Xヒーロー

語り部

第31話 外道のスジ(脚本)

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〇駅のホーム
  2021年 大阪府 大阪市 淀川区 新大阪駅 ホーム
  斎王達はひとまず到着し、新横浜行きの切符を手にしていた。
  駅のホームにある電光掲示板のニュース欄をふと目をやると、斎王は皆に見るように促す。そこに記されていたのは···
  昨日、神奈川県内にある指定暴力団『雷王跋会』とNPO団体との暴行事件が発生。数十名の重軽傷者を出すことに
  警視庁は指定暴力団雷王跋会に強制捜査を行う準備を進めており、明日にも向かう模様
斎王幽羅「雷王跋会がNPOを···このNPOって前ギルドにも来てたあれだよね?」
キング「『アンチヒーロー』だな、5代目の時代にできて5代目が『さっさと辞めた』理由の1つでもある組織」
鸞「違法組織を見つけては建物を取り囲んで拡声器で昼夜問わず、喋り続ける。最初は風俗店や金融機関が相手だったが」
鸞「奴らの頭が警察庁の巡査部長様にすげ変わってから、暴力団やマフィア、そしてギルドすら敵に回し始めたんだったな」
斎王幽羅「雷王跋会は『桜木町』だよね?鸞、どうする···?あと『48時間』だけど···真っ直ぐ里を目指す?」
鸞「··· ··· ···おい、監視役。終わりの試練の場所はどこだ?」
  するとどこからともなくハエが飛んできて、鸞の指に止まる。鸞は数秒見つめた後ハエはまたどこかに飛んで行った
鸞「厚木飛行場···桜木町からまぁまぁの近さだから雷王跋会の方に行ってもいいな」
斎王幽羅「なら次は横浜だね。ちょうど来たから行こっか」

〇電車の中
  新大阪~新横浜間 新幹線内
  新幹線内には疎らに人がおり、自由席にも関わらず比較的少ない印象を受けた
  鸞、フェード、凪園、エンチャントが座り、斎王とキングが一緒に座ることに。そして落ち着いた所でフェードは鸞に話しかける
フェード「··· ··· ···鸞、気づいてるか?」
鸞「あぁ、後ろに『5』前に『4』だな」
凪園無頼「何の話してんのー?」
フェード「駅のホームから『尾けられてる』。後ろの出入口付近に5人、前から2つ目の席に4人いる」
鸞「調べてみるか?」
凪園無頼「やめた方がいいんじゃね?あれサツ(警察)だよ。体の重心傾いてるし」
凪園無頼「それにサツって激ウザ集団だからキモイくらいついて来るんだよねー、見ててー」
  そう言うと凪園は立ち上がりトイレに向かう素振りを見せる。後方の席を注視すると
  私服の男が直ぐさま立ち上がり、凪園と同じ方向に向かう。まもなく凪園が戻ると男も同じように戻ってくる
凪園無頼「どー?マジキモイっしょ?ああやって気が済むまでついてくんだよ?蹴り殺してーんだけど」
フェード「その時になったら手伝うが、今は抑えろ。そしてお前の言う通り歩く時の重心が『右側』に傾いていた」
フェード「あの歩き方からして···軽量の警棒と···3.8mmの小型拳銃か。あと座る瞬間も不自然だった、背中に『なにか』あるな」
鸞「流石『アジア最強の殺し屋』、歩く姿だけでそこまでわかるとはな」
鸞「さてあっさり囲まれたが、どうする?あいつらは動くと思うか?」
フェード「『ありえない』な。警官共が異能力者でもなければこの場では取り押さえなんてしないだろう」
フェード「こっちは能力者、変化武器、ビート使い、異能武器使い、忍者、魔術師がいる。お前が非能力者の警官だったらどう思う?」
鸞「まぁ···人を集めてから逮捕だな、そうなるとこいつらは監視か?」
フェード「そう考えるのが自然だろう。今はひとまず体を休めよう」
フェード「··· ··· ···ところでエンチャントはなぜ話に入ってこない?」
凪園無頼「寝てっから」
フェード「このジジイ···こっちが気を張ってる時に···!」
鸞「もう60代の年寄りなんだから大目に見てやれ」

〇屋敷の門
  数時間後 神奈川県 横浜市 桜木町 雷王跋会 事務所前
  鸞は道中斎王達に新幹線内の事を説明し、周囲を警戒しながら雷王跋会の事務所に向かう。
  そして事務所の前にはNPO団体の『アンチヒーロー』のメンバーが大勢おり、とても入れる状況ではなかった
斎王幽羅「どうしようこれ、とても入れそうに···って凪園!?」
  凪園は怒りの表情を見せながらNPO団体に近づこうとするも、鸞とフェードが肩を掴み抑止する。
  2人の様子に違和感を感じた斎王だが、ふと周りに目をやると数名の男が一様に『何か』を取り出す素振りをしていたのを理解する
斎王幽羅「鸞、フェード···あれって紅色派?それとも警察···?」
鸞「···警察だな、新幹線の中にいた奴らだ。凪園が今感情に任せてNPOの奴らに攻撃していたら間違いなく『軍』が動く」
斎王幽羅「え、なんで?」
鸞「考えても見ろ、こっちは異能力者や異種族の集まりで指名手配犯でもある。そんな奴らが警察で止められる訳が無い」
鸞「日本で止めれるとしたら軍、即ち自衛隊だ。だが警察にもプライドがあるから相手が手を出して、ある程度被害が出てから」
鸞「『どうしようもないのでお願いします』って自衛隊に泣きつくつもりだろう」
斎王幽羅「そういうもんなんだ···というかどうやって入るの?」
鸞「簡単だ。フェード、ゲート・ディメンションの中に入って無事に出てこれるのはお前だけか?」
フェード「『1人だけだ』。このグローブに触れていれば1人だけなら無事に次元の狭間から一緒に出られる」
鸞「ならエンチャントと入ってくれ。残りは自力で事務所内に向かうとするか」
斎王幽羅「え、ちょ···正面突破できるの!?」
鸞「忘れたか?俺は忍者って事を。『霞の術』」
  鸞は口から白い煙を吐き出し、当たりは『霧』に包まれ何も見えなくなる。皆一様に中に侵入しあっさりと内部へ入り込む
  鸞は内部へ入る前に振り返り、NPO団体の方に向き様子を見て『ふっ』と笑みをこぼす
鸞「お前らアンチヒーローは無差別に『声の暴力』を振るってきた。俺たち忍者組織一文字族も例外じゃなかった」
鸞「せめてもの仕返しをさせてもらおう。鳥獣忍術『鴫(シギ)』」
  鸞が術をかけると霧の中からカラスの鳴き声が何度も響き渡り、時々本物のカラスがNPO団体に襲いかかる
  NPO団体の人間達は完全に混乱状態になり、鸞は雷王跋会の内部へ入る

〇校長室
  桜木町 雷王跋会 事務所内 会長室
  斎王達は事務所内部へ侵入に成功していたが、なぜかそこには大勢の組員が居た。
  そして組員の1人は『待っていた』と言い、斎王達を会長室へ案内し若頭だけを残し立ち去る。
皇牙雷蔵「ようウィリアム、伊吹町で見ねえと思ったらそんなガキどもと一緒に居たとはな」
エンチャント魔導法士「まぁいいじゃねえか、所で···ワシらを『待っていた』ってのはどういう事だ?」
皇牙雷蔵「まずそっちの用向きを聞かせてもらおうか?何しに『雷王跋会』に来やがった?」
  すると凪園は前に出て両膝に手を当て、頭を下げる『ヤクザ式のお辞儀』をし話始める
凪園無頼「俺のケジメの為に皆に無理言ってここに来ました。会長、今ここでエンコ詰め(指の切断)ます」
  凪園が敬語を使う事に皆は勿論、雷王跋会の若頭ですら驚きを隠せずにいた。
  恐らく斎王達より古い付き合いである雷王跋会の組員である若頭の男ですら、凪園の敬語は初めて見るのだろう
  しかし雷蔵は平然としており、反論を始める。
皇牙雷蔵「てめェのケツも拭けねえチンピラくずれのカタギの指渡されて何がケジメだ、てめェの指に価値なんざねぇんだよ」
凪園無頼「落とすのは手じゃありません『足の親指』です。蹴り技にとって重要なのは『支え』」
凪園無頼「拳の握る際、全ての指を折ってその上で親指を被せ『握り込みを強くする』ように」
凪園無頼「足の親指は軸足を支え、重心を安定させる重要な部分。蹴り技主体の俺にとって無くてはならない物です」
皇牙雷蔵「それがどうした凪園、そもそもてめェはもうただのカタギだ」
皇牙雷蔵「カタギのてめェがエンコ詰めようが何しようが、それは極道に対してのケジメにはならねェ」
凪園無頼「じゃあ···じゃあどうすればいいんですか!?俺はどうすれば会長に···『謝れる』んですか!!?」
皇牙雷蔵「凪園、てめェは何だ?ヤクザか?違うだろ、てめェはXヒーローに所属する『ヒーロー』だ」
皇牙雷蔵「ならヒーローらしい事をしろ、歴代のXヒーロー達がしてきた事以上の『歴史を作ってみろ』」
皇牙雷蔵「歴史が作られる瞬間に凪園がいるんだったら、俺も鼻が高ェからよ。それが俺に対しての『償い』になる」
  凪園は喜びと不安が入り交じった複雑な表情を見せる。歴代Xヒーロー達の偉業を越える偉業を成すという事は簡単では無い
  だがそれを成した事が本当に『償い』になるのか?と疑問を感じていた。すると雷蔵は話始める
皇牙雷蔵「そういやなんで『雷王跋会』って名前なのか教えてなかったな。この際だし教えてやる」
皇牙雷蔵「雷王ってのは『喧嘩王』を指した言葉で、跋会は『Xヒーロー』を意味してる」
皇牙雷蔵「俺は組を立ち上げる時『喧嘩王の時代のXヒーローのような組織にしてェ』って憧れでこの組を立ち上げたんだよ」
エンチャント魔導法士「あの時代じゃ誰も彼もがそう思っただろうな。『絶対無敵のヒーロー』が擬人化したみたいな奴だったし、神王は」
  『誰もが憧れるヒーロー』。凪園はこの言葉を聞き、雷蔵が言ったことが改めて雷蔵に対しての償いになると感じ始めた
  そう思うと凪園の表情は少し柔らかな物へ変わっていった
皇牙雷蔵「俺はな···そんな時代がもう一度だけ来て欲しいって思ってるんだよ。もう一度だけ···あの時代がよ」
エンチャント魔導法士「凪園を鍛えたのもその為か?だからわざわざ『ビート』なんて古臭い戦い方を教えたのか?」
皇牙雷蔵「かもな。俺はあの時代が忘れられなくて凪園にビートを教えたのかもな···だがよ、ウィリアム」
皇牙雷蔵「凪園なら···皆が憧れる『ヒーロー』になれるって信じてるんだよ。こいつならきっとな」
エンチャント魔導法士「凪園だけじゃねえさ、フェードや鸞、キング···そして斎王も皆の憧れる『ヒーロー』になれる」
エンチャント魔導法士「ワシはそれを支えられればいいと思ってる。···所でお前もワシらに何か用があるんだろ?いい加減話せ」
皇牙雷蔵「おお、そうだった。おい、昨日のアレ持ってこい」
  To Be Continued··· ··· ···

次のエピソード:第32話 予言

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