第5話 初めての言葉(脚本)
〇森の中の小屋
水竜が起こす洪水で 卵も流された
チュロス「竜の卵を失ってしまった」
チュロス「大丈夫か?」
パンナコッタ姫「うん・・・」
チュロス「あの娘は?」
〇山中の川
水竜にやられ
ボロボロで横たわるエクレア
エクレア(私も流されて このまま雫になりたい)
エクレア(このまま このまま)
〇水中
水の底へ沈む
エクレア「・・・・・・」
魔女「オヤ? また会ったね」
エクレア(私は会いたくない)
魔女「ホホホ お言葉ね」
魔女「しゃべらなくても分かるよ 私には」
エクレア(このまま 水の一滴になりたい 大海の雫に)
魔女「お前の頬に流れる 涙のようにかい?」
エクレア「・・・・・・」
魔女「雫になるのも良いが 私の話をお聞き」
魔女「お前は 勘違いしているね」
魔女「私の魔法で人間になれたと思ってる それは違う」
魔女「人間になれたのじゃない 人間の姿に戻れたんだ」
魔女「ドラゴンこそ 魔法で変えた姿」
魔女「元々お前は 人間なんだよ」
何かを言おうとして
溺れるエクレア
エクレア「ゴボゴボゴボ・・・」
魔女「お前は赤ん坊の時 大鷲にさらわれて ドラゴンの里に来たのさ」
魔女「そのままではドラゴンたちのエサになる」
魔女「だから ドラゴンの姿に変えてあげた 奴ら共食いはしないからね」
エクレア(嘘よ 嘘! 信じられない だって私は・・・)
エクレア(ブルードラゴン!!)
魔女「仲間外れのドラゴンだろ」
エクレア「・・・・・・」
魔女「いつも 独りぼっちのドラゴンだった」
魔女「中身は人間だから そりゃそうさ」
魔女「結局 人間なんだ だから・・・」
エクレア(だから人間を愛してしまったの!?)
エクレア(人でなし!!)
魔女「そりゃそうさ 魔女だもの」
エクレア(ドラゴンだから 人間を愛しては イケないと思ったのに)
魔女「雫になる必要はないさ 人間として自信を持ちなさい」
エクレア(人間が人間を愛しても 何も悪くない!)
エクレア(私は人間なんだ!! 恋してもいいんだ!!)
幸福感に包まれたエクレア
エクレア(彼に会いたい!! 彼は 今どこに?)
魔女「水晶で覗いてみようかね」
〇暖炉のある小屋
チュロス「初めてだな 食事作るのは あの子がいないから・・・」
パンナコッタ姫「任せてたもれ」
チュロス「嗅いだことのない 強烈な匂いがするけど?」
パンナコッタ姫「ホホホ 冗談ばっかり」
チュロス「ハハハ 冗談ならいいけど・・・」
チュロス「すごい! フルコースじゃないか!!」
パンナコッタ姫「オホホホホ」
チュロス「たまらねぇ いただきます!」
パンナコッタ姫「オホホホホ!」
パンナコッタ姫「フォークが落ちたぞ」
チュロス「急に腹一杯になった」
パンナコッタ姫「腹が鳴っておるぞ 遠慮するな」
チュロス「うううう」
パンナコッタ姫「泣いておじゃる そんなに美味なるかや?」
チュロス「う・・・まい」
パンナコッタ姫「そうじゃろ そうじゃろ オホホホホ!!」
〇水中
エクレア「・・・・・・」
〇暖炉のある小屋
パンナコッタ姫(まだ痛みが取れんな・・・)
チュロス「手に怪我してるじゃないか!?」
パンナコッタ姫「初めて料理したから」
チュロス「やっぱ初めてか!」
パンナコッタ姫「遠慮せず もっと食え」
チュロス「食えるか!!」
チュロス「それより怪我の手当をしてやろう」
チュロス「結構な傷じゃないか」
チュロス「お前 侍女じゃないな」
チュロス「世話係にしては 変だと思ったんだ」
パンナコッタ姫「料理もひどいしな」
チュロス「自覚あったのか!?」
パンナコッタ姫「お主は嘘が下手すぎる 女は傷つく」
パンナコッタ姫「仕方ないじゃろ 誰もわらわに 教えてくれなかったのじゃ」
チュロス「教わる必要がなかった」
チュロス「姫様だから」
パンナコッタ姫「・・・・・・」
姫の手を取るチュロス
うやうやしく手にキスをする
パンナコッタ姫「料理は習いたかったなぁ」
チュロス「ハハハハ」
パンナコッタ姫「フフフフ」
〇水中
エクレア(お城の姫様・・・)
魔女「だから言ったろ 人間が幸せとは限らないって」
エクレア(あの人が姫様・・・だったら だったら)
エクレア(敵わないじゃない!!)
エクレア(半分ドラゴンの まともな人間ですらない私が お姫様なんかに!!)
魔女「姫はね 彼とキスしたと誤解してる」
魔女「王家ではキスは婚姻の印だからね」
エクレア(キスしたのは私よ だったら私に権利がある!)
エクレア(どうして 人間だったなんて教えたの!?)
エクレア(どうして希望を与えたの!? すぐに 泡と消える希望を)
エクレア(本当に魔女なのね)
魔女「やっぱり雫になりたいかい?」
魔女「このままだと 悔し涙の しょっぱい雫になりそうだね」
エクレア「・・・・・・」
エクレア(身分が違いすぎる)
魔女「身分なんて下らない 身分より力だよ 王女よりも力が持てるとしたら?」
魔女「お前はまだ 完全な人間に戻ってない 尻尾もあるし 空にも浮かべる」
魔女「完全な人間に戻してやろう 尻尾を取ってね」
魔女「美しい人間に」
魔女「魔女の「涙」を飲めば 魔法は解ける」
首を激しく振るエクレア
魔女「オヤ? もっと強い魔法に掛かりたいのかい?」
魔女「では 私の唾をお飲み 魔女の「唾」を飲めば 更に強い魔法に掛かる」
エクレアは怪しく笑った
〇海
〇水中
エクレア「許さない」
エクレア「許さない 許さない 許さない」
それが初めて取り戻した 言葉だった
エクレアの姿は 更に変化した
〇暖炉のある小屋
姫とチュロスは 打ち明け話をしていた
チュロス「兄を救いたくて 城に潜ったのさ」
チュロス「兄は騎士なんだ」
パンナコッタ姫「お主も騎士なのか?」
チュロス「いや 元々は2人とも百姓だった 喧嘩が強い兄は 騎士見習いに取り立てられたんだ」
チュロス「そして 本当の騎士になった」
チュロス「戦争で捕虜になり 城の牢屋に居るはずだ」
パンナコッタ姫「地下には行くなと止められておる わらべの頃 一度だけ潜り込んで あの抜け道を見つけた」
パンナコッタ姫「暗くて 地下に隠し部屋や 仕掛けがあるのも 知らなかったのじゃ」
〇草原
騎士になるのを夢見て
兄とよく 戦いの稽古をしていた
俺は騎士になれなかった
だから
〇暖炉のある小屋
チュロス「刀鍛冶になったよ 兄のために 剣を作った」
チュロス「黒くて ガードに五本のソーン(棘)のついた カッコイイ剣さ」
パンナコッタ姫「そうか・・・チュロス殿は エッグ・シーフでは なかったのじゃな」
チュロス「すまなかった」
チュロス「姫はなぜ竜の卵を?」
パンナコッタ姫「・・・・・・」
チュロス「国王が病に伏したという噂は 本当だったのか」
チュロス「王様のために 卵を探してるんだろう?」
チュロス「父親想いなんだな」
パンナコッタ姫「それもある なれど・・・本当は本当は」
チュロス「本当は何だい?」
パンナコッタ姫「もう・・・寝ましょう」
そう言って 姫は口をつぐんだ
翌朝
〇暖炉のある小屋
起きると姫は居なかった
続きは次回
今回もとても面白かったです!!!
遂にパンナコッタ姫の正体を知りましたね……!エクレアの今後の動向も気になる所です……。
また時間がありましたら、読ませて頂きます!!
展開が気になりますね!個人的にはエクレアとエッグシーフに結ばれてほしいのですが…パンナコッタ姫とも結ばれて欲しい。しかし、どちらも幸せになって欲しい!いやぁ本当どうなるんでしょう😆どう反転していくか続きが気になります!
運命のイタズラがああ😭
エクレアの数奇な運命、切なすぎます。
魔女の唾を飲んじゃったんですよね?
このままだと、エクレアがラスボス的な立ち位置に来るのかな…。