いわく鑑定士

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〈一体化する〉コントローラー(脚本)

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〇時計台の中
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた呪いの品が存在します」
鑑定士「私は、そんな〈いわく〉付きの品専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、一体おいくらになるのでしょうか・・・」

〇時計台の中
順子「私はゲームなんてしたことありません」
順子「これは、息子の・・・哲也君の物でした」
順子「最後には、ほとんど哲也君そのものだったと言ってよいかもしれません」
鑑定士「それではお聞かせください。 このコントローラーにまつわる〈いわく〉を」

〇汚い一人部屋
哲也「いけ、撃て・・・ちっ、クソコントローラーが、反応遅ぇ・・・」
順子の声「哲也君、ちょっと話があるんだけど、お部屋入れてもらえないかな?」
哲也「はぁ、めんどくせぇな・・・。 いま、鍵開ける」
  哲也君は高校でイジメに遭い、不登校になっていました。
  ほとんど部屋から出ず、一日中ゲームばかりしていました。
哲也「何度言われても学校なんて行かないから。 俺、FPSのプロゲーマーになるから」
哲也「そんで、俺のことコケにしたクソ共を見返すから。ぜってぇそうするから」
哲也「俺がこんな風になったの、あんたにも責任あんだからな」
哲也「勝手に離婚して、俺のことずっと一人にして」
哲也「今さら母親面すんなよ」
順子「分かってる。哲也君は悪くないよ」
順子「無理して学校なんて行く必要無いし、ずっと部屋にいていい」
哲也「・・・じゃあ、なんの用だよ」
順子「これ、プレゼント」
哲也「! サイゲ社製の純正ゲーミングコントローラー・・・なんで・・・」
順子「お母さん、ゲームのことは全然分かんないけど、頑張ってネットで調べたんだ」
順子「プロゲーマーの人って、そういう良いコントローラー使うんでしょ」
哲也「最高級品だよ、これ。 銃のリロードとエイムを近くのボタンに設定できたりしてさ・・・」
順子「お母さん、哲也君の夢を応援することにしたの」
順子「何か打ち込めるものがあるって素敵よ」
順子「哲也君、本気でプロ目指そう、ね!」
哲也「・・・言われなくても、最初から本気で目指してるよ」
順子「あら、そのコントローラー、いま光ったような・・・」
哲也「用が済んだらさっさと出てけ。 ・・・早くこのコントローラーでプレイしたいんだよ」
順子「・・・うん、頑張って!」
  哲也君が前を向いてくれればなんでも良いと思ったんです。
  でも、私が思っていた以上に、哲也君はゲームにのめり込んでいきました。

〇汚い一人部屋
順子「哲也君、おやつ持ってきたよ。 少し休憩したらどう?」
哲也「そこっ、おい、何やってんだ、クソエアプが、邪魔すんな・・・」
順子「・・・部屋の掃除しちゃうね。 飲み終わったコップも片づけ──」
順子「あっ!」
順子「ご、ごめんね! ビックリしたよね、ケガとかしてない!?」
哲也「ちっ、そこ、撃てよ。 弾薬取らせろって、あー、クソッ」
順子「哲也君、聞こえてる・・・? やっぱり少し休んだ方が・・・」
哲也「うっ、ぐっ、痛っ・・・」
順子「? 哲也君? 大丈夫?」
哲也「ざけんじゃねぇぞ、ぶっ飛ばす、ぜってぇゆるさねぇ、うぐっ・・・」
順子「はぁ・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
哲也「これ、切れたから、買っといて」
順子「あ、うん・・・」
順子「ねえ、さっきゲームしてるとき、すごく痛そうにしてたけど、何かあった?」
哲也「・・・別に」
順子「嘘、肩の辺り押さえて、うめいてたじゃない。ちょっと、見せて」
哲也「おいババア、なに触って──」
順子「! ひどい痣・・・これ、どういうこと?」
哲也「・・・ゲームで出来たんだよ」
順子「ゲームでケガするわけないでしょ!」
哲也「最高だよ。あのコントローラー」
哲也「ゲームキャラの受けた痛みが体に感じられるようになる」
順子「そんな、嘘でしょ・・・」
哲也「どんどん動きの精度も上がってる。 もっともっと深くキャラと一体化してやる・・・」
順子「ねえ、もうやめて。 これ以上は危険よ・・・」
哲也「ふざけんな!」
哲也「いま、アマチュア大会を勝ち進んでる。 これに優勝すればプロになれんだ。 邪魔すんな!」
  哲也君はますますゲームに没頭していきました。

〇白いバスルーム
  哲也君との交流はほとんど無くなってしまいました。
  朝と晩に食事を届け、溜まった洗濯物を受け取る。
  それだけの関係になりました。
順子「哲也君、お風呂入らなくて平気なのかな」
順子「着替えてはいるみたいだけど・・・」
順子「え、何これ、血!?」
順子「て、哲也君!」

〇部屋の扉
順子「哲也君、ねえ、あの服の血は何!」

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コメント

  • アイデアからタップノベルの完成版まで創る過程を追って、その作品を楽しめるのは、このプロジェクトでしか味わえない醍醐味で、ワクワクします😊
    これから皆さんのアイデアからプロットなどを経ての作品が見られるのがすごく楽しみです😆

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