さらば愛する猫よ(脚本)
〇荒廃した国会議事堂の広間
ムーシャ「──そう、秩序を保つにはね」
夢花「噂を聞きました」
ムーシャ「なんの噂かしら?」
夢花「お強い女の子がいるって」
ムーシャ「獣を宿すもの、らしいわよ」
夢花「・・・それと、イレギュラー」
ムーシャ「それ以上はナンセンス」
夢花「・・・・・・」
ムーシャ「あなたの組織モバラは大丈夫?」
夢花「・・・・・・」
ムーシャ「居場所、狭くならないといいけど」
夢花「・・・・・・」
〇豪華な部屋
そこは豪華な家。
シルビアの母「シルビア・・・」
シルビア「お母さん、ウンメイってなんなの?」
シルビアの母「みんなを、護る・・・こと」
シルビア「じゃあ、あたしウンメイになる、お母さん好きだから」
シルビアの母「シルビア・・・」
〇怪しいロッジ
シルビア・ヤン・オードリー「──うう」
アイン・イヨ・リトナ「シルビアさんっ!」
シルビア・ヤン・オードリー「リトナ」
シルビア・ヤン・オードリー「つう〜っ」
ウカの家のベッドで起き上がると上半身に痛みが走り、思い出す。
シルビア・ヤン・オードリー「あのネコ〜」
シルビア・ヤン・オードリー「そうだリトナ、戦う気ね」
アイン・イヨ・リトナ「・・・はい」
シルビア・ヤン・オードリー「やっぱり・・・」
シルビア・ヤン・オードリー「でも、よくあの場で戦わなかったわね」
アイン・イヨ・リトナ「それは」
アイン・イヨ・リトナ「実は私は戦うつもりでいたんですが」
シルビア・ヤン・オードリー「どういうことよ・・・」
それはシルビアが気絶した時の事。
〇草原の道
アイン・イヨ・リトナ「今度は、私が戦います!」
カプリース「ニャッ、リトニャのわからずニャ!」
「待ちなさい!」
アイン・イヨ・リトナ「え、ウカ・・・さん!?」
ウカ・デルマ・ネール「待ってリトナ」
ウカ・デルマ・ネール「戦うよりも今はシルビアが先じゃなくて?」
そう言って背中に傷だらけのシルビア担ぐウカ
リトナは何処か頼れる感じがした。
アイン・イヨ・リトナ「・・・そう、ですね」
ウカ・デルマ・ネール「戦うのは明日の朝、それでいいかしら猫さん」
カプリース「ニャッ、そんなこと・・・」
ウカ・デルマ・ネール「おねがい・・・」
カプリース「・・・・・・」
カプリース「・・・わ、わかった、ニャ」
カプリースは猫の姿になって去っていった。
〇怪しいロッジ
シルビア・ヤン・オードリー「そんなことが」
アイン・イヨ・リトナ「はい」
シルビア・ヤン・オードリー「それで、肝心のウカは」
アイン・イヨ・リトナ「それが、シルビアさんをベッドに寝かしたあと『外の空気を吸ってくる』と言って」
シルビア・ヤン・オードリー「・・・・・・」
シルビア・ヤン・オードリー(よく冷静なって思い返してみるとウカに最初に助けられた時も、ものすごい水の魔法みたいなので助けてくれて)
シルビア・ヤン・オードリー(あの時も、性格がいまと違ってたような)
アイン・イヨ・リトナ「シルビアさん?」
シルビア・ヤン・オードリー「とにかくリトナ、ウカにお礼も言いたいし連れてきてよ」
アイン・イヨ・リトナ「はい」
〇ヨーロッパの街並み
玄関の少し先で外の夕日を見ているウカ。
ウカ・デルマ・ネール(・・・・・・)
ウカ・デルマ・ネール(わたしは・・・)
ウカ・デルマ・ネール(わたしはやっぱり、自分が恐い・・・)
〇海辺
「ニャアッ!」
夜の海に沢山の魔物を狩るのは一匹の苛立つ猫。
ネコ「ニャッ、ニャッ、ニャアッ・・・」
ネコ「どうしてわかってくれないニャ」
リトナを愛している。だから邪魔する者を攻撃しただけ。
ネコ(何がいけないニャ、ただ一緒になりたいだけなの二ャのに)
産まれたときから両親に愛されてきたカプリース。
ラブラブな獣人の父母を見てきて自分も好きになった者と自由に愛しあい放浪したいのだった。
そう思っていた時に、牢に捕まっていたリトナを気に入り愛しパートナーと決めたのに。
ネコ「・・・もう〜っ、思い出すだけでむかつくニャッ!」
ネコ(明日リトニャと戦う・・・)
ネコ「リトニャ~・・・」
ネコ「う〜っ、リトニャッ、リトニャッ!」
落ち着いては苛立ち魔物に八つ当たりを繰り返す。
そして朝がやってきた・・・。
〇草原の道
カプリース「ニャアァッ!」
アイン・イヨ・リトナ「くっ」
アイン・イヨ・リトナ「はっ、はっ、はあっ!」
カプリース「ニャッ、ニャッ!」
カプリース「どうして」
アイン・イヨ・リトナ「!?」
カプリース「どうして分かってくれない、ニャッ」
アイン・イヨ・リトナ「あなたが、シルビアさんを、傷つけたから、ですっ」
当然のように当たらないリトナの重量級の斧。だがそれは想定済み。
カプリース「ふふーん、そんな大きいの一生当たらないニャ」
アイン・イヨ・リトナ「・・・・・・」
カプリース「リトニャは負けたら大人しくカプリースのいうとおりに愛し合うニャ」
アイン・イヨ・リトナ「あ、愛し合うとか、簡単に言わないでください」
ウカ・デルマ・ネール「リトナさん」
シルビア・ヤン・オードリー「大丈夫よウカ」
シルビア・ヤン・オードリー「あの猫の素早い動きのひっかきでも、リトナは自分の鎧の手甲でうまく弾いてる」
シルビア・ヤン・オードリー「このまま時間がたてば見極めるのも時間の問題」
ウカ・デルマ・ネール「はい」
ウカ・デルマ・ネール「あっ!」
シルビア・ヤン・オードリー「んっ、ウカ!?」
シルビアは注意深く横目でウカを見ていた。
シルビア・ヤン・オードリー(目の力が抜けたよう、でも、自身が満ちた感じ・・・やっぱりなんか)
アイン・イヨ・リトナ(はやいっ、思ってたとおり、斧ではどうにもなりませんね)
すると観念したかのように動きを止めるリトナの隙を見逃さず攻めるカプリース。
カプリース「すきありニャッ!」
カプリース「あじぃぃニャ!」
リトナの身体を炎が包む。
カプリース「フーッ、フーッ、これじゃさわれないニャ〜、フーッ、フーッ」
アイン・イヨ・リトナ「どうしますカプリースさん、諦めてくれますか?」
カプリース「ニャ・・・・・・」
アイン・イヨ・リトナ(くっ、全身から炎を出すのは、こ、こんなに全身に集中するとは)
シルビア・ヤン・オードリー「・・・ウカ、あんたほんとにウカなの?」
ウカ・デルマ・ネール「なにを言ってるのシルビアさんおかしな人ね、私はウカです」
気のせいだったのか、それとも。シルビア自身もよく整理がつかなかった。
ウカ・デルマ・ネール「それよりあの猫さん、このままじゃ終わらないわ」
シルビア・ヤン・オードリー「えっ!?」
カプリース「・・・・・・」
カプリース「ニャアァァァッ!!」
アイン・イヨ・リトナ「触っても、無駄です!」
アイン・イヨ・リトナ「くっ、そんなっ!」
カプリースの左手の爪が斧を持つリトナの右手に刺さり斧を離してしまう。
だが、
カプリース「ニャアァァンッ、あっちーニャアァァァッ!」
シルビア・ヤン・オードリー「リトナッ、あの猫・・・どうして」
ウカ・デルマ・ネール「おそらく・・・」
アイン・イヨ・リトナ「くっ、そんなに苦しむのを覚悟で攻撃を仕掛けてくるなんて」
カプリース「・・・強いニャ」
アイン・イヨ・リトナ「え?」
カプリース「カプリースの愛は、こんな炎より熱いニャッ!」
涙目で立ち上がるカプリース。そんな姿に何かを打たれたようなリトナ。
アイン・イヨ・リトナ「愛って・・・」
アイン・イヨ・リトナ「だったら」
カプリース「ハァ、ハァ、ニャァ」
アイン・イヨ・リトナ「だったら何でもシルビアさんを傷つけたのよっ!」
カプリース「リトナの邪魔だと思ったニャ」
アイン・イヨ・リトナ「邪魔じゃないっ!」
カプリース「えっ!」
アイン・イヨ・リトナ「私は、わたしは今このシルビアさんとの冒険で凶悪な魔物と戦ったり、メイド服着たりしましたが、楽しいんです」
カプリース「そ、そんなの、カプリースと一緒の方が楽しいニャッ!」
アイン・イヨ・リトナ「カプリース、カプリース、カプリースッて・・・」
アイン・イヨ・リトナ「そんな自分勝手な愛がありますかっ!」
カプリース「ニャニャッ!?」
アイン・イヨ・リトナ「そんな一方的な、人の話も聞かない人の愛なんて、私はきらいですっ!」
カプリース「なに言ってるニャ、カプリースが嫌い〜」
アイン・イヨ・リトナ「はい、嫌いです」
カプリース「こんなに愛してるのに〜」
カプリース「リトナは黙ってカプリースの愛を受けいれればいいニャァァァッ!」
カプリース「人の姿となりて、獣の力を解きっ、放つっ!」
シルビア・ヤン・オードリー「まずいっ、あの魔法は危険よリトナッ!」
ウカ・デルマ・ネール「危険だわ・・・・」
ウカ・デルマ・ネール「あの猫さん」
ウカが言ったあとリトナから再び炎が包み込む。
シルビア・ヤン・オードリー「あれは、獣の力が発動したのね!」
カプリース「リトニャアァァァッ!」
纏った炎が横に伸ばした左の掌に集まっていく。
アイン・イヨ・リトナ「フル・バーンッ」
カプリース「好きニャ、あっ・・・」
一瞬だった。
素早いカプリースがリトナに襲い掛かるも、リトナは左手からフル・バーンを一気に放出すると、
カプリースの速さを超えて、傷ついた右手で頬を叩いた。
カプリース「い、痛いニャ~ンッ!」
しかしリトナは止まらなかった。
カプリース「ニャ・・・あ・・・あ」
カプリース胸ぐらを掴み更に殴ろうとする。
カプリース「ぐすっ、リトニャッ」
シルビア・ヤン・オードリー「やめろぉっ、リトナァッ!」
大声で叫んだのはシルビアだった。
シルビア・ヤン・オードリー「殺しちゃうでしょっ!」
アイン・イヨ・リトナ「コロ、ス?」
カプリース「うわぁ〜ん、恐かったニャ〜、うわぁ〜んっ!」
アイン・イヨ・リトナ「はぁ、はぁ、くっ」
胸ぐらを離すリトナ、汗だくの自分の状況を整理する。
アイン・イヨ・リトナ「カプリース、さん・・・」
カプリース「ぐすっ、リトニャなんか、リトニャなんか、もう嫌いニャアッ!」
カプリース「優しくて、面白くて、可愛いリトニャが好きだったのに、殺そうとするなんて」
アイン・イヨ・リトナ「ごめん、なさい」
カプリース「同じ仲間と思ってたのに、ニャッ」
アイン・イヨ・リトナ「あ、カプリースさん」
素早くカプリースは砂浜を走り去り、森の中に消えていってしまった。ゆっくりと歩いてくるシルビアはリトナの隣に。
シルビア・ヤン・オードリー「よくやったわね」
アイン・イヨ・リトナ「・・・・・・」
シルビア・ヤン・オードリー「勝者の顔じゃない、当然か」
アイン・イヨ・リトナ「一方的だったけど・・・」
アイン・イヨ・リトナ「愛してくれた人に、嫌われるのは・・とても、傷つきます」
シルビア・ヤン・オードリー「人っていうか、猫、だけど」
ウカ・デルマ・ネール(世界は動いている、二人の女性によって・・・)
〇山並み
宛もなく走っている猫の姿をしたカプリース。
ネコ(もうしらないっ、もうしらないニャ、リトニャなんか、リトニャなんか、大っ嫌いニャァァァ〜、にャ〜ン、ぐすっ)
この日、森には異常な猫の鳴き声がこだましたという・・・。