エピソード4:芸術作品の女①(脚本)
〇豪華なベッドルーム
芸術作品の女「ねえ、私は君を愛したいんだ────」
〇開けた交差点
殺され屋の話を聞いて、一週間。
白檀は、結局フシのもとへ行かぬまま日々を過ごしていた。が────
纏 白檀「!!」
纏 白檀「あれは・・・・・・フシ!?」
フシ「は、あ・・・・・・はあ・・・・・・」
纏 白檀「(あの様子、普通じゃない。どうする?声を掛けるか?)」
自宅の前で、白檀は思いがけずフシを見掛けた。
纏 白檀「(ここで声を掛ければ深入りすることになる。そこまで、私は責任を持てるのか?)」
考える間にも、フシはおぼつかない足取りで歩いていく。そして────
通行人の男「痛えな!!どこ見て歩いてやがる!!」
フシ「あ、ごめ・・・・・・なさ・・・・・・」
纏 白檀「・・・・・・ああ、もう!」
〇開けた交差点
フシのあまりに危なげな様子に、白檀はたまらず間へと割って入った。
纏 白檀「すみません、弟がご迷惑を!」
通行人の男「は、え?」
フシ「・・・・・・!」
白檀の突然の登場に、にわかに男が後ずさる。
纏 白檀「全く、調子が悪いのに外に出て!帰るよ」
フシ「まって、あの、お姉さ・・・・・・!」
纏 白檀「(こうなったら仕方ない。もうやけっぱちだ)」
関わったなら、最後まで。
そんな己のこだわりに辟易しつつ、白檀はフシをそのまま家へと引っ張り込んだ。
〇高級マンションの一室
フシ「・・・・・・あの、お姉さん」
纏 白檀「・・・・・・」
フシ「その、ありがとう」
フシ「・・・・・・」
フシ「理由、聞かないの?」
纏 白檀「・・・・・・」
フシ「俺がこんなになっちゃった、理由。殺され屋関連だよ」
纏 白檀「言いたくないなら、いい。雨で冷えたろう。ここで温まって行きなさい」
言葉とともに、コーヒーカップを静かに差し出す。
すると、フシはたまらずと行った体で、しかしゆっくりと言葉を溢した。
フシ「聞いて、欲しいな。聞いてってよ。お姉さん」
フシ「俺にあった、殺され屋の依頼────」
〇豪華なベッドルーム
フシ「不死でもね、心はちゃんと死ぬんだよ」
芸術作品の女「そっか、良かったあ・・・・・・!」
カフェで白檀と別れて、すぐ。
いつものごとく殺され屋を営んでいたフシは、ある女子大生に声をかけられていた。
芸術作品の女「卒業制作のテーマにピエタを選んだはいいけどちっともしっくり来なくって」
芸術作品の女「リアルな死を目の当たりにできればきっといいモノが作れると思ってたの!」
芸術作品の女「だから、私と出会ってくれてありがとう」
フシ「いえいえ」
芸術作品の女「クオリティを追求したいからちょっと時間を貰っちゃうと思うんだけど、いいかな?」
フシ「お金さえ頂けるなら、いくらでも!」
芸術作品の女「わあ、嬉しい!」
一見穏やかな、またとない上客。
それがとんでもない化け物だと、フシは気付けずにいたのだった────