15.終わりの理由(脚本)
〇密林の中
レナータ「兄の倍額払いますわ」
魔女「信用商売ですので」
魔女「金でクライアントを裏切るようではとても」
獣人リファ「森を無事に出たくはないのか?」
アドリアン(骨)「・・・・・・」
魔女「アドリアン様」
魔女「申し訳ないが、 命をかけて遂行する義理はありません」
魔女「報酬はお返しします」
魔女「ふふ」
魔女「随分とおモテになるようですが」
魔女「女性は苦難の元でしたね」
「・・・・・・」
レナータ「帰りましょうか」
〇貴族の部屋
レナータ「・・・・・・」
レナータ「謝らないんだからね」
レナータ「バカ」
レナータ(でも・・・)
レナータ(部屋に骸骨があるの。ちょっと怖いわ)
レナータ「手紙・・・」
レナータ「お兄様から!?」
レナータ「日付が二週間前・・・ 家を出て少し後に出したのね」
レナータ「体の心配とか、メランジェス家のこととか、それから」
〇綺麗な港町
君は覚えてないだろうけど
あの時、
俺は確かに君しか見えていなかった
ここだけの話
君が大怪我をした時、イーダの死があれば過去に戻れるのに、と思ったことがある
君がうちに来てくれて良かった
幸せを祈ってる
〇貴族の部屋
レナータ「なにそれ」
〇黒
〇貴族の部屋
レナータ「ちゃんと、私たちだけだった、時があったの?」
レナータ「そっかあ・・・」
レナータ「私の方を選んだ時があったんだあ・・・」
レナータ「・・・・・・」
レナータ「お兄様」
レナータ「たくさんあるのに、幸せな部分だけの」
レナータ「記憶の、お裾分け、してくれたんですか?」
レナータ「・・・・・・」
〇密林の中
レナータ「リファさん!」
レナータ「あなたにも手紙が?」
獣人リファ「手紙と、たくさんのお金」
獣人リファ「父親の行為の詫びと、獣人族への援助だって」
獣人リファ「私への思いも・・・」
獣人リファ「アドリアーン、アンアン」
レナータ(嫉妬なんてしない)
レナータ(お兄様は、それぞれの人生で本気だったって信じる)
レナータ(私自身のために)
レナータ(だから)
レナータ(最期くらい、あの子に譲ってあげるわ)
レナータ(さすがに気の毒だしね)
魔女「おや、レナータ様から再度ご依頼があって来ましたが」
魔女「アドリアン様の体、 ちょっと欠けてるようですね・・・」
レナータ「え」
獣人リファ「だってだってえ」
獣人リファ「ちょっと食べちゃってから 手紙に気づいたんだもん」
レナータ「食べちゃった!?」
レナータ「ちょっとなら、大丈夫ですよね?」
魔女「うーん、どうでしょうねえ」
獣人リファ「ダメぇ?」
魔女「肝臓からいきましたよね・・・」
獣人リファ「だって、肝だよ? 新鮮さ命じゃん」
レナータ(どうしよう・・・)
?「ちょっと待ったあ!」
半魚人「私たちも」
熊「協力するくま」
レナータ「誰?」
半魚人「アドリアン様と多分、前世で縁のあったものどん」
熊「話は全部聞かせてもらったくま」
レナータ(この人たちとも恋人だったってこと!?)
半魚人「私たちもきっと、家に帰ればアドリアン様の優しい手紙があるどん」
熊「彼の力になりたいくま」
レナータ「あ、ありがとう!」
レナータ(送ってるわよね?大丈夫よね?お兄様)
獣人リファ「ストーカー、多すぎだろお」
獣人リファ「で」
獣人リファ「どうやって協力してくれんの?」
「・・・──・・・」
獣人リファ「ないんかーい」
レナータ「あ」
レナータ「一つ思いつきました」
〇アマゾンの森
「ええー!! いいのそんなことして!」
?「・・・・・・」
〇教会
〇教会内
旅の預言者「静まれ!聖女の託宣であるぞ!」
イーダ「えへへ、すみません」
イーダ「今日集まってもらったのは、女神様の言葉をお伝えするためです」
イーダ「ご遺体の埋葬についてです」
イーダ「女神様は、同じような色の糸ばかり集まって飽きているようです」
イーダ「なので『死後の体はどんな状態でもオッケー』ってことだそうです!」
イーダ「『むしろ求む。個性的な死体!』と」
イーダ「もちろん『王道の綺麗な死体も大歓迎!』」
イーダ「だから皆さん」
イーダ「ご遺体がどんな状態でも、安心して埋葬されちゃってください❤️」
騎士「ちょっといいですかな?」
騎士「これまでの女神様の教えと随分違うのですが」
騎士「本当に女神様のお言葉ですか?」
騎士「偽の託宣は、聖女と言えど重罪ですぞ?」
イーダ「ええと、私は」
イーダ(意訳しすぎましたかね。真実なのですが)
イーダ(女神様は本当は、そこまで狭量な方ではないんです)
まあ
言うべきことは言ったから、
もういいですかね?
これが終われば
私も後を追うつもりでしたし
イーダ(ごめんなさい。アドリアン様)
「それを虚偽だと証明する方法があるのか」
アドリアン「こちらがお聞きしたいのですが?」
アドリアン「失礼 元メランジェス家次期当主アドリアンです」
アドリアン「私の妻が、虚偽の発言をしていると?」
メランジェス伯「アドリアン!?」
メランジェス伯(『元』次期当主!?)
騎士「・・・・・・」
騎士「あまりにも信じがたい発言だったので」
アドリアン「本当のことです」
アドリアン「妻は既に、埋葬形式の違う獣人族と協力しあうことを約束し、魔の森での墓地の造成を始めております」
騎士「はあ!?」
騎士「そんなことが、許されると──」
アドリアン「許してくれたのは、獣人族の方ですよ?」
騎士「それに関する発言を、 お父様は承知なさってるのかな?」
アドリアン「いいえ」
アドリアン「私はメランジェス家を出ました 父は関係ありません」
イーダ「アドリアン様!」
アドリアン「大丈夫」
アドリアン「これからも私達は自由に発言するつもりです」
アドリアン「逮捕したかったらどうぞ」
「・・・・・・!」
アドリアン「あなたがたは、獣人族を簡単に制圧できるとお考えでしょうが」
アドリアン「いつでも森においでください」
アドリアン「お待ちしております」
〇教会
イーダ「ア、アドリアン様!」
アドリアン「追ってくるぞ。急ごう!」
〇森の中
イーダ「アドリアン様!全然振り切れてません!」
イーダ「どうしましょう」
アドリアン「・・・・・・」
アドリアン「お前は走れ。この先にリファ達が待ってる」
イーダ「アドリアン様も!」
アドリアン「俺は」
アドリアン「あいつらを追い返す」
イーダ「嫌です!」
イーダ「二度と見殺しにしたくありません」
アドリアン「イーダ・・・」
イーダ「わ、だ、抱きしめてる場合じゃないですよ!」
イーダ「じゃなくて、アドリアン様ぁ!」
アドリアン「・・・仕方ないな」
アドリアン「じゃあ」
アドリアン「続きはまた後でだぞ」
イーダ「え」
〇アマゾンの森
「ええええ!」
〇墓地
魔女「す」
魔女「凄い!凄すぎるアドリアン様! こんな素晴らしい生き物になるなんて!」
イーダ「あの・・・?」
獣人リファ「えっとな」
獣人リファ「かくかくしかじかで、 アドリアンの肉がなくなっちゃったの」
獣人リファ「だから、 皆でお肉をかき集めようってことになって」
獣人リファ「森だから集めるの簡単じゃん?」
獣人リファ「大型獣やら魚類やら死にたての奴」
イーダ「それをアドリアン様に!?」
獣人リファ「うん、あとな」
獣人リファ「ほら、あれ。ご先祖様のミイラ」
獣人リファ「ミイラだから腐ってないじゃん? だから逆にいけるんじゃないかって」
獣人リファ「足した」
イーダ「・・・・・・」
魔女「そう!」
魔女「彼はキメラという未知の生き物に生まれ変わったのです!」
魔女「新しき死体と古き死体。対立物の合成は賢者の石のレシピ。これまさに錬金術の真髄で──」
獣人リファ「魔女さん、興奮しすぎ」
獣人リファ「ほんと、とんでもない生き物になっちゃったなー あははっ」
レナータ「笑って誤魔化せるとでも!?」
獣人リファ「いいじゃん。森守ってもらえるし」
獣人リファ「あ、勝ったのか?」
レナータ「さすがお兄様!こっちですよー!」
獣人リファ「大変だったな。お疲れ!」
獣人リファ「へ?」
「イーダさん?」
〇山中の川
イーダ「・・・」
「イーダ?」
イーダ「・・・・・・」
〇綺麗な港町
私に深く刻まれた
無数の人生で、
一度も彼を手に入れられなかった
失敗体験が──
〇空
〇綺麗な港町
アドリアン「今度は俺が」
アドリアン「追いかける番か?」
イーダ「私は」
イーダ「嫌われてるとばかり、ずっと」
アドリアン「俺は最初から最後まで お前を抱くことしか考えていない」
アドリアン「間違えた お前のことしか考えていない」
イーダ「間違えますかそこ!?」
アドリアン「信じられないか?」
イーダ「えへへ」
イーダ「生き延びて」
イーダ「『両思い』?」
イーダ「私がそんな凄いもの貰えるわけないじゃないですか?」
アドリアン「なぜ?」
イーダ「そもそも『私』のこと好きな人なんて」
イーダ「この世にいないんですよ」
アドリアン「・・・・・・」
アドリアン「あのさ」
アドリアン「俺が繰り返してきた人生の話」
アドリアン「あれで全部だと思うか?」
イーダ「え!?」
アドリアン「ああ、あんな恥ずかしいこと言ったのに、覚えてないのかあ」
アドリアン「お前に一度も触れていない、 というのも嘘かもな」
イーダ「本当に!?」
アドリアン「死に際になれば分かるんじゃないか?」
アドリアン「もっとずっと先のことになるけどな」
イーダ「い」
「今教えてくださいよお!」
「ほんとにずっとずっと追いかけちゃいますよ!?」
「❤️」
おわり
完結お疲れ様です‼
大長編ですね、これほどの長さで話を積み上げるなんて凄いですね!
最終的にイーダと真実の愛で結ばれて良かったです。他の人々にも愛情を降り注ぎ、素晴らしいなと思いました。感動的ですね😭
ふゆさん完結お疲れ様でした!
次々に生まれる疑問がタイムリープを繰り返すアドリアンによって解明されていく面白さ!最終的にイーダを救うなんて、このシナリオを考えられたのは脱帽です☺️
素晴らしい作品をありがとうございました😊
完結お疲れ様でした!
最後にどうなるのか気になりすぎて、ほぼ一気読みしてしまいました💦
アドリアンがなんだかすごい姿に〜!
ハッピーエンドで良かったです!✨