第17話 『絶たれた退路』(脚本)
〇古いアパート
〇女の子の部屋
三咲「てか、彼女と喧嘩したくらいで、すぐに元カノのところに来るとかなくない?」
坂下道雄「だから喧嘩じゃねえって言ってるだろ」
三咲「ま、私は別に構わないけど。 ミッチーが帰ってきてくれたなら」
坂下道雄「まだキャバやってんの?」
三咲「今月、もう少しで一位取れるかもしれないんだよね」
坂下道雄「なら今度行くか」
三咲「またまたー。 お金ないからうちに来たんでしょ?」
坂下道雄「まあ今はな」
坂下道雄「でも半年後には600万が入る予定になってる」
三咲「うわー、何それ。絶対危なそうなやつ!」
坂下道雄「ちゃんと信頼できる筋に預けたから大丈夫だ」
ブーッ、ブーッ、ブーッ・・・
坂下道雄「またかよ・・・」
坂下がスマホを見ると、通話相手に「高橋」と表示されている。
坂下道雄「おっ、噂をすれば・・・」
〇雀荘
常連の男たちが麻雀をしているところに、坂下が飛び込んできた。
坂下道雄「話が違うぞ!!」
常連の男「なんだい、兄ちゃんか」
坂下道雄「高橋って奴は信頼できるって言ってたじゃないか!?」
常連の男「おいおい、落ち着けって。何の話だよ」
坂下道雄「俺が預けた金だ! 300万!」
坂下道雄「半年で倍になるからってあんたが言って──」
常連の男「それは俺の場合だろ。 毎回そんなうまいことがあるか。なあ?」
そう言って、常連の男は他の男たちとクスクス笑った。
坂下道雄「・・・てめえ、最初からグルだったな」
常連の男「おいおい。 人聞きの悪いこと言ってくれるなよ」
坂下道雄「・・・・・・」
常連の男「いつも麻雀で勝ってるんだから、たまにはいいじゃねえか」
坂下道雄「殺してやる!」
坂下は常連の男に掴みかかった。
〇入り組んだ路地裏
バサッ──
殴られて血だらけになった坂下が、ゴミ置き場に投げ捨てられる。
常連の男「・・・あんま大人を舐めんなよ、兄ちゃん」
〇古いアパート
三咲「あれ!? ミッチー? 」
三咲「その怪我、どうしたの? 病院行かなきゃ・・・!」
坂下道雄「・・・金が、ねえんだ」
三咲「え? 病院行くお金もないの?」
坂下道雄「・・・ああ」
三咲「じゃあ手当してあげるから早く部屋入ろう。 お土産も買ってきたんだよ」
坂下道雄「お土産?」
坂下が見ると、三咲が持っているケージの中でがとぐろを巻いている。
坂下道雄「!!」
三咲「ふふふ。いいでしょー?」
三咲「いまペットで爬虫類飼うの流行ってるんだよ」
三咲「常連のお客さんも──」
坂下道雄「お、お前! 昔、爬虫類は嫌いだって、言ってただろ!?」
三咲「そうだっけ?」
坂下道雄「そんなもん早く捨てろ!」
三咲「うわー、そんなもんだって。 モリーが可哀そう」
坂下道雄「!」
三咲「あ、この子の名前ね、モリーにしたの」
坂下道雄「なっ・・・!!」
坂下は恐怖で後ずさると、思わず地面に尻もちを付いた。
三咲「どうしたの? 道雄・・・」
坂下道雄「!」
三咲「・・・・・・」
坂下道雄「お、お前・・・誰だ? 」
坂下道雄「今まで一度だって道雄なんて呼んだことねーだろ・・・」
三咲「?」
坂下道雄「やめろ! 来るな! こっち来るな!」
〇一戸建て
〇一軒家の玄関扉
ドンドンドンッ!
坂下道雄「頼む・・・! 入れてくれよ!」
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