなんないで。リラーックス」
矢野「まあ、ヒットは間違い無いんだから」
矢野「君は問題を起こさず、無難にまとめて くれればそれでいいのよ」
堂前俊一(無難に・・・だと?)
矢野「若手の君を起用したのも、 まあ、話題作りだから」
矢野「超大型企画に若手Pを大抜擢! って、 いかにもマスが好みそうでしょ。はははは」
堂前俊一(ふっ、この企画は俺様が純然たる実力で 勝ち取ったものだ)
堂前俊一(自分が選ばれなかったからって、 負け惜しみをほざきやがって)
堂前俊一(老害は黙って、 決裁書にハンコだけ押してろ!)
矢野「しんどくなったらいつでも言いな。 いくらでも代わりは用意できるからさ」
堂前俊一「ご心配なく。撮影から公開、その後の大ヒットまで、完璧にプランニング出来てます」
堂前俊一「どうぞ大船に乗った気分でお待ちください」

〇ホテルのエントランス
堂前俊一(・・・って、大口叩いちまったのに)
千葉武史「おい、その花瓶片しとけって言ったろ!」
スタッフA「え、監督が奥に配置しろと──」
千葉武史「うるせぇよカス! 口ごたえすんな!」
千葉武史「てめぇはさっさと機材運べ! ウスノロが!」
スタッフB「す、すみません!」
堂前俊一(パワハラ・・・)
加藤マイラ「ねぇ~、いいじゃん、 ヒック、もう一杯だけ~」
柴川「ダメですよ、これから撮影なんですから!」
加藤マイラ「飲まないと演技なんて無理~」
加藤マイラ「か弱い乙女なんて演じられ・・・ うっぷ、うっ!」
柴川「は、吐くならトイレ!」
加藤マイラ「ううううっ!」
加藤マイラ「おええええっ!」
堂前俊一(アル中・・・)
半グレ「よう、慎吾!」
林慎吾「お前ら、来てくれたのかよ!」
健ちゃん「当たりめぇだろ。 俺たち『K-GODS』はいつでも一心同体」
半グレ「昨日キメた×××が抜けてねぇけどな」
林慎吾「おいおい、急に暴れたりすんなよ」
半グレ「もうさっきたっぷり暴れたよ」
健ちゃん「隣町の『阿修羅漢(あしゅらかん)』の 奴らが吹っ掛けて来たからよ、ボコって やったのよ」
林慎吾「くぅー! お前ら、マジで熱ぃな!」
堂前俊一(半グレ・・・?)
堂前俊一(なんだコイツら! トラブルの匂いしかしねぇぞ!)
堂前俊一(ふざけるなよ。俺様の完璧な映画をこんなクズ共に託さなきゃいけないなんて・・・)
稲盛「どーもー」
堂前俊一「げっ、あんたは!」
稲盛「毎度お馴染み『週刊文愁』稲盛でぇ~す。 堂前さん、ご機嫌いかがですか」
堂前俊一「なんで記者がいるんだ! 関係者以外入れないはずだろ」
稲盛「まあまあ、細かいことは気にしないで」
稲盛「製作発表のメンツを見て、こりゃ何か あると思って駆け付けたんですよ」
堂前俊一「な、何かって・・・?」
稲盛「キャストも監督も、ちょいと問題アリって噂でしてね。ふふふふ」
堂前俊一「そんな、問題なんて──」
千葉武史「おい、さっさと来い、ブチ殺すぞ!」
稲盛「おやー、どなり声?」
堂前俊一「ちょっ、あんた、こっち来い!」

〇ビジネスホテル
堂前俊一「頼むからウロチョロしないでくれ」
稲盛「なんでです? 見られちゃまずいものでもあるんです?」
堂前俊一「単純に、映画の情報を 漏らしたくないだけだよ・・・」
稲盛「嫌だなぁ、その辺は義理を通しますよ」
稲盛「ショボいネタで東東映画さんのご機嫌損ねちゃ、今後の仕事がやりにくいですから」
稲盛「ただ・・・よほどデカいスキャンダルが 出たら話は別ですけどねぇ」
堂前俊一「出るわけない。 キャストもスタッフも、清廉潔白だ」
半グレ「てめぇら、ぶっ飛ばすぞ!」
堂前俊一「!?」

〇ホテルのエントランス
半グレ1「おらっ、おらぁっ!」
半グレ2「ぶっ潰してやらぁ!」
半グレ「やってやんぞ、コラァ!」
健ちゃん「来いや、返り討ちじゃ、ボケ!」
堂前俊一「ななな、なんだこれは!」

次のエピソード:第2話 乱闘と酔いどれ

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