蛇地獄

YO-SUKE

第18話 『脱皮』(脚本)

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〇通学路
  半年前の夏──
  仕事をクビになった俺は、自棄(やけ)になって飲み歩いていた
  モリー。どこにいるのー?
  公園の方を見ると、パジャマ姿にダウンを羽織った女の子が何かを探している
片岡七瀬「お願い。出て来て」
  化粧もほとんどしていないのに、かわいらしい女の子だと思った
片岡七瀬「モリー・・・」
  それが、初めて会った七瀬だった

〇住宅街の公園
  不安そうな彼女を見るに見かねて、俺は一緒になって探し始めた
片岡七瀬「あ、あの・・・」
坂下道雄「手伝いますよ」
坂下道雄「モリーちゃんっていうのは、ペットかなにかですか?」
片岡七瀬「はい・・・でもこんな時間に」
坂下道雄「関係ないです。 どうせ今日も仕事なんてないですし」
片岡七瀬「え?」
坂下道雄「モリーちゃーん、出ておいで~」
片岡七瀬「・・・・・・」

〇住宅街の公園
  朝日が昇り始めていたが、いまだモリーは見つからなかった
片岡七瀬「あのっ・・・やっぱりもういいです。 後は私、一人で探します」
坂下道雄「いや、でも──」
片岡七瀬「こんな時間まで探してくださって、ありがとうございました」
坂下道雄「大事なペットなんですよね。 まだ近くにいるかもしれないのに」
片岡七瀬「・・・・・・」
  そのとき、草むらからガサガサと何かが這いずるような音がした
  足元を見ると、まだら模様の蛇が長い舌を出して這いまわっていた
モリ―「シャー、シャー」
坂下道雄「うわぁ! 蛇!?」
片岡七瀬「モリー!!」
坂下道雄「え? こ、この蛇がペットなんですか?」
片岡七瀬「はい! ありがとうございます!」
  彼女は嬉しそうに蛇を抱きしめた
片岡七瀬「会いたかったよ~。モリー」
坂下道雄「ま、まあ見つかったなら良かった・・・かな」
坂下道雄「ハハハ」
片岡七瀬「ありがとうございました! 何かお礼させてください!」
坂下道雄「いやいや。お気遣いなく」
片岡七瀬「それだと私の気が済みません」
片岡七瀬「私にできることなら、なんでも言ってください」
坂下道雄「うーん・・・なら」
片岡七瀬「?」
坂下道雄「朝ごはん、食べたいかもです。 恥ずかしながら、お金なくて」
片岡七瀬「・・・わかりました!」
  そう言って彼女は微笑みを浮かべた
  それはまるで子供のわがままを聞く母親のように、優しさに溢れた笑顔だった

〇住宅街の公園
片岡七瀬「お帰り、道雄」
  目の前にあるのは、初めて会った時から何一つ変わらない笑顔だ
片岡七瀬「ここって、私たちが初めて出会った場所だよね」
  けれど今は、恐怖でしかない
片岡七瀬「道雄。あのね──」
片岡七瀬「ゴホッ、ゴホッゴホ・・・」
坂下道雄「・・・七瀬?」

〇綺麗な一人部屋
  家に着くやいなや、七瀬は台所に向かって料理を始めた。
坂下道雄「寝てなくていいのか?」
片岡七瀬「道雄・・・お腹空いてるでしょ?」
坂下道雄「俺のことは別にいい」
片岡七瀬「すぐに作るから待ってて」
坂下道雄「・・・・・・」

〇綺麗な一人部屋
  テーブルを挟んで向かい合う二人の間には、豪華な料理が並んでいる。
坂下道雄「・・・・・・」
片岡七瀬「食べて」
坂下道雄「・・・・・・」
片岡七瀬「お腹空いてるでしょ?」
坂下道雄「ああ・・・」
  坂下はゆっくりと食事を口に運んだ。
片岡七瀬「どう?」
坂下道雄「・・・うまい」
片岡七瀬「良かった~!」
坂下道雄「・・・・・・」
片岡七瀬「道雄いなくなって心配したんだからね」
坂下道雄「・・・・・・」
片岡七瀬「・・・道雄?」
坂下道雄「すまなかった」
片岡七瀬「え?」
  坂下はふと席を立ちあがると、七瀬の前で床に膝をつけて土下座をした。
坂下道雄「すまなかった・・・!」
片岡七瀬「どうして? どうして道雄が謝るの?」
坂下道雄「俺、ずっと七瀬を利用してた!  利用するだけ利用して、七瀬を捨てた!」
坂下道雄「モリーのことも、遥香ちゃんのことも、最初からずっと、七瀬は知ってたんだよな!?」
片岡七瀬「・・・・・・」
坂下道雄「ちょっと借りるだけのつもりだったんだ」
坂下道雄「半年・・・半年で倍になるっていうから、信頼できると思ったから・・・!」
  七瀬が通帳を見ると残高は0になっていた。
坂下道雄「何年かかるかわかんないけど、でも必ず働いて返す」
坂下道雄「だから・・・だから殺さないでくれ・・・!」

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