中編【溢れ出す感情は、建前の殻を打ち破る】(脚本)
〇白
ネコ(21)「ニャー! ニャー! ! ニャー! ! !」
ネコ(21)「────」
あのね!
──ちゃんと、言ってあげてね!
やっぱり、寂しいからさ♪
〇綺麗な部屋
彼(30)「う、うぅ・・・」
彼(30)「うわぁ!」
彼(30)「な、なんだ! 夢か──」
彼(30)「どんな夢だよ、オイ!?」
彼(30)「・・・ったく!」
彼(30)「──行くか」
「──やっぱり、こういうのニガテだ」
〇部屋の前
〇部屋の扉
〇明るいリビング
彼(30)「──おはよう」
彼女(30)「あ、おはよ~!」
ネコ(21)「ニャー」
彼女(30)「──って、うわ!」
「ん、どした?」
彼女(30)「酷い表情だけど、ダイジョーブ!?」
「え? 俺、そんなヤバいカオしてんの?」
彼女(30)「そ、そうね! 例えるとするなら──」
彼女(30)「高校の頃、 私にフラれたと勘違いした時の顔というか」
「・・・あったな、そんなの」
彼女(30)「もしくは──」
彼女(30)「小学校の時に捨てネコを拾ったけど、」
ネコ(21)「ニャ~」
彼女(30)「ご両親に怒られて 捨てなきゃと勘違いした、あの時みたいな」
「──そういうのも、あった」
「・・・・・・」
「いや、どんなカオだってんだ──」
彼女(30)「ひとりぼっちになる、 怖いユメでも見ちゃったの?」
「──まぁ、そんなトコかな」
彼女(30)「あらあら♪ やっぱりマダマダ、寂しがり屋さんね!」
「う、うるせぇ・・・」
「ほっといてくれよ。」
彼女(30)「もー、強がっちゃって~」
彼女(30)「ふふふ、 しょうがないんだから~♪」
そう言うと彼女は料理の手を止めて
彼のもとへ駆け寄って、
ふわっ、と優しく
抱きしめたのだ♪
〇明るいリビング
彼は
とても驚いた表情を見せている
ネコ(21)「・・・」
「えっと これ、どういう状況・・・!?」
「アンタにピッタリくっついて」
「それから、ぎゅっと抱きしめての」
「ここにいるよって、 コミュニケーション?」
「コミュニケーション、ねぇ・・・」
「そして── ホッペタにホッペタを、スリスリ~」
「──ちょ、やめーや。」
「こんなん、流石に照れるだろ・・・」
「えへへ! ほっぺたスリスリとかは──」
「猫がよくやる、 愛情表現の1つだよ~」
「──俺たちは人間です」
「まぁ、 細かいことはイイじゃない!」
「私たちは付き合って13年の ツーカーな間柄なんでしょ!?」
「──むぅ」
〇明るいリビング
「ねーねー 教えて欲しいんだケド・・・」
互いの心音が感じ取れるくらい
抱きしめあって
お腹合わせで引っ付いてる2人
「怖い夢って、どんなだったの?」
「ん、いやまぁ、アレだよ」
「なんか、お前らに文句言われて──」
「俺が『うるさい!』とか怒鳴ったら」
「ロウソクの火が消えるみたいに──」
「どっちの姿も、消えていった」
「・・・ふーん」
「コワイってワケでもないんだが。」
「二度と会えなくなるような気がして、 それが、なんかその──」
「なるほど、なるほど~」
〇明るいリビング
彼の目が潤んでいる
「あのさ、俺──」
彼女は
抱きしめる腕に
力を込める
「それはそれは、ヤな夢だったね~」
「・・・」
「まぁでも、心配ないよ!」
「現実の私は、 ずっとアンタと一緒にいるから!」
「・・・!」
「これまでも、これからも」
「ずーっと、ず~っと!!」
〇明るいリビング
「小さな頃から、2人一緒に生きてきたけど」
「アンタを嫌いになったりとかは、 1度もないしっ」
「いつも私を大事にしてくれて、 『ありがとう』って思ってる!」
「・・・うん」
「お休みの日には、 掃除や洗濯ガンバってくれてるし──」
「時々、お料理してくれて」
「その度にご馳走になるけど、 いっつも美味しいな~って思うのっ」
「・・・あぁ」
彼は抱きしめられながら、
右手で涙を拭った
〇明るいリビング
「あとは えーと、え~っと──!」
「・・・」
「ソファで並んで座った時とか 夜に2人で眠る時とか」
「あと、こうして抱きしめたりして アンタの存在を感じたいなと思った時に」
「抱きしめ返してくれたり、 温もりを、体温を分け与えてくれたりね!」
彼からも強く
彼女を抱きしめ始める
「そういうのがね、 私にとっての、イチバンの幸せだから♪」
「宇宙でここにしかない」
「ゼ~ッタイ手放せない、 私の大好きだから──」
「だから私は、私たちは! オジサンとオバサンになっても──」
「お爺さんとお婆さんになっても、 きっと、ずっと、そばにいるからさ──!」
ネコ(21)「ナー!」
「何があっても、 私はドコかに消えたりしないから──」
「私は、ここにいるから! 悲しい時は、抱きしめてあげるから!」
「悪い夢なんて怖がるコトないから アンタを、『愛してる』から──」
「だからさ、安心してね~♪」
「・・・」
「あぁ、そうだな」
「・・・そうしようか」
〇明るいリビング
彼の返事を聞き終えると、
彼女は元の位置に戻った
彼女(30)「──っと!」
彼女(30)「さぁ、 元気出たら顔洗ってシャンとして!」
彼女(30)「みんなで、朝ごはんを食べよう!」
「──おう」
「エンジン始動だな!」
〇部屋の前
〇明るいリビング
彼(30)「モグモグ~♪」
彼女(30)「でね~! 昨日は長年の願いも叶ったのよね~♪」
彼(30)「ネコとマバタキのあれ!?」
彼女(30)「昔から、あのコと同じ様に 対等にお喋りできたらなって──」
彼(30)「う~ん?」
彼(30)「お前ら時々、 『にゃ~』『ニャー』言いあってるけど」
彼女(30)「それとはちょっと違って、 意味あるメッセージをやり取りしたいのよ」
彼女(30)「特に 『だいすき』~だとか 『愛してる』を、伝えあえたらって!」
彼女(30)「あのコに人間の言葉を教えようとしたり、」
彼女(30)「私が、ネコ語を喋れないか実験したり──」
彼女(30)「あとモールス信号とか、それに──」
彼(30)「色々とやってたんだな~」
彼女(30)「まぁ言葉じゃないけど マバタキで達成できて、夢みたい!」
彼(30)「まるで魔法みたいだよな♪」
彼女(30)「それでね、あんたもヤッパリ あのコに『ゆっくりマバタキ』やってよ!」
彼(30)「また、その話しかよ~」
彼女(30)「いーじゃん、別に!」
彼女(30)「素敵なコトだと思わない??」
彼(30)「んー そう言われても・・・」
彼(30)「昨日の夜に、やってるんだよな アイツに『ゆっくりマバタキ』は・・・」
彼女(30)「えっ!ホント!?」
彼女(30)「あのコ、 スッゴく喜んだでしょ~!?」
彼(30)「あ、 それなんだけども──」
〇明るいリビング
ネコ(21)「ニャ二ャー!」
「・・・」
〇明るいリビング
彼(30)「や、 なんかメッチャ怒られたわ!」
彼女(30)「えぇ!?」
彼(30)「そのあと、 文句みたいに『二ャー二ャー!!』言われた」
彼女(30)「ど、どうしてだろう??」
彼(30)「まぁ、 俺の事がキライとか?」
彼(30)「眠くてイラついてたかも???」
彼(30)「こういう時こそ、あれだよな~」
彼(30)「どう思ってるのか、 人間の言葉で言ってくれたら──」
彼(30)「あああぁ!」
彼(30)「お、俺も言わなきゃなのか!?」
〇黒
──ちゃんと、言ってあげてね
〇明るいリビング
彼(30)「そっか、 それが欠けてんのよな・・・(ボソッ」
彼(30)「人間だったら、 人間相手には、 人間の言葉で伝えなきゃかな・・・(ボソッ」
彼女(30)「ちょ、もしもーし!?」
彼(30)「あ、ごめんゴメン!」
彼(30)「お前にこそ、 言わなきゃならん事があるの思い出した!」
彼女(30)「な、なぁに・・・???」
彼(30)「その、イキナリになるんだが──」
彼(30)「えっと──」
彼(30)「愛してる!」
彼(30)「大好きだ!」
彼(30)「いつも、ありがとう♪」
彼女(30)「は──」
彼女(30)「は──」
彼女(30)「はあああああああああああああああああ!?」
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続きそう