不死を殺すクズ達へ

樹 慧一

エピソード3:殺人体験の男②(脚本)

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〇シックなカフェ
纏 白檀「・・・・・・」
  フシのその、あまりのあっけらかんとした語り口に。────男の異常さに。
  白檀は、眼前のパフェが溶けるのも忘れ聞き入った。
フシ「・・・・・・お姉さん、大丈夫?」
纏 白檀「あ、ああ」
纏 白檀「しかし、人の生き死にがかかっているとは思えない軽さだな。正直驚いた」
フシ「ま、俺生き返るし。残機いっこ減るくらいでしょ?ゲームで言えばさ」
  フシの言葉に、軽く白檀の眉が寄る。
纏 白檀「・・・・・・随分だな。自分の生死だろう?」
フシ「あう、そんなに怒らないでよ・・・・・・」
  二人の間に、重い空気が落ちる。それを払拭したのは、あ、という白檀の声だった。
纏 白檀「フシ、君、守秘義務!」
フシ「!!」
フシ「そこ、気にするんだね・・・・・・」
フシ「それならまあ・・・・・・名前出してないし大丈夫だよ。ごまんといるお客さんタイプの一人だし。じゃ、続けるね」
纏 白檀「・・・・・・ああ」
  フシを叱ったのも確かだが、それ以上に話が気になるのも確か。白檀は、続きを示唆するフシに肯定の意を示したのだった。

〇ビルの裏
殺人体験の男「さて、これから「サービス」を受けていくわけだが」
フシ「はいはい!」
殺人体験の男「できるだけ、初心な反応を見せてくれないかな?」
フシ「と、言いますと?」
殺人体験の男「新鮮な恐怖、苦悶が欲しいんだ。君、見るからに慣れてるからねえ」
フシ「ああー・・・・・・確かに?じゃあ、初めての気持ちで頑張りましょうか。あ、生き返るのにちょっと時間かかるので」
フシ「見つからないよう上手くやって下さいね?」
殺人体験の男「ああ、任せなさい!」
殺人体験の男「・・・・・・ところで」
殺人体験の男「反応が気に食わなかった場合は、何度かお願いしても?」
殺人体験の男「そうだね、リテイク毎に1本、出すよ」
フシ「それなら喜んで・・・・・・ぐ、う!?」
殺人体験の男「よしよし、いい子だ。はは、ははははは!」
フシ「い、ぎなりは、はじめ、て・・・・・・あ゛、あッ」
殺人体験の男「はは、いいねいいね。不意打ちのかいがあったよ」
殺人体験の男「泣いてるじゃあないか。苦しいかい?辛いかい?私を引っかいたっていいんだよ」
フシ「あ゛────あ、ぁ・・・・・・」
殺人体験の男「おや・・・・・・死んでしまったかな」
殺人体験の男「まったく、あっけないねえ」
  それから、納得いくまで計4回。フシはひたすらに絞め殺され続けた。
殺人体験の男「じゃあ、約束の5万円。置いておくね。お大事に」
フシ「あ、あ゛・・・・・・は、あ・・・・・・はぁ・・・・・・」
  斃れたフシを、そのままに。男は、颯爽と街へ溶ける────

〇シックなカフェ
纏 白檀「(正直、話を聞いたのは軽い気持ちからだったが)」
纏 白檀「(・・・・・・覚悟が足りなかったな。あんまりだ)」
フシ「今回の話はこれで終わり!このお客さんね、最後の反応がよかったみたいでリピーターになってくれたんだー」
フシ「・・・・・・?お姉さん?」
  悲しい。悲し過ぎた。話の内容もさることながら、この仕打ちをを軽くしか受け止められないフシが。
  白檀は柄にもなく彼を抱きしめたい衝動にかられたが、すんでのところで思いとどまる。
纏 白檀「(私は、そんなことができる立場じゃない。ただの、野次馬だ)」
フシ「でさ、でさ!今回の話、いくら?千円は行く?行っちゃう?」
纏 白檀「・・・・・・」
纏 白檀「今日のは、御代も合わせてここに置いておくよ。ゆっくり食べなさい。・・・・・・ごめんね、フシ」
フシ「え・・・・・・えっ!?2万?もらい過ぎだよ!!待ってお姉さん!!」
フシ「俺・・・・・・待ってる!今日出会った場所で待ってるから!また聞きに来てよ!」
  想定外の金額に焦るフシの言葉を背に、白檀は店を出た。・・・・・・再会するかは、まだ、わからない。

次のエピソード:エピソード4:芸術作品の女①

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