エピソード33・蒼の中(脚本)
〇空
『おはようございます、朝のニュースをお届けします』
『先日お伝えした、宗教法人“神の恩寵”が、若者を始めとした多くの拉致・監禁・脅迫事件に関わっていた件の続報です』
『こちらの団体では、テーマパークの開業準備と偽り、多数のアルバイトを募っていたことが明らかとなりました。』
『救出された人によりますと、集められた人々は脅迫され、さらに誘拐や監禁の手伝いをさせられていたとのこと。』
『中には違法薬物を摂取させられ、重体となっている人もおり、また複数の遺体も発見されて身元の確認が急がれています』
『現在十二人の方が病院に搬送されているとの情報がありますが、死傷者の正確な人数はまだはっきりしておりません』
『詳しい情報が入り次第、続報をお伝えいたします。・・・・・・それでは次のニュースです』
〇黒背景
おばあちゃんは、逮捕されることになった。秘書の小野坂さんと一緒に。
勿論捕まったのは二人だけじゃない。他にも、おばあちゃんの考えに心酔していた幹部の人、信者の人が多数捕まることになった。
矢倉亮子「お願い、信じて。私は本当にただ、世界を救いたかっただけなの・・・」
矢倉亮子「世間様に迷惑をかけるつもりなんてなかったの。ええ、本当よ。ただ、この世界のために戦っていただけ」
矢倉亮子「お願い、信じて。悪魔が迫ってきているのよ。私にみんなを救済させて頂戴」
矢倉亮子「お願い。ああ。お願いよ・・・!」
おばあちゃんは逮捕された後も、ずっとそんな話を続けていたらしい。多分、裁判では精神鑑定を受けることになるんだろう。
彼女が言っていることは本当だったんだろうか?
悪魔というのは本当にこの世界に迫ってきていたのだろうか?
それともすべては、おばあちゃんの妄想や幻覚だったんだろうか?
僕達にそれを、判別する手立てはない。確かなことは一つ。それを信じた教団が、恐ろしい罪を犯したということだけ。
彼女の中に、悪魔がいたということだけ。
おばあちゃんの言葉が真実か、妄言か。それがわかるのは多分、もっとずっと後になってからのことなんだろう。
――そして、僕は。
〇田舎の公園
須藤蒼「・・・そっか。親戚の人のおうちに行くんだ」
まちか「うん。私が住んでたところ、教団の施設だったから・・・お母さんも捕まっちゃったし、行くところなくて」
須藤蒼「北海道だっけ?遠いね」
まちか「そうだね、遠い。でも、別の国じゃないし、会えないわけじゃないよ。お手紙、みれいちゃんとれつくんに書くし」
まちか「もちろん、蒼くんにも書くよ。蒼くんが行く孤児院に出せば大丈夫だよね?」
須藤蒼「うん、ちゃんと届く。・・・孤児院に行くのは一時的なことかもしれないけどね」
須藤蒼「お父さんとお母さんは幹部じゃなかったし、直接運営にも関わってなかったから、多分逮捕までは行かないんじゃないかって話だし」
須藤蒼「二人がおばあちゃんと距離置いているのも、僕を取り返そうとしてたっていうのも今回初めて知ったけど」
まちか「蒼くんを心配して、大好きでいてくれる人。ちゃんといるんだね」
まちか「正直、ほっとした。私のお母さんみたいに・・・教団の怖い考えに染まってなかったみたいだから」
まちか「私のお母さんは、まだ・・・私がしたこと、怒ってるみたいだから」
須藤蒼「まちかちゃん・・・」
まちか「大丈夫。私、信じてる。時間はかかるけどきっと、お母さんは戻ってきてくれるって」
まちか「大事なことを思い出してくれるって。だから、私は平気。やっと、新しい朝が来たんだもん」
まちか「それよりも心配なのは、輪廻さんだよ。まだ入院してるの?」
須藤蒼「うん。・・・目が覚めないんだって、ずっと。家族の人もお見舞いに何度も来てくれてるのに」
須藤蒼「でも、僕は絶対あきらめないよ。あの状態から、助かったんだもの。きっと目を覚ましてくれるって」
須藤蒼「輪廻さんならきっと、奇跡を起こしてくれるって」
まちか「蒼くん・・・」
〇黒背景
僕が事件を通報し、教団に幕をひいたあの日から・・・一か月。
赤井さんや芦田さんをはじめ、たくさんの人の遺体が教団で見つかり、僕やまちかちゃん達は警察に保護された。
そして輪廻さんは、病院に緊急搬送されて――そのまま。一命は取り止めたけれど、意識は戻らなかった。
輪廻さんは目を覚ましてくれるのだろうか。記憶は戻るのだろうか。むしろ、起きた時に僕のことを覚えていてくれるだろうか。
それは誰にもわからない。それでも僕は決めていたんだ。
何があっても、輪廻さんを待ち続けるんだって。
だって言いたいことも、やりたいことも、僕にはたくさんあるんだから。
〇病室のベッド
須藤蒼「こんにちは、輪廻さん。今日も来たよ」
須藤蒼「あのね、輪廻さん。今日、まちかちゃんに会ったんだ。まちかちゃん、強い子だなって思ったよ。明日をちゃんと見てるんだから」
須藤蒼「よく、大人は前を向けって、明日に向かえって言うけど。それって、言うほど簡単なことじゃないよね」
須藤蒼「僕はずっと逃げてて、今日を無事に生きることしか考えてこなかった。ずっと今日と同じ、怖くない日が続けばいいって」
須藤蒼「本当はその“今日”の中に、怖いことも嫌なこともたくさんあったのにね」
須藤蒼「変化があるとすれば、それは悪いことのはずだって思い込んでた。自分で、何も良い方向に変えようともせずに」
須藤蒼「それじゃ駄目だって。地獄の中、ただ祈りと共にあるだけじゃ変わらないって。そう教えてくれたのは、輪廻さんだよ」
須藤蒼「あのね、僕。輪廻さんと一緒に行きたい場所とか、やりたいことたくさんあるんだ」
須藤蒼「新しい友達が大好きなカードゲームがあって。決闘王っていうんだけど知ってる?教団じゃ絶対教えてくれなかったゲームなんだけど」
須藤蒼「面白いんだよ!天使とか悪魔とかドラゴンとか魔法使いとか色んなモンスターがいてね。魔法とか罠のカードも使って相手と戦うんだ」
須藤蒼「自分でデッキが組めてね。好きなテーマで揃えて回すのがほんと楽しくて、それで・・・」
須藤蒼「それで・・・輪廻さんとも、いつか一緒にやりたくて」
須藤蒼「お願いだよ。目、覚ましてよ。僕、まだ何も恩返しできてないよ」
須藤蒼「救世主なんかじゃなくていい。友達でいい。だから、お願い」
須藤蒼「お願いだから・・・」
〇黒
〇病室のベッド
須藤蒼「・・・?」
須藤蒼「え、今、なにか・・・」
峯岸輪廻「んっ・・・」
須藤蒼「!」
須藤蒼「輪廻さん!?」
峯岸輪廻「う、うう・・・っ・・・んん・・・」
峯岸輪廻「・・・・・・?」
峯岸輪廻「あ、れ・・・なんだ、ここ・・・」
峯岸輪廻「俺、は・・・」
須藤蒼「り、輪廻さん!輪廻さん輪廻さん!」
須藤蒼「だ、大丈夫?体、痛くない?苦しくない?だって一か月も寝てたんだし、っていうかこういう時ってナースコールだっけあれ、どこに」
峯岸輪廻「・・・あお、い?あれ、お前・・・!」
須藤蒼「あっ・・・」
須藤蒼「ぼ、僕のこと、わかって、あ、ああ・・・」
須藤蒼「・・・ああああ、うわああん!ああああん!」
峯岸輪廻「お、おい馬鹿、抱き着くなって・・・いてて・・・」
〇空
落ち着いたら、ちゃんと言おう。
おはようって。ごめんなさいって。ありがとうって。
それから、未来のことを・・・いろいろ、たくさん。
悪魔が本当にいるとしても、神様が本当にいたとしても、少なくとも今は。
今、未来は僕達自身の手の中にある。自由はここにある。
僕達は一緒に、明日に向かえる。僕達が一歩ずつ踏みしめて、歩き続ける限り。
〇ソーダ
『デスパレードは祈りと共に』
<シナリオ>
はじめアキラ
<表紙イラスト>
はじめアキラ
<キャラクターボイス>
はじめアキラ
<キャスト>
峯岸輪廻
須藤蒼
<キャスト>
赤井鳳輔
芦田ルミカ
七瀬まちか
参道れつ
一条みれい
<キャスト>
矢倉亮子
小野坂真里亞
根本水鳥
新條征爾
田中一昭
<キャスト>
女子高校生A
女子高校生B
男の子
女性
老人
まちかの母親
その他モブキャラクター
<使用ツール>
TapNovel
Gimp2
メモ帳
<製作期間>
約五ヵ月
<スペシャルサンクス>
ここまで読んで下さった皆さん!
Thank you for reading!
重厚ながらも未来への歩みを感じられるラスト、本当にこの物語展開にマッチしていると感じられました✨ 最後の試練まで快刀乱麻の活躍の輪廻くんから、ラストは勇気を振り絞った蒼くんへとメインが移ったのも印象的でした😊
デスゲームという現代的な要素の中に、「宗教における犠牲」「同質化集団の他者排斥」といった前近代から見られる現象が内包されるテーマに魅了されました。ステキなお話をありがとうございました🙌