指先に魔法はいらない

星月 光

chapter10 逆風の前兆(脚本)

指先に魔法はいらない

星月 光

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〇西洋の市場
ジョージ・ミラー(島民)「こんにちは、魔王様」
アストリッド「どうも」
アストリッド「卵と米ある?」
マーサ・ミラー(島民)「すみません、今なくって」
アストリッド「そう」
アストリッド「定期船の到着は4日後だったか」
アストリッド「それまで持たせないと」
ジョージ・ミラー(島民)「珍しいですね 魔王様が食料を切らすなんて」
アストリッド「人数が増えたからね」
マーサ・ミラー(島民)「そういえば最近見ませんね、あの2人」
マーサ・ミラー(島民)「ほら、銀髪の男の子と青髪の女の子!」
マーサ・ミラー(島民)「ピオくんとサフィちゃんでしたっけ」
アストリッド「ピオは修行中」
ジョージ・ミラー(島民)「サフィさんは?」
アストリッド「・・・謹慎中だよ」
「き、謹慎!?」

〇森の中の小屋
ピオノノ・ダイン「魔力よ、拡がれッ!」

〇森の中の小屋
ピオノノ・ダイン「はあ、はあ・・・」
「ピオー!」
サフィ「お昼にしましょ!」
ピオノノ・ダイン「あっ、うん!」
ピオノノ・ダイン「風、止めるから 少し待ってくれ」
ピオノノ・ダイン(・・・風を吹かせることは どうにかできるようになったけど)
ピオノノ・ダイン(止めるのはまだ安定しないんだよな)
ピオノノ・ダイン「はあ・・・はあ・・・」
サフィ「無理しなくてだいじょうぶですよ?」
サフィ「家の中で食べましょ」
ピオノノ・ダイン「でも、昼食ぐらいは 外で食べたいだろ?」

〇海辺
アストリッド「・・・夢、ね」
アストリッド「他に情報はないの?」
サフィ「えーっと」
サフィ「先生って呼ばれてて ミラノに研修に行ったって」
アストリッド「てことは医者か」
アストリッド「ドクター・インタリオ・・・か」
ピオノノ・ダイン「心当たりがあるのですか?」
アストリッド「今はちょっと思い出せないな」
サフィ「じゃあ、思い出したら教えてください!」
アストリッド「ま、気が向いたらね」
サフィ「ありがとう!」
アストリッド「それより──」
アストリッド「単独での外出はするなと言ったよね?」
アストリッド「約束不履行ということで それなりの罰を与えないとね」
ピオノノ・ダイン「し・・・師匠 こうして無事だったんですから」
アストリッド「それは結果論でしょ?」
ピオノノ・ダイン「それにサフィは夢のことを確かめるために」
アストリッド「情状酌量の余地があるのと 罰則を免れるのはまた別だよ」
アストリッド「さ、どうしてやろうかな?」

〇森の中の小屋
ピオノノ・ダイン「もう何日も外に出てないだろ?」
サフィ「しょうがないです あたしが悪いんですもん」
サフィ「いい子にしてれば きっと許してくれます!」
ピオノノ・ダイン「だとしても、やっぱり ずっと家の中じゃ窮屈だろ」
ピオノノ・ダイン「止まれ・・・ッ」
サフィ「ピオ、無理しないで──」

〇森の中の小屋
ピオノノ・ダイン「止まった!」
ピオノノ・ダイン「・・・あれ?」
サフィ「ピオ?」
サフィ「顔色、悪いですけど・・・」
サフィ「わっ・・・!?」

〇西洋の市場
ジョージ・ミラー(島民)「そうだったんですか」
ジョージ・ミラー(島民)「それであの日、あんなに町中を・・・」
アストリッド「そのことは他言無用だよ」
マーサ・ミラー(島民)「でも、謹慎はやりすぎじゃ?」
マーサ・ミラー(島民)「悪気があったわけじゃないんでしょ?」
アストリッド「じゃ、あいつになにかあったら おまえが責任取ってくれるの?」
アストリッド「正義感を振りかざすのはけっこうだけど 尻拭いするこっちの身にもなれっての」
マーサ・ミラー(島民)「それは・・・そうですけど」
アストリッド「家の敷地内なら許可してるし」
アストリッド「とやかく言われる筋合いはないね」
ジョージ・ミラー(島民)「そ、それはそうと魔王様!」
ジョージ・ミラー(島民)「研究のほうは順調ですか?」
ジョージ・ミラー(島民)「ほら、以前おっしゃっていたアレですよ」
ジョージ・ミラー(島民)「ええと・・・魔法生物・・・?」
アストリッド「エレメンタルね」
アストリッド「9割がた完成してるけど 最後のひと押しが必要かな」
アストリッド「誰かさんたちのせいで なかなか時間が取れなくてね」
アストリッド「それじゃ」
マーサ・ミラー(島民)「あんな言い方しなくたって!」
ジョージ・ミラー(島民)「まあまあ」
ジョージ・ミラー(島民)「魔王様の魔術に頼りきりなのは事実だろ?」
ジョージ・ミラー(島民)「さ、仕事に戻るぞ」
マーサ・ミラー(島民)「・・・はーい」

〇綺麗な港町
船乗り(遅くなっちゃったな)
船乗り(みんな、もう集まってるかな)
Dr.インタリオ「フローレス」
Dr.インタリオ「No.13の生体反応がある場所は 本当にサントエレン島なのか?」
フローレス・リング「座標値を解析できた」
フローレス・リング「No.13はサントエレンにいる」
Dr.インタリオ「サントエレンは魔物と犯罪者の巣窟だろう」
Dr.インタリオ「No.13が無事である可能性は低い」
フローレス・リング「生体反応は消えていない」
フローレス・リング「どんな目に遭っていようと 生きてさえいれば問題ない」
Dr.インタリオ「フローレス! それは・・・!」
フローレス・リング「メモリーチップを埋め込めば どうせ記憶は上書きされる」
フローレス・リング「肉体が欠損していても 培養液で再生できる」
フローレス・リング「定期船は1日間サントエレンに停泊し 翌朝にライダルへ戻るそうだ」
フローレス・リング「すみやかに回収し サントエレンを発つぞ」
Dr.インタリオ「・・・わかっている」
シーラ・オブ・ワーズワース(潮の匂い・・・)
シーラ・オブ・ワーズワース(王都の湖とは違うのね)
侍女ディアナ「乗船手続きを終えました」
侍女ディアナ「出港は明朝だそうです」
シーラ・オブ・ワーズワース「ありがとう」
侍女ディアナ「今日は船旅の準備をし 明日に備えましょう」
侍女ディアナ「安宿で申し訳ありませんが」
シーラ・オブ・ワーズワース「そんなことないわ」
シーラ・オブ・ワーズワース「貴方と一緒なら、わたくしはだいじょうぶ」
侍女ディアナ「殿下・・・ もったいないお言葉です」
シーラ・オブ・ワーズワース「殿下はダメよ」
侍女ディアナ「は、はい、お嬢様!」
シーラ・オブ・ワーズワース「よろしい」
シーラ・オブ・ワーズワース「今日はシーフードを食べたいわね」
シーラ・オブ・ワーズワース「ベルクラインでは 魚なんて食べられないもの」
侍女ディアナ「・・・そのようにいたしましょう」
ベルクラインの家臣「・・・・・・」

〇森の中の小屋
サフィ「おーもーいー!」
サフィ「ピオ~! 起きてくださーい!」
アストリッド「なにしてんの?」
サフィ「あっ、アストリッド!」
サフィ「風を止めようとして ピオが倒れちゃって」
アストリッド「それでそんな無様なかっこで寝てるわけ?」
サフィ「前にピオが倒れたとき アストリッド、魔術で運んでましたよね」
アストリッド「風魔術の応用ね」
サフィ「あれ、やってください!」
アストリッド「そのまま寝かせとけば?」
アストリッド「そうすれば、おまえも どっかにフラフラ行かないしね?」
サフィ「もうやりませんってば!」
「んん・・・」

〇雲の上
ピオノノ・ダイン「空の上?」
ピオノノ・ダイン「なんでこんなところに・・・?」
ピオノノ・ダイン「ま、いいか」
ピオノノ・ダイン「・・・気持ちいいな」
ピオノノ・ダイン「やわらかくてあったかい・・・」

〇森の中の小屋
「冷たッ!?」
ピオノノ・ダイン「・・・あれ?」
サフィ「もう、アストリッド!」
サフィ「あたしにも水、かかりました!」
アストリッド「この陽気ならすぐ乾くよ」
サフィ「風魔術で運んでくれればよかったのに」
アストリッド「こっちのが手っ取り早いからね」
ピオノノ・ダイン「あの・・・」
ピオノノ・ダイン「なぜ師匠がここに?」
アストリッド「町から戻ったら おまえが無様なかっこで寝てたから」
アストリッド「火と氷の複合魔術で 叩き起こしてやったってわけ」
ピオノノ・ダイン(そっか、風を止めようとして倒れたのか)
ピオノノ・ダイン(魔術の使い方がまだ未熟だってことだな)
ピオノノ・ダイン「・・・ん?」
サフィ「足、しびれちゃいました」
アストリッド「ずっと頭乗せてたからじゃない?」
アストリッド「人の頭の重さは体重の10%程度」
アストリッド「そんなのが膝に乗ってたら そりゃあ足もしびれるよね」
ピオノノ・ダイン「あの・・・!」
ピオノノ・ダイン「もしかして、ボク・・・」
ピオノノ・ダイン「サフィの・・・」
サフィ「膝に乗っかってました!」
アストリッド「見るに堪えない醜態だったね?」

〇雲の上
ピオノノ・ダイン「じゃあ、さっきの・・・」
ピオノノ・ダイン「やわらかくてあったかい感触は・・・」
ピオノノ・ダイン「・・・サフィの膝・・・!?」

〇森の中の小屋
ピオノノ・ダイン「ぅ、あ・・・」
サフィ「もう、アストリッド!」
サフィ「どうしてそんないじわる言うんですか!」
サフィ「ピオ、元気出して!」
サフィ「ちょっと重かったけど 嫌じゃなかったですから!」
ピオノノ・ダイン「そ、そう・・・なのか?」
サフィ「はい!」
サフィ「寝顔、かわいかったですもん」
サフィ「だからだいじょうぶ!」
ピオノノ・ダイン「そういう問題じゃないんだけど・・・」
アストリッド「ピオ」
アストリッド「魔術、使ってみろ」
ピオノノ・ダイン「は、はいっ!」
ピオノノ・ダイン「拡がれッ!」
ピオノノ・ダイン「・・・あれ?」
サフィ「風、吹きませんね?」
アストリッド「平常心を保てなくなったからじゃない?」
アストリッド「魔力の流動は感じる?」
ピオノノ・ダイン「・・・・・・」
サフィ「ピオ?」
ピオノノ・ダイン「あっ、いや」
ピオノノ・ダイン「魔力は・・・ ちゃんと流れてます」
サフィ「なんで魔術、使えないんでしょ?」
アストリッド「動揺したからだよ」
アストリッド「言ったよね」
アストリッド「魔術を使うのに重要なのは 精神力、平常心、想像力」
アストリッド「1つでも欠ければ、魔術は発現しない」
ピオノノ・ダイン「平常心を失ったせいで 魔術が発動しなかった・・・」
サフィ「でも、さっきはちゃんと使えてました!」
アストリッド「裁判でそれが通用するとでも?」
アストリッド「いかなるときでも魔術を使えるようにね」
ピオノノ・ダイン「・・・はい」
アストリッド「ああ、そうそう」
アストリッド「買い忘れたものがある おまえら、よろしく」
サフィ「あたしも行っていいんですか?」
「単独行動じゃなければね」
サフィ「やったあ!」
サフィ「準備してきます!」
ピオノノ・ダイン「・・・・・・」
ピオノノ・ダイン(この前より・・・少しだけ 魔力の流れを感じにくいけど)
ピオノノ・ダイン(気のせいだよな、きっと・・・)

〇立派な洋館

〇貴族の応接間
ジュリアン・ダイン(殿下はとっくに王都を発っただろうな)
ジュリアン・ダイン(いや、そろそろライダルで 定期船に乗る準備をしているかも)
ジュリアン・ダイン(こんなときに足止めされるとは)

〇城の廊下
ジュリアン・ダイン「父上の様態は?」
執事長フランク・カッター「一命は取り留めましたが ずっと伏せっておられます」
ジュリアン・ダイン「そうか」
ジュリアン・ダイン「今後はわたしが執務を行う」
ジュリアン・ダイン「フランクは父上についていてくれ」
執事長フランク・カッター「ジュリアン様」
執事長フランク・カッター「貴方様を告発いたします」
ジュリアン・ダイン「・・・どういうことだ?」
執事長フランク・カッター「ジュリアン様は先ほど 旦那様をお訪ねでしたな」
執事長フランク・カッター「わたしも入れ違いで旦那様を訪ねました」
執事長フランク・カッター「話しているさなか 旦那様はお倒れになった」
執事長フランク・カッター「これは偶然でしょうか?」
ジュリアン・ダイン「そうとしか答えようがないな」
ジュリアン・ダイン「だいたい、なぜ父上を害する必要が?」
執事長フランク・カッター「ピオノノ様」
執事長フランク・カッター「なにやら動き回っておられるようですが」
執事長フランク・カッター「ピオノノ様のためでございましょう」
執事長フランク・カッター「お父上のことが邪魔で 排除を試みたのでございますね」
ジュリアン・ダイン「バカな、わたしは潔白だ!」
ジュリアン・ダイン「兄上と同じように濡れ衣を着せるつもりか」
執事長フランク・カッター「弁明はどうぞ、王宮の方々の御前で」

〇貴族の応接間
ジュリアン・ダイン(まあ殿下のことはいい)
ジュリアン・ダイン(慌てふためいて見せたおかげで 自分の勝利を確信したようだが)
ジュリアン・ダイン(おまえの負けだ、フランク)
執事長フランク・カッター「ジュリアン様・・・」
ジュリアン・ダイン「どうしたの、フランク 顔色が悪いようだけど」
ペンリス城の使用人「捜査結果を報告いたします──」

次のエピソード:chapter11 感情の萌芽

コメント

  • ピオ君、危うく召されかけているのかと思いきや……幸せドリームな方で良かったです😇
    ちょっと何か出来ても、すぐ「未熟者!」という感じで師匠にチクリとされる未熟感がだんだんと可愛く見えてきました(笑)。

  • 取り乱すピオくんがとにかく可愛いです🥰
    そして、メインキャラ達にとって鍵となる存在が続々と定期船に……サントエレンに停泊する1日で何かが起こりそうで、楽しみな展開です😊

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