第一章その④東川龍vs南澤雀呂(脚本)
〇中華風の通り
東川龍「すっかり暗くなりおったな、もう夕暮れか」
人通りも少なくなり龍は一通りのパトロールを終える
???「坊ちゃま! 龍坊ちゃま!」
初老の使用人が現れる
東川龍「えっとあんたは・・・」
龍林辰吾郎「龍林辰吾郎(りゅうばやししんごろう)にございます坊っちゃま」
東川龍「ああ、爺様の・・・。どないしました?」
龍林辰吾郎「こちらを貴方様にと、”ご主人様”より申し付けられました」
東川龍「これは──。どういう事や、”これ”を持つに値せんおれに届けるんは!?」
龍林辰吾郎「わたくしは申し遣っただけです。これにて失礼します」
東川龍「・・・爺様」
龍林辰吾郎「うっ──!!」
東川龍「──しんごろう!!」
南澤雀呂「──はっ! まさかお前如きがそれを受け継ごうとはな。あの老いぼれも見る目ないな?」
突如現れた雀呂により辰吾郎は背後から扇子で刺される
東川龍「──!? アニキ! どないなってるねんこれは!?」
南澤雀呂「お前も薄々気付いとる筈やろ? こんな騒ぎになっとるんやからな?」
東川龍「・・・信じとうなかったわ。あんたがこんな事しはるなんて」
東川龍「なんでやアニキ!」
南澤雀呂「アニキ、か。お前にそない呼ばれるんは何年振りになるさかい・・・」
南澤雀呂「それはどうでもええな、理由は簡単や。 ”四つの神器”を手に入れて神の如き絶対的な力を手に入れる──」
南澤雀呂「そしてこの世の支配者となり腐った人類を淘汰する」
南澤雀呂「そうする事で力のある者が手を差し出し弱き者に配慮する差別も優遇も無い公平で平和な世界を創るんや!」
東川龍「・・・言ってる事は立派やけどよ、その為に北山の爺さんや辰吾郎が死ななあかんかったんか!?」
南澤雀呂「最初は話し合ったで? その結果交渉が決裂しはって抵抗されたから仕方なくや。おれの親父も今までの鬱憤晴らすんにヤりはったし」
南澤雀呂「お前のじじいも簡単に渡さへんから腕落としてやったで。放っといたら出血で死ぬんも時間の問題やな?」
東川龍「な──!?」
南澤雀呂「んで、そのじじいはお前なんかに大事な宝具を持って行きおったんで始末したいう訳や」
東川龍「なんて事しはりおるん!?」
南澤雀呂「で、お前はそいつを渡してくれるんか? どうせお前が持ってても遣えへんし意味無いやろ?」
東川龍「こいつは家が代々守って来た家宝や。例え同じ四家の間柄や言うて渡す事は出来ひん!」
東川龍「これは”運命の世代”まで受け継いでいかなあかん。お前も四家の人間なら解っとる筈やろ!」
南澤雀呂「そんないつ来るかわからへん御伽話まだ信じとんのか? それが事実なら今がその時、おれが選ばれし運命の世代でええやろ」
雀呂は神器”鳳翼”を構える
東川龍「・・・」
龍も”青刃閃”を構える
南澤雀呂「何やその構えは、隙だらけやで」
東川龍「くっ──!!」
振るわれた扇から放たれる風の刃を龍は剣で受け止めてゆく
東川龍「うっ!」
一発足をかする
南澤雀呂「な、言ったやろ隙だらけやて」
東川龍「・・・(畜生、おれは剣道で全国一位は取れても剣の才能が無いて言われて来たんや。こんなんで戦える訳ないやろ)」
東川龍「誰かおらんのか!」
伊集寅虎太郎「ここにおるでアニキ! 辰吾郎はおれに任せとき!」
東川龍「ああ、頼む」
伊集寅虎太郎「いくで爺さん」
虎太郎は重体の辰吾郎を抱えその場を去る
東川龍「さて、これで心置きなく・・・」
龍は家宝の刀を道の端に放り投げ突き刺す
南澤雀呂「おいおい、いらんのならこっちに寄越せや?」
東川龍「それは出来ひん」
龍はホルスターから取り出した拳銃を構える
南澤雀呂「なんや、そんな玩具でおれをどうにか出来るん思うか?」
南澤雀呂「・・・おい」
東川龍「やはり効かへんよな」
南澤雀呂「お巡りがノールックで発砲してええんか?」
東川龍「ノールックかはさておき、銃弾効かへん生物相手に人間のルールが適用されるわけあらへんやろ?」
南澤雀呂「おいおい、今時やと差別発言やないか今の?」
南澤雀呂「いて・・・!!」
龍の放つ謎の光を纏った銃弾は雀呂の頬をかすめる
南澤雀呂「なんや、今の?」
東川龍「おれは剣の才能はあらへんけど腐っても四英雄の直系や、霊力を武器に纏わせる事くらいは出来るで」
東川龍「”青龍の霊力”を浴びた弾丸なら、”朱雀の加護”を受けたお前にも効くやろ?」
〇中華風の通り
南澤雀呂「ぐっ、こんなカスにおれさまの野望が阻まれるとは!?」
東川龍「・・・弾切れや」
全弾使い切り龍は雀呂に方膝を付かせる
東川龍「まだやるか? これ以上やったらどっちか死ぬで?」
南澤雀呂「・・・参ったで」
東川龍「にしても妙や、雀呂のアニキにしては手応え無さすぎる。霊力のコントロールかてアニキのが洗練されとる筈やのに・・・」
南澤雀呂「おれはここまでやな」
東川龍「な──!?」
雀呂は己の胸を貫く
そのままその場に倒れ込んだ
東川龍「何でや、死なんでもええやろ?」
謎の黒いオーラが雀呂の身を包む
南澤雀呂「我をこの世に還元するか」
東川龍「うわ! 生き返った!?」
朱雀「キー──!」
雀呂はその身を紅蓮の炎を纏いし怪鳥へと姿を変える。
東川龍「まさか、自身の肉体を依代の器にして”四神・朱雀”を顕現させた言うんか?」
朱雀「ニンゲンヨ、キサマ如きが我を宿すとは」
朱雀「まあ良い、我が望むは破壊。この世全ての破壊ダ!」
東川龍「──!!」
東川龍「対処し切れるかわからんけど身一つは無理や。まずは刀を──」
朱雀「先ずはソコノ忌々しき青龍の末裔ヲ始末スルカ」
刀を取りに向かう龍を朱雀の放つ刃物の様な羽が襲う