出会い(脚本)
〇日本庭園
千代が、権三郎の屋敷で働き始めてしばらくたった。そして、千代はすごい速さで仕事を覚えて、屋敷の中で友だちを増やしていた。
また、アヤの指導を外れる許可を得て、一人で働き始めていた。
そんなある日、千代は中庭の掃除をしていた。そこへ、池田権三郎とその従者である、兼田三郎がやってきた。
しかし、千代は、二人の存在に気づかず、黙々と掃除をこなしていた。
兼田三郎「そこのもの、無礼である。若様の御成りだ」
千代「もっ申し訳ございません。私が気づかなかったばかりに」
そして、千代は土下座した。これは、顔を隠すための意味も含まれていた。
池田権三郎政隆「三郎、そんなに怒るな。ほれ、表をあげよ。土下座なんてする必要はない」
兼田三郎「若様、もう行きましょう」
兼田三郎は、若い女中が若様に姿を見せることを許されていないことを知っていた。しかし、権三郎にこの事実は伏せられていた。
池田権三郎政隆「なに、別にもう少しいてもよかろう。そこのもの、表をあげよ」
そういうと、権三郎は、千代に近づいてきて、手で無理くり顔を上げさせた。
池田権三郎政隆「美しい」
兼田三郎「若様、行きましょう。そこの者も仕事中です。邪魔はするべきではありません」
池田権三郎政隆「わかった、少し待て」
兼田三郎「若様、行きますよ」
兼田三郎は何かやばいと感じたのか、無理くり権三郎を連れて行った。
そして、権三郎は慌てているのか、急いで無表情に顔を戻していた。自分が惚れている顔を見られるのは嫌だったのだろう。
〇風流な庭園
兼田三郎と権三郎は、そのまま庭園の奥に行き、自然に囲まれた場所にやってきていた。
池田権三郎政隆「三郎、なんで先ほど私を強制的に連れ出した。別に話してもよかろうが。何か隠しているのであろう?何なのだ。申してみよ」
兼田三郎「若様、私は若様に何も隠していません。ただ、若様にはすでに婚約者がおわす身婚約者のことを考えれば女性と話すのは好ましくない」
兼田三郎「そう考えた故です」
池田権三郎政隆「はあーしかし別いいいだろ。側室作っても」
兼田三郎「若様、相手としては望ましくないでしょう。如何に既に上様、幕府の許可を得て、養子入りが2ヶ月後に迫っていようともです」
兼田三郎「既にここまで進んでいるのですから破談は無いでしょうが、私としては若様に奥様となられる方と仲が悪くなってほしくはありません」
権三郎は内心では、先ほどあった名前も知らない女中のことを好ましく思っていたが、三郎にこう言われた手前それを言えなかった。
池田権三郎政隆「わかった。今度から気をつける」
そう言っておきながら、権三郎は先ほどの女中と再会する方法を考えていた。三郎を連れていない時を狙おうとしていた。
先ほどの女中との再会は、誰もいない時にしようとしていたのだ。誰に邪魔されるか分からないからだ。
兼田三郎「お願いします。それで、婿入りの話なんですが、江戸に来月、殿の参勤交代と同時に入府します。」
兼田三郎「そして、正式に婿養子として迎えられる予定です。また、若様御付きの家臣が何人か共についていく予定です」
池田権三郎政隆「三郎はついてくるのか?」
兼田三郎「勿論にございます」
池田権三郎政隆「それは良かった誰も知らない人に囲まれるのは少々怖い。武家の男子たる者そのような気持ちを持つべきではないのはわかっているが」
兼田三郎「若様、その気持ちは私も理解いたします。詳しくは殿が仰せになりますが若様の婿養子に随行するのは女中5人、武士10人です」
池田権三郎政隆「これは多いのか?」
兼田三郎「それは分かりませぬ。しかしながら、まだ正式に随行員は決まっていないとの話です。唯一決定しているのは、私が随行することです」
池田権三郎政隆「そうか、私に選ぶ権利はあるのか?」
兼田三郎「それは分かりませぬ」
池田権三郎政隆「そうか、父上の元に行こう。聞き出すぞ」
兼田三郎「若様、それはまたの機会にいたしましょう。久しぶりに遠駆けにでも行きましょう」
池田権三郎政隆「そうだな」
こうして、2人は馬に乗って、領内に出たが、権三郎の頭の中は、侍女のことでいっぱいだった。
どうしたら連れて行けるか考えていたのだ。