第3話『お前ら普通にしろよ』(脚本)
〇貴族の部屋
伊藤「シャルさん、ユーリさん」
伊藤「朝早くから お呼び立てしてしまって すみません」
ユーリ「全然構わないさ」
ユーリ「どうかしたか?」
シャルティア「何でも言って」
伊藤「村の人たちと もっと親しくなろうと思います」
「何だって!?」
伊藤「この驚きようは何!?」
伊藤「私、思ったんです」
伊藤「私、向こうの世界だと根暗で 学校ではほとんど友達がいませんでした」
〇おしゃれな教室
同級生「伊藤さん」
同級生「みんなでカラオケ行くんだけど 一緒に行かない?」
伊藤「ご、ごめんなさい」
伊藤「今日は家の用事で早く帰らないと いけないんです」
同級生「そっか、それは仕方ないね!」
同級生「また誘うね」
伊藤「は、はい」
伊藤「またやっちゃった」
伊藤「せっかく誘ってくれたのに」
伊藤「いざ誘われると怖くなっちゃう」
〇貴族の部屋
伊藤「だから!自分を変えたいんです!」
伊藤「せっかく私のことを誰も知らない 異世界に来たんだから 変わるチャンスなんです!」
ユーリ「泣ける」
シャルティア「ホントだね」
伊藤「お二人、何で泣いてるんですか!?」
ユーリ「あいつらとの初対面の時を思い出してな」
ユーリ「そりゃあ酷いもんだった」
ユーリ「伊藤さんみたいな向上心が あいつらに最初からあればなって思ったんだ」
ユーリ「今もたいして変わってないけど」
シャルティア「向こうの女の子は健気なんだ」
伊藤「あの人たち、一体何やったの?」
ユーリ「とにかく、伊藤さんの意思は分かった」
シャルティア「応援するよ!」
伊藤「ありがとうございます!」
伊藤(このお二人は話しやすいな)
〇市場
ユーリ「というわけで、お前ら!」
ユーリ「これから親睦会を始める!」
ユーリ「今回は伊藤さんと話すのは1人ずつだ!」
〇市場
「1人ずつ!?」
(ちゃ、ちゃんす!)
北川(悪いな、みんな 伊藤さんと俺が1番仲良くなってやる)
いのうえ(女の子を落とすテクニックは知ってる みんなには悪いけど先に行くわ)
村田(みんなは分かってないと思うけど 伊藤さんタイプの女の子のことを 僕はよく知ってるんだ)
〇市場
ユーリ(あいつらの様子が少し変だな)
ユーリ「ただし、伊藤さんも疲れるから お前らがいるところをランダムで 回るようにする」
伊藤「ご迷惑おかけします」
ユーリ「だから、お前らは普通に生活してろ!」
シャルティア(普通に生活)
〇華やかな広場
村田「読書は楽しいなー」
村田(本だ!伊藤さんみたいなタイプは 本が好きなはずだから会話のネタになるはず)
村田(伊藤さんの心を射止めてやる!)
〇大樹の下
ユーリ「普段、あいつ本なんて読まないで 自室に引きこもって工作してるじゃねえか」
新島「あれは会話のきっかけを作るために ネタを分かりやすく見せてますね」
シャルティア「さすが、村で唯一の異世界転生者 ニージマ君」
ユーリ「まあ、策としては悪くないけど 受け身だな」
新島「通じますかね」
〇原っぱ
北川「150回!」
北川「いやー、稽古が捗るわー」
北川「モンスター討伐しに行くかな」
北川(伊藤さん、早く来てくれ)
〇草原の道
ユーリ「あいつ、最近剣の稽古なんてしないで ずっとマンガの売り上げ計算してるよな」
新島「あれは女の子の前で カッコいいところを見せようとしてますね」
シャルティア「頑張ってるね」
ユーリ「頑張ってるっていうか、からぶってるな」
新島「見え透いてますね」
〇おしゃれな食堂
いのうえ「ふふーん🎵」
いのうえ「山田君」
山田「あ、はい」
いのうえ「マンガの話しようぜ!」
山田「あ、はい」
いのうえ「男同士はやっぱ楽しいな」
山田「あ、はい」
〇おしゃれな食堂
ユーリ「あれは何だ?」
新島「男同士で絡んで 女の子には一切興味ないように 振る舞ってますね」
シャルティア「グイグイ来られて 若干ヤマダ君引いてる」
新島「『俺、女に興味ねえよ?』って 男女関係なく仲良くなれる雰囲気出して 誘ってます」
ユーリ「女の子と仲良くなりたいとか 言ってきたのはあいつだろ」
ユーリ「まあ、あいつらしいな」
シャルティア「でも、ニージマ君はやけに詳しいね」
ユーリ「確かに。あいつらの言動に詳しいな」
新島「まさしく、過去の自分と同じで 嫌でも心理が分かってしまうだけです」
「・・・・・・」
〇市場
伊藤「いろいろと言ってしまったけど どうしようかな」
伊藤「どこから行こう」
伊藤「話しやすい人がいるといいな」
〇華やかな広場
村田(来た!)
村田(自然な雰囲気で読んでおかないと)
村田「・・・・・・ふむ」
伊藤(本好きなのかな)
伊藤(夢中で読んでる)
伊藤(邪魔しちゃ悪いから他に行こう)
村田「行っちゃった」
〇原っぱ
北川(伊藤さん来た!)
北川「これで2150回!」
北川「快調!快調!」
伊藤(剣の鍛錬中か)
伊藤(近づくと危ないし、話すのやめとこう)
伊藤(お父さん、剣道やってたけど この人、あんまり上手くないな)
北川「行っちゃった」
〇おしゃれな食堂
いのうえ「それでさぁ」
山田(早く帰りたい)
伊藤(何かキツイ)
いのうえ(来た!さあ、伊藤さん話しかけてくれ)
いのうえ「えっ!?」
山田「あ、いなくなった」
いのうえ「なんで?」
〇市場
ユーリ「伊藤さん大丈夫かな」
シャルティア「仲良く出来てるかな」
伊藤「あ、あの」
ユーリ「おかえり!どうだった?」
伊藤「ごめんなさい」
伊藤「話そうと思ったんですけど」
伊藤「上手く話しかけることができませんでした」
ユーリ「気にすることはない」
シャルティア「そうだよ」
伊藤「やっぱり、ハードルを上げすぎました」
伊藤「ごめんなさい、ご迷惑をおかけして」
ユーリ「気にするな」
ユーリ「俺からすると 最初に提案してくれた時は嬉しかった」
シャルティア「うんうん」
ユーリ「それは伊藤さんにとって 勇気がいることだと理解しているし 大きな進歩だと分かってるよ」
シャルティア「私も相談してくれて嬉しかった」
伊藤「お二人とも本当に優しい」
ユーリ「また新しい方法を一緒に考えよう」
シャルティア「私も全力で応援する!」
伊藤「ありがとうございます!」
ユーリ「じゃあ、今日は美味しいものを食べて ゆっくり休んで、明日からまた頑張ろう」
伊藤「はい!」
シャルティア「今日の夕飯はどうしようかな」
伊藤「シャルさん、私手伝います!」
シャルティア「ありがとう!」
〇華やかな広場
村田「これで、3冊目、いつ戻って来るの?」
〇原っぱ
北川「1万212回」
北川「腕がぁぁ」
〇おしゃれな食堂
いのうえ「それでさぁ」
いのうえ「マンガはさぁ」
いのうえ「いつになったら来るの?」
〇貴族の部屋
伊藤「今日のことで分かったけど」
伊藤「やっぱり私は・・・・・・」