指先に魔法はいらない

星月 光

chapter05 人形の哀歌(脚本)

指先に魔法はいらない

星月 光

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〇ファンタジー世界

〇貴族の部屋
侍女ディアナ「お待たせいたしました」
シーラ・オブ・ワーズワース「ありがとう」
シーラ・オブ・ワーズワース「ごめんなさい、ディアナ」
シーラ・オブ・ワーズワース「でも、あの場で話すと みんなに聞かれてしまうから」
侍女ディアナ「もしやピオノノ様のことですか?」
侍女ディアナ「殿下のせいではありません!」
侍女ディアナ「わたしの責任です・・・」

〇建物の裏手
侍女ディアナ「ピオノノ様」
ピオノノ・ダイン「貴方は確か殿下の・・・」
侍女ディアナ「なにも言わず、お受け取りください」
侍女ディアナ「このことはどうかご内密に」

〇貴族の部屋
侍女ディアナ「まさか城の者に見られていたとは」
シーラ・オブ・ワーズワース「わたくしが悪いの」
シーラ・オブ・ワーズワース「冬に17歳の誕生日を迎えれば ベルクラインへ嫁ぐ」
シーラ・オブ・ワーズワース「その前に一度だけでも ピオノノと話がしたかった」
シーラ・オブ・ワーズワース「ジュリアンが怒るのも当然だわ」

〇大聖堂
ジュリアン・ダイン「兄上が流刑に処されたのは 殿下の浅慮ゆえではないですか!」
ジュリアン・ダイン「そのこと、ゆめゆめお忘れなきよう!」

〇貴族の部屋
侍女ディアナ「ジュリアン様がそんなことを!?」
侍女ディアナ「王家に仕える身でありながら・・・!」
シーラ・オブ・ワーズワース「彼の言ったこと、間違っていないわ」
シーラ・オブ・ワーズワース「ジュリアンにとっても ピオノノは大事な人だもの」
侍女ディアナ「殿下・・・」
侍女ディアナ「ピオノノ様のどこに惹かれたのですか?」
シーラ・オブ・ワーズワース「3年前のこと、覚えてる?」
シーラ・オブ・ワーズワース「ナタリアが王位継承者に選ばれて わたくし、悲しくて悔しくて」
シーラ・オブ・ワーズワース「父上にとっても国にとっても わたくしは必要ないんだって」
侍女ディアナ「申し訳ありません」
侍女ディアナ「わたしがお側にいれば 少しはお力になれましたのに」
シーラ・オブ・ワーズワース「ディアナは新人教育で忙しかったものね」
シーラ・オブ・ワーズワース「落ち込むわたくしを見かねて ダイン公が屋敷に招待してくれたの」

〇華やかな裏庭
シーラ・オブ・ワーズワース「お招きありがとう」
クレメント・ダイン「ご無念のこととお察し申し上げます」
シーラ・オブ・ワーズワース「父上が決めたことだもの」
執事長フランク・カッター「失礼いたします、旦那様 サイラス家より使者が参りました」
シーラ・オブ・ワーズワース「どうぞ、わたくしのことは気にせず」
クレメント・ダイン「申し訳ありません」
クレメント・ダイン「ジュリアン、殿下の相手をして差し上げろ」
ジュリアン・ダイン「はい、父上」
ジュリアン・ダイン「殿下、どうか気を落とされずに」
ジュリアン・ダイン「家を継ぐことがすべてではありません」
ジュリアン・ダイン「兄も跡継ぎではありません」
ジュリアン・ダイン「兄は・・・庶子ですから」
ジュリアン・ダイン「父や使用人は兄をないがしろにする ・・・わたしはそれが許せない!」
ジュリアン・ダイン「将来わたしが当主になったら──」
ジュリアン・ダイン「兄を蔑んだ者は残らず追い出します」
シーラ・オブ・ワーズワース(ジュリアンがここまで言うなんて)
シーラ・オブ・ワーズワース(兄君はどんな方なのかしら)

〇貴族の応接間
シーラ・オブ・ワーズワース「ダイン公、ご長男に会わせてちょうだい」
クレメント・ダイン「恐れながら、あれは殿下の お目に入れるべき存在ではありません」
シーラ・オブ・ワーズワース「ご子息でしょう? なぜそんなことを言うの」
クレメント・ダイン「わたしの子はモルゲッタが生んだ子だけ」
クレメント・ダイン「あれは、わたしの息子ではありません」

〇城の廊下
シーラ・オブ・ワーズワース(・・・やっぱり気になる)
シーラ・オブ・ワーズワース(こっそり探し──)
シーラ・オブ・ワーズワース「あ・・・!」
シーラ・オブ・ワーズワース(彼が・・・)
シーラ・オブ・ワーズワース「それからダイン邸へ行くたび ひそかにピオノノを探したの」
シーラ・オブ・ワーズワース「彼はいつもひたむきで 不平や不満をこぼさず」
シーラ・オブ・ワーズワース「蔑まれても冷遇されても いつも一生懸命だった」

〇貴族の部屋
シーラ・オブ・ワーズワース「わたくしも頑張らなくてはと思ったの」
シーラ・オブ・ワーズワース「王になれなくても、よき姉にはなれるもの」
侍女ディアナ「素敵なお話ですね」
シーラ・オブ・ワーズワース「本当に?」
シーラ・オブ・ワーズワース「おかしいと思わない?」
シーラ・オブ・ワーズワース「――ダイン公のこと」

〇おしゃれな居間
「キレイにできてます!」
「ピオ、これ好きでしょうか?」
「本人が起きたら聞きなよ」
ピオノノ・ダイン「んん・・・?」

〇L字キッチン
サフィ「アストリッドは好きですか?」
アストリッド「さあね、食べたことないし」
サフィ「あっ、起きたんですね!」
サフィ「一緒に食べましょ!」

〇おしゃれな居間
アストリッド「甘くてなめらかだね」
ピオノノ・ダイン「ええ、おいしいです」
サフィ「よかった!」
サフィ「ね、ピオ」
サフィ「魔術、あたしにも見せてください!」
ピオノノ・ダイン「あ、うん」
ピオノノ・ダイン「じゃあ明日・・・」
サフィ「さ、どうぞ」
ピオノノ・ダイン「えっ、ここで!?」
アストリッド「やってやれば?」
アストリッド「あの程度のそよ風じゃ どうにもならないからね」
ピオノノ・ダイン「・・・では、いきます」
ピオノノ・ダイン「魔力の流れを意識・・・ 身体から魔力を放出・・・」
ピオノノ・ダイン「魔力を拡散・・・!」
サフィ「すごーい!」
サフィ「すごいです、ピオ!」
サフィ「これでえっと・・・」
アストリッド「あいにく、潔白の証明は無理だろうね」
ピオノノ・ダイン「もっと強い魔術を覚えないと やはり、ダメなのでしょうか」
アストリッド「それもあるけど」
アストリッド「ダイン家や王家は 冤罪を晴らすのを許さないだろうね」

〇貴族の部屋
シーラ・オブ・ワーズワース「ピオノノはダイン公の庶子 母君はダイン公夫人ではない」
シーラ・オブ・ワーズワース「――でも」
シーラ・オブ・ワーズワース「ピオノノとダイン公夫人は似ているわ」

〇歯車
シーラ・オブ・ワーズワース「銀色の髪に、薄紅色の瞳」
侍女ディアナ「確かに珍しい色ですね」
シーラ・オブ・ワーズワース「ダイン公とジュリアンは似ているけど」
シーラ・オブ・ワーズワース「ピオノノはどちらにも似ていない」
侍女ディアナ「ダイン公夫人は市井のご出身でしたよね」
侍女ディアナ「ピオノノ様は夫人の連れ子で」
侍女ディアナ「ダイン公とは血の繋がりがないのでは?」
シーラ・オブ・ワーズワース「わたくし、あの日からずっと ダイン公の言葉が忘れられないの」
クレメント・ダイン「わたしの子はモルゲッタが生んだ子だけ」
クレメント・ダイン「あれは、わたしの息子ではありません」
シーラ・オブ・ワーズワース「ダイン公の奥方への愛は 王宮では誰もが知っている」
シーラ・オブ・ワーズワース「夫人の子なら、自分の子じゃなくても きっとわが子のように愛するわ」
シーラ・オブ・ワーズワース「それなのに・・・」
シーラ・オブ・ワーズワース「どうして2人は似ているの?」
シーラ・オブ・ワーズワース「なぜ、夫人と結婚したあとに 他の女性と子をもうけたの?」

〇貴族の部屋
シーラ・オブ・ワーズワース「真相を暴きたいわけではないの」
シーラ・オブ・ワーズワース「でも・・・」
シーラ・オブ・ワーズワース「ディアナ」
シーラ・オブ・ワーズワース「わたくし、サントエレン島へ行くわ」

〇おしゃれな居間
サフィ「どうして!?」
アストリッド「ちょっとは考えてみなよ」
アストリッド「潔白を証明できる条件は?」
サフィ「えっ? えっと・・・」
サフィ「魔術を覚えればいいんですよね?」
アストリッド「それはなぜ?」
サフィ「えーっと」
サフィ「魔術を使えるのは恋をしない人 ・・・ですよね?」
サフィ「ピオが魔術を覚えれば 王女様を好きじゃないってことになって」
サフィ「王女様の結婚を邪魔しないってわかる ・・・ってことですか?」
アストリッド「ま、おおむね合ってるよ」
アストリッド「大抵の人間は、性欲を本能と謳ってる」
アストリッド「恋をしない人間なんかいない 魔術を使える人間なんかいない」
アストリッド「実に原始的だね?」
アストリッド「まあ、つまり」
アストリッド「魔術を行使する者、すなわちスペルロイド」
アストリッド「世間はそう見るってこと」
アストリッド「ここまで言えばわかるかな?」
ピオノノ・ダイン「父や陛下は・・・」
ピオノノ・ダイン「ダイン家がスペルロイドを養子にしたと 知られたくないと思っている」
ピオノノ・ダイン「ボクが冤罪を晴らしてしまうと 自ずとボクの正体も知られる」
ピオノノ・ダイン「だからボクは潔白を証明できない、と」
アストリッド「半分は当たってるよ」
サフィ「もう半分は?」
アストリッド「モルゲッタ・ダイン」
アストリッド「誰がアビス閃石を飲ませたのかな?」

〇流れる血
ピオノノ・ダイン「・・・執事長のフランクは ポルト家かサイラス家の者ではないかと」
アストリッド「ま、ありえるね」
アストリッド「子どもができなければ 尊い血筋とやらは途絶える」
アストリッド「権力を集中させようとするなら そこそこ効果的な試みかもね」
アストリッド「その場合、王は隠蔽するだろうけど」
ピオノノ・ダイン「庇うということですか?」
アストリッド「付け入る隙を他国に見せたくないってこと」
アストリッド「国内の貴族が争ってると知れたら 攻め込まれるかもしれないからね」

〇おしゃれな居間
ピオノノ・ダイン「では、母にアビス閃石を飲ませたのは」
アストリッド「おそらくダイン家の人間だ」
アストリッド「酒場の歌姫はダイン公にふさわしくない」
アストリッド「ポルト家かサイラス家の仕業なら それを理由にダイン公を糾弾すればいい」
アストリッド「ダイン家の血筋を絶やしたいなら ダイン公にアビス閃石を飲ませればいい」
アストリッド「そうしなかったのは──」
ピオノノ・ダイン「ダイン家の中に犯人がいる、と」
アストリッド「そう考えるのが妥当じゃない?」
アストリッド「子を産めない女と離縁させて 他の女をあてがおうってね」
ピオノノ・ダイン「でも父は、母と別れようとしなかった」

〇水の中
ピオノノ・ダイン「父が作らせた9体のスペルロイドのうち 6体は成育不良で廃棄されました」
アストリッド「通常、スペルロイドは5歳程度まで 培養槽で成育促進されるけど」
アストリッド「ダイン公の子という建前だから 赤子の段階で培養槽から出したのか」
アストリッド「魔術を使うための道具を 一から育てる物好きはいないもんね」

〇おしゃれな居間
サフィ「ピオ以外の2人はどうしてるんですか?」
ピオノノ・ダイン「それは・・・」
アストリッド「――それより」
アストリッド「不活性化の儀式を受けた理由 これでわかったよね?」

〇貴族の応接間
執事長フランク・カッター「ピオノノ様 魔術を覚えていただきます」
執事長フランク・カッター「ジュリアン様がいらっしゃる今 ピオノノ様の役目は終わりました」
執事長フランク・カッター「これからはスペルロイドとして ダイン家の戦力になるようにと」
執事長フランク・カッター「お父上のご命令です」
ピオノノ・ダイン「・・・わかりました みんなの役に立てるなら」

〇おしゃれな居間
アストリッド「真に受けたの?」
ピオノノ・ダイン「・・・はい」
アストリッド「ダイン家の長男とされていた人間が スペルロイドと知れたらどうなるか」
アストリッド「ちょっと考えればわかるだろうに」
アストリッド「貴族社会じゃやっていけないんじゃない?」
アストリッド「ま、裁判については当てが──」
ピオノノ・ダイン「・・・あっ」
サフィ「ピオ!」
アストリッド「明日からは魔術の習得と 潔白証明に必要な対策だ」
アストリッド「さっさと休んで明日に備えれば?」
ピオノノ・ダイン「はい・・・ おやすみなさい」
サフィ「・・・ピオ!」
サフィ「その・・・」
サフィ「・・・おやすみなさい!」
ピオノノ・ダイン「うん、おやすみ」

〇島国の部屋
サフィ(ピオ・・・)
サフィ(あたしもアストリッドみたいに ピオの力になれたらいいのに)
サフィ「・・・・・・」

〇海辺

〇黒背景
  ――フィ・・・
  ――サフィ・・・

〇田舎の病院の病室
???「おはよう、サフィ よく眠れたか?」

次のエピソード:chapter06 浦風の憧憬

コメント

  • いやぁ……。
    可愛いファンタジーかと思いきや、キナ臭い西洋のこってりも味わえてお得なんですよね……。
    血肉を感じる台詞回しや表情変化も巧みで……運営、見る目なぃ……ゲフン。応援しています😉

  • ピノくんの過去にまつわる重厚なエピソード、深く見入ってしまいました…😥
    そして、作中の空気を整え和らげてくれるサフィちゃんが魅力的に映ります😊
    そんなサフィちゃんの記憶に関するストーリーも動き出したようで、一体どんな秘密が、と既にドキドキしてしまっています🤔

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