第33話 鸞は還り鳳凰と成る(脚本)
〇入場ゲート
2021年 神奈川県 綾瀬市大和市間 海上自衛隊厚木飛行場 入場ゲート前
斎王達は入る時と同じく、鸞の術で正面から脱出し雷王跋会を出る
そして厚木飛行場に到着するがそこには凄惨な光景が広がっていた
斎王幽羅「うぅ···何これ···何でこんな『死体だらけ』なの···?」
キング「自衛隊と警察···見ろ、こいつ紅色派の中国人じゃねえか?ひでぇなこれ···」
フェード「民主派閥ではないがこれはあまりにも···それに死体に『鳥』と『虫』が大量に群がって」
フェード「色んな死体が穴あきチーズのような形で食い荒らされてる···惨いな」
目の前のあまりにもグロテスクな光景に斎王は吐き出しそうになり、口を抑えながら厚木飛行場の内部に入る
飛行場内部の奥へ歩を進めるとそこには大勢の忍者達と中心に『鳳凰』の姿が見えた
〇施設内の道
厚木飛行場 中央部 航空機離着陸エリア
鳳凰「間に合ったな。さて鸞···終わりの試練を行う前に聞いとく『本当に一文字族を抜けるんだな?』」
鸞「無論です鳳凰様、斎王の助けになる為にここまで旅をしてきました。祖父も父もXヒーローを支えてきたように」
鸞「俺も『斎王幽羅を支える影として生きます』。その為にはどうしても一文字族を抜けねばなりません。どうかお許しください」
鸞は鳳凰の前に立ち膝を落とし、土下座をする。鳳凰はそれを少しの間見つめ鸞の顔を上げさせ話始める
鳳凰「鸞···祖父の燕は修行中に舌を欠損し、終わりの試練で両目を自分の手で抉り出した」
鳳凰「父の鶻(はやぶさ)は一番の親友である喧嘩王の大切な存在である妹を殺した」
鳳凰「肉の代償も心の代償も意味を成さないとわかった以上何を奪う?お前から何を『盗りだす?』」
鳳凰「答えは一つだ。鸞、お前に与える終わりの試練は」
鳳凰「『自らの子宮を取り出せ』。お前からは『愛』を盗る」
鳳凰の言葉を聞き鸞は立ち上がる。斎王は鸞を抑え鳳凰に対し声を荒らげる
斎王幽羅「なんで···なんでそんな事を平気で言うんだよ!そもそも終わりの試練をやる意味もわからないのに!」
鳳凰「意味はある。一文字族を抜けるという事は大昔の大蛇の呪いに晒されることを意味する」
鳳凰「それを防ぐため、一文字族との強い『繋がり』を絶たねばならない」
斎王幽羅「名前を捨てるとかじゃダメなのか···!?それに自らの子宮を取り出すって···死ぬはず···」
鳳凰「鳳凰忍術輪廻で蘇生は可能だ。まぁ2回以上の蘇生で精神崩壊を起こすが···そうならないように祈れ」
斎王幽羅「そんなの間違ってる···!今のを取り消して別の物に···!」
鸞は斎王を振り払い、斎王を見つめる。その表情は『覚悟を決めた目をしており』短刀を抜き
鸞は一呼吸置いてから自身の腹部に短刀を突き刺し、下に向け刃を降ろす
鸞「うっぐ···がぁぁぁ···あぁぁぁぁぁぁぁ···!」
裂けた腹部に手を突っ込むと同時に鸞は力無く倒れる。斎王は鸞に駆け寄ろうとするも忍者達に行く手を阻まれる。
鸞「邪魔を···するな··· ··· ···斎王···!」
斎王が地面に潜ろうとした時、鸞は倒れた状態で苦痛に顔を歪めながら手で自身の体の奥にある『モノ』を探る
鸞は大きな雄叫びを上げながらそれを切り裂き、鳳凰の前に置くと虚ろな目をしながら腹部を抑える
鳳凰「鳳凰忍術『再炎』」
鳳凰はすぐさま術で鸞の腹部に炎を作り出す。炎は血を吸い取りながら燃え、傷は瞬く間に塞がり元の状態へ戻る
鳳凰「輪廻を1度発動して2度目の発動をせず、耐え切る。親子三代『同じ結果で試練を乗り切る』とはな」
斎王はそんな鳳凰を突き飛ばし、鸞の脈と心音を診る。どちらもかなり弱々しくあるが『正常に動いていた』
斎王はほっと安堵の息を漏らすと共に、鳳凰を睨みつける。鳳凰はそんな斎王を気にもとめず
鸞が取り出し『モノ』を1人の忍者に見せる。
虻「これは···クヒヒ···卵巣と卵管の一部ですね、まぁ子宮そのものを取り出すなんて1回で出来るわけないですから」
虻「鳳凰様、これはやり直しではないですか?キヒヒ···」
鳳凰「その必要は無ェ、卵巣が2つ取り除かれた以上鸞はもう『卵子を作れない』」
鳳凰「そうなりゃこいつは一生『子供を産めない体』になった訳だ。これで終わりの試練は終了とする」
鳳凰「終わりの試練で鸞が傷付けた自身の体や腸はもう治してある。それともう1つ」
鳳凰は鸞に近づき術で鸞を燃やす。鸞は苦しむ様子はなく、炎には熱も感じられないが
炎に包まれた鸞は姿を変え、変化の時に見せていた『女の子』の姿に変わっていった。
鳳凰「卵子を失い子を宿す事をできない体になり、そして『元の姿』に戻る。斎王幽羅、鸞は今『女として不幸になる未来を背負った』」
鳳凰「愛するものが出来ても、その者と愛し合い『愛の結晶』を生み出すことができない体になった」
鳳凰「鸞はお前の為にその『不幸を背負った』。お前も鸞の為に尽くせ、鸞がお前を支えるように」
斎王は立ち上がり、鳳凰の前に立つ。憤りの表情を見せながら斎王は静かに鳳凰に向け、言葉を放つ
斎王幽羅「本当に···本当にこれしかなかったんですか?鸞は本当に一文字族に『愛』を奪われなければならなかったんですか?」
鳳凰「じゃあ聞くが他に何を奪う?お前か?違うな、鸞は望まない。鸞から両目を奪っても鸞はお前の為に動く」
鳳凰「お前を殺させれば鸞は腑抜けになり、本来の目的を失う。ならあとはひとつ『愛』を奪う事だ」
鳳凰「それ以外に選択肢はなかった、気に入らないならそれでいい。だが鸞の選んだ道だ『後悔させるような事はするな』いいな?」
斎王は苦い顔をしていた。鸞の決意をどうしても受け止めきれない自分が悔しいと同時に他に最前の道があったのでは?と悩んでいた
そんな中、エンチャントは鳳凰に話始める
エンチャント魔導法士「鳳凰、あんまり若いのをいじめないでやってくれ。これでもワシらの『リーダー』だからな」
鳳凰「あんなガキがか?ありゃ先行きが不安だな。苦労するぞお前」
エンチャント魔導法士「全然そんな事ないぞ?ワシも出会った頃はそう思ったが、一緒にいてわかったんだよ」
エンチャント魔導法士「『ワシらのリーダーは斎王幽羅でなければならない』ってな。まぁワシがいるから万が一にもヘマはしないだろ」
鳳凰「うちの忍者のハニートラップにまんまと引っかかったバカが何か言ってら」
エンチャント魔導法士「うっさいわ!それより···雷王跋会から若頭と数人若いのが来るはずなんだがな···」
すると1人の忍者が現れ鳳凰に耳打ちをし、その場から消える。鳳凰の顔は険しくなり、エンチャントが尋ねると応え始める
鳳凰「警視庁、紅色派、ロシア正教がこっちに向かってる。紅色派とロシア正教が今ごちゃごちゃしてるが」
鳳凰「警視庁の奴らはあと数十分で来る。ウィリアム、どうする?」
エンチャント魔導法士「どうするも何もワシらは誰も飛行機なんざ運転出来ん。雷王跋会の奴が来ないとどうしようも···」
鳳凰「鳶(とんび)、いるか」
鳶「ここに。御用でしょうか鳳凰様」
鳳凰「鳥組全員で雷王跋会の若頭とその下っ端を連れてこい」
鳶「承知しました。行くぞお前達!」
そう言うと一部の忍者達は鳥の姿に変化し、その場を飛び去る。続けて『蟲組』と呼ばれる忍者達が
虫の姿に変化して散開する。最後に『魚組』と呼ばれる忍者達は魚の姿に変化し、海へ移動し1匹の魚だけが顔を出していた
鳳凰「今鳶達が雷王跋会の若頭達を探してここに連れてくる。それまで三組織の攻撃を耐えねばならん」
エンチャント魔導法士「わかっとる···見ろ、ヘリまで来たぞ。どうやらワシらを国外に行かせたくないようだな」
キング「おい斎王どうする?··· ··· ···おい斎王、しっかりしろ!ボーッとすんな!」
キングの声に斎王は我に返る。斎王は鸞の事でまだ気持ちの整理ができず、迫り来る警察達に皆で戦う事になった
To Be Continued··· ··· ···