3 旅館の仕事 その1(脚本)
〇旅館の和室
斎藤優紀「・・・・・・」
常磐春香「・・・・・・」
斎藤優紀「あぁ、朝か」
常磐春香「・・・優紀・・・このモンスターとあたしのこれ交換してぇ・・・」
斎藤優紀「あれ?春香何の夢見てるんだ?」
常磐春香「むにゃむにゃ・・・やった、今送った奴返して・・・」
斎藤優紀「・・・どうしよう・・・起こさない方が良いかな・・・」
斎藤優紀「ん?どうぞ!」
エル・クラッド「優紀君!春香ちゃん!お早う御座います!」
斎藤優紀「あ!お早う御座います!」
エル・クラッド「昨日は突然の事で戸惑ったと思いますが、眠れましたか?」
斎藤優紀「あ、はい!旅館の布団、気持ち良かったです・・・」
エル・クラッド「良かった!大丈夫そうで!」
エル・クラッド「所で、春香ちゃんはまだ寝てるの?」
斎藤優紀「う〜ん・・・起こした方が良いか分からなくて・・・」
エル・クラッド「そっか・・・でもこれからお仕事して貰うからもう起きて貰わないと・・・」
斎藤優紀「分かりました。おい、起きろ春香!」
常磐春香「う、うぅん・・・」
常磐春香「は!優紀!あたし一体何を!?」
斎藤優紀「あぁ、やっと起きた。妖怪のお姉さんが迎えに来てくれたよ」
常磐春香「あぁ!そうだった!今日から働くんだった!お姉さん御免なさい!」
エル・クラッド「うん、大丈夫だよ。でもお寝坊さんは早めに直した方が良いかな?」
常磐春香「ご、御免なさい・・・」
エル・クラッド「大丈夫!失敗して次へ繋げる事に種族は関係無いわ!次確りやれば良いから!」
常磐春香「有難う御座います・・・えっと・・・」
エル・クラッド「あぁ、まだ自己紹介して無かったわね。私はエル・クラッド、エルで良いわ。朝ご飯出来たから、呼びに来たのよ」
斎藤優紀「そうなんですね。宜しく、エルさん!」
エル・クラッド「えぇ、じゃあ行きましょうか!館長達も二人を待ってるわ!」
〇警察署の食堂
エル・クラッド「館長!お早う御座います!子供達を連れて来ました!」
西園寺零士「来たかエル。子供達、昨日は休めたか?」
斎藤優紀「はい!お陰で元気一杯です!」
西園寺零士「ははは!それは頼もしいな!」
常磐春香「館長さん、ご飯食べたら仕事ですか?」
西園寺零士「うむ、そう成るな。従業員達と話し合ってやれそうな仕事を幾つか用意した。今後確りやる為に食事は確り取るのだぞ?」
常磐春香「分かりました!」
館長に挨拶をした後、俺達は食事を始めた。苦手な野菜等は入ってたが、そんな事言ってる場合じゃ無かったので
頑張って食べる事にした。
〇旅館の和室
食事後。
ゴンゾウ「よぉ僕ちゃん達、待ってたぜ!」
常磐春香「あぁ!は、始めまして!」
ゴンゾウ「何だ?館長の言う通り、まだワシ等には慣れて無い様だな?」
斎藤優紀「は、はい・・・」
ゴンゾウ「まぁ良い。やるからには確りやって貰うぞ?ワシからの説明、耳の穴をかっぽじって良く聞くんだ!」
常磐春香「よ、宜しくお願いします!」
ゴンゾウ「良いか良く聞け!僕ちゃん達にやって貰うのは、部屋の布団の交換だ!」
斎藤優紀「交換?洗濯とかするんですか?」
ゴンゾウ「ったりめぇだい!お客様がグッスリ寝れる様にするには布団の手入れは欠かせん!自分等の唾液の溢れた布団を提供したら」
ゴンゾウ「それこそお客様から大ブーイングだ!そこの所、確り覚えとけよ?」
斎藤優紀「は、はい!」
ゴンゾウ「良し良し!それじゃあ早速始めるぞ!使用済みの布団や枕は廊下に出して有る籠の中に全部入れるんだ!」
ゴンゾウ「それが終わったら、新しい布団を押入れの中に入れて、それではい終わりだ!モタモタしてる場合じゃ無いぞ!」
斎藤優紀「わ、分かりました!春香、俺が使った奴やるから、新しいの詰めといて!」
常磐春香「わ、分かったわ!」
ゴンゾウ「あぁ言い忘れとった・・・僕ちゃん達!怪我だけはしない様にな!!」
俺達はゴブリンのおじさんに説明された仕事を請けた。布団を交換すると言っても、部屋は沢山有るのでとにかく走り回った。
それから暫くして、
常磐春香「はぁ・・・はぁ・・・おじさん、次は何処ですか?」
ゴンゾウ「ははは!中々やるじゃ無いか!今の部屋で最後だ!」
斎藤優紀「そ、そうですか・・・思ったより大変だった・・・」
ゴンゾウ「たりめぇだい!お客様を満足させるには、裏でワシ等が汗水垂らしてやれる事やってるんだ!って、こんな聞こえの良い事」
ゴンゾウ「言っても何も変わらないがな・・・」
常磐春香「・・・でも、どうだろう、あたし達のパパやママがあたし達の見えない所で頑張ってるって考えたら、その凄さが分かったって」
常磐春香「言うか・・・」
斎藤優紀「・・・かもね!俺等って、何と無く過ごしてるけど、実は父さんや母さんが頑張ってくれてるんだって成ると・・・」
ゴンゾウ「僕ちゃん達、そこまでの考えに行き着くとは見上げたもんだな!」
ゴンゾウ「そうさ!ガキの内は気付きにくいが、ガキの頃は皆守られて生きてるんだ!美味い飯を作れば笑顔が生まれる!苦手な物を食えば」
ゴンゾウ「強い身体が生まれる!面倒臭いと思う物程、やり応えが有って、自分が強く成れるってもんだ!」
斎藤優紀「面倒臭い事をやる?」
ゴンゾウ「そうだ!それが強く成る為の第一歩だ!僕ちゃん達も、この布団運び見たいに数を熟せば、今よりもっとやれる様に成るぜ!」
斎藤優紀「・・・はい!!」
〇警察署の食堂
ゴンゾウ「さて、他に僕ちゃん達に出来そうな仕事はと・・・」
エル・クラッド「あ!ゴンゾウさん!優紀君に春香ちゃんも!」
ゴンゾウ「よぉ!エルちゃんじゃ無いか!丁度良かった!こっちの仕事終わったからさ、何か良さげな仕事は無いかと思ってな!」
エル・クラッド「そうだったんですね!私も丁度頼みたい事が有って!」
常磐春香「エルさん、何か有ったんですか?」
エル・クラッド「実はね、厨房の方でお茶っ葉と、医務室の方で風邪薬を一部切らしちゃって、誰かに買い物を頼みたくて」
ゴンゾウ「マジか!なら次の仕事は決まりだな!」
斎藤優紀「あの、次は買い物ですか?」
ゴンゾウ「見てぇだ。僕ちゃん達、ワシが確り着いてるから、迷子に成らない様にな?」
エル・クラッド「あぁ、ゴンゾウさん、その事ですが、ゴンゾウさんには別の所を掃除して貰いたくて・・・」
ゴンゾウ「おいおいマジか!僕ちゃん達はまだ街に慣れて無いし、他に誰か行けるか?」
エル・クラッド「今その行けそうな人を捜してるんです・・・館長に頼む訳にも行かないし、私は私で手が離せなくて・・・」
斎藤優紀「・・・・・・」
斎藤優紀「あの、それなら俺達だけで行きます!」
エル・クラッド「ええぇ!?子供だけで行くつもり!?」
ゴンゾウ「おいおい僕ちゃん!冗談は顔だけにしろよ!」
斎藤優紀「おじさんさっき言ってましたよね?面倒臭い事をやれば強く成れるって」
ゴンゾウ「そ、そりゃ言ったけどよ!」
斎藤優紀「俺、皆がどんな風に頑張ってるか知りたく成ったんです。仕事をするってどんな感じか、旅館をやるってどう言う事か」
斎藤優紀「気に成っちゃって・・・」
ゴンゾウ「マジか・・・エルちゃん、どうするよ?」
エル・クラッド「そ、そうですよね・・・幾ら何でも子供だけで行かせるのは・・・」
常磐春香「でも人手足りないんですよね?あたし達も頑張れば通行書も貰えるし、やらせてくれませんか?」
エル・クラッド「・・・そこまで言うなら・・・」
エル・クラッド「ちょっと待っててね!」
ゴブリンのおじさんに連れられて次の仕事を探す中、エルさんが買い物出来る人が居ないか捜していたので俺達が引き受ける事に
した。おじさんもエルさんも困った顔をしてたが、エルさんは何かを思い付いて走り出した。暫くして。
エル・クラッド「お待たせ!優紀君!春香ちゃん!館長にお許し貰ったわ!」
斎藤優紀「本当ですか!!」
エル・クラッド「えぇ、館長からこれを渡す様に言われたわ」
常磐春香「スマホですか?」
エル・クラッド「本当は子供にこう言うのは持たせる訳にいかないけど、使える地図がこれしか無くてね。何より、これなら直ぐ連絡も出来るから、」
エル・クラッド「困った事が有れば私や館長に連絡してね。番号は登録して有るから!」
斎藤優紀「有難う御座います!」
エル・クラッド「後は必要な分のお金を渡して、危ない所に行ったり危ない妖怪には近付かない様にね?」
常磐春香「分かりました!優紀、行こう!」
斎藤優紀「うん!」
ゴンゾウ「僕ちゃん達!間違っても、盗みとかしたら駄目だぜ!!」
斎藤優紀「分かりました!じゃあ行って来ます!」
ゴンゾウ「くぅ〜、子供だけにお使いさせるのってこんなに不安な気持ちに成るんだな・・・」
エル・クラッド「ゴンゾウさん、心配ですか?」
ゴンゾウ「たりめぇだよ・・・まだこの街の事良く知らねぇし、エルちゃんは心配じゃ無ぇのか?」
エル・クラッド「内心バクバクしてます!」
ゴンゾウ「おいおい・・・僕ちゃん達、確り頼むぜ・・・」