とある王国の異世界冒険者問題

ぽんたろう

第10話『ここにいてもいいんだよ』(脚本)

とある王国の異世界冒険者問題

ぽんたろう

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〇コミケの展示スペース
岩本「もうじき即売会が開催される」
伊藤「ついにですか」
エスティーナ「へえ」
岩本「今回は外部の人たちも含めて 100以上のサークルが参加する」
エスティーナ「そんなに!?」
岩本「村の外でもマンガを描く人が増えたみたい」
エスティーナ「すごっ」
伊藤「上杉さんも出せば良いじゃないですか」
エスティーナ「わたしが!?」
伊藤「この前一緒に描きましたけど 充分作画いけるじゃないですか」
伊藤「女子会の後に描いたやつ あれで出せると思います」
エスティーナ「まあね」
エスティーナ「じゃあ、出そうかな」
エスティーナ「シャルユリ男の娘本」
伊藤「良いと思います」
岩本(女子同士の会話に入りづら)
エスティーナ「よし、頑張るぞ」

〇市場
エスティーナ「どうせだったら もう一本ぐらい出したいわね」
エスティーナ「まずは、テーマと構成考えないとね 締切までギリギリだけど頑張れば・・・」
エスティーナ「・・・ん?」
エスティーナ「って、ちがうだろ!」
エスティーナ「私は奴らを一泡吹かせるために来たのよ」
エスティーナ「ていうか、どうしよう」
エスティーナ「販売即売会をぶち壊してやるとか」
エスティーナ「・・・・・・」
エスティーナ「それは非人道すぎるか」
シャルティア「ウエスギちゃん、どうしたの?」
エスティーナ「シャルさん」
シャルティア「どうかしたの?」
エスティーナ「何でもないです!失礼します!」
シャルティア「行っちゃった」
シャルティア「何か悩み事だよね」
シャルティア「ウエスギちゃん、待って!」
北川「あれ?シャルさんが深刻そうな顔をして どこかに行ったぞ」
北川「何かあったのかな」

〇華やかな広場
エスティーナ「はああ」
エスティーナ「あいつらに情でも移ったのかしら」
エスティーナ「それよりも、たまに思い出す記憶は何?」
エスティーナ「信じたくないけど」
エスティーナ「私は」
エスティーナ「異世界人」
エスティーナ「これはマンガ」
エスティーナ「私が大好きだったもの」

〇女の子の部屋
??「マンガ面白いなぁ」
??「高校に入ったら漫研に入ろうと」

〇学校の部室
??「よろしくお願いします!」
部員B「これから、よろしくね」
部員A「1年生同士仲良くしよ」

〇女の子の部屋
??「借りた本の主人公、女装してるんだ」
??「へえ、男の娘っていうんだ」
??「可愛いなぁ」
??「私なんかより可愛いかも」
??「私地味だし」
??「いつも男子には根暗だってからかわれてたし」
??「私もこの子みたいに可愛くなれるかな」

〇華やかな広場
エスティーナ「これが私の過去」
エスティーナ「思い出した」
シャルティア「やっと見つけた」
エスティーナ「シャルさん?」
エスティーナ「私になんか用?」
シャルティア「ウエスギちゃんが悩んでる顔してたから」
シャルティア「相談に乗りたいんだよ」
エスティーナ「それでわざわざ追いかけてきたの?」
エスティーナ「あのとき、あなたみたいな人が 私のそばにいてくれたら、、、」
シャルティア「何か言った?」
エスティーナ「何でもない」
エスティーナ「そうね、話を聞いてもらおうかしら」
シャルティア「じゃあ、場所を移そう」
エスティーナ「うん」
エスティーナ「あとお願いがあるの」
シャルティア「何でも言って」

〇城の会議室
シャルティア「ユーリとイトーちゃんを呼んできたよ」
ユーリ「俺も呼んでもらってよかったのか?」
伊藤「私も」
エスティーナ「いいの」
エスティーナ「来てくれて、ありがとう」
エスティーナ「こんなこと聞かせるのもどうかと思うけど 私の過去話でも聞いてもらえると嬉しいな」
伊藤「もちろん、聞かせてください」
エスティーナ「ありがと」

〇教室の教壇
??「昨日頑張って描いてきたから 早くみんなに見せたいな」
クラスメイト「上杉さん、何それ?」
??「え、えっと」
??(見つかっちゃった)
クラスメイトB「上手いじゃない」
??「あ、ありがとうございます」
??(褒めてくれた、嬉しい)
クラスメイト「みんな、見てよ!」
??「あ、あの!」
クラスメイト「キモくなーい?」
??「えっ?」
??「や、やめてください」
クラスメイトB「こんな妄想した絵を 描いちゃってんの?」
クラスメイトB「女装した男を主人公にしてるの?」
クラスメイト「ウケるんだけど」
クラスメイト「しかも結構過激じゃん」
クラスメイトB「まさかの18禁じゃん」
クラスメイトB「いいの?こんなの描いて」
??「そ、その」
??「18禁じゃないです」
クラスメイトB「あとさ、こんな下手くそな絵 恥ずかしくないの?」
??「さ、さっき、上手いって」
クラスメイト「嘘に決まってんじゃん」
クラスメイトB「本気にしたわけ? ウケるんだけど」
クラスメイト「上杉さんピュア過ぎない?」
クラスメイトB「キモいんですけど」
??(だ、だれか助けて)

〇学校の部室
上杉「ね、ねえ」
上杉「新しいマンガ描いたんだけど 見てくれないかな?」
「・・・・・・」
部員A「ねえ、あのマンガ あの人たちに見せたって話は本当?」
上杉「えっ?」
上杉「ごめんなさい」
部員B「部員以外の人に見せないって 約束だったよね?」
上杉「でも、あれは!」
部員A「特に見られたくない人たちに 見られちゃった」
部員B「さっき私のクラスでも 噂が流れてきたよ」
部員B「漫研は18禁のマンガ描いてるって」
上杉「あれは漫研の活動とは関係ない」
部員A「そう、私たちだけで楽しむものだった」
上杉「ごめんなさい」
部員B「悪いけど、責任とって辞めてくれない?」
部員A「あなたに漫研にいる資格はないわ」
部員B「先生の耳に入ったら その原稿も見せることになるかもしれない」
上杉「でも!」
部員A「あなたが辞めれば あなただけの問題になるはず」
上杉「でも、最初は3人で始めたよね?」
部員B「誰がミスって こんな事態になったと思ったの?」
上杉「わたしだよね」
上杉「分かった」
上杉「もう漫研辞める」
上杉「じゃあね、迷惑かけてごめんね」
部員A「私たちは何も悪くない」

〇女の子の部屋
上杉「もう学校行けない」
上杉「ただマンガ描いてただけじゃない」
上杉「はい」
上杉母「今日も学校行かないつもり?」
上杉「うん」
上杉母「何かあったの?」
上杉「行きたくないだけ」
上杉母「だったら行きなさい」
上杉母「社会に出たらそんな理由で休めないわよ」
上杉「嫌なの」
上杉母「はあ、もう好きにしなさい」

〇女の子の部屋
上杉「・・・・・・」
上杉「・・・・・・」
上杉「・・・・・・」
上杉「意外といける?」
上杉「マンガの男の娘が地雷系の格好してたよね」
上杉「私じゃないみたい」
上杉「せっかくだから外に行ってみようかな」

〇通学路
上杉「家の外に出ちゃった」
上杉「お母さん、驚いてたなぁ」

〇川に架かる橋
通行人「あの子可愛い」
通行人2「すげえ、地雷系似合ってるなぁ」
上杉「今の私のことかな?」
上杉「嬉しいかも」

〇カウンター席
上杉「ここのお店、一度来てみたかったんだよね」
上杉「でも、不思議だな」
上杉「喋り方まで変わった気がする」
上杉「あれって、うちのクラスの」
クラスメイト「そういえばさ、上杉のやつ」
クラスメイトB「あいつ来なくなったね」
クラスメイトB「ちょっとやり過ぎたかな」
クラスメイト「あたし、あいつのこと嫌いだったんだよね」
クラスメイト「だから、全然そんなことないよ」
クラスメイトB「死んだりしたらどうしよ」
クラスメイト「いいじゃん、あんなやつ死んだってさ」
クラスメイトB「まあ、そうなんだけどさ」
クラスメイトB「そうじゃなくてさ、”自分で”ってこと」
クラスメイト「さすがに、それはちょっと困るわね」
クラスメイトB「私たちの名前なんかが 遺書に書かれたら終わるわね」
上杉「・・・・・・」
クラスメイト「まあ、死ぬなんてしないでしょ」
クラスメイト「そんな勇気なんてあったら 私たちに歯向かってくるはずだよ」
クラスメイトB「それもそうね」
上杉「・・・・・・」
クラスメイト「そんなことよりさ」
クラスメイトB「なになに?」

〇川に架かる橋
上杉「何してんだろ、私」
上杉「こんな格好して、1人で出歩いて」
上杉「馬鹿みたい」
上杉「現実なんて何も変わらないじゃない」
上杉「あいつらに馬鹿にされて 私が死んでも何も思われない」
上杉「私はただマンガを描いただけなのに!」
上杉「家に帰ろ」

〇川に架かる橋

〇車内
運転手「・・・・・・」

〇通学路
上杉「惨め過ぎて、もう無理」
上杉「もう、しんでやる!」
上杉「ん?」
上杉「車!?」

〇車内
運転手「はっ!?人が!?」
運転手「ブレーキ!間に合え!」

〇通学路

〇城の会議室
エスティーナ「私はただマンガが描きたかっただけなの」
エスティーナ「何も悪いことしてないのに」
エスティーナ「何で、あんな酷い目に 遭わないといけないの?」
エスティーナ「好きなものを否定されないといけないのよ」

〇城の会議室
ユーリ「そうか、そんな過去があったのか」
伊藤「話してくれてありがとうございます」
シャルティア「辛かったね」
ユーリ「でも、大丈夫だ この村には上杉さんを否定する人間はいない」
ユーリ「みんな仲間だよ」
伊藤「そうです、私は上杉さんが どんな趣味の本を描こうが上杉さんを 裏切りません」

〇城の会議室
エスティーナ「本当?」
ユーリ「もちろん」
シャルティア「好きなだけマンガ描いてもいいよ」
エスティーナ「・・・・・・」
シャルティア「ウエスギちゃん、どうしたの?」
エスティーナ「なんか知らないけど涙出てくる!」
伊藤「落ち着いてください!」
シャルティア「はい、ハンカチ」
エスティーナ「ありがとう」

〇城の会議室
ユーリ「・・・・・・ん?誰かいるのか?」

〇おしゃれな廊下
ユーリ「お前ら、いたのか」
ユーリ「上杉さんの話を聞いてたか?」
石井「はい、北川さんから上杉さんの様子が おかしいって聞いたのでみんなできました」
ユーリ「盗み聞きなんて相変わらず姑息だな」
石井「否定はできない」
石井「それにしても、なかなか酷な話でしたね」
岩本「予想以上に話が重くて その場に呼ばれなくて良かったです」
石井「最初は呼ばれないことに ショックを受けていましたけど 良かったです」
石井「きっと上杉さんが 配慮してくださったんですね」
ユーリ「単に信用してないか 眼中になかっただけだと思うぞ」
「・・・・・・」
ユーリ「お前らのトラウマ言ってみろ」
石井「気になる子が非◯女でした」
岩本「オフ会に来た人が年齢詐称してました」
佐々木「親の金でガールズバー通ってた挙句 貢いだキャストに彼氏がいて絶望しました」
佐々木「あと俺の推しはみんな消えていくんです」
いのうえ「ヤンキーにパシリにされました」
北川「女子に言動がキツいとか痛いって 言われました」
村田「女子に黒歴史ノート見られました」
ユーリ「・・・・・・」
ユーリ「上杉さんに比べて お前らのトラウマはどうだ?」
「カスだと思います」
「のうのうと生きててすみません」
「死んでお詫びしたいぐらいです」
ユーリ「死ぬとマジ迷惑だからやめろ」
ユーリ「どうせ死ぬなら、村の外で せめてモンスターの餌として役立ってくれ」
石井「相変わらず容赦のないお言葉で安心しました」
石井「すみません、それでお願いがあるんですが」
ユーリ「何だよ」

〇華やかな広場
エスティーナ「話を聞いてくれて、ありがとう」
エスティーナ「おかげでスッキリした」
シャルティア「それなら、良かった」
ユーリ「毒は出すのが1番だからな」
エスティーナ「それから、あなた達に言わないと いけないことがあるの」
シャルティア「なに?」
エスティーナ「私が魔女なの」
「えっ!?」
エスティーナ「魔女って言っても、私は仮の魔女」
エスティーナ「本当はあなた達を罠にハメに来たの」
ユーリ「本当か?」
シャルティア「そうだったんだ」
エスティーナ「私が日本から転移してきたのは 本当の話よ?」
エスティーナ「でも、この村の連中を陥れる計画は辞めたわ」
エスティーナ「今すぐここを出て行く」
エスティーナ「それで許して」
エスティーナ「魔女も辞める」
ユーリ「どうして出て行くんだ?」
シャルティア「そうだよ」
エスティーナ「えっ?」
エスティーナ「ちょ、ちょっと私は魔女の仲間なのよ?」
ユーリ「でも、今は辞めたんだろ?」
エスティーナ「ん、まあ、そうだけど」
シャルティア「多分、ウエスギちゃんは 魔女に嵌められたんだよね?」
エスティーナ「まあ、そうだけど 取り返しがつかないこともしたかもしれない」
ユーリ「上杉さんは何も悪くないじゃないか」
シャルティア「じゃあ、いいじゃん」
エスティーナ「それでいいの!?」
ユーリ「行く当てはあるのか?」
エスティーナ「ないけど」
シャルティア「ここにいるしかないじゃん」
エスティーナ「いいの?」
エスティーナ「本当に?」
ユーリ「ああ、もちろん!」
シャルティア「ここにいてもいいんだよ」
エスティーナ「本当に2人揃って、お人よしなんだから」
エスティーナ「でも、ありがとう」
「どういたしまして」
エスティーナ「ねえ、そういえば」
エスティーナ「今日はオタクたちの姿が全く見えないけど どこかに行ったの?」
ユーリ「あー、それか」

〇刑務所の牢屋
「・・・・・・」
「・・・・・・」
山田「・・・・・・」

〇留置所
エスティーナ「あいつら、何やってるの?」
ユーリ「上杉さんの過去話を聞いて 自分たちがあまりにも情けなくなったらしい」
シャルティア「それと話を勝手に話を聞いたこともあって 自主的に反省してるみたい」
エスティーナ「・・・・・・」
エスティーナ「ハハハハ」
エスティーナ「なにそれ、バカみたい」
エスティーナ「変なところが男らしいんだ 少し見直した」
シャルティア「そうだね」
エスティーナ「別に気にしてないわよ」
エスティーナ「でも、面白いから しばらくこのまましておこう」

〇貴族の部屋
エスティーナ「あんなこと言ってもらったけど 私はここにはいられない」
エスティーナ「みんなを守るためにも村を出ないと」
エスティーナ「悪いのはあいつだ 魔女だ」
エスティーナ「私がいる限り、村に迷惑をかける」
エスティーナ「やつと決着つけないと」
家来「おや?」
エスティーナ「あんた、こんなところに何しに来た?」
家来「心配して様子を見に来ました」
エスティーナ「嘘つけ」
エスティーナ「私を騙していたんだろ」
家来「何のことですかね」
エスティーナ「黙れ、すべての元凶」
家来「ようやく気づいたか」
エスティーナ「事故に遭って、この世界に転移した私を あんたが魔女に仕立て上げた」
家来「滑稽だね」
エスティーナ「今から私はあんたの敵よ」
家来「死ぬはずだったあんたを この世界に転移させた恩も忘れたのか」
エスティーナ「そんなこと、頼んでないわ」
エスティーナ「勝負しましょ」
家来「そうかい」
エスティーナ「ここだと思うように戦えないわ」
エスティーナ「城に戻りましょ」
家来「随分優しいことだね」
家来「こちらとしても好都合」
エスティーナ「好都合?まあ、いいわ」
エスティーナ「あの城ごと吹き飛ばしてやるわ」
家来「やれるなら、やってみな」
エスティーナ(さよなら、みんな)

次のエピソード:第11話『いざ、ゆけ!オタクども!』

コメント

  • エスティーナさま…😭
    何て辛く苦しい過去と、男の娘好きの末路が…😂
    上杉さんのエピソードも、オタクの皆々様の過去話も、お見事なくらい生々しいトラウマエピソードですね😰 感服しきりです✨
    魔女にまつわる話も出てきて、ストーリーが本筋に……いや、“転移オタたちの愉快な異世界ライフ”が本筋でしょうか……、いずれにせよ目が離せませんね😊

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