クードクラース

イトウアユム

第9話「絞殺」(脚本)

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〇黒背景
平山栞「入手したカードを・・・ 全部放棄するつもりなの?!」
綾瀬静(ましろ・・・)
綾瀬静(お前の歪んだ依存が死の恐怖に打ち勝ち、 勝利に導いてくれるのなら・・・ 俺はもっと受け入れてやる)

〇荒廃した教会
  静の投げた3枚のカードはそれぞれ
  バラバラの方向に落ちていく。
平山栞「みくる、そっちのカードを拾ってっ!」
  栞とみくるは呆然と落ちるカードを眺めていたが、はっと我に返り慌ててカードをかき集める。
綾瀬静「――良かったな、ましろ。 これで俺のカードはお前だけだ」
綾瀬静「見ての通り、 俺の手にはもうお前のカードしかない」
綾瀬静「だから・・・これからはお前がお前の力でカードを手に入れろ」
綾瀬静「そうすりゃカードの思い出は全部、 お前の思い出に塗り替えられる」
綾瀬静「俺は22枚のカードを見るたびに お前の事を思い出す」
黛ましろ「ふふ・・・ふふふ・・・」
黛ましろ「・・・どうしよう、静。 私・・・すごく、すごく嬉しい・・・」
黛ましろ「やっと集めた大切なカードなのに・・・」
黛ましろ「カードが無いと静の願いは 叶わないのに・・・」
黛ましろ「静のために死んだ子のカードなのに・・・ それなのに、私だけの為に・・・ 静は全部捨ててくれた・・・」
綾瀬静「俺の願いを叶えることが出来るのは ましろだけだ──」
綾瀬静「だからいらないものは全部捨てた」
黛ましろ「・・・私だけが静の願いを叶える事が 出来るんだ・・・ふふ・・・ふふふ・・・」
吉野みくる「――なんなの・・・ あの笑い方、キモいんだけど・・・」
平山栞「みくる、ましろさんの傷が・・・」
  ましろの笑い声に応えるかのように、
  焼けただれていた肌が急速に元の肌に
  戻っていく。
綾瀬静(良かった。 心の繋がりが強くなったのか・・・)
黛ましろ「・・・私が頑張れば、静が喜んでくれる。だから私・・・」
  ましろは幸せを噛みしめるように
  閉じていた瞳をゆっくりと開く。
黛ましろ「――もっともっと、家畜をたくさん殺すね」
  静を見つめる瞳には、獣のソレに近い、
  獰猛な光が宿っていた。
黛ましろ「――吊るされた男召喚! (サモン・ハングマン)」
吉野みくる「縄なんておよびじゃねーし!」
  みくるのチェンソーが唸りを上げて
  ましろを狙う。
  しかし、ましろはそれをひらりと交わすと
  剥き出しの梁に縄を何本も巻き付けて
  しがみついた。
吉野みくる「今度はジャングルごっこ? うろちょろしてウザいんですけど!」
  次々と縄から縄に伝っていくましろ。
  みくるはそんなましろの動きに翻弄
  されている。
綾瀬静(格段に、縄を扱うスピードが早くなって いる、それだけじゃない、動きも・・・)
平山栞「みくる! とりあえずこの縄を全部切るのよ!」
  蔦の様に剥き出しから何本も釣り下がる
  赤い色の縄に鎌を向ける栞だったが。
平山栞「なんなのこれ・・・ 切っても切っても伸びてくる・・・」
  切れたロープは床に落ちても意思のある
  生き物のように、栞へ伸びる。
  栞はやみくもに鎌を振り回すが、切られた事によって無数に増えた縄は鎌で捕える事が出来ない。
  そして縄は栞の一瞬のスキを突いて、
  首に巻き付いた。
平山栞「なにこれっ! 早く切らなきゃ・・・はやくっ!」
  栞が焦るほど、彼女の首に絡まった縄に
  散らばった縄が集まり、融合されて上に
  伸び続ける。
  そして、その縄の先端が吹き抜けの梁に
  届くと、一瞬で栞の首を吊り上げた。
平山栞「ぐっ! が、はっ・・・あ、 み・・・ぐ・・・!」
吉野みくる「しおりんっ! 今そっちに行くからね! こんな縄すぐに切ってやる!」
黛ましろ「・・・切って良いの?」
黛ましろ「縄が切れたら・・・普通の人はあの高さ から落ちたら死んじゃうんじゃないかな?」
吉野みくる「! ・・・ああ・・・」
  淡々と告げるましろの言葉にみくるは
  頭上でもがく栞を見上げ、躊躇する。
吉野みくる(一刻も早く助けないと・・・ でもどうやって?)
吉野みくる(このままだとしおりんが死んじゃう・・・どうしよう、どうしよう!)
  追い詰められたみくるの出した結論は――。
吉野みくる「お願いっ! ・・・しおりんを殺さないでっ!」
  ましろに追いすがり、
  慈悲を乞う事だった。
吉野みくる「しおりんはあーしのマブダチなんだよ! お願い、カード全部あげるからっ!」
吉野みくる「あーしの命もあげるから・・・」
黛ましろ「・・・あの人はあなたの・・・ 大切で、大好きな人なんだね」
  ましろの言葉と微笑みに
  みくるは一抹の望みを見出す。
  もしかしたら・・・ましろは助けてくれるのかもしれない、という期待。
吉野みくる「そうだよ、しおりんはあーしの大切な人 なんだ、だからっ!」
黛ましろ「――私も大切で大好きな人が喜ぶから ・・・欲しいんだ、2人の命」
吉野みくる「えっ?」
  みくるが事態を把握するには
  時間が掛かった。
  なぜなら気付いた時は首を吊り上げられ、栞の隣で揺れていたからだ。
吉野みくる「ぐあ・・・な・ん・・」
黛ましろ「好きな人と一緒に死ねるなんて・・・ 幸せだね」
吉野みくる(栞、ごめん・・・ごめんね・・・)
  過酷な運命をセルベールに知らさせ、
  自暴自棄になりそうだったみくると
  悲しい目をした栞の出会い。
  お互い、
  最初は利害関係の一致した契約だった。
  だが、身を寄せ合えば寄せ合うほど、
  心も近づき――。
吉野みくる(あーしは・・・栞と出会えて・・・ 幸せだったよ)
  走馬灯のようにみくるの脳内を駆けめぐる
  2人で過ごした短いけど・・・
  宝物の様に大切な日々。
  みくるは涙を流しながら既に動かない
  親友の手を固く握ろうとした。
吉野みくる(せめて最後の瞬間だけは、一緒に・・・)

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