第8話 裏切り=ビトレイ☆ガイ(脚本)
〇大きい交差点
幹部=マティス「ここって──」
〇公園の入り口
幹部=マティス「公園⋯⋯?」
幹部=マティス「しかも誰も居ないじゃない!」
川渡 シシオ(かわど ししお)「ここで待ち合わせとるんじゃ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「ホレ、入るぞ」
〇広い公園
幹部=マティス「こんな所まで連れてきて」
幹部=マティス「長々引き回したうえ、まだ待たせる気?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「別に急ぐ事でもないじゃろ?」
幹部=マティス「誤魔化そうったってそうはいかないわよ」
幹部=マティス「あと30分以内に子供を渡さなかったら」
幹部=マティス「アンタを切り刻んでから自分で探すわ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「⋯⋯チッ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「おっかないのォ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「ヒョエ~~~ッじゃ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「30分も待たんから安心せい」
幹部=マティス「アンタのコスい性格はお見通しなんだからね」
幹部=マティス「逃げようとしても攻撃しようしても 全部先にわかるんだから」
川渡 シシオ(かわど ししお)「フン⋯⋯どうだかのォ?」
幹部=マティス「何ですって?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「本当かどうか怪しいモンだと言ったんじゃ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「お前は10秒先を見通せるとか豪語しとるが」
川渡 シシオ(かわど ししお)「ワシの前では一遍もやって見せた事はないではないか」
幹部=マティス「お前⋯⋯無能な人間のクセに」
幹部=マティス「私を侮辱する気!?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「侮辱も何も、タダの事実じゃ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「貴様はワシの前で『能力』を使った事は一度もない──そうじゃろ?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「むしろ──」
川渡 シシオ(かわど ししお)「予知ならワシの方が得意だと思うがの?」
幹部=マティス「⋯⋯ハァ?」
幹部=マティス「何を調子に乗ってるのかと思えば⋯⋯ とうとうボケちゃったの!?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「フン⋯⋯」
川渡 シシオ(かわど ししお)「本気で無能力のタダの人間が 怪人組織の幹部になれたと思っとったのか?」
幹部=マティス「──!?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「見せてやろう──ワシの予知能力」
川渡 シシオ(かわど ししお)「今から10秒後」
川渡 シシオ(かわど ししお)「あそこの鳩の群れが飛び立つ!」
幹部=マティス(『スケジュール・ブック』!)
〇広い公園
〇広い公園
幹部=マティス(⋯⋯ホントに鳩が飛ぶ!?)
川渡 シシオ(かわど ししお)「見たか?実は──ワシも怪人なんじゃよ」
幹部=マティス「ハアアァァーー!?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「冗談じゃよ冗談⋯⋯じゃが」
川渡 シシオ(かわど ししお)「予知能力は本物──わかったじゃろ?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「怪人のような『能力』を使える人間──」
川渡 シシオ(かわど ししお)「『ヒーロー』も居るくらいだしの」
川渡 シシオ(かわど ししお)「何も不思議はあるまい?」
幹部=マティス(確かに⋯⋯なんでこんな無能力のジジイが)
幹部=マティス(私と同格の幹部なのか、ずっと不思議だったけど)
幹部=マティス(でもまさか──)
川渡 シシオ(かわど ししお)「それより問題はお前の方じゃ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「ワシの予言に驚いているだけじゃ、お前の『能力』の証明にはならんのォ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「10秒後、何が起きるか──お前が当ててみい」
幹部=マティス「フン⋯⋯安い挑発だけど」
幹部=マティス「見せてあげるわ」
〇広い公園
川渡 シシオ(かわど ししお)「うおッ! ホントに鳴っとる!」
〇広い公園
幹部=マティス「10秒後、アンタのポケットの中で何かが鳴るわ」
幹部=マティス「電話かしら?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「⋯⋯」
川渡 シシオ(かわど ししお)「うおッ!ホントに鳴っとる!」
川渡 シシオ(かわど ししお)「ゲーーッ!? 大幹部のスカーレットから!?」
幹部=マティス「そんな!? スカーレットお姉様が電話なんか使うはず──」
川渡 シシオ(かわど ししお)「冗談じゃ冗談」
川渡 シシオ(かわど ししお)「あのガキからじゃ」
幹部=マティス「アンタの冗談、全ッッッ然面白くないのよ!」
幹部=マティス「茶番は終わりよ! 今度フザけたら殺す!」
幹部=マティス「電話に出て、『今すぐこの公園に来い』と言いなさい!」
幹部=マティス「別の指示をしたり怪しい素振りをする未来が見えたら」
幹部=マティス「その時点で即、殺すわよ!」
川渡 シシオ(かわど ししお)「わかっとるよ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「言ったじゃろ? ワシもあのガキにはウンザリだと」
幹部=マティス(『スケジュール・ブック』!)
〇広い公園
川渡 シシオ(かわど ししお)「そうじゃ、今すぐ例の公園に来い!」
〇広い公園
幹部=マティス(指示通りの未来──)
幹部=マティス(アンタがいくら小賢しいマネをしても)
幹部=マティス(『スケジュール・ブック』がある限り 私を出し抜く事はできないわよ!)
川渡 シシオ(かわど ししお)「おぉ、今どこにおるんじゃ?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「もう約束の時間じゃろ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「そうじゃ、今すぐ例の公園に来い!」
幹部=マティス(よし、予知は実現した──)
川渡 シシオ(かわど ししお)「何、もう入り口におる!?」
幹部=マティス「入り口に──!?」
幹部=マティス「ぐあ⋯⋯ッ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「10秒先まで予知されるなら──」
川渡 シシオ(かわど ししお)「11秒後に裏切ればいい」
幹部=マティス「ガ⋯⋯ッ!」
川渡 シシオ(かわど ししお)「貴様は普段から10秒先が見えると吹聴しとったのォ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「つまり貴様の能力は切り札より見せ札向きの」
川渡 シシオ(かわど ししお)「穴のある能力という事じゃ」
幹部=マティス「がッ⋯⋯!」
川渡 シシオ(かわど ししお)「瞬きで誤魔化してはいるが、貴様の能力は」
川渡 シシオ(かわど ししお)「目を瞑らんと使えんようじゃのォ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「この公園に連れて来たのは、 真ん中にデカい時計が立っとるからじゃ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「攻撃をかわすなんて高度な動作は」
川渡 シシオ(かわど ししお)「何秒後か正確に分かってないと出来んからの」
川渡 シシオ(かわど ししお)「貴様はキッチリ秒単位で予知するよう 訓練していると読んだのよ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「そして10秒後を予知させて 貴様が目を瞑ったら」
〇広い公園
キッチリ11秒後に意表を突いた事を言うと
川渡 シシオ(かわど ししお)「実は──ワシも怪人なんじゃよ」
幹部=マティス「ハアアァァーー!?」
〇広い公園
川渡 シシオ(かわど ししお)「ゲーーッ!?大幹部のスカーレットから!?」
幹部=マティス「そんな!?」
貴様は驚いていた──
予知できていない証拠じゃ
〇広い公園
川渡 シシオ(かわど ししお)「一度『能力』を使うとクールタイムが必要」
川渡 シシオ(かわど ししお)「だから能力発動から11秒目は予知できない」
川渡 シシオ(かわど ししお)「それが貴様の能力の”穴”じゃ」
幹部=マティス「ガハッ⋯⋯!」
川渡 シシオ(かわど ししお)「やはり緊張すると判断力が鈍るタイプじゃッたのォ~」
川渡 シシオ(かわど ししお)「あの鳩、実はワシが飛ばしたのよ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「さっきレストランからくすねてきたパンが ポケットに入ってたからの」
川渡 シシオ(かわど ししお)「ここまで歩きながら細かくちぎって」
川渡 シシオ(かわど ししお)「公園に入って来る時、糸を結んだペンと一緒に落としたのよ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「それでワシの予言とヨーイドンでお前に予知させて」
川渡 シシオ(かわど ししお)「キッチリ10秒後に糸を引っ張れば」
川渡 シシオ(かわど ししお)「パンくずに群がった鳩の群れの真ん中で ペンが勢いよく動くから」
川渡 シシオ(かわど ししお)「鳩が飛んで予言成就というわけじゃ」
幹部=マティス「う⋯⋯ぐ⋯⋯」
川渡 シシオ(かわど ししお)「ああ、あの電話も」
川渡 シシオ(かわど ししお)「お前が目を瞑って能力を使ってから10秒後」
川渡 シシオ(かわど ししお)「ワシが自分で着信音を鳴らしただけじゃ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「どこにもつながっとらんよ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「何度も実験させてもらったからのォ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「貴様のクセも弱点も丸わかりじゃッたよ」
幹部=マティス「グ⋯⋯グググ⋯⋯」
幹部=マティス・マンティス「ギシャアァァァ」
川渡 シシオ(かわど ししお)「フン⋯⋯やはり銃ではトドメを刺せんかったか」
川渡 シシオ(かわど ししお)「だが、あれだけ格の違いを見せつけておけば」
川渡 シシオ(かわど ししお)「当分は近寄れんじゃろ」
〇清潔なトイレ
女の子「ふおおぉぉぉー!」
女の子「もっかいながして!もっかい!」
女の子「これ、やって」
川渡 シシオ(かわど ししお)「ガキか 今どこじゃ」
女の子「シシオ!?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「さっきの場所に来い」
女の子「さっきの?」
川渡 シシオ(かわど ししお)「正面入り口じゃ そこらのオバハンにでも聞け」
女の子「しょうめんいりぐち、つれてって」
オバハン「⋯⋯ハイ」
〇ビジネスホテル
川渡 シシオ(かわど ししお)「⋯⋯」
〇ビジネスホテル
幹部=マティス「じゃあ何であんなの連れて逃げたのよ!」
川渡 シシオ(かわど ししお)「⋯⋯さあな」
川渡 シシオ(かわど ししお)「⋯⋯自分でもサッパリの、大失敗じゃ」
〇ビジネスホテル
女の子「シシオー!」
女の子「シシオ! といれすごいね!」
川渡 シシオ(かわど ししお)「⋯⋯」
川渡 シシオ(かわど ししお)「フッ」
川渡 シシオ(かわど ししお)(まあ、今はこれでええわ⋯⋯)
川渡 シシオ(かわど ししお)(今は⋯⋯)
〇市街地の交差点
幹部=マティス・マンティス「ハアッ⋯⋯ハアッ⋯⋯」
幹部=マティス・マンティス「あ、あのジジイ⋯よくも私をこの姿に⋯⋯ッ」
幹部=マティス・マンティス「ゆ、許さない⋯⋯絶ッッ対に許さない!」
幹部=マティス・マンティス「体力を⋯⋯何か食べて体力を回復しなければッ」
〇荒れた倉庫
怪人=ピート「⋯⋯何かまた外が騒がしいな」
〇廃工場
幹部=マティス「ハア⋯⋯ッ ハア⋯⋯ッ」
幹部=マティス「た、食べるもの⋯⋯」
〇荒れた倉庫
怪人=ピート(ゲエーーーッ!)
怪人=ピート(何であの幹部がここにッッ!?)
シシオ、いつの間にペンの仕掛けやパンくずを…😅
そしてソレに気が付かないマティスも…😇
公園の時計を利用した頭脳戦に「じじいカッコイイ…」と思ってしまいました😆
やはりカマキリでしたか…マティスは怪人姿より人間の姿に執着があるのやも🤔?
ピート、万事休す!!🤣
頭脳線の戦い方が面白いですね!!
シシオの面目躍如です😃
冗談に見えたことも伏線回収されていて読み応えがありますね。
設定自体が面白く、計算で生きてる男が少女のせいで計算が狂う面白さと、
それでピンチになっても、頭脳で危機回避するところにむしろ彼の面目躍如があって
二重に良くできた設定だなと思います。
なるほど!卑怯であるためにはやはり頭脳も必要ですもんね!シシオの強みは実は相手を読み、状況を読み…という先読みの力でしたか!✨☺️
怪人の真の姿にひえー!!となりつつも空腹な姿にハラハラしちゃいますね!!😂どうなることやら、、、続きも読ませていただきますー✨☺️