7 可哀想な人間(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
西城夫妻の葬儀は暫くして行われた。エンペラーの父親が他界した事で、西城カンパニーの経営は上手く行かなく成り、
これまで働いてた職員達も回らない会社に愛想尽かして離職。遂には倒産と成った。エンペラーは両親が残した遺産を手に、
自宅へと引き籠もる事と成り、数十年の月日が経っていた。
西城帝王「あ〜・・・何か暇だなぁ・・・最近ゲームも詰まらないし・・・」
西城カンパニーが倒産してから、エンペラーは自宅に籠もってお菓子を食べながらゲームにひたすら没頭して居り、
とにかく自堕落的な生活を送っていた。
西城帝王「振込がどうとか言って来る奴も出て来るし、水とかガスも使えないし、父さんも母さんも居ない。部屋はどんどん汚く成るし、」
西城帝王「まぁ別に問題無いか・・・って、何だよもう菓子無くなったのか・・・仕方無い、コンビニ行くか・・・」
西城帝王「遺産、後幾ら有ったっけ・・・」
お菓子が無くなったのを機に、エンペラーは財布を持ってコンビニへと赴いた。
〇通学路
西城帝王「あ〜・・・何だか歩くのも面倒臭ぇな・・・何時もなら、母さんが連れてってくれたり、何か買って来てくれたりしたのにな・・・」
西城帝王「何で俺歩いてるんだ?て言うか・・・父さん達が死んだ理由って何だっけ・・・」
西城帝王「痛っ!!」
モブ男「あぁ!すみません!大丈夫ですか!?」
西城帝王「てんめぇ・・・!!一体何処見て歩いてるんだよ!喧嘩売ってんのかぁ!!?」
モブ男「ち、違います!よそ見してたのは謝ります!」
西城帝王「煩ぇ!!俺は今機嫌悪いんだ・・・」
モブ男「あ、あれ・・・???」
西城帝王「う、う、うぐおぉぉぉ!!??」
モブ男「え、えぇ!?どう成ってるんだ!?とにかく救急車!!」
モブ男「あぁ!もしもし!?救急車お願いします!!実は、突然人が倒れて!!」
突然謎の激痛に襲われたエンペラーは道のド真ん中で倒れてしまい、打つかった相手は即座に救急車に連絡するのだった。
〇病院の診察室
西城帝王「痛い・・・痛い・・・!!」
黒崎和人「何て事だ!重度の糖尿病で足がボロボロだ!このままでは!西城さん、これより緊急の切断手術を開始します!」
西城帝王「せ、切断!?嘘だろ!?お前医者だろ!?何とかしろよ!!」
黒崎和人「西城・・・残念だが手遅れだ。あれからどうしてたかと思ったが、こんなに見窄らしく成って食生活もこんなにズサンだなんて・・・」
黒崎和人「常日頃からお菓子ばかり食べて、まともに動かなければこの結果は説明出来ない」
西城帝王「何だよそれ・・・何だよそれ・・・!!」
西城帝王「てか、あんた誰だ・・・??」
黒崎和人「何だ覚えて無いのか・・・まぁそんな事は良い。中学の頃、自分以外の男子生徒から漫画を無理矢理取り上げようとした事」
黒崎和人「して無いか?」
西城帝王「漫画を?何を言って?」
黒崎和人「無理矢理取り上げようとして、漫画破いたよな?その後親に弁償させて自分は何も謝らなかっただろ?」
西城帝王「お、おい・・・一体何を言って・・・」
黒崎和人「此処まで言ってまだ思い出せないか。俺はお前の元クラスメイトの、黒崎和人だよ」
西城帝王「く、黒崎和人・・・」
西城帝王「あぁ!!お前は!!!」
黒崎和人「まぁ、覚えて居ようが居まいがどうでも良い。漫画を破られた日から、お前等一家は俺に取って良い反面教師に成った」
黒崎和人「保険証に書いて有った名前を見た時はまさかとは思ったが、こんな形で再会するとはな」
西城帝王「ま、待て!!元クラスメイトなら、俺達は仲間だったんだろ!!だったら、俺の事も助けてくれよ!!」
黒崎和人「お前を助ける?分かった、助けよう!」
西城帝王「黒崎!!」
黒崎和人「これより、足の切断手術を開始します!西城帝王氏を、緊急手術室へ!」
西城帝王「黒崎!!助けてくれるんじゃ無いのかよ!!!」
黒崎和人「あぁ助けるさ!その為の切断手術だ!」
西城帝王「嫌だ!嫌だぁぁぁぁ!!!!」
その後、嘗ての同期と思わぬ形で再会したエンペラーは黒崎の手に寄って両足を切断された。重度の糖尿病で侵食が酷かったが、
両足を切断した事で一命は取り留めたが、両足を失ったショックで精神崩壊を起こし、再起不能と成った。
〇病院の廊下
黒崎和人「それでは、後はお任せします」
男性警官「分かりました!」
黒崎和人「さて、報告書纏めるか・・・」
黒崎和人「ん?」
「もしもし?和人?」
黒崎和人「歩美か!どうした?」
「今大丈夫?子供達寝たから」
黒崎和人「そうか。俺も今は大丈夫だ」
「良かった・・・ねぇ、今日はどうだった?」
黒崎和人「今日か?あのさ歩美。中学の頃のクラスメイトで、西城エンペラーって覚えて無いか?」
「え!?西城ってあの、我儘放題の西城!?そいつがどうかしたの!?」
黒崎和人「実はな、今日内の病院に緊急搬送されて来てな」
「えぇ・・・それで、西城に何が有ったの?」
黒崎和人「簡単に話すが、どうも長い事不摂生をしてたらしくて、重度の糖尿病で両足が駄目に成ってたんだ。それで、俺が奴の足を」
黒崎和人「切断した訳だ。その後は受け入れ難い現実に絶望して、精神崩壊を起こして今は内の病院の隔離病棟に運ばれた訳だ」
「何て事・・・昔から好き放題やって自滅して、挙句の果てには昔恨みを買った相手に足を切られるなんて・・・」
黒崎和人「何とも皮肉な話だな。人生何が起こるか分かったもんじゃ無いし、こんな事に成るとはな・・・只・・・」
「只?」
黒崎和人「手術が終わった後のあいつを見て俺、あいつの事可哀想だなって思ったよ」
「はぁ?可哀想って?」
黒崎和人「俺等とあいつは同い年だろ?俺等は何か間違ってたら親に怒られるなんて珍しく無かったが、あいつは常に甘やかされてた」
黒崎和人「今でこそ俺達は自分の行きたい道を選べてこそ居るが、あいつは甘やかされ過ぎて何が正しくて間違ってるかも分からず、」
黒崎和人「只守られてばかりが当たり前に成って、大切な事に自分で気付く事すら出来なく成って、こんなズサンな結果を招いて、」
黒崎和人「あいつの両親がもっと親として確りしてくれてれば、あいつ今よりもっと良い方向に行ってたんじゃ無いかって、思っちまったよ」
「・・・確かにそうね。あたしもあの両親がもっとあいつの間違いを指摘出来てたらって思った事有るよ。でも、それは悪魔で」
「結果論だし、それに気付けなかったあの親も悪いわよ。何より、あたし等が言った所で聞いてくれるとは思えないわ」
黒崎和人「だろうな・・・自分は自分で変えられても、他人まで簡単に変えられないからな」
「でも大事な事を自分で気付ける様にするのは本当大事だよ。西城家、あたし等に取ってこれからも、あたし達の反面教師に」
「成りそうだね」
黒崎和人「だな・・・」
「それはそうと、明日は休めるんでしょ?子供達が、パパと一緒に遊園地に行けるの楽しみにしてるから、無理せず早めに」
「帰って来てよ!」
黒崎和人「そうか、そうだったな!これから報告書を作って来るから、終わり次第帰るよ」
「うん、待ってるから!」
黒崎和人「さて、休憩は終わりだな。早く終わらせて、皆の所へ帰るか」
自分の持つ力を理解し、正しく使って栄光を掴むも、力に溺れて自滅の道を行くのも、自分の心の持ち様で大きく変わって行く。
西城家の振る舞いは、西城家に関わった者達に取って反面教師として、記憶の中に留め置かれるのだった。
尚、両足を失ったエンペラーは、今では悪夢に魘されてるらしく、今日も彼の悲鳴が隔離病棟に響き渡っていた。
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