5 通行書(脚本)
〇旅館の受付
今日の仕事が終って俺達はクタクタに成って眠りに付いた。その日の夜。
エル・クラッド「報告は以上に成ります!」
ゴンゾウ「館長!あの子等は見所が有る!このまま行けば今よりもっと良い感じに成るぜ!」
西園寺零士「そうかそうか・・・お前達がそこまで言うなら間違い無いな・・・」
ゴンゾウ「そうだろ館長!報酬は弾んでも良いと思うぜ!」
西園寺零士「そうだな・・・このまま行けば通行書を引き渡すのもそぉ遠くは無い話だな・・・」
エル・クラッド「あ・・・そうでしたよね・・・」
ゴンゾウ「あ・・・そうか、あの子達の目的って・・・」
西園寺零士「・・・そうだ、あの子達は何れこの街を去る。そう成れば・・・」
エル・クラッド「・・・一度通行書を使ったら、もう二度と私達は彼等に会えなく成りますからね・・・」
ゴンゾウ「・・・本当、悲しい話だぜ・・・折角颯さんが紹介してくれたってのに・・・」
西園寺零士「だが、それが生きる者の宿命だ。出会いが有れば別れも有る。別れが有れば出会いも有る。我々が旅館を経営したいと思う様に、」
西園寺零士「あの子達にも、あの子達の行きたい道。共に居たい家族が居る。我々のエゴで、あの子達を縛り付けるのは有っては成らない事だ」
ゴンゾウ「・・・だよな・・・なぁ館長、通行書は何時引き渡しに成るんだ?」
西園寺零士「一週間程だ」
ゴンゾウ「そっか・・・長い様で短い感じだな・・・」
西園寺零士「まぁ、何がともあれ、お前達も今日は休め。この事実は、避けられぬ運命だ」
エル・クラッド「分かりました・・・館長、この事は優紀君と春香ちゃんに伝えますか?」
西園寺零士「いや、それでは仕事に影響が出る。渡す時にでも話せば良い」
エル・クラッド「・・・分かりました・・・」
〇旅館の和室
常磐春香「優紀!こっちの掃除は終わったよ!そっちは探し物見つかった?」
斎藤優紀「後探して無いのはこの辺りなんだけど・・・」
斎藤優紀「有った!」
斎藤優紀「やっと見つけた!お客さんの落とし物!」
常磐春香「良かった!掃除も終わったし、報告しようか!」
斎藤優紀「うん!」
俺達が妖怪旅館で仕事をしてから一週間程経った。父さん達と連絡出来ない事が気掛かりだったが、通行書を貰えない事には
何も出来なかったので、俺達は黙々と仕事を熟していた。失敗する事も有るけど、俺達はめげずに頑張るのだった。
〇旅館の受付
常磐春香「エルさん!お掃除と落とし物探し終わりました!」
エル・クラッド「有難う!落とし物は私が預かるわ!」
斎藤優紀「エルさん、次は何をしたら良いですか?」
エル・クラッド「そうね、この包帯を空手道場に返しに行って貰えるかしら?」
斎藤優紀「分かりました!空手道場って、スマホの地図で分かりますか?」
エル・クラッド「大丈夫よ!また貸して上げるから!」
斎藤優紀「分かりました!」
エル・クラッド「この前の時もそうだったけど、道中とか、変な勧誘には気を付けてね」
常磐春香「分かりました!優紀、行こう!」
斎藤優紀「うん!」
エル・クラッド「・・・やっぱ、通行書渡すのよね・・・」
〇道場
デーモン師範「では行くぞ・・・1!!」
アクア「1!!」
デーモン師範「2!!」
イナリ「2!!」
常磐春香「御免下さ〜い!」
デーモン師範「ん?どうしたんだ君達?」
俺達はエルさんからのお使いで空手道場に赴いた。師範の妖怪が他の妖怪達に稽古を付けていた。皆緊張感に溢れ、
集中してる事も有り、余計な手出しをしたら怒られそうだった。
斎藤優紀「俺達、妖怪旅館の人達に頼まれて、包帯返しに来ました!」
デーモン師範「妖怪旅館?あぁ!この前包帯が足りなくてたまたま通り掛かって貸した事が有ったな!只で渡したつもりだったから」
デーモン師範「忘れていたよ!」
斎藤優紀「そうなんですね、これ、返します!」
デーモン師範「態々すまなかったな。武術をやる上で、身体のケアは欠かせないからな。君達、もし興味が有るなら、内に入って見ないか?」
斎藤優紀「あ、御免なさい!俺達今、妖怪旅館で働いてるし、お金も無いから・・・」
デーモン師範「そうか?それは残念だな・・・だが、内は年や種族も関係無い。もしその気が有ったら、また俺に一言掛けてくれ」
常磐春香「有難う御座います!優紀、行こう!」
斎藤優紀「そうだね・・・行こうか。おじさん、俺達もう行きます!」
デーモン師範「あぁ、気を付けて行くんだぞ!」
アクア「あら?あの子達・・・」
デーモン師範「何だアクア?さっきの子供達の知り合いか?」
アクア「えぇ、この前私の所に風邪薬買いに来てたわ」
イナリ「そうなの?見た所人間見たいね」
アクア「えぇ、只、内の馬鹿が変な薬買わせようとしたから即刻止めたわ。全く恥ずかしいったら有りゃしない・・・」
デーモン師範「まぁ、色々有ったって事か。さて、稽古再会しよう!」
イナリ「あ!そうですね!」
アクア「と、そうだったわね!あの子達、また何処かで会えるかな・・・」
〇旅館の受付
常磐春香「只今戻りました!」
斎藤優紀「あれ?誰か居ないのかな?」
西園寺零士「おぉ、君達か!」
常磐春香「あ!館長さん!エルさんから頼まれた仕事終わりました!」
西園寺零士「そうかそうか!今日まで良く頑張ってくれたな!」
西園寺零士「君達、疲れて無いか?何時も無理をさせて無いか?」
斎藤優紀「え?大丈夫ですよ!何と言うか、毎日楽しいと言うか!」
西園寺零士「そうか・・・そう言ってくれると安心するよ。そうだ、君達に渡す物が有る」
斎藤優紀「館長さん、これは?」
西園寺零士「あぁ、颯君に君達のこれまでの功績を伝えたのだ。その結果、通行書の発効が出来た」
常磐春香「えぇ!?本当ですか!?あたし達、これで帰れるんですよね!?」
西園寺零士「あぁ・・・」
斎藤優紀「良かった!!」
斎藤優紀「だけど、父さん達、絶対怒ったり心配したりしてるよね・・・」
常磐春香「あ・・・」
西園寺零士「ははは!この程度まだ可愛い物だよ!これからを生きる上で、納得出来ない事は沢山有る!それを乗り越えて初めて、」
西園寺零士「一人前に成れるからな!」
斎藤優紀「は、はぁ・・・」
西園寺零士「さて、君達、もう直ぐ食事が出来る。運ぶのを手伝ってくれないか?」
斎藤優紀「あ、分かりました!直ぐ行きますね!」
西園寺零士「・・・さて、此処からはあの子達次第か・・・」
その後、俺と春香は旅館の仕事を頑張って熟した。通行書も手に入り、自分達の世界に帰れる事に成ったが、内心複雑だった。